
平成22年度入学式リーフレット

日時:2010年4月5日 10:00~
場所:武蔵野美術大学 体育館アリーナ
小平市小川町1-736
tel:042-342-6027


平成22年度の入学式を挙行するに当たり、武蔵野美術大学全教職員ならびに在学生一同と共に、お祝いと歓迎の辞を申し述べます。
新入生の皆さん入学おめでとう。また、ご来席のご父兄、ご家族の皆様、今日の良き日をお迎えになってさぞやお慶びのことと拝察いたします。誠におめでとうございます。
本日、造形学部、大学院修士課程、博士課程を含め、1159名の若人を迎えることが出来ました。本学の入試は、センター試験を含め、一般入試、公募制推薦など多様な入学試験を行っております。
少子化問題や、リーマンショックによる不況の後遺症が、未だに尾を引いている社会状況の下でも、本学の入試状況受験倍率は最高倍率12.2倍、平均倍率5倍であり、センター方式においては、最高倍率22倍を越えておりました。学科により多少、差を生じておりますが、かなりの難関でありました。本日の皆さんは、この入学試験を突破して合格を果たしました。どうかこのことに自信と誇りを持って、今日から始まる学生生活において、実りある豊かなものにして欲しいと強く願っております。

さてここで、新入生の皆さんに本学の沿革を少し伝えておきたいと思います。本学の簡単な歴史です。
武蔵野美術大学は、1929年(昭和4年)米国ウォール街の株暴落に始まる世界恐慌の最中、現在の武蔵野市吉祥寺に設立された帝国美術学校に始まります。厳しい社会状況の下、当時の保守的、形式的な官学美術教育に異を唱え、在野精神を軸に【教養ある美術家養成】と【真に人間的自由に達する美術教育】を理念として、清新な想像力を持った美術家、デザイナーの養成に努めました。敗戦による激しい社会変化を乗り越え、武蔵野美術大学として、発展してまいりました。
1962年(昭和37年)には、小平市小川のこの地に、施設の大半を移転しまして、以後、美術系の総合大学として今日に到っております。
造形教育ならびに研究活動をさらに発展させるために、世に誇れる教育組織と、設備の充実を図っております。昨年創立80周年を迎え、様々な記念事業を多くの校友、ご父兄、関係者のお力添えにより、予定通り完了の運びになっております。記念事業の一端である教育設備関係については、皆さんもお気づきでしょうか、キャンパス西側に桜の花に囲まれているガラスに覆われた美しい建物があります。先月末に落成した新図書館であります。美術系大学では群を抜く蔵書を有し、併設される造形研究センターと共に『美と知』の情報拠点として、皆さんの活用を願っております。5月中旬には利用できましょう。
また、美術資料図書館としての旧棟は、来年3月完成を目処に美術館としての改修に入ります。偶然の巡り合わせでしょうか、新入生にとりましては、誠にタイミングが良い入学だと思います。良好なる『場』の提供により、皆さんの学生生活の更なる充実に努めたいと思います。
さて、皆さんの大学生活のスタートに当たり、学長として望みたいのは、まず、自ら求め、能動的に意欲を持って、実技や学習に立ち向かって欲しいと思います。
1年生にとり自発的能動性においては、若干荷が重いかと察します。しかし、皆さんは、卒業後の未来が必ずしも約束されてはいない、まさに真の実力を問われる、創造の世界に自ら飛び込んできたのです。正解を合理的に、最速で求めようとする社会とは対峙する、創造の領域を選択したのです。頭脳だけでなく、五感をフルに活動させ、筋肉も参加させる造形の世界をです。皆さんは間違いなく、私が申し上げた望みを実現出来得る背景を既に具えているのです。しかし、この実現にはかなり厳しい覚悟が必要と思います。
日々続けられる創造への挑戦は、全てに持続性を伴った長い時間を必要とします。そのことにより徐々に己の独自性を見つけ出し、作り出していくのです。洪水の如く溢れるような多量の情報の中、事物の真の姿を見つけ出す確かな判断力を持つことも、そのことを抜きにしては考えられません。これらのことを思うにつけ、ややもすると成果のみが重要視されるこの世の中において「創造の世界」「美の世界」を選択した皆さんに大きな感動を覚えます。
先程申し上げましたように、造形の世界は基本的には、地味な作業を持続して、造形の土台を作るのが学生時代の勉強だと思います。良き友を得、良き師に出逢い、二度とない青春を、悔いの残らぬよう満喫してください。
ご父兄の皆様に申し上げます。
入学を果たされたとはいえ、まだまだ先行きのことに対してご心配があろうかと存じます。大学としては、それぞれの皆さんの志を果たせる為に、就職、海外留学を含め出来る限りの力添えをしたいと思っております。
最後に各国からの留学生諸君、貴方達が思い描く留学生活を実現できるように、大学も協力を惜しみません。武蔵野美大の留学生活を充実したものにしてください。
ご清聴ありがとうございました。


皆さん、こんにちは!
そして何よりも、本日は我が武蔵野美術大学にご入学おめでとうございます!
またご出席くださっているお父様お母様はじめご家族の皆さま、心からお祝い申し上げます。
最初に、この大学の近況について一言。ご承知のとおり、昨年、大学は創立80周年を無事終了しました。あらためて皆様のご支援のほど感謝しております。
また先月末、ようやく新図書館を、新入学の皆さんを歓迎する形で完成でき、5月中旬にはオープンいたします。引き続き旧美術資料図書館の改築改装工事に入り、一年後には新しい美術館・図書館の誕生を予定しております。

さて、先日の皆さんの先輩たちの卒業式では、私は「この大学で学んだ美術という宝物に自信を持って、社会に飛び込んでください」とエールを贈りました。その先輩たちに代わり皆さんが、今、文字どおりこの美術への入口に立たれたわけです。これから始まる大学生活の日々のご参考までに、我が大学の教育目標を中心に、私の思いの一端をお話します。
武蔵野美術の教育目標ですが、これは、建学の理念として大学文書に明確に謳われています。「教養を有する美術家」を養成し「真に人間的自由に達するような美術教育への願い」にあります。「教養」と「真の人間的自由」、皆さんもこの二つの言葉は折に触れ思い出されることになるでしょう。我が大学の教養科目の多様性は注目に値します。人間存在から宇宙の果てまで、特定の科目をここで簡単にとりあげられないほどの充実ぶりです。大学としても今後さらに質的向上に努力していきますので、出来るだけ多くの科目に、夢を大きく挑戦して下さい。
次に「青年よ、もっともっと海外に出て学べ」という提言です。日本の外には違った文化・文明があり、違った人間と生活があります。海外を知るためには、やはり言葉が必要です。英語はもちろんですが、お隣の国の言葉、韓国語・中国語も含んで、3つでも4つでもとにかくチャレンジしてください。語学は脳が柔らかいうちに種をまくことです。友人はなるべく多く国境を越えて作ってください。
最後にもうひとつ。真の人間的自由と美術についてです。今、世界の中で日本に期待される役割の方向が着実に変わりつつあるのではないかと思います。これまでの「ものづくり競争」への参加から、他の国とは異なる「人間的自由な発想からの新しいもの創り」へのチャレンジが期待されているようです。美術の分野がその大切なひとつの舞台になるのではないかとの思いです。日本には日本独自の文化・美術があり、また世界の様々な文化・美術が自由に往来し交流する「場」でもあります。日本から発信する様々なデザイン・映像・アニメなどに世界の注目が集まっています。美術はまた、環境・高齢化など日本をはじめ世界の国々が共通して抱える課題に多くの接点が考えられます。
人間・自由・教養そして美術教育―80年前の大先輩が残された言葉、生き生きと胸に迫ります。
では、楽しくそして実り多き大学生活を存分に! 祈ります。


新入学生の皆さん、ご入学おめでとうございます。僭越ながら教員を代表いたしまして心よりお祝い申し上げます。
さて高いところから失礼いたしています。でも実際どのくらい高いのでしょうか。この演出の中の決め手になる高さだとは思いますが。今日はこの「測る」ということから始めますが、こんな時私は自分の身体を基準にします。たとえば私の一歩は50㎝、2歩で1m。歩幅の他にも 人差し指の指先から第3関節までだいたい10㎝、親指から小指まで伸ばせばだいたい20㎝、30㎝はというと、私はこのA4を斜に折った対角線でおおよそ測っています。なんでも道具になるし、測る事ができます。寸法だけではありません。叩いて音を聞いたり、においを嗅いだりすることもあります。
なぜこんな細かい話しをしたのかというと、みなさんはこれから美術やデザインを専門とするわけです。ということは例えば「美しい」というたいへん感覚的なものを扱いますが、実はそれは結構測ることができることができるものだと思っています。専門を追求することは独特に様々な方法や「身体をはった物差し」を持つことになります。ただ、問題は、重要なことは、その測り方あるいは基準という考え方がものすごく様々だということ、「物差し」がたくさんあるということです。この「たくさんある」ということとのつきあい方は、意外に切実に創造性に絡んできます。
大学はみなさんの実力を評価する機関という印象があるかもしれませんが、これはあまり重要だとはおもいません。カリキュラムがあって、課題があって、講評があって、一見そう見えるかもしれませんが、そうではなく、むしろ大学はまったく次元の違う「物差し」をつきあわせてみる所。自分の物差しを鍛えるところが重要なのではないでしょうか。そのための環境として、このムサビはとても「自由だ」と思います。

さて、この「物差しを鍛える」のに意外とおすすめする方法があります。それは 敢えて言えば積極的に勘違いを楽しんでみる事です。
「慣れ親しんだ基準」を他のものとつきあわせたり、比較したりするのは、ほんの少し勇気がいるように思います。人の考え方に興味はなかなか持てないものです。しかし この「物差し」は「表現」というとても魅力的な「かたち」ともなります。それがどういう意味かなどは後からわかればよいのではないでしょうか。誤解を恐れずに思い切り勝手な解釈をして楽しんでみることから始めるのはどうでしょうか。それは間違った時に、ほんのすこし苦い感覚を伴うと思います。しかしこの「勘違い」を自分の中でふくらませる事は、意外に新しい表現に結びついたり、閉塞した状況を突破するきっかけになり得るのではないでしょうか。
皆さんがこの新しい環境に期待するように、私たちもみなさんの中から見たこともない新しいビジョンと対面出来ることを期待しています。
ご清聴ありがとうございました。
本日はほんとうにおめでとうございます。


平成22年度 新入生の皆さん、ご入学おめでとうございます。
保護者の皆様にも、心よりお祝いを申し上げます。
ただ今ご紹介に預かりました、俳優の中村靖日と申します。
さて、今、皆さんの中には『えっ…なぜ俳優さん?』と不思議に思った方も多いことでしょう。
そうです、ここ武蔵野美術大学には俳優を養成するための学部や学科は存在しません。
たしかに不思議に思われるかもしれませんが、これは武蔵野美術大学の自由な校風の表れ…と言えるでしょう。
19年前の4月、皆さんと同じように、私も新入生として、この体育館アリーナで入学式に参列しました。
あの日、ここにいた18歳の私は、自分が近い将来、俳優になっているなんてまったく想像もしていませんでした。ただ、なにかしら『表現』をする人間、表現者になりたい…そう思っていました。

武蔵野美術大学は、その『表現者』を育成する学校であり、『表現すること』について学び、探求する学校です。
自分が追求したい表現とは、一体何なのか?
自分がやりたいことは、一体何なのか?
学生時代、私が何度も自分自身に投げかけたこの言葉を、新入生の皆さんにも問いかけたいと思います。
皆さんが追求したい表現とは、一体何なのか?
皆さんがやりたいことは、一体何なのか?
新入生の皆さん、これからの4年間たくさん学んで、たくさん遊んで、たくさん色んな経験をして、『自分の表現』『自分のやりたいこと』を探し出して下さい。そして、もしそれを見つけられたならその『やりたいこと』を実現して下さい。自分なりに行動をして、実現して下さい。
私が、思いがけず俳優となったように、皆さんにも、皆さん自身が想像していなかったような未来が待っているかも知れません。4年間、精一杯楽しんで、悩んで、行動してそれぞれの未来をつかみ取って下さいね。
かく言う私は、私なりに人生の試行錯誤を経て表現者の端くれとして俳優になりましたが、いま、こうして10数年ぶりに母校を訪れてみると、学生時代の気持ちと、今現在の私の気持ちに驚くほど違いは無いな…と感じています。
私は、変わっていないのかも知れません。
私も、まだまだ、表現という旅の途中にいるのでしょう。
そして、この表現を探求する旅は、おそらく、生涯続くのでしょう。
私にとっても、そして新入生の皆さんにとっても、生涯続くのでしょう。
『表現』を前にすれば、新入生の皆さんも、私も、平等です。
皆さん、ともに、表現の旅へ出てゆきましょう。
本日は、まことにおめでとうございました。