新井あかねArai Akane

作品写真:偽りの境界線

偽りの境界線Fake border line

高知麻紙、岩絵具、水干絵具、鉛筆、銀箔Kochi mashi hemp paper, mineral pigments, dyed mud pigments, pencil, silver leafH1820 × W2730mm

ふと、そこらにある植物たちに興味をもった。毎日のように通る同じ道で、毎日違う表情を見せる植物が面白かった。もともとこの植物たちはここにいて、埋め立てられてもなお伸びているのだろうか。それとも埋め立てられた土の隙間に、後からやってきたのだろうか。大人しく植わっているかのように見える街路樹の根がコンクリートからでてきている。鉄とコンクリートでできた側溝から草が、花が生えている。人と植物の静かな縄張り争いが始まっている。

新井あかね

新井は植物と人間を隔てるものとして路側帯の溝のふたをモノクロームの鉛筆で表現した。「偽りの境界線」と題されたこの作品は物語性を感じさせる柔らかな色彩とイメージの中で境界線とされた路側帯だけがリアルな現実として強く感じられる。それは私たちが日常生活の中で様々な境界線を意識することと無関係ではないだろう。国家、民族、アートとデザイン、日本画、様々な境界線が虚構なのかもしれないが実際に存在することをこの作品は示しているのかもしれない。

日本画学科教授 尾長良範

濵田千晴Hamada Chiharu

作品写真:蛙が時間軸にのまれるのはエンドレスに海が井であることを知る為
作品写真:蛙が時間軸にのまれるのはエンドレスに海が井であることを知る為
作品写真:蛙が時間軸にのまれるのはエンドレスに海が井であることを知る為

蛙が時間軸にのまれるのはエンドレスに海が井であることを知る為The reason the frog is caught up in time axis to see well the see is well endlessly.

雲肌麻紙、岩絵具、水干絵具、墨、布、色鉛筆Kumohada mashi hemp paper, mineral pigments, dyed mud pigments, ink, cloth, colored pencilH600 × W2440mm × 3点

ペラペラで明確な月The thin and articulate moon.
月が“月”になるA moon becomes the moon.
“月”と“月”が出くわすThe moon runs into the moon.

一人の人間が興味を持った対象を認識する過程を表した。対象を画面上では月に置き換えた。右から左に流れる時間軸の中で主人公は月との距離を縮めようとする。遠くから見ると美しい対象は近づくにつれ様々な表情をみせる。やがてそれらの経験は対象に対する一つの認識を主人公に与える。ただその認識は主人公の思い込みに過ぎなかったのか、すぐに対象に対する理解は揺らぐ。主人公は改めて月を認識すべく初めに戻る。その時対象はより具体的になる。それにより、対象に向かう過程も以前とは違ったものになる。

濵田千晴

作品は横長の絵巻物様式で描かれているが三部作で構成されている。右から左へと流れる時間軸と情景に連続して現れる文字や人間のフォルム、吹抜屋台的構図は、絵巻に見られる独自の絵画様式であり、それらが現代の瑞々しい表現へと展開をしている。
濵田は学部4年間かけて人間表現を追求してきた学生である。作品に描かれた人体は彼女の4年間の結集であり、美しくデフォルメされた無数の人間像がいる。自身の憧れの何かを表現するために月を隠喩としているが、「憧れに近づくと一瞬で手からそれがこぼれ落ちる」、と作者の言葉にあるように、画面は詩的である。
心に湧き上がるイメージを造形として紡ぎ出すことで、現代の不条理な世界観を人間像とともに描いた秀作である。

日本画学科教授 内田あぐり

脇野あやWakino Aya

作品写真:♯023061

♯023061

雲肌麻紙、胡粉、土絵具、顔料、染料Kumohada mashi hemp paper, chalk, mud paint, pigment, natural dyeH2590 × W1940mm

水、水のようなものをいつも感じていたい。身体の中と外にある流れが交わっていく。
色彩は、本当はただの光でしかない。暗がりの中にあるあの色は、なんの光なんだろう。

#023061(アイ色のカラーコード)
形の定まることのないアイ(love)のようなもの、
それらと私達との均衡について。

脇野あや

本作品は、あえてドーサを引かず生紙の和紙の表面繊維をもげさせ染料系絵具の滲みを活かした独特な手法をとっている。タブー視されがちな性的な世界を含ませ、毛細血管のように縦横無尽に染まってゆく色素は深みを増し、生命の根源的な表現にもなっている。

日本画学科教授 西田俊英