佐藤圭Sato Kei

作品写真:SHEEH
作品写真:SHEEH
作品写真:SHEEH
作品写真:SHEEH

SHEEH

ショップ|ファルカタ、タイル、コンクリート、アクリル樹脂、ターンテーブル、アナログレコードShop | Falcata, tile, concrete, acrylic board, turntable, analog recordH2600 × W4500 × D7200mm

よく「あの頃は良かった」と言われる戦後の明るいニッポンで、和と洋が混ざり合いながら生まれたノスタルジックな空気感。人のあたたかみ、なんてありきたりな言い方ですが、それって未来にも残していきたいと思うんです。
グラフィック、空間、バイイングなど、あらゆる分野を横断し制作したこのショップ。コンセプトは“昭和のアップデート”。数々の企業やクリエイター、ミュージシャンによるご協賛とご協力のもと生まれた、人とモノ、人と人が出会うコミュニティです。

佐藤圭

佐藤さんはずっとお店作りに眼差しを持ち続けてきた人で、3年生の時にデザインした実物大の「ギンザキオスク」の経験が今回の作品に繋がっている。彼女のお店づくりは美術大学におけるショップデザインの域を越えている。江戸東京たてもの園からインスパイアされた昭和という時代のデザイン的空気感を、あらゆるものに徹底的にディレクションして実現している。優れたディレクションの可視化という点で最も新しい作品である。

芸術文化学科教授 楫義明

橋爪茉莉花Hashizume Marika

作品写真:草間彌生をめぐる言説の変容
作品写真:草間彌生をめぐる言説の変容

概要

本論文は、草間彌生(1929-)の作品および、作家・作品をめぐる言説を研究対象とするものである。草間は網目や水玉をモチーフとした作品で広く知られ、作品の多くは単一モチーフの反復という構造を持つ。1957年にアメリカ・シアトルへと渡り、翌1958年からニューヨークを中心に活動した。作品が持つ反復の構造は、ミニマリズムやポップ・アートなど、1960年代のニューヨークで興隆した芸術運動と比較され、その先駆性が認められている。
一方で、その反復の構造は、網目や水玉があたりを覆う幻視体験や、強迫観念による同じ動作の繰り返しから生まれるとする、精神的病に作品の起源を求める言説も存在する。双方の言説に内在する問題を、批評と展覧会による言説形成という視点から再考することが、本論文の目的である。
1992年にロサンゼルス・カウンティ美術館で開催され、1993年に日本の世田谷美術館に巡回した展覧会「パラレル・ヴィジョン 20世紀美術とアウトサイダー・アート」の歴史的文脈を起点とし、草間をめぐる言説の変容について考察を行う。同展覧会は、1986年にカウンティ美術館で開催された、「芸術における霊的なもの 抽象絵画 1980 - 1985」に続いて企画された。日本巡回に際し、「日本のアウトサイダー・アート」(1993、世田谷美術館)が同時開催され、草間は出品作家の一人であった。作品をめぐって異なる捉え方が存在する所以は、草間が二元性を併せ持つ能力を持つためとされてきた。本論文では、異なる言説が存在することは作家のみに起因するのではない、という前提のもと、草間をめぐる言説の変容が、どのような流れの中で起きたのか探っていく。

草間彌生をめぐる言説の変容The transition of discourses on Yayoi Kusama

論文Thesis38ページ 38937文字

批評や展覧会といったシステムは美術作品の価値決定に大きく影響するが、その権威性は果たして乗り越えられるものなのか。このような関心から、私は、作家・作品をめぐる言説に注目して卒業研究を行いました。
テーマを決定した当初は、しばしば作家自身によって語られる、作品制作が持つ自己治癒性に関心がありました。しかし卒業研究を進めるにつれ、自己の救済という要素は、草間作品の一側面であることに気づかされます。
異なる二つの言説の関係を、より大きな流れの中で捉えていく作業は、当初の自分の関心を突き放していくプロセスでもありました。

橋爪茉莉花

本論は、草間彌生の画業に対し国内外の批評家によって言説化されてきた歴史を追跡することで、その批評の「権威化」を客体化するものである。1940年代の日本での評価、1950年代以降の北米での位置づけ、そして1990年代における草間の精神的な疾患への論及のせり上がりなど、時代の芸術動向と絡み合って形成されてきたことを論証する。さらに大きな視点から、この批評軸の変化は西欧近代美術の「自己反省」から生じたものであることを明らかにして、草間彌生の脱神話化を図る独自の研究になっている。

芸術文化学科教授 高島直之

松丸育美Matsumaru Ikumi

作品写真:絵画がファッションに与えた影響
作品写真:絵画がファッションに与えた影響

概要

本稿では、絵画がファッションに与えた影響について論じる。サンドロ・ボッティチェリ《春》に影響を受けて制作された、2つの衣服と《春》を比較検討することによって、文化の連続性や、領域横断的な視座を持つことの有効性を述べる。
文献調査を通じて、絵画がファッションに与えた影響の例を紹介した後、《春》の作者であるサンドロ・ボッティチェリについて述べる。《春》が制作された背景や目的を整理し、作品の図像解釈を行う。この絵画に影響を受けたローザ・ジェノーニとアルベルタ・フェレッティという2人のファッションデザイナーの作品を《春》と比較検討する。
絵画はその耐久の優位性から、消耗品よりも長く保存される。さらに、長い年月にわたり、芸術以外の分野に影響を与えることができる。また、メディアの発達により、絵画作品を目にする機会は以前よりも増えているため、影響力は強まることが推測される。尚且つ、衣服が現存していなくても、絵画が画面に衣服の詳細を保持している場合は、絵画が服飾史の分野でも資料として価値を持つ。
加えて、同じ絵画作品から影響を受けた、別の年代の衣服を検証することによって、その時代の技術や流行のスタイルを読み取ることができる。年代が異なると同じ絵画作品から影響を受けていても、その様相は全く異なるが、それらを同時に考察することで、絵画作品が持つ構成要素を抽出することができる。
従って、絵画と衣服を同時に考察することは、美術史の視点からも服飾史の視点からも有効である。

絵画がファッションに与えた影響
―サンドロ・ボッティチェリの《春》を中心に―The influence of painting on fashion
-with an emphasis on《 The Spring 》by Sandro Botticelli-

論文Thesis43ページ 30282文字

サンドロ・ボッティチェリ《春》に影響を受けて制作された、2つの衣服と《春》を比較検討することによって、文化の連続性や、領域横断的な視座を持つことの有効性を述べる。《春》の作者であるサンドロ・ボッティチェリについて述べる。ボッティチェリの経歴、並びに《春》が制作された背景や目的を整理し、作品の図像解釈を行い、この作品が保存されてきた経緯にも言及する。《春》に影響を受けたローザ・ジェノーニとアルベルタ・フェレッティという2人のファッションデザイナーの作品を《春》と比較検討する。それぞれのデザイナーの経歴や彼らが作品を制作した背景について考察する。

松丸育美

ルネサンスを代表する画家、サンドロ・ボッティチェリが描いた《春》と、この作品からインスピレーションを受けた、ローザ・ジェノーニとアルベルタ・フェレッティという二人のファッションデザイナー。
この3人が生み出した表現を丁寧にひもときながら、素材が生み出す「絵画」の堅牢性と、作品を守り、伝える場である「美術館」の保存性と公共性が、時空を超えて「絵画」と「ファッション」という異なる表現メディアをつなぐ可能性を論じた意欲的な論文である。

芸術文化学科教授 杉浦幸子

宮崎栞里Miyazaki Shiori

作品写真:透彫吉祥模様小振袖

透彫吉祥模様小振袖~日本の着物に見る祈りと祝いの模様~Sukashibori Kissho Moyo Kofurisode ~Patterns of Blessing in a Traditional Japanese Kimono~

切り絵|和紙Cutout | WashiH1260 × W1900mm

A3パネルPanelH420 × W297 × D5mm ×4枚

A5サイズ研究ノートBookH210 × W148 × D10mm ×2冊

日本には伝統的な模様が数多くあり、その模様の中には延命長寿や子供の健やかな成長、魔除けや武功を立てる験担ぎなど様々な意味や願いが込められた模様が存在する。
それらの模様を調査し、日本の伝統技術である伊勢型紙の技術を応用し、私がこれまで12年間続けてきた切り絵という形で、縁起の良い模様だけで構成された和紙の振袖を制作した。

宮崎栞里

宮崎さんの作品の凄さはその過程にある。着物の魅力を伝えるために文化が生んだ模様に注目させることを計画し、それを切り絵という手法で表現した。模様を研究し、素材となる和紙の染色を繰り返し、切り抜く技術の更なる研鑽のために三重県の伊勢型紙職人に師事し、伝統技術の引き彫りを習得。自ら染めた和紙に模様の意味を組み合わせたデザインを施し、とにかく切り抜く。それが記録された研究ノートは理論と実践の教科書となっている。

芸術文化学科教授 楫義明