

本学では、狭い美意識や既得の技術から自らを解放し、表現の意味を原点に立ち戻って捉え直すために、専門領域以外の根源的な造形力を養うためのカリキュラムが組まれています。これらの授業科目は、「共通絵画」「共通彫塑」「共通デザイン」というそれぞれ独立した教育組織によって指導がなされています。
1962年に、「造形」の学部名を冠し設置された武蔵野美術大学は、当初美術学科と産業デザイン学科で構成されていた(商業デザイン専攻・工芸工業デザイン専攻・芸能デザイン専攻)。この産業デザイン学科共通の基礎課程で必修科目として開設された授業科目を担当する研究室が、共通絵画研究室であった。
研究室の設置目的は、デザインの基礎教育は、デッサン、絵画制作であるとの共通理念の具体化に基づいた設置への要請であり、また一方で、当時の社会情勢である"デザイン産業"の台頭に連動した美術大学における、デザイン教育の充実を目途としたカリキュラム設定上の必然でもあった。教育内容は学科専攻別カリキュラムを設け、それまでにない未開拓な描画材料の積極的な導入による実習を行い、自然から学び取ることを基本としながらも、客観性と合理性とを合わせ持つ造形基礎教育をめざしていた。
産業としての"デザイン"に明確な存在感があったように、共通絵画のめざした「デザインのためのデッサン」は、デザイン系学科の基礎課程として、明確な必然性があった。しかし、社会の変革や価値観の多様化、初・中等教育における美術教育の変質、受験科目としてのデッサンへの、対策的手段の強化などにより、それまでの教育内容の見直しを迫られることとなった。
研究室では1989 年にカリキュラムの抜本的な見直しを行った。この目標は、「デザインのためのデッサン」というものではなく、広く「造形」を志す学生(ものづくりやデザイナーをめざす学生)が将来にわたり、造形表現とどのように関わるべきか、といった制作以前での基本姿勢を問うものである。
制作において学生は、自由に自らの方法や手段を駆使し、自己解放に向かう過程を経験することとなる。従ってこのカリキュラムは、基礎というよりは予備、 "ベーシック"というよりは"プライマリー"的な教育内容を持つものである。これは、造形教育の基礎においての原理、原則を問い直すものであり、進行する高度情報化社会における新しい人間像を問うものである。
研究室では、2000年度より、造形学部全学科2~4学年次生を対象として、平面領域での実技授業を新たに開設することとなった。これは、これまで開設している授業内容の次ステップとしての絵画表現を、人体を対象に厳しい観察と制作を通して、より高度な人物表現を試みるものである。このことは、現カリキュラムの完成を視野に入れたものであり、教育課程の試行である。2003年度より始まった新教育課程では、造形総合科目Ⅱ類(自由選択)科目をこの授業内容で開設している。
峰見勝藏 (みねみ・かつぞう)
教授(主任)
大浦一志 (おおうら・かずし)
原一史 (はら・かずふみ)
鈴木泰裕
長橋 亮
大垣 彩
千吉良 麗