筧遥香

造形学部デザイン情報学科 2014年3月卒業 エディンバラ大学 カレッジオブアート デザイン&デジタルメディアコース修士課程 2015年9月入学

エディンバラについて

エディンバラはイギリス北部スコットランドの首都です。お城を中心に古い町並みの広がる様は、いわゆる日本人の想像するヨーロッパの景色です。ハリーポッターの書かれた街としても有名で、作者のJ.K.ローリングがキャラクターの名前を取ったお墓なんかもあります。この美しい景観に惚れ込み、いつかこの街で暮らしたいと旅行した際に強く思い、大学院進学のチャンスがあったのでこのエディンバラ大学に出願しました。スコットランドは英語の訛りが強いことで有名ですが、エディンバラは国際都市で訛りもほかの地域に比べるとマイルドで、方言などもありますが日常的なコミュニケーションで困ることはありません。大学は3つありますが、私の通うエディンバラ大学は一番規模の大きい大学で、街の中心街に校舎があるので存在感もあり学生都市という雰囲気です。

カルトンヒルから見えるエディンバラ市街
カルトンヒルから見えるエディンバラ市街

エディンバラ大学について

16世紀から始まった歴史ある大学で、現在では35,000人が学ぶ大規模な大学です。世界の大学ランキングやイギリス国内のランキングでも常に上位にあります。私の所属する芸術学部はCollage of Artと呼ばれ、18世紀に創設されてから2011年にエディンバラ大学に統合されました。イギリスでは学部ごとに違う学校であるという感覚があります。歴史的にもそれぞれの学校が統合して大学となったという経緯があるので、イギリスの古い大学だとよくある形ですが、校舎は街の各所に点在しています。College of Artの校舎は有名なGrass Marketという広場のそばにある赤い大きな建物で、エディンバラ城のすぐ後ろにあります。古い校舎はどれも荘厳で、講義や行事で普段使わない校舎へ行く時は、その美しさに感銘を受け、このような歴史ある大学で勉強する機会を持てたことへの感謝が一層深まります。

Design and Digital Mediaコースについて

私の通うDesign and Digital MediaコースはCollege of Artのメイン校舎ではなく、少し離れたところのある音楽科と同じ建物にあります。講義は週3回、火曜日と木曜日だけなので、金曜から月曜までは自主学習です。水曜日はチュートリアルという補講のような、自由参加のワークショップがあります。課題が各学期各クラスに2つずつあり、それぞれ連続して締切があるので、学期の中間と学期末は特に忙しくなります。武蔵野美術大学では朝から夕方まで学校にいて講義を聞いてという形でしたが、こちらでは授業の時間がとても少なく、小課題やビデオ、本など授業外の学習がありながらも、基本的には自主的な学習を求められます。クラス一つにつき200時間勉強・制作にあてるのが目安と言われていて、実際それ以上に時間を費やさないと終わらないような課題がでます。しかしやはり大学院ということで学生のレベルも高く、モチベーションは高く保つことができます。また総合大学なので他の学部と共用の施設も沢山あり、特にメインの図書館では張りつめた雰囲気が感じられ勉強に集中でき、学期末は椅子を確保するのも大変ですが特に公園側の勉強スペースは景色も綺麗でお気に入りの場所です。学生の構成は今年特にアジア人が多いそうですが、日本人は私一人です。とにかく学生の自主性が日本よりも重視されていて、授業で教えてもらう内容より課題で要求されるレベルがとても高く感じます。また、授業では出席に重点を置いておらず、後からビデオで受け直すこともできます。日本での教育に比べると自由度が高く、学習の機会は沢山ありますが、基本的には各自責任を持って学んでいかなくてはいけない、というところです。卒業制作での教授とのミーティングも日本では毎週何時というように決まっていましたが、こちらでは各自自由にコンタクトを取り会うという形になっているので計画性も必要になります。スコットランドでは基本修士課程は1年間で、イングランドやその他ヨーロッパの国など二年間の場合は2学期制で長い夏休みがありますが、スコットランドの修士課程では夏も授業があるので、2年コースの1年半分を1年で学ぶような形です。

授業について

1学期・2学期に授業が3つずつあり、3学期は卒業制作です。1学期は1つが選択制、2学期は2つが選択制でした。私が取った授業は、1学期がDigital Design(グラフィック・web系のコース)、Culture and Digital Media、 3D and Animated、2学期がGame Design Studio、Digital Play Ground(デジタルアートの授業)、Dynamic Web Designです。武蔵野美術大学で所属していたデザイン情報学科と共通することも多く、よりデジタルメディアに特化していますが学んだことを生かし、より発展した制作を行う機会が沢山あります。
講義ではゲストの先生がいらっしゃることもあれば、学外へ出かけることもあります。Digital Designの授業ではWhite Spaceというスコットランドで有名なデザイン事務所へ行って話を聞いたり、Digital Play GroundではスウェーデンからパブリックアーティストのErik Krikortzさんが来て世界規模の大きなプロジェクトを紹介して下さったり、Dynamic Web DesignではWebデザイナーの方や、また大学のネットワークセキュリティエンジニアの方がWebセキュリティについて講義されたりしました。特に国をも跨いで先生がいらっしゃるなどして様々なことを学べるのは多くの国の近接するヨーロッパならではの経験だと思います。

Media and Cultureの授業 この日の授業テーマは物語
Media and Cultureの授業 この日の授業テーマは物語

大学院進学まで

他の年度の留学生の方も多く経験しているように、私も語学の学習に時間がかかり、卒業後そのまま入学はできませんでした。そこで、エディンバラ大学に行きたいと元々思っていたので、その付属の語学学校で半年勉強しました。実際に生活の中で英語を使い、色々な国のクラスメイトを交え英語について深く学ぶと、細かなニュアンスや言語的歴史を踏まえての言葉の意味などの独学では到達できないレベルまで学ぶことができました。最終的にはこのような英語を集中して学ぶ機会を得ることができて良かったと思っています。私のコースでは要求されたIELTSのスコアは6.5でしたが入学3か月前にそのスコアを取りそこからさらに勉強を続け、結局入学までに7.5を取りました。講義の聴講、プレゼンテーションをする際やレポートを書く際など、英語力が不十分だと学習においても不利になるだけでなく、普段の生活の中でもできることがどんどん限られているので、要求されるスコアを目指すだけでなく、留学ぎりぎりまで英語の勉強をして損はないと思います。

大学以外の生活

エディンバラはロンドンほど大きな都市ではありませんが、遊びに行くところもたくさんあります。私はこのエディンバラの街の色々な面が一つになったところが好きです。どこでも絵になる旧市街、整備された大きな公園や、ビーチ、ハイキングに行ける丘、無料で入れる美術館や博物館、お店の並ぶ大通りやショッピングモールなど都会と自然が混ざり合っていて、何度街を歩いても飽きません。週末はパブに行ったり、ホームパーティをしたり、世界中からの友達もできて留学中しかできない経験を沢山しています。またスコットランドでは独立問題が一昨年話題になりましたが、日本人にはなかなか分かりづらい国のアイデンティティという問題を身近に感じて、デザインにおいてもスコットランドらしさということを考え、国、文化、人種、伝統とは何か、大変多くのことを学びました。スコットランドに限ったことでなく、留学では様々なことを学ぶ機会があります。勉強のみならばオンラインや本などでもできますが、やはり留学という形で海外へ来て実際にそこで暮らし、様々な文化に触れてそれを理解することは、学生としてだけでなく人としても成長することに繋がることだと強く感じています。勉強の他にこの留学生活で自分について一番変わったことと言えば多様性への寛容度です。広い意味での文化だけでなく、個人の人生における様々な生活の形、学習のかたち、宗教、家族、言語や食べ物など多様性という日本にはないものを学ぶ機会を持つことは人生においての大きな財産になると思います。将来についての展望も、現在、イギリスでは留学生が卒業後に直接就職することが難しくなっていますが、日本で就職するにしろヨーロッパに残るにしろ、様々な選択肢があることをこの留学生活で学びました。今後もこの経験を生かし、様々な人生の可能性を考慮しながら制作活動に励んでいきたいと思っています。このような充実した留学生活を80周年記念海外留学研究奨励奨学金という形で支援して下さった武蔵野美術大学に大変感謝しています。今後夏学期で卒業制作を進めていきますので、武蔵野美術大学卒業生の代表として残りの留学期間を有意義なものにできるよう今後も努力していきたいと思います。

Media and Cultureの授業 この日の授業テーマは物語
プリンシスガーデンとその向こうのニューカレッジ(二つの塔が見える建物)