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太田依李 Ota Eri 根Ⅰ root1 鉄 85.0×340.0×140.0cm Iron

目の端に映り込むような遠くに存在しているもの。
それは注目という意識をしないと見えもしないし、感じないものだ。
注目される場で目の前に立ち現れたものは、
鉄という素材で汲み取られた、強い意識と距離である。

[太田依李]

生まれたばかりの小さな木の根を何十倍にも拡大したなら大きな木の根になるのだろうか。もちろんならない。モデルの形体が正確に鉄という硬い素材に移し取られたこの物は、彫刻なのか、オブジェなのか。この作品だけ見ると一般の観者は木の枝のような繊細な彫刻として見るだろう。それはそれで良い、が作者によって巧妙に仕掛けられた偽装工作にだまされてしまう。他の作品、たとえば石鹸で作られた墓石、化粧を施された観葉植物等と同列にしてみるとその世界は一変する。作者はこの現実世界を偽装されたものとして捉え、リアルな世界など存在しないし、それこそがリアルなのだと言っているようだ。化粧、整形、梱包、拡大、縮小などに異様に執着する人間のフェティシュな一面を捉えそのシンボル性に亀裂を与え、工作者は問いかける「あなたは何を見ているの?」

[彫刻学科教授 戸谷成雄]

 

亀島悠平 Kameshima Yuhei 佇 atmosphere 漆、砥粉、麻布、ガラス、脱活乾漆 70.5×111.5×162.0cm Lacquer, clayslate powder, hemp cloth, glass,hollow dry lacquer

金魚のかたちのいいところと、
それを引き出す構成を探っていくと、
モチーフではない何かが出てくる。

イメージから生まれる新たな生命。

彫刻は『モノ』であるけれど、生きているかもしれない。

[亀島悠平]

作られているものは金魚。それはラジカルに様式化されて、変化に富んだ量の構成となっている。ふくよかな胴の孕みは、後方へは一旦伸び上がって下方に向かい扁平に散開するが、前方へは、頭頂の玉に凝集する膨らみの波動を射出する。黒みを帯びてにぶい光沢を放つ作品には、愛玩の対象とは隔たるよそよそしくクールな情感が満ちて、これが力となっている。
乾漆を媒体として励起されたドメスティックな彫刻の魂が、全世界を獲得するだろう。

[彫刻学科教授 黒川弘毅]

 

増本直子 Masumoto Naoko 記憶の断片-2 fragments of the memory 御影石 60.0×55.0×60.0cm Granite

石は長い時をかけて堆積されたもののかたまりで、
想像もできない程の時間と空間を経てここに在ります。
自身の記憶と石の持つ何かを感じながら削りました。

[増本直子]

特別な空間が生まれる時がある。
この作品は一見よく計画された面の構成と思うかもしれないが、それとはまったく違う在り方をしている。目の前の石と対話するように、直感的な判断でつくられたものなのだ。そのためか、揺らぎのあるデリケートな印象を与えている。作品の面の差異を明確に意識した表現は秀逸だ。
見る事のできない底面をも明確に意識した表現は、閉じられた面を持つソリッドな存在の魅力を充分に発揮している。それはなにものにも属さない物体のみが持ち得るような魔力をも放っている。空間はここからはじまるのだろう。

[彫刻学科教授 伊藤 誠]

 

椋本真理子 Mukumoto Mariko Land 樹脂、ガラス繊維 85.0×145.0×54.0cm Resin, glass fiber

人間の生み出した風景を
冷静に、引いた目で、遠くから見る。

[椋本真理子]

風景の彫刻である。しかしそれと同時に抽象彫刻だ。「目の前に遠方がある」という距離のイリュージョンを追求した在り方と、具体的な対象を持たず、目の前の事物が全てとする在り方。この二つの相容れないものを妥協しないで追求した結果、作者が辿り着いた方法論が「見上げる」「見下ろす」「取り囲まれる」といった身体感覚に訴える立体表現と、立体における色彩表現だ。
立体面に施された色彩は確かに風景を想起させるが、同時に純粋な色彩立体に還元してしまうという2面性がある。「Land」は彫刻表現の知覚の複雑さと可能性を見せてくれる作品だ。

[彫刻学科教授 伊藤 誠]

 

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