


大地と対話ができるような、建築。敷地のボーリングデータを約30箇所収集し、その点としての柱状図から過去の面としての地形、地層の傾斜を復元し、それをそのまま建築のスラブ形状に置き換えた。今私達が立っている地表面から、表土、黒ぼく、関東ローム、砂?・・・と過去に遡り、それぞれの層と層の境界面が建築の輪郭へと変換。
訪れる人は、何百年も過去、この場所に確かにあった大地(=地形)に立つことになり、またその地形によって与えられた空間を重層的に体験する。
[川畑勝也]
変わり続ける現代都市やそこに均質に再生産される建築に対する疑問から、建築が建つ「大地」と言う根源的なことに着目している。現代都市における建築を考える拠り所に、その土地の地層に着目し、建築として再構成している。
このテーマに対する敷地に日々変わり続ける渋谷を選び、過去の地形が顕在化することによって、渋谷の地形の固有性の歴史性や時間を感じられる、新しい建築空間を目指した力作である。
[建築学科客員教授 布施 茂]

進化し続ける都市。
不自由さは排除され、利便性ばかりを追いかけてきた。
もっと人間らしく。
コミュニケーションのありかたをもう一度考え直してみたい。
一人一人が社会を構成しているように、部分の集積が全体になる。
手を取り合って。
住まい手と共に、日々成長していく建築群を提案する。
[佐藤俊介]
新宿のゴールデン街とその周辺を対象とした卒業設計。
この小さな街に建築がどう参加しうるのか、今の街の魅力に建築は果たして何ができるのか。魅力的な場所だけに取り組むこと自体困難なものがあったと思う。最終的な提案としては、現状を横に拡張する形で、今のゴールデン街のコンテクストから建物の配置や素材感などを読み込み、若干の課題は残しつつも、様々な視点から建築を捉え直す提案となったのではないだろうか。
[建築学科准教授 菊地 宏]

建築は内部と外部の間に存在する。だが垂直に積層されていく建築は外部環境を取り込めず都市との関係が希薄である。それは建築外部にいる人にすればただのかたまりとも言える。
閉鎖的な大地にひびを割り浮き上がらせ、風の通り道をつくり、住処となり外部と内部を行き来しながら人々が歩いていけるような建築空間を提案したい。
[平川慧亮]
巨大な氷かガラス板をたたき割って積み上げたような表現。半ば破壊されたかのような、または洞窟的で大きな地形のような建築のモデルである。そのインパクトはとても強く暴力的に見えるから、現実の街に対するリアリティがないという批判もありうるが、基準階というつくりかた、言い換えれば過剰なまでに床(箱)を縦横にコピーペーストする現代社会の建築に対する違和感が、この異形に圧縮されたとむしろ思える。
[建築学科教授 高橋晶子]

生活する環境が整っている今の日本にはどんな公園があるだろうか。
どこにでもある均質な公園から、その土地の特質を持った公園をつくること。
貯木場跡地に海とのふれあいのきっかけとなる公園を計画した。
陸地の公園だけでなく、海面で遊ぶ公園が増えること、新しいウォーターフロントの楽しみ方が日本中で計画されることを願いながら設計した。
[前田智代]
東京湾の埋め立ての歴史は古く江戸時代に始まっているが、最も海に近いはずの埋立地は私たちにとって本当に身近な海との接点なのだろうか? このプロジェクトはその疑問から始まっている。リサーチの結果、海の際としての陸地よりも海そのものとの関係を構築できる新たな可能性として、隅田川河口の旧貯木場が見いだされた。囲まれた水面という場所は島のようでもあり、桟橋のようでもあり、地形のようでもあり、構造物にも見える。海という環境と都市の住民が本当に接し会える場所として、新たな展開を示唆する案である。
[建築学科教授 長谷川浩己]

多様化し続けるライフスタイルや家族構成
変化し 更新されて行くことを求められる 空間の用途
現在の均質な建築様式では
フレキシブルなパターンを作り出すことはできても
そのパターンは特定の人々にしか受け入れることはできない
決して均質な空間ではないが、均質ではないからこそ
多様なライフスタイルや空間利用に呼応し 受け入れることのできる
内外や表裏の明確な文節さえもない
ニュートラル空間の提案である
人々はもう一度
自然の中から自分の居場所を見つけ出すかのように
暮らしや関係性を展開させていく
[吉野太基]
吉野君の設計は社会と建築の関係に対する二つの視点から始る。一つは、現在の私たちの生活を建築は形づくっていない、むしろ様々な消費財のようなものによるのではないか、という視点、今一つは、家族などの社会単位が世代を問わず流動的だという視点である。この二つの視点によって、生活の諸相に対して「ニュートラル」な状態にあるものとして住居、店舗、事務所などからなる街環境の計画設計を試みた。消費財のようなものや設備機能を集約し構造を兼ねるコア(構造と配管だけが残る場合もある)を、街にとって必要なコアとコア間のスペースの大きさと分布密度を分析的に捉えて配置し、小規模な街区の規模をシェルターで覆うとともに、中には変化する辻子(路地)を通している。一定以上の巾を持ち、外周が不整形で、傾斜した敷地を選んで設計している。それは、考え方を理想的に示す、あるいは適用できる敷地で計画設計するのではなく、敷地の中で起る個別事例の積重ねをこそ考えてみたかったからである。明確な論旨とそれを建築として構想設計した優れた作品として評価した。
[建築学科教授 源愛日児]