創造力を飛翔させる翼
ペア・クラーセン

美しい優れたおもちゃを子どもたちに
クルト・ネフ

創造力を飛翔させる翼
ペア・クラーセン
 ペア・クラーセン(PEER CLAHSEN 1938〜)による《キュービックス》は、1辺が10センチの立方体の稜線をX軸、Y軸、Z軸と追い一巡する独自なかたちが、大1個、中2個、小3個と段階的に小さくなり、また、最小単位としての1辺が2.5センチ立方体が4個、合計10個に分割されている。これらは、解体されて、垂直に重ねられたり、水平に連ねられたりするが、とりわけ、立方体の軸線上に積み重ねられることが大きな特徴である。
 《キュービックス》に対して、バックミンスター・フラーによる多彩な構造で演出する球面のドームを思い起こす。正三角形による正4面体、正8面体、正20面体、立方体、正5角形による正12面体の5つのみの存在を証明したのはプラトン派の人々だといわれている。プラトンの立体は、球と深く関係がある。各頂点で接する外接球、各辺の中点で接する辺内接球、それと各面で接する面内接球の三つの球を全ての立体がもっている。13あるアルキメデスの立体は、高度な秩序体系が支配しており、準多面体ともいい、13個に限り存在することが証明されている。アルキメデスの立体をつくる場合、面の全てが合同でないが、辺の長さが全て等しいということである。頂点で接する外接球と辺で接する辺内接球の二つをもっている。
 『古代ギリシャの人々にとって、プラトンの立体は、太陽や星の運行や可視世界を認識する鍵として創造力を飛翔させる翼であった。』*ペア・クラーセンがデザインしたプラトンの立体―《キュービックス》における数理的な分割によるかたちの変容は、宇宙を操作する遊びとも言えるのではないか。
 また、《キュービックス》の存在は、ブルーノ・ムナーリの正方形や円を通じてさまざまな時代の異なる文化のなかでどのような造形を生みだしたかを考察した絵本を思い起こさせる。このなかに、日本の折り紙が紹介されている。一枚の正方形から折鶴を私達の誰もが折ることができる。優美な折り鶴の背後に正方形を意識し、分割された《キュービックス》の部材による構成の背後に立方体をイメージすることができる。かたちの規範と自由な造形の対比、このかたちのダブルイメージこそが重要な造形の鍵である。さらにこうした造形を成立させる歴史的な経緯や、ひびきあうかたちの視覚化に対する工夫によってより複雑なイメージが生みだされるであろう。『常識が認めることのできない遊戯の卓越した本質性――なぜなら、常識にとって遊戯はたんに真面目でないもの、真正でないもの、非現実性、怠惰を意味するのだから――それを、偉大な哲学はつねに正しく認識していた。』**このような言葉にふさわしい遊具のデザインは、ペア・クラーセンによる《キュービックス》において初めてその存在を認めることができるのだといえるのではないだろうか。
及部克人(本学視覚伝達デザイン学科教授)

*‘かたちのはじまり’井出建 『遊びの計画』 遊計画刊 1978
**『遊戯の存在論:幸福のオアシス』オイゲン・フィンク せりか書房 1976