大嶋笙平Oshima Shohei

作品写真:弔いのシークエンス
作品写真:弔いのシークエンス

弔いのシークエンスsequence of funeral

MDF、ほかMDF, otherH2400 × W1200 × D400mm

麻布台地の東側、仙台坂に面して駐車場で埋め尽くされた一角がある。ここを見つけるところから卒業制作が始まった。
GL上から建築が消失したこととスリバチ状の地形によって、そこには都市の只中にありながらも静かに大きな空が広がっていた。
麻布の歴史的・地理的文脈によって担保されてきたある種の「静謐さ」と広い空を湛えた敷地、その空間の質を担保しつつ如何に持続させるか。
ここに都市のオープンスペースとしての墓地を提案する。

大嶋笙平

超高齢社会の現在において都心部の墓地不足という問題に対する都市のオープンスペースとなる墓地の提案である。麻布台地に位置する善福寺に隣接するスリバチ状のエリアを敷地とし、20万体の遺骨を受け入れる空間を計画している。図面と模型の丹念なスタディによって、多様なシーンと空間の繋がりを見事に建築とランドスケープに統合している。地形に呼応するシークエンスを、圧倒的な図面、スケッチ、模型で表現した空間に真摯に向かいあった力作である。

建築学科教授 布施茂

前澤尚佳Maezawa Naoka

作品写真:他律する建築
作品写真:他律する建築
作品写真:他律する建築
作品写真:他律する建築
作品写真:他律する建築
作品写真:他律する建築
作品写真:他律する建築

他律する建築An architecture which follows surroundings

紙、木棒、モデリングペースト、ほかPaper, wood stick, modeling paste, otherH700 × W2420 × D910mm

幼い頃に、長野の祖父母の家で過ごした記憶が強く印象に残っている。暖房や冷房がなく、夏は家中の戸を開け放ち風を求めて暮らすこと、冬はストーブのある部屋に集まり廊下や隣室を仕切る戸を全て閉じ狭い空間で過ごすこと。季節や環境によってその都度建築や暮らしが受動的に変化していく生活は、不便なことはあっても、それ以上に美しい情景や豊かな体験を記憶させたように思う。
環境に合わせて形や使い方が変容する建築、その場所固有の要素を抽出して作られた建築、そしてそれによって得られる愛おしい情景を、私の身体や気づきのようなものを積み重ねて制作できないかと考えた。

前澤尚佳

現代の外部との関係を断絶した建築に対する疑問から、敷地に対して受動的な建築によって得られる体験や情景を大切にできる他律する建築の提案である。作者が生まれ育った長野を敷地とし、自分の体験と記憶を基に夏や冬における具体的な提案の集積が生活に反映されていることにとても好感が持てる。期間限定の農業体験用のレジデンスという設定によって、この土地本来の暮らしや風土を強調した構成がこの提案を秀逸な作品としている。

建築学科教授 布施茂

眞下智基Mashimo Tomoki

作品写真:クリップと海の中
作品写真:クリップと海の中
作品写真:クリップと海の中

クリップと海の中Binder clip ーCreatures living in the seaー

ダブルクリップ、ステンレスワイヤー、鉄Binder clip, stainless wire, steelH4000 × W3000 × D2300mm

本来の使用用途にとらわれず、物の長所を観察したことにより制作に至れた。挟む接合と引っ掛ける接合の2種類の接合により、生物の質感、弾塑性構造までも再現している。
挟幅15mmのクリップのみを使用し、クリップの力だけで、最大1.6m、20kgの造形を成立させることができているのは、建築学科で学んだ建築の構造形式を適用しているからである。
これは美大の建築学科だからこそ完成した、新たな造形法である。

眞下智基

この作品は単なるダブルクリップによる造形ではない。建築土木における構造形式を再考するためのヒントが多く隠されている。構造形式には、シェル構造、キールアーチ構造、ケーブルネット構造など、自然界の動植物からヒントを得たものが数多く存在する。この作品はそれらの構造形式を水中生物に回帰させ、造形を試みたものであるが、そこではどのような構造形式が再現されているだろうか。構造形式の変革、進化を予感させる意欲的な作品である。

建築学科教授 小西泰孝

松浦光紗Matsuura Arisa

作品写真:街の孵化器
作品写真:街の孵化器
作品写真:街の孵化器
作品写真:街の孵化器

街の孵化器Return to the natural

紙、白ボール、発泡スチロールPaper, cardboard, styro foamH4000 × W3000 × D2300mm

いままで肯定されていなかった雑多な街並みや、そのなかで生じる野性的な人間の行動を、都市の快楽として捉え直すことができるような建築。池袋における駐車場といった狭小地に、排気ダクト、カーテンやテント、給水塔、隣地構造体など、街から採取したエレメントを用いながら本能の赴くまま人々の行動(たばこを吸う、イチャつく、寝る、飲んで吐く、湯につかる…)を肯定する場を設計した。

松浦光紗

都心では再開発によって清潔に整備された地区が出現し、街のイメージをリニューアルしつつある。その一方で、人の本能的・野生的な行為の器となる雑多な界隈は消失しつつある。作者は長年親しんでいる欲望渦巻く猥雑な都市・池袋を歩き回り、肯定的に語られない本能的な行為の数々を同期・増幅するような場を設計した。
「生きられる街」を設計するのはお仕着せになるリスクを伴うが、作者はそれに賭ける勇気と力を持っている。

建築学科教授 高橋晶子

山田寛太Yamada Kanta

作品写真:山楼
作品写真:山楼
作品写真:山楼
作品写真:山楼

山楼Mt. Precinct city

チップボール、スノーマット、バルサ板、ほかChipboard, snow mat, balsa board, otherH2400 × W2120 × D1200mm

東京を中心に雨後の筍のように林立し続ける超高層集合住宅。一方で東京でも空き家・空き室が既に発生しており、また間も無く人口減少が訪れるとされている。東京では引き続き同居人を持たない世帯が増え続け、その高密度に発達した都市がゆえに宗教建築と日常的建築も物理的距離を近づけ続けている。
この建築はそうした将来的に起こりうる東京的社会背景の中で立ち上がる、東京にしか建たない日本建築史の延長線上にある超高層建築である。

山田寛太

都心部の再開発による超高層集合住宅や住宅の空き家・空室化の現代都市が抱える問題を発端にした超高層集合住宅と寺院のコンプレックスの提案である。将来、超高層集合住宅に発生した空室を寺院墓地として転用することで、リアルに起こりうる退廃的状況の中で建ち上がる建築を構想している。この作品は、現在の経済的利益だけを追求した日本における大規模再開発に対して、限りなくリアルな内容でありながらアイロニカルな提案をした野心を感じさせる問題作である。

建築学科教授 布施茂