赤嶺明美Akamine Akemi

作品写真:in our time
作品写真:in our time
作品写真:in our time
作品写真:in our time

in our time

ファッションショー|レースFashion show|Lace4min

異なったレース同士を貼り合わせ、コラージュした縫い目のない作品である。構想初期の軍服のイメージを保ちつつ、レースのみを使い、素材独特の重層的なテクスチャを生かした制作を試みた。また、レースは白と黒を基調に、レースの透明さや繊細さを表現するため、水色やピンクといった生地でグラデーションを作り、レース同士は完全に接着せず、こちらも繊細さを表現する目的で動く度に靡くようにつくられている。タイトルはアーネスト・ヘミングウェイの同名作からのオマージュであるが、「これからの時代を生きる新しい兵士」、「今この瞬間を生きる兵士たち」といった作品のコンセプト的意味合いも含めて名付けたものである。

赤嶺明美

市販されている化学繊維レース(下着用)そのものは、薄っぺらでチープに見えるものだが、柄を細かく分解し丁寧に重ね合わせ再構成したことで、オリジナリティーある表情豊かで高級感ある素材に変貌させたところを高く評価した。また、あえて素材のイメージとは真逆の衣服である海軍兵の制服をフォルムに当て込んだことで、過度になりがちなレース素材の衣服を程よく抑制させ、シンプルだが力強く、普遍性のある好感もてる作品に仕上がった。

空間演出デザイン学科教授 天野勝

伊藤平Ito Taira

作品写真:sense
作品写真:sense
作品写真:sense

sense

インスタレーション|ガラス、鉄、水、ピエゾ素子Installation art|Glass, iron, water, piezoelectric elementW5000 × D10000mm

ガラス板の裏面にマイクの役割を成す素子を張りつけ、水滴がガラスに落ちる打撃音を空間全体に響かせる。次の音が訪れるまでの余韻を感じ、鑑賞者の思考と空間の残響を共鳴させるインスタレーション。

伊藤平

素材が好きで強い関心があり、特に時間と共に風化し朽ちていく素材に惹かれ、木や金属やコンクリートや石に時間の経過を感じさせる何かを加えることで、空間のイメージを模索していた 1年半。卒業制作では、感覚に訴える空間をまさに好きなものを総動員させて、一体自分は何がしたいのか、できるのかと理想を掲げて悩み続けていた。「闇」と「光」の空間に、ガラス面に打つ微かな水滴音をデフォルメした残響音が響く。ここでは時間の経過をわずかなズレとして意識することになる。タイミングのズレ、感覚のズレ。「ズレ」が不思議な刺激となっている。

空間演出デザイン学科教授 五十嵐久枝

内藤愛・松永陽登Naito Megumi, Matsunaga Yoto

作品写真:Lost thing
作品写真:Lost thing
作品写真:Lost thing

Lost thing

インスタレーション|鉄、粘土、FRP樹脂、ダンボールInstallation art|Iron, clay, FRP resin, cardboardH3000 × W7000 × D7000mm

あらゆるものがコントロールされ、無駄や逸脱を認めない社会。そこでは、個性的な夢や想像力を持ち続けるのは難しく、人々の中からこぼれ落ちてなくなっていってしまう。
しかし、日常に疲れた時、なくしたはずのものが戻ってくることがある。今までどこに行っていたのだろう。
こことは別の世界で、日常の隙間を待ち続けていたのだろうか?

内藤愛・松永陽登

「所有者の不明な物や名前の書かれていない物、元の持ち主が分からないやっかいな工芸品、残されたままの書類棚、ただ単に誰のでも無い物などなど……何でも収納できる棚を用意してあります。」政府ガラクタ省、ダウンタウン、6328通り、高層灰色ビル 357番地B。
ここで出会った、未知の生き物と少年との出会いと別れを優しいタッチで描いた「 The Lost Thing(忘れ物)」は、絵本作家 Shaun Tan(ショーン・タン)の同名の絵本だが、松永と内藤の作り出した世界は、救済を未来に託そうとする想いを共に描いているが、荒れ狂うマシンの隙間にたたずむ少女の祈りが何とも切ない。

空間演出デザイン学科教授 小竹信節

杉野亜衣子・藤田晃子・八木陽介Sugino Aiko, Fujita Akiko, Yagi Yosuke

作品写真:TOKYO2020
作品写真:TOKYO2020

TOKYO2020

スチレンボード、塩ビ板、片面段ボール、角材、他Styrene board, vinyl chloride board, cardboard, wood, otherH2600 × W7500 × D10000mm

舞台は2020年開催予定のオリンピック。
東京五輪が決まった瞬間、誰しもが自分の 6年後を考えたと思います。
世界各国の人々が集まるスポーツの祭典をさらに盛り上げ、それと同時にこの周辺の活気が閉幕後も継続していくことまで考え、千駄ヶ谷駅周辺の土地全体をディレクションする計画をしていきました。
展示空間では考えなくとも、見ることでリアルに体感できる空間を構成しました。

杉野亜衣子・藤田晃子・八木陽介

緩やかに流れるランドスケープに溶け込むように計画された近未来の夢。 3人はあくまでもリアルなプログラムを設定し、それぞれの問題に対峙している。スカルプチャーとしてではなく、具体的な検証の痕跡として、この模型は存在している。
杉野、八木、藤田は来たる 2020年の東京オリンピックを、自らも生活者の視点を持ちマーケティングしながら、それぞれの夢が提案者として大胆に表現されていることに好感が持てる。

空間演出デザイン学科教授 片山正通

松川栞Matsukawa Shiori

作品写真:MOVE —Wonder Scale—

MOVE —Wonder Scale—

紙、スチレンボード、木材、遠近法Paper, styrene board, wood, perspective drawingH100 × W100 × D200mm × 8点

『小さな空間に大きな空間を』この言葉をコンセプトに、遠近法を取り入れた立体作品です。一言に遠近といっても空気や光、色など様々な要素があります。そうした技法を造形、塗装、照明演出を用いて、よりリアルな空間の動きを表現した作品です。

松川栞

学生時代の締め括りに思いきり時間をかけて自分と対峙してみたい。この卒制への姿勢は誰もがはじめにそう思う。しかしなかなかやれない。それはテーマに迷い惑わされて、決定が遅れ、モチーフを見つけ出せない。思考が揺れてしまう。そのうち時も揺れて自分を見失ってしまう。益々焦りはじめる。松川栞は違った。彼女は狂ぶれなかった。
「遠近法の総復習(ざらえ)をする」この一点に喰いついていった。
線遠近法、空気遠近法、重ね遠近法、色遠近法、上下遠近法…等々の理論と実践を通じて確認することであった。わずか 20cmの奥行のミニチュアにどれだけの深い空間が表現できるか。理論と作業と楽しみとが溶け合った作品を彼女は提出した。

空間演出デザイン学科教授 堀尾幸男

水野沙希子Mizuno Sakiko

作品写真:移動教室
作品写真:移動教室

移動教室travelling class

写真、映像、ダンボールPhoto, video, cardboardH2700 × W7000 × D5000mm

小学校の『いつもの教室』が『別の空間』になったら、刺激的な毎日が送れちゃう!そんな気持ちから、地元静岡県の小学校で計 3回のイベントを行いました。子どもたちは、ジャングルを探検したり、真っ暗な空間に思い思いの宇宙を描いたり、どの図鑑にも載っていない、海の生き物を作ったりしました。
イベントを通して、子どもたちが『いつもと違う空間』の住人になり、私がつくった空間が動き出したのです。

水野沙希子

卒制開始の合図の9月から12月の中旬までの3度にわたっての出身小学校との交渉・実践してつかんだ記録である。ここには水野が小学生を理解しようと苦悩する姿はなく、彼女自身が小学生に違いないと思える程の低い目線があり、それを子供達がのびのびと解決してゆく驚きの映像が記録されていた。「森」がテーマであり、「宇宙」そして「海」となり、子供達が水野の魔法にかかってしまって、どの子も自己主張表現の発露を見いだす。用意されたものは恐いはずのヘビであり、昆虫であり、冒険譚の宝物を発見するワクワクの過程であり、クレヨンを溶かして、(昔、道路に絵を劃いたあの石墨を)色石として、原始のような体裁で、線の色が変化してゆく楽しさを知る子供達。この見通しと計画準備たるや私には及びつかない発想と、行動力の表われであった。武蔵美で学びつかんだ美術教育を卒制というラスト授業に提案した水野沙希子。君の将来にこそ有意義であれ。

空間演出デザイン学科教授 堀尾幸男

山本雅文Yamamoto Masafumi

作品写真:私のふるさと、思い出の家。
作品写真:私のふるさと、思い出の家。

私のふるさと、思い出の家。My hometown, the house of recollections.

インスタレーション|家に使われていた木材、布、草花Installation art|Wood, cloth, .owerH2500 × W8000 × D4000mm

私のふるさとの兵庫県加古川市に、
今から102年前にできたおじいちゃんの家がある。
それが昨年、なくなることに決まった。

日常の片隅で、思い出の場所が消えようとしている。
だから、なんだか、心が落ち着かず、そわそわしていた。

私は改築現場を訪れて、はぎ取られた木材をかき集めだした。
集められるだけ集めたものを、段ボールに包み、ここに持って来た。

そして、それらの木を、つなぎ合わせはじめた。
木は、長いものから短いものまであり、様々なかたちをしている。
長い木材が足りなくなると、その代わりとして、短いもの同士をつないで使った。

ふるさとで、家を 100年以上支え続けた木は、場所とかたちを変えて、今、ここに建っている。

最後にもう一度だけ、あの家と、関わりたかった。
そして、本当はなくならないでほしかった‥‥

思い出の家がなくなった今、この場に建つ家に、だれかと、だれかが、訪ねて来る。

山本雅文

山本雅文が子供の頃から慣れ親しんだ祖父の家が、改築のため姿を変えることになった。物理的には変容だが、今までの気配や記憶は消滅する。その記憶の残る素材と気配をこの場に再構築した。場所を丁寧に読み取り、残された素材を丹念に繋ぎ合わせた。そして、ここには確かな気配が出来上がった。

空間演出デザイン学科教授 小泉誠