イシイシ(石井志歩)Ishiishi(Ishii Shiho)

作品写真:占星術史
作品写真:占星術史
作品写真:占星術史
作品写真:占星術史

占星術史History of Astrology

本|紙Book | PaperH420 × W300mm H210 × W300mm H210 × W150mm ×2点 H210 × W150mm ×2点

占星術を、またホロスコープ(出生図)をご存知だろうか。
いわゆる星占いだが、朝の情報番組で見る占いや雑誌に載っている占いとは違う。私は星々で自分を知るということにロマンを感じて卒業制作で「占星術」を扱うことを決めた。今回の制作においては、占星術をただの占いではなく天文学・哲学・歴史といった学問的側面を中心に調べを進めていって作品を制作した。私のこの作品『占星術史』は、どうしてもオカルトチックに捉えられがちな占星術を一つの学問として扱い、4編からなる本を、自作のイラストを用いて製作した。

イシイシ(石井志歩)

執筆・編集・デザイン・絵画表現の全てを一人で成し遂げている。ページ展開のおもしろさは自ら得た知識がその背景となっている。また使用された図版の全ては本人が描き直し再構成している。単に集めた資料を並べただけのものではない。占星術という複雑過ぎる内容のイラストレーションの魅力も人から与えられた資料ではここまでの表現を得ることはできないだろう。石井さんには知ることを表現に移し替えることを可能にする能力が備わっているからか、知の積み重ねを恐れることも無く編集作業を楽しんでいた。デザインと編集のこの関係をずっと続けて欲しいものだ。

視覚伝達デザイン学科教授 新島実

石川菜々絵Ishikawa Nanae

作品写真:色環の形態学
作品写真:色環の形態学
作品写真:色環の形態学
作品写真:間の画家 色環の形態学

色環の形態学Morphology of color diagram

模型|紙、木材Model | Paper, woodH257 × W257 × D25mm ×37点

年表ChronologyH910×W2730mm

色相環というと円のイメージがある。しかし色彩史を辿っていくと、今までに見たことのない、様々な形態をもつ色相環が数多く存在することがわかった。色の歴史は科学史と美術史の文脈にあり、それらの発展に応じて色の捉え方も変化していった。その歴史に沿う形で多くの科学者や美術家が独自の解釈の色相環を考案している。私は彼らの考えた色相環を立体模型に展開した。また自分の色の解釈で色見本を作り、それを自身の色相環とした。色相環は色の捉え方の数だけ存在し、その思考に伴う構造には合理的な美しさがある。

石川菜々絵

この作品は、色彩に関する図を立体模型として制作することで、図に触れながら色を見られるようにした物である。
色彩は、美術はもちろん物理学、化学、心理学でも扱われるテーマである。このため分野ごとの年表は存在していても、分野横断的な年表は意外に少ない。作者は、年表の制作を通して、色彩に関する図を分野を超えて整理することから始めた。一つ一つの図を年表に位置づけ、基準となる色相のスケールを設定した上で、立体模型の制作を行なっている。これらのプロセスが展示の中で統合されることで、色彩が持つ知的好奇心と、色を見る喜びを実感させてくれる作品となった。

視覚伝達デザイン学科准教授 石塚英樹

岡﨑実央Okazaki Mio

作品写真:四角いジャングル

四角いジャングルThe Square Jungle

キャンバス、アクリルCanvas, acrylicH3501 × W3501mm

私は4年間プロレスの作品しか作ってきませんでした。この作品は最後のプロレス作品です。今回はリングの周りを囲む観客(リングの4方向を囲むパイプ椅子席、指定席、立ち見のバルコニー席)それぞれからみえるプロレスというエンターテインメントをピカソやブラックが発展させたキュビズム(様々な角度から見た対象の形を1つの画面に収める技法)を使い表現しました。また、プロレスのスケールの大きさを体験してもらうため、レスラーを等身大(またはそれ以上)の大きさで描きました。4年間の最後に何かを言うとしたら、この言葉でしょう。「1番スゲエのはプロレスなんだよ!」

岡﨑実央

好きなことに拘るとここまでの表現が得られるのかと驚かされた。岡崎さんは度外れた「プロレス」のファンだ。「プロレスの観客はレスラーの動きを一方向からしか見ることが出来ないと言う」「もしレフリーのように動きながら観戦できたらプロレスの技の掛け合いはもっと面白くなると言う」。そしてレフリーの視点で、レスラーを原寸大で「四角いジャングル」を描いた。制作過程で描いていたモノクロームのドローイングも魅力的だったが、彩度と明度が的確にコントロールされた色彩によって描かれた作品は魅力が倍加している。好きなことこそ表現の原点となる好例だ。

視覚伝達デザイン学科教授 新島実

梶川裕太郎Kajikawa Yutaro

作品写真:21世紀のプロパガンダポスター
作品写真:21世紀のプロパガンダポスター
作品写真:21世紀のプロパガンダポスター
作品写真:21世紀のプロパガンダポスター
作品写真:21世紀のプロパガンダポスター
作品写真:21世紀のプロパガンダポスター

21世紀のプロパガンダポスターPropaganda poster of the 21st century

ポスター|紙|インクジェットプリントPoster | Paper | Ink jet printingH1030 × W728mm ×12点 H515 × W364mm ×30点

第一次世界大戦期に登場したプロパガンダポスターは、非商業ポスターとして人々に行動の変化を促し、社会全体を変えてしまうメディアとして大きな影響力を残した。
私は今回の卒業制作で、これらのプロパガンダ独特の皮肉・風刺的表現を集約し、「防犯」「経済」「政治」「環境」「マナー」「インターネット」の6つの分野の社会問題から構成された42枚の現代版プロパガンダポスターを制作した。
社会の仕組みが大きく変化する中、それでもなおポスター芸術の系譜は現代に至るまで脈々と受け継がれている。この作品は、その一端を担う21世紀のプロパガンダポスターとして体感できるのではないだろうか。

梶川裕太郎

第一次大戦期のポスター表現の記号操作をトレースしながら徐々に梶川君独自の表現にたどり着いている。卒業制作として制作した50点余の作品の背後には梶川君自身が学んできた20世紀のプロパガンダのポスター群があるが、満員電車を床下から見上げたマナーポスターはそれらの表現から抜け出している。この視線の移動は魅力的だ。テーマを語りながら作者のポスター表現を支える視覚言語のシンタックスが見えてくる。もともと情報を集約し象徴的に表現することに優れた造形力を有しているだけに納得のいく視線の移動だ。

視覚伝達デザイン学科教授 新島実

栗原優基Kurihara Yuki

作品写真:時をかける少女 言葉とイメージ

時をかける少女 言葉とイメージThe girl who leapt through time Image and Monologue

写真PhotoH1030 × W1456mm ×3点 H364 × W515mm ×16点

本|紙Book | PaperH210 × W297mm ×3点

映像Video | 22min 15sec22分15秒

1967年に筒井康隆氏に書かれた「時をかける少女」の内容を限られた言葉とイメージのみで伝える試みを一年間やってきました。その取り組みから、物語をイメージで伝える上で一番大切なのは感情であり、人は主人公に現れる感情の起伏によって一連のイメージに物語性を見い出すのだと考えます。

栗原優基

この小説はこれまで何度か実写映画やアニメなどの原作になっており、多くの世代の人々が親しんだものだ。それらと小説を比較した時に感じた若干の違和感、それ自体が栗原君のテーマとなった。彼はこれを「言葉とイメージの相互作用」の実験対象とし、あくまでも元テキストを変更せずに記述をダイヤグラム化し、その連続する状況を写真を媒体として視覚化する試みを行った。美術、ロケーション、演出、撮影は全て自身で行なっている。入学以前のスタイリストの経験が生かされた秀逸な美術と演出が特に素晴らしい。それらの素材を「全テキストとイメージ/イメージのみ/彼女の独白文とイメージ」でそれぞれ編集し書籍としてまとめている。

視覚伝達デザイン学科教授 寺山祐策

清水美佐子Shimizu Misako

作品写真:箱を開ける
作品写真:箱を開ける
作品写真:箱を開ける
作品写真:箱を開ける
作品写真:箱を開ける
作品写真:箱を開ける

箱を開けるOpen the box

紙、紐、ボタンPaper, cord, buttonH90 × W30 × D30mm ~ H250 × W190 × D190mm ×20点

パネルPanelH515 × W364mm ×12点

展開図Development viewH210 × W240mm ~ H490 × W240mm ×7点

私のテーマは「箱を開ける」です。箱を開けるという行為は、期待感や楽しさといった体験を提供できるものなのではないか?この考えから卒業制作を始めました。
作ってきたものは計12の「開け方」から仕組みや形を考えた箱です。
開けた時に手に伝わる感覚や、動かしたことで見え方が変化するということ、展開図を組み立て平面が立体になっていく様。箱を作り続け、こんな単純なことが実はとても面白いのだと気付きました。
この作品を通して「開ける」ということを楽しんでもらえたら幸いです。

清水美佐子

「やぶる」「スライドさせる」「回転させる」など、箱の開け方には様々な方法がある。この作品は箱の開け方を考えることで、箱が開くまでの展開や開ける時の手応えを楽しめるものとなっている。展示で示された箱を開けるための12の動作は、箱を作るためのアイデアになっているのと同時に、作者が発見した人と箱のコミュニケーション方法と言える。
また、作者のパッケージデザインに対する様々な思いを「開け方を作る」というシンプルな言葉に凝縮しながら、具体的な形に展開する方法を見つけていった制作プロセスも素晴らしかった。

視覚伝達デザイン学科准教授 石塚英樹

竹田周平Takeda Shuhei

作品写真:江戸腐爛の華 十九世紀江戸・怪奇幻想総覧
作品写真:江戸腐爛の華 十九世紀江戸・怪奇幻想総覧

江戸腐爛の華
十九世紀江戸・怪奇幻想総覧Rotten flowers of Edo in the 19th century

年表ChronologyH1800 × W2700mm

BookH297 × W210mm ×3点

妖怪、怨霊、妖術師。拷問される美女、醜い腐乱死体、飛び散る血しぶき、生首……。
時は十九世紀江戸。「化政文化」と呼ばれる非常に優れた文化が花開いた。
それは同時に強烈な腐敗臭を放つ、美しくも妖しい時代だった。化政期は日本の歴史上、最も怪奇や血みどろを好んだ時代なのだ。
この度の制作では、その化政期を中心に、約一〇〇年間に及ぶ江戸の怪奇的で幻想的なものを集大成した。
高い芸術性に彩られた怪奇と頽廃の表現、奔放な想像力の精華をここに示したつもりである。この時期の特異な雰囲気をぜひ堪能して驚愕してほしい。

竹田周平

江戸の思想家平田篤胤によって書かれた不思議な書物「仙境異聞」を現代語に翻訳することが竹田君の関心の始まりであった。彼はその過程で篤胤自身が生きた江戸末期から明治維新に至るほぼ百年の時代の文化現象全体をとらえる必要を感じ、その時代の出版物を徹底的に集め、それらを丁寧に読み解き時間軸上に布置する作業を行なった。そこで浮かび上がったのは怪奇と美が共存し、今日から見ても驚くべき想像力にあふれた日本独自の幻想世界であった。彼は総覧年表を制作し更にそれらを「怪奇・幻想の始まり/発展期/衰退期」という三つの視点から編集・執筆し三冊の本にまとめた。その知性と編集デザイン力には驚くべきものがあった。

視覚伝達デザイン学科教授 寺山祐策

林賢五Hayashi Kengo

作品写真:ふれながら
作品写真:ふれながら
作品写真:ふれながら
作品写真:ふれながら
作品写真:ふれながら
作品写真:ふれながら

ふれながらtouch and

映画Movie | 41min 25sec41分25秒

ご覧になってくださる方々が、何を受けをとってくれるのか、何を感じてくれるのかを私自身が楽しめるように心がけたつもりです。
ワンシーンでも、ひと言でも、皆様の心にひっかかり、あれこれ思いを廻らすきっかけとなれば幸いです。

林賢五

不感症と言うのだろうか、彼の抱いていた違和感は人々が震災などの災害や事故、事件などに麻痺し無感動になっているように感じていたことだ。そのような状況への漠然とした危惧と、自らが生まれ成長した平成という時代の終わりに対する人々の無関心が重なっているように彼には見えた。大げさに何かを主張したいと考えているわけではない。しかし自分が生きた時代、大事にしてきたものは何なのかを、自分なりに語るべきと考えたのが、この映画の動機である。脚本、美術、演出、撮影、編集と音楽以外は全て独力でなされ、淡々とした描写、美しい光と落ち着いた場面の中に彼の思いが込められている。

視覚伝達デザイン学科教授 寺山祐策

矢嶋瑛美Yajima Emi

作品写真:営むモノたち
作品写真:営むモノたち
作品写真:営むモノたち
作品写真:営むモノたち
作品写真:営むモノたち

営むモノたちtraces of a daily life

本|紙、アクリルガッシュBook | Paper, acrylic gouacheH210 × W210mm

ドローイング|紙、アクリルガッシュDrawing | Paper, acrylic gouacheH182 × W257mm ×150点

私は上京してから大学までの6年間のうちに、何度か生活環境が変わることがあり、3度引越しをしました。引越しの度に思い入れのあるモノたちを断捨離しては、新しいモノを購入し、またもとのモノで溢れた部屋に戻ることを繰り返して、生活とモノとの関係について考えるようになりました。そうした経験をきっかけにして、日々の生活の中で使用・消耗・鑑賞されるモノたちに焦点をあて、そのモノたちと関わるシーンで感じたこと・考えたことを絵と言葉を組み合わせて表現した詩画集を制作し、生活の中の人の営みを描きました。

矢嶋瑛美

大学への入学を機に故郷を離れ、東京で彼女は一人暮らしを始めた。
そのことは多くの人が経験することで特別なことではない。彼女はその日常の生活の痕跡、モノたちに視線を向ける。特別にそれらを美しく感傷的に見せたいわけではなく、おそらく彼女の目が反応したものがここでは淡々と描かれている。構図はほとんど考えていない。あるいはそのような美的意図を排除しているようにも見える。私たちは彼女の絵(またはそこに向けられた独特の眼差し)に不思議な魅力を感じる。例えば枕についた涎のシミや蛇口から流れ出る水という日常の光景に。短い言葉が添えられた画集の編集も素晴らしい。

視覚伝達デザイン学科教授 寺山祐策

吉野祥穂子Yoshino Sahoko

作品写真:白の光、空間、グラデーション、そして網点

白の光、空間、グラデーション、そして網点The White Lights, Spaces, Gradations, and Dots

シルクスクリーン|紙、インクSilkscreen printing | Paper, inkH297 × W210mm H320 × W440mm H841 × W594mm H850 × W710mm H1030 × W728mm ほか

シルクスクリーン印刷における仕上がりの平滑さや均一かつ鮮やかな色面、近づくとインキの重なりによる微細な段差が見え、それらが私を魅了した。大量印刷が可能な現在、版画の価値は「見た目の美しさ」「人の手による味わい」、そして「作品の強さ」の3点にあると言える。自ら制約を設け、一つの版さえあれば色や重ね方を変えることで豊かな平面を作ることができるという可能性を模索した。そして私は、網点で表されたグラデーションの印刷を通して、空間を知覚し表現できること、それは光を知覚し表現することと同義であることを発見する。

吉野祥穂子

インキの調整など大変な労力を要するシルクスクリーン印刷によって得られる仕上がりの平滑さ、鮮やかな色彩、物質的なインキの厚みによる重なりの質感などに魅了されたところから彼女の制作と実験は始まった。まず孔版印刷の特性を探る様々なバリエーション実験が前期に行われた。それらを踏まえながら彼女は光の現象をとらえるために白をテーマに紙の白とインキによる白の表現を執拗に試みた。次にサイズの異なる網点の重ね刷りなどによって生じるパターンを用い、見る距離によって変化する微妙で繊細なグラデーションの表現を試みている。ミニマルな作業を徹底することで浮かび上がる、豊かな色彩経験の素晴らしいドキュメントとなった。

視覚伝達デザイン学科教授 寺山祐策