デザインのかたちを読む
1978年、女性向け商品の機能分析を行った。世の中はまだ女は男に守られるべきだという時代だった。女の人に向けられたデザインにどういうリテラシー、つまり“デザインの形を読む”というメカニズムが横たわっているのか。それには、工業的事物や現象をつくろうとする送り手側・技術者側の意図(Technical
Object)と、モノを消費する受け手側の意図(Consuming Object)という概念があると考えた。前者の意識構造と後者の消費構造にパターンがあれば、それを見抜いて形を生み出すことがインダストリアルデザインの1つの考え方である。リテラシー(読み書きの技術)の構造と形がどうコーディングされていくかというすり合わせ作業をすることによって、まったく新しい技術的産物も、単に人々を脅かすものではなく、喜ばれて使われていくものになる。
インダストリアルデザインの世界
デザイン情報学科は、人々の欲しいものを代行して先に形のパフォーマンスを設計することができるようになるべき場なのだと思う。貧しかった時代、自分達が背負ったものを忘れる反作用のような形で旺盛にモノを消費していたのを思い出す。その中で“1つでも上のクラスのモノを手に入れたい”という欲求が生まれる。こうした状態で長年暮らすと、豊かになっていくプロセスに鍛えられて、モノがよくなり産業が育つ。そこでインダストリアルデザインは、人々の欲しいものを代行して先に形のパフォーマンスを設計することができるようになるから面白い。この構造を、「Informational
oriented added value(情報型付加価値構造)」と呼んでいる。デザインとはそれに対する情報解読補助装置である。デザインの世界は、常に古い世代と新しい世代がつくり上げたものとの新旧交代が起きていかざるを得ない。インダストリアルデザイナーは単なるKnowledge
Worker(勉強したことの内容を生かして給料をかせぐ)ではすまない。日々勉強したことを実践に生かしていかなければ、学校で習ったことだけでは役には立たない珍しい職種なのである。どのような新しい視点を見つけ、それをどのように構造化して実社会と結びつけるかが重要なのである。
商品企画とデザイン
デザイン開発にはある市場性に向けて開発するものと、新しい商品性を開発するものがある。この両方ができてインダストリアルデザイナーといえる。流通するデザインの相対的情報価値を相対化して、それを軸に商品性を開発する。商品を企画するとき、技術の要素がまったく同等になってくると、デザインの差でしか付加価値構造はつくり出せない。デザインをどう生活の中に生かしていくかというコーディングまでをデザインとすると、それ以外に付加価値構造の差別化は成り立たたない。このようなやり方でしか、人に受け入れられるものはつくりだせない。言葉で表現することに対し、視覚的言語領域の情報量は1万倍といわれている。ビジュアルランゲージを使うことによってAdded
Value(情報型付加価値構造)は1万倍ほどに広い領域での操作になる。
