


誰もが共有している形を抽出して、多種多様な素材でできた、どこか親しみのあるキャラクターを描くことをコンセプトに、自分の身の回りにあるゴミを使ったキャラクターを描きました。
春から約5ヶ月の間、日常にある様々なゴミを拾ってスケッチし、そのゴミを使ったキャラクターを1体以上描いてきました。今回はその中で特に気にいったものをPhotoshopで着色しました。
[酒井智和]
彼の視線は、下方へ下方へ、あくまでも低い。前も上にも向かない。百日過ぎても変わらない。彼の一寸変わった日常生活は、スケッチブックの上に奇蹟を呼び込んでいた。彼に拾われた様々なモノたちは、私たちの生きた証しの記録として素描され、そのすぐ側にその「メタモールフォーゼ」とすぐわかるデッサン画が必ず描き添えられていた。捨てられても消えてなるものか!といったゴミの末期の声を聴いた彼は、クリーチャー・デザインの本質的主題「不死性」をそこに捉えていた。
[視覚伝達デザイン学科教授 三嶋典東]

暗号を知るために行ったリサーチの中で、暗号を辿ることはコミュニケーションを辿ることでもあると気が付いた。この作品は、数多くある暗号の中から、言語としての構造が特徴的なもの、歴史的なターニングポイントとなったものなど8 つの暗号を取り上げ、それぞれの構造を応用した立体や解説の本などを制作し、自分の表現へとつなげたものである。この作品によって、実は身近にある暗号に少しでも興味を持ってもらいたい。
[鈴木麻実]
鈴木さんは以前から興味のあった暗号をテーマに卒業制作をスタートし、まずは資料を集め約2500 年間にわたる年表を作った。(この暗号通史だけでも大変重要である)また暗号にはそれが作られた個々の社会的、文化的な背景と状況があり、それぞれ大変興味深いものである。彼女はそれを伝えると共に、重要と思われるいくつかの暗号から構造を取り出し、触りながら実感してもらえるものを作った。その中で彼女は「暗号=隠すこと」と「解き明かす=理解する」ことは逆説的な関係ながら、それ故に「変換」というコミュニケーションデザインにとって最も重要な普遍的課題があることに気付いた。手に触れて楽しみながら、かつ「伝わるとはどういうことか」を考えさせる素晴らしい作品となった。
[視覚伝達デザイン学科教授 寺山祐策]

キュビスムなどの近代芸術運動は20世紀の視覚的造形言語に直接影響した。
当時のデザイナーが影響を受けたように、芸術運動の表現を現代のポスターデザインに用いることで、新しい広告表現ができると考えた。
本作品はグラフィックデザインに大きな影響を与えてきた芸術運動の中から古典的な三つの主義を取り上げ、現代の必要性に合わせてどのように活用できるのかを示す実験である。近代芸術運動の表現を現代に活かす為の視覚言語、あるいは方法論の実験として広告表現を模索した。
[谷川瑛一]
20世紀初頭の芸術運動を丁寧に学ぶことによって、谷川君自身の表現形式を探ることに成功した興味深い作品である。デザインを学ぶ上でその先行例をトレースすることはとても大切なことなのだが、大方それらは作品を良く見る程度か知識として頭の中に蓄えることだけに終わっている。視覚記号はその形が複雑さを増すほどにメッセージは具体的となり明確さを増す。谷川君はこのプロセスを理解したうえで三つの芸術様式それぞれの表現形式を記号的に分解し、極力単純な造形言語を用いて再構成することを試みた。使用されたモチーフは日常的にありふれたものばかりだが、その表現結果はとてもユニークだ。歴史や先行例を学ぶことと、自身の表現への拘りを記号操作によって上手く絡めながら抜群の造形力で魅力あるポスターを作り上げた。このアプローチは視覚記号操作の学び方を示した好例と言える。
[視覚伝達デザイン学科教授 新島 実]

現代の印刷術を確立した人物― 出版事業ナンサッチ・プレスの設立者であるフランシス・メネルはこう称されるが、日本においてその存在は知られていない。だがメネルの活動は21世紀のデザインを築く上で欠かせないものであり、今日変革期にある書物やタイポグラフィを考える際、重要な意義をもつと私は確信する。本作品ではこれまで成されることのなかった、ナンサッチの歴史と、メネルによるタイポグラフィ哲学の記述を試みた。
[長尾周平]
長尾君は古書店で偶然美しい書物と出会い、それがナンサッチプレスのフランシス・メネルという人の手によって編集、デザインされたものだと知る。(まずはその眼力が素晴らしい!)しかし日本においてメネルに関する資料はほとんど存在しないのだ。今回の卒業制作は彼が独自に収集、調査し翻訳した文献、およびナンサッチプレスの動向をまとめたドキュメントである。その結果、メネルが同時代のモリソンやチヒョルトと並ぶタイポグラファー、出版人であったこと、19世紀末のプライベートプレス運動に対する20世紀の重要な批判的継承者であることがあきらかになった。
それはデジタルフォントも含めて今日私たちが書物をデザイン、出版することに大きな示唆を与える素晴らしい労作である。
[視覚伝達デザイン学科教授 寺山祐策]

絵本「クロのすいそう」を原作としたアニメーション作品。原作の意図や良さを汲んで、その表現の目的に合わせてアニメーションの技法を選択し、表現手法の混在・コラージュを1つのアニメーション作品の中でもっと自由に取り入れてみようという試み。
[中川真理子]
この作品の原作は、作者の友人が描いた絵本です。作者はその友人にインタビューをするなどして、絵本のエッセンスをしっかり捉え、アニメーション作品として生まれ変わらせることに成功しています。実写や切り抜き、手描きなどを組み合わせた手の込んだ技法も、アニメーションとしての独特の魅力を生み出しました。また、落ち着いた外連味のない演出により、情感の溢れる味わいのある作品となっています。
[視覚伝達デザイン学科教授 西本企良]

step-by-stepは知的障害を持つ子どものための遊具です。
パーツを組み替えることで、子どもの身体の大きさ、遊ぶ人数、発達段階に合わせて段階的に遊び方を変えることができます。
苦手を持つ子ども達にとって、一般的な玩具は一歩のハードルが高く「やりたい」と「できない」のジレンマから楽しく遊べない現状があります。そのため、一歩ずつ段階的に「できるを増やす」ことで楽しく遊べる遊具を提案しました。
[坂場麻里枝]
2年生で積み木をデザインした経験から「遊具」に興味を持ち続けていた坂場さんは、布のやわらかな手ざわりという素材の魅力から研究を始めた。
障害児のための布製遊具をつくる工房の作品を分析したり特別支援学校に通って取材をする中で、子どもの活動を段階的に広げる考え方を学び、これを活かしたコンセプトを固めていった。認識しやすい色彩、他との関わりがつくりにくい自閉症児でも複数で遊べる円形の形態と大きさ、手の力が弱い子どもにも掴みやすいブロックの重さと素材、何度もチャレンジする気持ちにさせるためのブロックが崩れ落ちる微妙な揺れのバランスなどを、繰り返し試作して完成させた。手先から身体全体での遊びまで、一人から数人での遊びまでがさまざまに展開する。実際に遊んでもらって「こんな遊具がほしかった!」という先生からの感想と、無心で遊ぶ子どもの姿が、この遊具に対する何よりの評価となった。
[視覚伝達デザイン学科教授 齋藤啓子]

体の中で唯一自分で見ることのできない背中は、飾らないありのままのその人が出る、経験や成長を背負ったもう一つの顔である、と私は思います。私が魅力的に感じるそうした「背中」が語る人の存在感を、私の線を通して伝えることが、この作品のコンセプトです。
モデルはこの現代日本に生きる様々な年齢・性別・職業の方々です。取材や撮影での対話を通して、描く対象のことをより知った上で、その人その人に合った「線のテーマ」を設け、様々な線で人びとの後ろ姿を描きました。
[山田直宜]
ペン&インクによる線の研究表現大作・八点シリーズ作品/Black&White。
人間の背中をモチーフに、線描表現の可能性を極めたかったと彼は言う。モデル依頼から被写体の取材と写真撮影、小品下図を経て等身大で本画制作。
農夫・アーティスト・若い母・老編集者・女子高生・少年・ボクサー・本人。
じぶんの身体でありながら誰も自身の目で直接視ることの不可能な背中という存在を、<線という記号>で視覚的な非在の表象に挑戦し、原画で発表。
[視覚伝達デザイン学科教授 三嶋典東]