織田隼生Oda Toshiki

作品写真:Alteregoism
作品写真:Alteregoism
作品写真:Alteregoism

Alteregoism

銅、純銀、銀箔、鍛造、接合、すりだし、煮色仕上げCopper, pure silver, silver leaf, forging, conjugation, polishing, patinationH350 × W450 × D320mm

現代において、私たちはあらゆるものを購入する事で生活しています。物事は金額によって価値が決まり、お金さえあれば何不自由ない生活が送れると思う事さえあります。稼ぐ事を最優先し、他人との関係は淡白なものとなりつつあります。
一方、自然界の生き物には共生関係というものがあります。種を超えて協力し合う彼らの生態は、私たちが失いつつある何かを表すものだと思いました。
これはクマノミとイソギンチャクをモチーフにその「何か」を私なりの解釈で表現したものです。

織田隼生

銀と銅の線材を一本一本時間を掛けて,鍛造、接合、すりだし,そして煮色仕上げと金属工芸の手業を余すところなく活かし,美しい造形に仕上げている。自然界の共生関係(クマノミとイソギンチャク)をモチーフにした作品であるが、その造形の高い完成度だけでなく、昨今のグローバルな環境問題や紛争に対し、〈国家、民族、宗教を超えて互いに協力(共生)していくことが大切〉という強いメッセージを含んだ造形表現を高く評価した。

工芸工業デザイン学科教授 鈴木洋

田渡大貴Tado Daiki

作品写真:Sione
作品写真:Sione
作品写真:Sione

Sione

ハードメープル、ウレタン、ファブリック、曲木、指物Hard maple, urethane, fabric, bentwood, woodworking jointsHH850 × W960 × D650 mm

ウィンザーチェアをご存知だろうか。
細いスポークが背を構成するこの椅子は、
構造上物理的には組むことができない。
そのため材を先細りさせ叩き入れることになるのだが、
その際生じる適度な反発やテンションが、
人を保持するに十分な強度として機能するのだ。
これをヒントに、家具には不向きとされる細い木材で
3次元的なフォルムをもつSioneを制作した。
木材はシビアだ。
誰でもクリエイターになれる時代に、木はどう扱われてゆくのだろうか。
あらゆる未知のため、素材の可能性を手繰るかのように、
もう一度木と向き合わなければならない。

田渡大貴

細く削った木を組み合わせるウィンザーチェアにならって今の暮らしに合わせた制作です。ゆったりしたフォルムに包まれるデザインを評価しました。

工芸工業デザイン学科教授 十時啓悦

植田佳奈Ueda Kana

作品写真:けもの
作品写真:けもの
作品写真:けもの

けものkemono

半磁土、ロクロ成形Porcelain clay, forming shapes on a turning wheelΦ150 ~ 300mm ×6点

一本一本模様を刻んだ。
何千 何万と刻んだだろう。
単純作業の中に私は美しさを感じ、制作していた。
その美しさというのは例えば、
繭を作るため糸を吐き続ける蚕に似ていると思う。
でも
自然の持つ絶対的な美しさには敵わない。
この作品は自然の持つ美しさに憧れ、
それに少しでも近づきたいという
私の願望そのものである。

植田佳奈

土の表皮に金属や木の薄い板を押し付けて刻んだ線の集積が、今にも動き出しそうな獣を想起させる。ろくろ成形を基本にしたシンプルな技法でありながら、素材の魅力を効果的に生かした器物である。時間の積み重ねと緻密な手作業の痕跡が魅力的であり、工芸表現の可能性を感じる。
作者の自然物に対する深い観察や強い思いがあるからこそ具現化できた存在感のある作品である。

工芸工業デザイン学科教授 西川聡

延命香織Emmei Kaori

作品写真:lines
作品写真:lines
作品写真:lines

lines

布、シルクスクリーンCloth, silk screenH2500 × W1140mm ×8点

線は美しい

線にはその人らしさが出る
線には性格がある
線には表情がある

単純な線
線と線の重なり
線が集まることで見えてくるカタチ
線が集まることで出現するモアレ

布が揺れ
目が回る

目の前のモノは
毒なのかもしれない

布だからこそ見ることの出来る表情がある

私にしか描けない線を極め
線の細さとシルクスクリーン技法による手刷りの限界を追求した

延命香織

「線は美しい」と彼女は言う。作品を観て頷ける。
手で描いた線が真っすぐだからだけではない。線と線の間から生まれる隙間、微妙なずれ。デジタルではなく自らの手で、ひらすら定規で描き続け、身体で掴んだ感覚に拘ったのにも納得させられる。紙ではなく、風でしなやかに揺れて表情が変わる布に、シルクスクリーンで捺染をすることが、もう一つの拘りだった。繊細な直線で、大胆に構成されたモダンで心地好い作品だ。

工芸工業デザイン学科教授 鈴木純子

石村風Ishimura Fuu

作品写真:HiToE
作品写真:HiToE

HiToE

樹脂、漆Plastic, lacquerH70 × W100 × D240mm ×2点

私は「駿河塗り下駄」という工芸品の要素を取り入れ、デザインを施したサンダルを提案しました。その過程で私はデザイン3D出力し漆を塗るという製造方法にも挑戦しました。漆には多彩な表現の幅と、剥がれても修復できるメリットがあります。よって傷んだら捨てる消耗品で終わらず、愛着を持って長く使い続けられるものへとなっていきます。この方法で事業を展開した場合のシステムも考えました。ユーザーの足の形に柔軟に対応し形を変え、出力してフィット感を試すことができるなど効率良くかつ充実したサービスを受けられます。さらに壊れた際のメンテナンスや、塗替えなどのアフターケアも可能です。このプロダクト、システムによって伝統技術と将来発展していく技術が上手く共存するものづくりが発展すれば良いと思います。

石村風

石村さんの卒業制作は、優れた造形性と将来の日本のものづくりにつながる研究として評価された。この研究は、ひとりひとり異なる身体の形を情報化し、ユーザーに最適な設計が可能なデジタルの強みを生かし、駿河塗下駄の漆による幅広い表面処理を、サンダルという現代の女性に受け入れられているアイテムに施すものである。造形的には、日本の伝統的な祝い事で用いられる一重結びを造形要素として取り入れ、魅力的な作品に仕上げている。

工芸工業デザイン学科准教授 田中桂太

内山太地Uchiyama Daichi

作品写真:Cascate
作品写真:Cascate

Cascate

MDF、ウレタン、テント布MDF, urethane, clothH460 × W300 × D1250 mm

入浴は日本人には欠かせない存在です。しかし、毎日入浴する習慣があるにもかかわらず、自宅でできる入浴スタイルに多様性がありませんでした。
入浴スタイルの選択肢を増やすことで毎日の入浴を楽しめるようなバスタブを提案しました。
このバスタブは、形体を可変することで入浴姿勢・水位・水流(ストリーム、ジェット、バブル)が変化し、全身浴、半身浴、打たせ湯、流し湯、ジェット浴など何通りもの入浴スタイルを楽しむことができます。
可動部に軟質素材を使うことで安全性、気密性を実現し、従来のバスタブにはないデザインを可能にしました。

内山太地

学生は快適な浴槽のデザインを披露してくれた。
日本の少子高齢化が一段と加速し、住宅資産の多くを高齢者層が所有する時代。
既存住宅の流通とリノベーション市場が一気に拡大し、
学生は「その時のお年寄りは、自分好みのヘルスケア住宅に仕立て上げ、
高度な風呂ライフを楽しむ」と予測した。
その浴槽のデザインは、横並びのオーガニックなスタイルと異なり、
まるで医療ベッドを思わせる先進的な印象だ。
からだを安らぎにひたす湯量と水流・水圧の機構は、シンプルな仕組みで分かりやすい。
次代の人と暮らしを見据え、新たな生活価値を創造した提案は、素晴らしく秀逸な作品だ。

工芸工業デザイン学科教授 中原俊三郎

小田代美月Odashiro Mizuki

作品写真:TONE
作品写真:TONE
作品写真:TONE

TONE

ステンレス、チュール、フレーム、ブラスト加工Stainless steel, tulle, frame, blastinH1800 × W1040 × D400 mm

薄くて軽い一枚の布は、凹凸によって色の濃淡が変化したり、重なりによってモワレ効果が現れたりします。
この豊かな表情を楽しむために、簡単に着脱可能なシステムとしました。
フレームには、建築分野等で利用されているプラスチックのファスナーを貼っています。
小さいキノコ状の突起が連続していて、そこに布の編み目を引っ掛けて固定しています。
まるでキャンバスに絵を描くように、使用者が自由に好きな高さやテンションに布を貼り替えることができる棚です。

小田代美月

一見すると簡易に構成されたメッシュの層であるが、視点の移動と共にその濃薄は繊細に変化し、 重なりあうことで生まれる視覚的効果とそこに潜む美しい色彩は、見る者の知覚を揺さぶりながら、周囲の空気を柔らかく包み込む。風のようにどこまでも軽く、詩的な印象を保ちながらも、棚という名を維持するための最低限の機能性を持たせるのは難問であったが、実験的な試みを繰り返した結果、新技術のファスナーを使い、棚一枚につき耐荷重5キロという実用性を持たせる事に成功しており、同時に接続部の不要なディテールを消している。また、使う者が自由にそのレイアウトや取り付け位置を変えることができるという発想もユニークである。それは真新しいキャンバスに絵を描く作業のようでもあり、白紙の五線譜に旋律を書き込んでいく作業のようでもある。固定化した生活のための家具の概念を切り崩す作品と言える。

工芸工業デザイン学科教授 山中一宏