富松保文

富松保文(とみまつ・やすふみ)
TOMIMATSU Yasufumi

専門
哲学
Philosophy
所属
教養文化・学芸員課程
Humanities and Sciences / Museum Careers
職位
教授
Professor
略歴
1992年4月着任
1960年徳島県生まれ
北海道大学大学院 文学研究科修士課程修了(修士)
研究テーマ
像および想像力という観点から、自己概念の形成と変遷を研究する。

著訳書:『アウグスティヌス 〈私〉のはじまり』シリーズ・哲学のエッセンス、日本放送出版協会 '03年。
E.パノフスキー『イデア』平凡社ライブラリー '04年(共訳)。
ヴァールブルク著作集1『サンドロ・ボッティチェッリの《ウェヌスの誕生》と《春》』ありな書房 '03年(共訳)。
『中世思想原典集成8 シャルトル学派』平凡社 '02年(共訳)。
ルイス・E・ナヴィア『哲学の冒険』武蔵野美術大学出版局 '02年。
マーティン・ジェイ『力の場』法政大学出版局 '96年(共訳)。
カッシーラー『シンボルとスキエンティア―近代ヨーロッパの科学と哲学』ありな書房 '95年(共訳)。

論文:「〈対象〉について」『武蔵野美術大学研究紀要』 1999-No.30.pp.5-12. '00年。
「想像論序論」『武蔵野美術大学研究紀要』 1998-No.29.pp.15-26. '99年。
「〈一つ〉考」『武蔵野美術大学研究紀要』1996-No.27.pp.5-12. '97年。
「語ることと理解すること―アウグスティヌス『教師論』試論―」『武蔵野美術大学研究紀要』1995-No.26.pp.5-12. '96年。
「他人の心を知ることができるか」『武蔵野美術大学研究紀要』1994-No.25.pp.5-12. '95年。
「存在と知覚―メルロ=ポンティにおける〈もの〉への問い―」『武蔵野美術大学研究紀要』1993-No.24.pp.5-17. '94年。
「言語的信―メルロ=ポンティ言語論の再検討―」『現象学年報7』pp.63-77. 日本現象学会編 '91年。
「野性と問いかけ―メルロ=ポンティにおける知覚と哲学―」『北海道大学文学部紀要』39-3(通巻第71号)pp.1-37. '91年。
「アウグスティヌス『三位一体論』における理解概念の両義性」『中世思想研究』第32号 pp.82-89. 中世哲学会編 '90年。
「 「ものが見える」ことと「ことばが分かる」ことの間―メルロ=ポンティにおける言語活動としての哲学の場―」『哲学』39号 pp.187-197. 日本哲学会編 '89年。
「メルロ=ポンティの思想における反省の問題」『哲学』23号 pp.58-78. 北海道大学哲学会 '87年。

I study the formation and transformation of self-concept from the point of view of image and imagination, centered on Western philosophy and particularly Aristotle, Descartes, Leibniz, Bergson, and phenomenology. Books I have authored include Augustinusu: “watashi” no hajimari [Augustin, biginning of the "I".] (Nippon Hōsō Shuppan Kyōkai, 2003) and Arisutoteresu: hajimete no keiji jōgaku [Begin the Metaphysics with Aristotle. ] (NHK Books, 2012).


『アウグスティヌス<私>のはじまり』
シリーズ・哲学のエッセンス、日本放送出版協会、2003年

コリント前書の「わたしたちは、いまは、鏡におぼろに映ったものを見ている」という一節を手がかりに、アウグスティヌスの『告白』を「私のはじまり」への探究として読み解く。アウグスティヌスは『告白』のなかで神にこう語りかける。「あなたは私にとって、何者にましますか。どうぞ私をあわれみ、語らしめたまえ。この私なる者は、あなたにとって何者であるかを。」私が私であることが、あなたにとって私が何であるかということと切り離せないならば、そして、あなたがあなたであるということもまた、私にとってあなたが何であるかということと切り離せないとするならば、私とあなたはまるで合わせ鏡のように互いに互いを映し合い、その二つの顔の微かな、しかしけっして乗り越えることのできない隔たりのなかに、閉ざしようのない「私とは何か」という問いの場が開かれてくる。

E.パノフスキー『イデア』
平凡社ライブラリー、2004年(共訳)

イデア(idea)とは、一方では「思いつき」や「着想」(アイデア)のことを指す言葉でもあれば、他方では、この語の本来の語義が示すように、見てとられた「形」そのものを指す言葉でもあり、しかし同時にまた、感覚経験を可能にする根拠としての「観念」や「理念」とともに、新たに創造され実現されるべき「理想」という意味をもつ。それゆえイデアとは何かという問いは、現にある世界と、それを捉える私たちの精神、そして、その精神の表現としての造形をめぐる問いであると言ってよい。本書は、イコノロジーの提唱者として名高いパノフスキー(1892-1968)が、プラトンから新古典主義に至るまでの美と芸術の理論におけるイデア概念の変遷を論じた古典的名著の翻訳である。