2004年度 デザイン経営論 講義ノート



はじめに佐野寛林利昭佐藤康三原研哉深澤直人中島信也近藤康夫佐藤卓中西元男
略歴:
1935年 東京に生まれる
1958年 東京藝大工芸科卒 日本ビクター(株)入社
1960年 日本橋高島屋宣伝部
1965年 (株)モス・アドバタイジング設立
2002年 (株)SDS研究所所長 東京学芸大学教育学部教授、東京造形大学講師等を歴任。
現在、(株)SDS研究所所長、(株)モスデザイン研究所代表、目白大学教授。
特別講義第1講
21世紀的デザイン経営
はじめに―カエルから45年
  芸大を卒業したその年にコーワのマスコットカエルを作り、以降様々なデザインの仕事を行ってきた。日本ビクターに1年間勤めたのち退職し、半年間フリーで活動。その後、高島屋のアートディレクターとなった。コーワにはもともと就職が決まっていたところを辞退させてもらったという経緯があったため、以後も就職先の仕事と平行して広告やパッケージデザインの仕事をしてきた。
  当時は、「良いデザインをやろう」としか考えていなかった。1965年、30歳で独立し「モス・アドバタイジング」を設立。その後、様々な仕事を通して多くの友人たちと出会うことができた。

日本デザインの発展
  1960年、世界デザイン会議東京宣言(注1)では、デザインの大切さや次代に対する責任の重さについての宣言が高らかになされた。しかし、経済の発展につれて、後述するような広告化文明による「モノの豊かな生活をしよう」という風潮が高まっていって、宣言の内容は完全に忘れ去られてしまった。だが、再び今、「時代はこの宣言に帰ってくる」と私は考えている。
 戦後の高度経済成長時代にADC、JAAC、ACA、TCCなどが次々と設立され、デザイン団体黄金時代と呼ばれていた。そのころ、パリ五月革命やベトナム反戦運動をきっかけに世界中に広がった反体制的全共闘運動が日本にも起こり、学生たちが理想に燃えて立ち上がった。日宣美(日本宣伝美術会JAAC)の審査会場もヘルメット部隊に襲われた。全共闘側の「なぜ描くのか、何を目的としているのか」という問いに対して、日宣美は「悔しかったら良い作品を描いてみろ」の一点張り。全共闘側は日宣美のことを「資本の飾り職人」と呼んだ。会員であった私自身も日宣美の考え方に疑問を持ち、後の「佐野山寛太」という別人格が生まれたのだ。

(注1)世界デザイン会議東京宣言(1960年5月)
「…我々は来るべき時代が、人間の権威ある生活の確立のために、現代よりもいっそう強い人間の創造活動を必要としていることを確認し、我々デザイナーに課せられた、次の時代に対する責任の重大なることを自覚する。我々はこの東京会議によってともされた灯を消すことなく、次の時代に対する我々デザイナーの共同の責任を、手をたずさえてはたすことを誓う。…」


広告化文化の誕生
  デザイン宣言のあと、メディアは急激な発展を遂げた。3Cメディアと呼ばれるカラーテレビ、カラーポスター、カラーグラビアが出そろって、本格的な広告化文明が姿を現した。それまでの広告はデザイナーとスポンサーが直に仕事をする小さなビジネスだった。それが、多額の資金が動く巨大ビジネスへと変貌し、デザイナーやデザイン制作会社はみな広告代理店の下請けになった。たくさんの広告を出している広告主というだけで、「信頼のブランド」を築けるようになった。
  AIDMAという広告の法則(注2)があるが、これは部分的に変化することはあってもデザインビジネスの方向性と同じく今後も原則は変わることはないだろう。

大量消費大量生産システム
  生産技術の発展により生み出された、ワンウェイパッケージに象徴される使い捨ての時代は、「とにかくたくさん作れ」という風潮を作り上げ、大量生産、大量流通、大量消費、大量廃棄というシステムを巨大化していった。ここでは大衆ウケするもの、購買意欲を煽るものが良いとされ、本来良いものでもたくさん売れなければ悪いとされることになった。
  大量生産大量消費の時代は、同時に多数決でものを決める社会でもあった。例えばテレビの視聴率。毎日多数決を行い、番組編成時には多数派がゴールデンタイムに進出し、少数派は姿を消す。途中で打ち切りになるものすらある。必要悪である多数決が毎日毎晩行われているのだ。これが進めば少数派が完全に排除される世の中になることは間違いない。
  物事にはそれぞれプラスの面とマイナスの面がある。最初はプラスの面が大きくても、程度を超えるとマイナス面が増長する一方となる。例を挙げると、自動車の普及は人々の行動範囲を広げた一方で、狭い日本の土地に対して普及率が高すぎるため生活環境を破壊し、歩行者の安全を奪った。実際に私も散歩の楽しみを奪われてしまった。
  テレビには、孤独な老人の支えとなったり、多くの情報を得ることができるという利点がある。しかし次々に話題の切り替わるニュース番組は、人々に考える間を与えず、思考力を減退させていく。同じ映像を何十回も繰り返し流すことで、他の情報が排除され人々の認識から消えてしまうという問題もある。

(注2)AIDMAの法則
Attention
Interest
Desire
Memory
Action
の頭文字をとったもの。
Interest とDesireの間にSerchが加わることもある。


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2Q&A
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