岡野紗咲Okano Saemi

作品写真:共鳴 ~ groove ~
作品写真:共鳴 ~ groove ~
作品写真:共鳴 ~ groove ~

共鳴 ~ groove ~Kyomei

インスタレーション|プロジェクター、スピーカー、ほかInstallation art | Projector, speaker, other | 4min 30sec(Video)H3000 × W9000 × D6000mm 4分30秒(映像)

自然の動きに心地よさを感じるのは、我々が持つ身体感覚に近いからではないか。現象をカメラで捉え、高揚感を再構築した。

岡野紗咲

通常、複数のスクリーンで映像を提示する目的は、マルチ・スクリーンのように、全体を大きく見せることや、同時に多数の情報を表すことにある。しかし、岡野紗咲が21面のスクリーンで実現したいことは、映像のgroove現象だけにある。音楽においてgrooveとは、ブルースやジャズの生演奏時に、一定のリズムの頭を少しずらしたり、アクセントの位置を変えることによって、生命現象と同質のうねりや波立ちが立ち現れる現象を指している。映像においては、その動きや速度を操作することによって、スクリーンとスクリーンの間(grooveには溝という意味もある)に接する縁へりにこの現象が現れる。このようなスクリーンの使用方法は、新しいとか古いとかに括られるものではなく、そこで名演奏が繰り広げられているかに関わっている。
つまり、grooveの質が問われているのだ。grooveを目標にした、この作品の波動の中で、うねりを体験してほしい。

映像学科教授 板屋緑

小池美稀Koike Miki

作品写真:沈黙と分断
作品写真:沈黙と分断
作品写真:沈黙と分断
作品写真:沈黙と分断
作品写真:沈黙と分断
作品写真:沈黙と分断

沈黙と分断silence and divide

ドキュメンタリーDocumentary movie | 56min 29sec56分29秒

原子力発電所が、事故によって再建不能になった事例が世界で二例あります。チェルノブイリ原子力発電所事故と、福島第一原子力発電所事故です。事故から32年目のチェルノブイリと、8年目の福島。ソ連初の社会団体が、成立を推し進めた「チェルノブイリ法」は、どのように被災者の権利を保障してきたのか。2年間の取材をまとめました。

小池美稀

このドキュメンタリーの特長は、チェルノブイリ原発事故を経験した今のウクライナと福島第一原発事故から8年経った現在の日本に対する、小池美稀の平等な視線にある。そこから生じる一定の距離感は、全体を分かりやすくしているだけでなく、すべての細部を浮かび上がらせている。そこから見えてくるのは、民間人が整備したチェルノブイリ法のような法律や、ウクライナの教育機関における放射能や食事等の統一された教育指針の欠如であるが、それらの根底に、私達の沈黙と分断の問題があることを、ドキュメンタリーとしてはバランスを欠くぐらい長く続く国道6号線等のシークエンスによって突きつけてくる。

映像学科教授 板屋緑

清水良広Shimizu Yoshihiro

作品写真:そっぽを向くスクリーン
作品写真:そっぽを向くスクリーン
作品写真:そっぽを向くスクリーン
作品写真:そっぽを向くスクリーン

そっぽを向くスクリーンtotal resistance

インスタレーション|可変LEDディスプレイ、映像処理装置、電子部品、電源ユニット、ほかInstallation art | Flexible led display, video processor, electronic components, metal structure, power supply unit, otherH1200 × W480 × D510mm

私たちが普段目にしているスクリーンは皆こちらを向いています。もし彼らに生が宿り、見やすいのが当たり前であった彼らがそっぽを向いた時、人はそれを見て何を感じるのでしょうか。 Most people have something positive to offer, even if it is total resistance.

清水良広

作者が作り上げたフレキシブルなLED Display Unitを使っての曲面造形は、モニターとしての機能性を否定し、電源ユニットやロジック基盤をむき出しにして装飾性をも否定しています。この発想は今後8K16Kと高解像度になってゆく表示装置造形の新たな可能性を思わざるを得ません。“スクラップ アンド ビルト”を体現した作品となっています。

映像学科客員教授 石茂雄

中野広大Nakano Kodai

作品写真:忘れ名草
作品写真:忘れ名草
作品写真:忘れ名草
作品写真:忘れ名草
作品写真:忘れ名草
作品写真:忘れ名草

忘れ名草forget-me-not

アニメーションAnimation art | 17min17分

怖い。
貧しくなる時。人は他を想い、守るために生きようとする。傷付き傷付けた後に後悔し、そして豊かになって行く。
豊かになる時。人は他を、或いは自身さえをも平気で傷付ける。受けた傷も後悔も忘れ、そして貧しくなって行く。
正しい道は何処にあるのでしょうか。私たちは辿り着けるのでしょうか。
今。傷が、癒えそうです。
私たちは、何処へ、向かうのか。

中野広大

所謂「完成度の高さ」とは無縁で、お世辞にも「達者」とは言えない作画なのに、観始めると有無を言わせぬ力技で劇中に引き込まれてしまう。この無骨な迄のエネルギーは紛れもなく作者が抱える激しい「憤り」であろう。それは見栄え良く仕立てられた凡百の作品群を遥かに凌駕する。戦争という深い痛み(それは作者自身のトラウマにも重なる)と真摯に対峙した骨太の野心作が一人の若い学生の手によって創造された事に大きな拍手を送りたい。

映像学科教授 黒坂圭太

日捺茄乃子Hinatsu Kanoko

作品写真:廻るバスハウス
作品写真:廻るバスハウス

廻るバスハウスCircling Bathhouse

インスタレーション|アニメーション|プロジェクター、液晶ディスプレイ、ミクストメディアInstallation art | Animation | Projector, LCD, mixed media | 10sec ×4 4min 48sec ×2 24sec ×2 1min10秒 ×4点 4分48秒 ×2点 24秒 ×2点 1分

3年半、銭湯でアルバイトをしていました。私にとっての銭湯はずっと不思議な場所でした。人生でどんなに悲しいことが起きようが嬉しいことが起きようがここの中では関係なくて、一人ひとりが生みだすいつもと変わらないたくさんの日常が混ざりあってぼんやりとひとつの空間を漂っていました。

日捺茄乃子

アニメ表現を駆使したインスタレーション作品として昭和の銭湯を再現する「ありそうでなかった」新鮮な試みである。特筆すべきは展示場として写真スタジオを選択し、ホリゾントのカーブを湯煙に霞む浴槽に結びつけたイリュージョンであろう。湯気や水音など即物的な素材を一切用いず、「リピート動画の看板」など心理効果によって空間の力強い抽象化に成功している。小道具の入念な造り込み等も加担して「寛ぎ感」を見事に演出している。

映像学科教授 黒坂圭太

藤本匠Fujimoto Sho

作品写真:バカヤロウの背中
作品写真:バカヤロウの背中
作品写真:バカヤロウの背中
作品写真:バカヤロウの背中
作品写真:バカヤロウの背中
作品写真:バカヤロウの背中

バカヤロウの背中Stupid asshole’s back

映画Movie | 66min 15sec66分15秒

娯楽作をつくることに真正面から向き合った。プロット・音・身体と空間、あらゆる要素がグルーヴしていくような、そんな映画への志をぶつけた。
あらすじ:ポンコツ派遣バイト・峻と鬼嫁予備軍・雪の婚前騒動記を描いたドタバタコメディ。二人の住む昭和の匂いを残す高木荘の住民たちは、このシェアハウスの取り壊しが決まり引っ越しを余儀なくされる。生意気な中国人留学生と年金の貰えない作家老人に囲まれ、さらにそこへ居候しに現れた峻の元恋人の軌余子。次々と押し寄せる抑圧と閉塞感がポンコツ男峻を限界まで追い詰める…

藤本匠

作者本人がミュージシャンという視点で制作したという事に合点が行く。同作品の映像は音楽のように流れる。重なるレイヤーの密度は高いが透明感もある。前半の狭い空間では住民たちの騒々しい動きを追っていくカメラワークによって一種の酔いも生じる。ダンサーでもある主役の男女によるポエティックな転換から、後半広がりのある場面構成では明快なコントラストが浮き彫りになっている。関東から関西へ彼を追う彼女が美しい湖の景色に次々と邂逅する。フォルム、ストーリー、カメラワークとサウンドが精密に構造化され、交響的な余韻が強く残る作品である。

映像学科教授 クリストフ・シャルル

松島友恵Matsushima Tomoe

作品写真:ほぼ完全に空洞になった都市
作品写真:ほぼ完全に空洞になった都市
作品写真:ほぼ完全に空洞になった都市
作品写真:ほぼ完全に空洞になった都市
作品写真:ほぼ完全に空洞になった都市
作品写真:ほぼ完全に空洞になった都市

ほぼ完全に空洞になった都市The city made almost empty

3DCGムービー3DCG animation | 3min 17sec3分17秒

崩壊した街の奥の方から
見えなくなった人々の息遣いが聞こえる
全編3DCGを用いた映像作品です。
一年間制作を続けていく中で、多くの問いを投げかけられ、苦しみながらも自分自身が変化していきました。
普遍的な暴力について、失われた都市の記憶を想いながら制作しました。

松島友恵

大戦中のロンドンを彷彿とさせる場所。高みからカメラが下降後退するにつれ、大聖堂の威容と破壊された町の姿が開示されていく。記憶の奥底の光景、描かれない破壊の瞬間、賛美歌312番。人物は登場せず、強いストーリーもそこにはない。不在による存在感。緻密に描写された事物の提示によって、その町で営まれていた生の輪郭が逆説的にせり上がってくる。作者の高い造形力が遺憾なく発揮され、時を超えた精神が見る者の心を打つ。

映像学科教授 三浦均