ギャラリートーク GALLERY TALK
川崎広平×加藤義夫
加藤義夫:今回は川崎広平さんなのですが、僕ちょうど1年前にこのギャラリーでお会いして、いろいろお話を伺って、作品も手で持ってきて頂いて、拝見したのが初めてでした。今回ギャラリーできっちりプレゼンテーションされたものをみるのは初めてです。
まず川崎広平さんをご紹介します。このαMのリーフレットをみると、作品がすごくスケール感があって、大きな作品にみえてしまうところが非常に面白いと思っているんですが。実際に見てみるとそんな大きなものじゃなくて卓上のものもあったりしますけれども。大きなスケール感というものをイメージさせてくれるというのは非常に作品自体にスケール感が内包されているというか感じさせるものがあると思うのですが、川崎さん自身は作品の大きさとかをどのように考えますか?
川崎広平:大きさですか…。
加藤:小さいものでも大きく感じるように、大きく作れるタイプだと思うんですよ、ある意味。リーフレットにも書きましたけど都市彫刻とか眠らない都市彫刻と書きました。パブリックアートみたいなものも面白いんじゃないかな。なにしろ建築になってもそのまま100mの大きなビルディングになっても面白いなとイメージしていたりしてたんですよね。そういう意味ではスケール感というのは彫刻家にとってどんなイメージでしょうか?最初、自分でこの大きさを選ぶわけでしょ?この大きさぐらいで作ろうって。
川崎:それは割と技術的なこともあるんですけど。あと経済的なことももちろんあります。透明樹脂を使っているので、中をどうするのかということなんですけれども。そういう空間自体を作るという感じなんですけど…大きさ自体はそんなに…なるべく大きくという感じです。
加藤:限界の大きさですか?ある意味では。技術的な意味で。この新作の話をしましょう。この作品は名前なんてついてます?
川崎:ついてません。
加藤:まだついていない。できたてほやほや。これは蜂の巣のような感じがあるじゃないですか。気泡が入ってるんですけれども、最初見たときに、アクリルの気泡ですか?と先ほど聞いたときに水が入っているんですとおしゃってましたよね。
水の入っているということが初めて見てわかったんですよ。今までは写真とかだったので。単純にアクリルを抜くときに、上手く抜かないと気泡ができてくるのありますよね。あれをわざわざたくさん作って、屈折させて見せているのかなと思ったんです。上の穴から水を注入するということらしいんですけれども、こういう水を使う、光を使うとか透明度の高い素材を使うということはどういうイメージとか発想が川崎さんの中にあるのですか?
川崎:やっぱり中の構造じゃないですけれど、仕組みがあるような感じを見せたいということで。
加藤:それはどういう…彫刻といったら、ロダンじゃないですけど、表面というものをよく言うじゃないですか。外っかわとか。彫刻は結局は中のものじゃない、外に出ている表面が彫刻であってという話ですけれども。物量感とかいろいろ動きとかあるんですけれど、中を見せたいという発想は逆に非常に面白いですよね。今の近代の現代彫刻の概念を逸脱している(笑)。
川崎:(笑)
加藤:みんな、ほとんど、彫刻ブロンズとか作っている人は外、空間の話でじゃないかという…特に空間の話かもしれませんが。外づらを見せたいということなんですよ。
中を見せたいというように感じたのは、いつ頃ですか。大学のときに普通に塑像を作ってたんですか。いつ頃から、このような発想に?中を見せたい彫刻というか。表面じゃなくて。
川崎:やっぱり、仕事をやるようになってからです。そのために樹脂を使っているんです。
加藤:透明度もそうなんですけど、中を見せたい発想を聞きたいんですけど。
そこを答えて頂きたいんですが、なんなんですか?(笑)
川崎:なんなんですかね(笑)
加藤:現代美術の人たちの考え方、いわゆる、コンセプトを作ってから作品を制作するか、作品を作ってからコンセプトを考えるかどちらですか?そういう言葉は持ち合わせてない?
川崎:視覚的なもので作っているので…形に何か意味を持たせるのではなくて、ちょっと自分で見たいものをと思って作っていますね。
加藤:透明度と光を入れてますよね。光入れている彫刻もそんなに珍しくはないんですけれども、そんなにあるわけじゃなくって、いわゆる光るようなものってそうはないと思うんですけど、光に関してのこだわりとか透明度に対してのこだわりって何に起因するんですか?
川崎:それは中を見せたい…
加藤:中を見せたい、なぜ中を見せたいかってことですよ。
川崎:いや、それは考えたことないですね。もうずっと考えてるんですけど。
加藤:よくわからない?わかっているけども、言葉にしにくいってことですか?
川崎:そうですね。だいたい備品はどんどん組み立てていくみたいな感じで作るんです。外側はあんまり最初は考えてないんですけど。
加藤:いわゆる内部から、細部から作って組み立てていくとこういう形になっていくという…。
川崎:ええ、まあ結果的にそうですね。いきあたりばったりみたいな。
加藤:結構、僕、最初に、すごく綿密に計算された形のものとか、こういう案内状のDMにしてるものとか、すごく考えてる人だと思うじゃないですか。自主的に。明らかに微分積分、すぐできますみたいな感じがしたんだけど、会って話すと、すごい意外だったね。
会場:(笑)
加藤:川崎さんのこのギャップが非常に面白い。逆に言うとね。コンセプトばっかり考えてる作品が多いので、そうではなくても、見せるという部分では非常に美しい作品だと思うんですよ。光るという部分も面白いと思って。それでですねリーフレットの原稿書くとき困ったんですが、勝手に書いたんですよ、今回。独断と偏見で。読みました?
川崎:読みました。
加藤:どういうことを書いてるかというと、読んで頂いたらわかるんですけれど、人類が光を手にしてからの歴史というものを書きまして。あとは光エネルギーと生命体の関係を書いて、パブリックアートにしたら結構面白いかなというようなイメージを抱かせる作品であるということで書いてあるんですけれども、タイトル、内を見せたい彫刻って書いた方がよかったかな(笑)。それで、全部いわゆる部品で外側を考えていって作っているんですか。
川崎:外側というのは最終的に…決まってきてしまうというか。まあ技術的に。
加藤:そうすると面白いのは、彫刻家は立体作品の外側ばっかり考えているんですよね。外側に悩んでるわけですよ。そう思うと、かなりシステム的にというか面白いですよね。内を考えて組み合わせていくと、勝手に外ができるという…。
川崎:勝手にじゃないですけど。見せたいところは作って、それに後はどうあわせるかみたいな感じなんです。
加藤:絵描きの人でも、全体的に仕上げる人と、部分を描いて全体にそれを広げていくアンリ・ルソーみたいな人がいるんですよ。端から書いてきて完成させて全体作っていく、そういうのアンリ・ルソータイプっていうんですよ。かなりユニークじゃないんですか。友達に同級生に、彫刻作ってる人もいたでしょ。言われなかった?川崎、変わってるなぁとか、何考えてる?みたいな。
川崎:よくやるなぁってのは言われますけど。面倒臭いことを。自分は面倒臭いとは思ってないですけど。細かい作業なので、修行でもしてんのかと言われます。
加藤:このスタイルの作品は何年前から作っていますか?
川崎:3年ぐらい前から。
加藤:これらはどういう思いで作ったんですか?
川崎:ひとつは、今回は生き物っていうことなので、それを意識しました。でも、あんまりわからないみたいですけど。(笑)
加藤:その生き物っていうのは生命体というものをイメージっていうこと?
川崎:ええ、一応イメージなんですけれども。とにかく複雑な、部品、部品じゃないですけれども構造の集まりみたいなものです。細胞というか原子というか。数が集まって形になっている。そして、よくわからない機能がある。というようなイメージがあります。
加藤:今、背後に2本でてるじゃないですか。あれはコードでしょ?
川崎:ええ配線です。
加藤:僕、これ面白いと思ったのは、普通というか大体これ床配線になっているけれども、床でとめるじゃないですか。この、空中に浮くようにして、そんなふうに配線をするというのはそこまで作品?どう考えたらいいんですか。これ、面白いと思うんですよ。だいたい床に、這わせたりするじゃないですか。これはいかにも、エネルギーが流れでてるような、強調しているような。ライトは普通のライトですか?
川崎:普通の蛍光灯ですね。
加藤:割と安易に取り換えができますよね。水を抜くと全然違うイメージがありますね。一年前に手持ちで作品を持ってきて頂いたときにはまだ水が入ってなかったですよね。
川崎:その時はこういうことはやっていなかったですね。
加藤:そうですね。僕、水にふれて書いていることがないんで、失敗したなと思って。
ここきて、樹脂が泡ぶくいっていると絶対思ってて、水と聞いて、そういうのは結構いいと思いますよ。生命体という意味での部分では記号というか、酸素が発生しているような感じ、海の中で生物が生まれる瞬間のような。そういう話も書いているんですけど、そういうところの雰囲気というか、海にも見えるしね、細胞というか昆虫も全部そうだけど、機械的な部品の一部に近いような形に実際にあるしね。そういう意味ではそこで思ったのは、生命体に近いような彫刻だと思ったんですけどね。で、DMになっているのは、どうなんですか?それはどういう思いで作られたのですか。
川崎:これは視覚的なもので。どう見えるかなと思って作ってみたんですけど。
加藤:視覚的なものっていう川崎さん独特の言い方の、視覚的は何を意味するの?
川崎:見た目に意味があるという訳ではないんですけど。
加藤:美意識、美学として絶対この形、美しいっていうもの?
川崎:いや、それも内部の話なんですけど。
加藤:ではこの近くにある作品とか何故六角形にしようと思ったんですか。
川崎:意味はないですよ。効率がいい形というか組み立てられる形っていうんですかね。
加藤:効率がいい形っていいじゃないですか。組み立てて広げられるような形は六角形だと思われるんですね。
川崎:ええ、繋げられる…四角か六角形ということになりまして。
加藤:では、自分のものを作るときの動機とかモチベーションというのはどこに持ってくるんですか?
川崎:モチベーションですか?モチベーションは別に考えないですね。いや、ちょっと想像してみて見え方が面白いかなと思ったら、そういう感じですよね。試して作ることはないんですけど。まだ決定してないんで。その作り始める時点では。
加藤:でも、ああいう形など考えつくされた形を作ったわけですよね。
川崎:そんなことないですよ。部品を組んでいって。
加藤:レゴみたいですね。レゴランプ、レゴ彫刻…。レゴ世代ですか。
川崎:そうだと思いますね。
加藤:レゴと何らかの影響関係あるようなことは?レゴとずいぶん遊んでいた?
川崎:そうかもしれないですね。
加藤:ちょっと解明されましたね。レゴはチップみたいなもので組み合わせていくといろんな形になったり違う形が作れますよね。僕の非常に好きな作品ではあるんですよ。いいなと思うし、なかなかきっちり作られているんで非常にいい作家だとは思うんですけども。みんな考え方がどっからきているかっていうのは神秘的。でも今日はすごい成果で、40分間でレゴ体験があるということで、内から作るという2つの秘密が川崎さんの言葉としてでてきた。内から作るというのは僕初めて聞いた。レゴというのは?
川崎:レゴというのはあんまり…。
加藤:レゴは共鳴してほしいな。
川崎:でも秩序ある形を映しているんです。
加藤:秩序ある、計算された、理知的なフォルム、形態と清潔感あふれるというか光を作るっていう人は計算された考え方をも持って作るって勝手に決めたら悪いですよね。
川崎:いや悪くはないですけど、そうとは限らない…。
加藤:そうとは限らないということですよね。非常に勉強になりました。僕が聞きたかったことは、今お話の中で伺ってきました。外を作るという概念で近現代彫刻を彼は知ってか知らずか、内を見せたい、視覚的なといってどんどん作っていく、それでパーツを組み合わせることによって出来上がるっていう方法論で立体を作ってきたと思うんです。これは生命が細胞分裂して集め合わすことによってひとつの美しい自然の形が出来るようなことに似てるんじゃないかと。最も現象的で原子的な部分の成り立ちの単体の細胞というか核になるようなもの、それは原子かもしれないですけれど、そういうものがそういうことによって自然な美しい形、神から与えられた形に出来上がっていったと考えられます。最後に川崎さん、ご自分の作品は一言で言うと、どういうものと思ってますか。見た人に何を思って欲しいですか?
川崎:難しいですね。あんまり考えはありませんね。
加藤:今回新しい試みは水を注入されたってことですけれども、これからどういう展開になるかっていうのはまだわからないですかね。
川崎:そうですね。
加藤:色がいろいろ違ってきているのは樹脂の色なのか水なのか、どうなんですか。
川崎:樹脂に色を付けたんですけど、このへんはやめました。
加藤:逆に水に色を付けたら簡単にできますよね。いろんな色が同じような作品で色違いができて展開が楽しいなと思いました。