安藤真生Ando Masaki

作品写真:W. A. Dwiggins: Inheritance and Experiment

W. A. Dwiggins:
Inheritance and Experiment

本|紙、iMac(コンピュータ)|書体デザイン、ブックデザイン、タイポグラフィ、ウェブBook | Paper, computer | Typeface design, book design, typography, web design展示資料1|H257 × W364mm
展示資料2|H364 × W515mm
展示資料3|H364 × W515mm
タイプテスター|H516 × W650 × D203mm
見本帳|H340 × W250mm
参考文献1|H260 × W180mm
参考文献2|H280 × W230mm
参考文献3|H300 × W230mm
B1ポスター|H1030 × W728mm ×5点
大判印刷ポスター|H5000 × W1118mm ×2点
映像|1分31秒

20世紀初頭、アメリカ・ボストンで活躍したデザイナー、ウィリアム・アディソン・ドゥウィギンズ(1880-1956)。彼の行ったブックデザイン、イラストレーション、広告、書体デザインなどの様々な分野の仕事の中でも特に書体デザインに着目し、現代デジタルタイプとして使うことができない“Falcon”という書体から、彼の書体デザインのプロセスと私の身体性を交えながら“Roume”という書体を作り、その見本帳も制作した。

安藤真生

安藤の卒業制作は欧文書体の制作である。書体名は「Roume」。使用用途を3種に分け、ローマン体、イタリック体それぞれにLightからBoldまでのウェイトが揃えられている。書体数としては26書体、文字数にして14196という膨大な数のグリフである。コンセプトはアメリカのタイプデザイナー、ウィリアム・アディソン・ドゥウィギンズが1944年に着手し1961年にリリースされた書体「Falcon」の復刻。しかし、かなりの部分において現代的なリ・デザインが施されており、今すぐ世界市場に出しても恥ずかしくない質を備えている。尽きることのないドゥウィギンズへの敬意、そしてFalconに還元された安藤の身体性……最新テクノロジーに応じたスキル、その全てが彼の努力と資質によるものである。

視覚伝達デザイン学科教授 白井敬尚

野々なずなNono Nazuna

作品写真:ののパン便り
作品写真:ののパン便り
作品写真:ののパン便り
作品写真:ののパン便り
作品写真:ののパン便り

ののパン便りNono Bread Journal

イラストレーションIllustrationH2700 × W7000mm

ののパン便りとは、無類のパン好きイラストレーター野々なずなが、「五感でパンを味わう」ことをモットーに、全国の美味しいパン屋さんを紹介するフリーペーパーです。
通販が盛んになって店舗に足を運ばなくなったり、SNSの写真を見てお店に行った気になったりしていませんか?
それらはとっても便利だけど、パンを五感で楽しめるのは、パン屋さんに実際に行った時だけ!そんな思いで、全国のパン屋さんを巡ってきました。

野々なずな

作者はパンが好きである。2年生の頃から彼女の授業を担当しているが、とにかくパンが好きである。卒業制作も「ずっとパンなので最後ぐらいはパンじゃないものを」と最初は言っていたが、やはりパンになった。しかし、そこには単なるパン好きだけではすまされない制作能力とバイタリティがある。絵の緻密さ、勢いなどの「魅せる能力」は目を見張るものがある。また全国のパン屋を数ヶ月で30件近く巡り、それを作品にするという行動力は簡単に真似できるものではない。これからもどんどんあのパンの絵を描いてみんなを幸せにしてください。

視覚伝達デザイン学科准教授 古堅真彦

大利光輝Ohtoshi Koki

作品写真:八月六日、東京

八月六日、東京August6,Tokyo

グラフィックデザイン|紙-DEEP PV モデラトーンアイス186g、紙-アラベール-FSホワイト110kg、ホットボンド赤|青焼き印刷、インクジェットプリントGraphic design | Paper-DEEP PV Moderate tone ice 186g, Paper-Arabelle-FS White 110kg, hot bond red | Blue printing, ink-jet printingH3300 × W7700 × D1500mm

本|ホットボンド、紙|シルクスクリーン、インクジェットプリントBook | Hot bond, paper | Silkscreen painting, ink-jet printingH420 × W297 × D15mm

上京して感じた、東京と広島での8月6日に対する思い入れのギャップをきっかけにして、自身のフィルターを通し明らかになっていくヒロシマを、それぞれ34枚のポスターへと展開した。また、今作完成に至るまでの思考の軌跡を1冊の本にまとめ公開する事で、ヒロシマの問題の難しさや、被曝3世の自身の葛藤の様を感じ取り、少しでも主体的にヒロシマに向き合ってもらいたいと願い制作した。

大利光輝

作者が上京した当時、8月6日8時15分に誰一人として黙祷を捧げないその光景が強烈に印象に残ったという。そこで生じた違和感は彼の制作動機において決定的なものだった。このことを1年を通して徹底的に向き合い、意味と形の関係を探る膨大なドローイングを重ねていった。完成した30点強のポスター群は、極めて難解なテーマが「地と図」「視覚の補完性」「反復」という視覚言語に置き換えられ、強いメッセージを発している。そして制作における葛藤を綴ったドキュメントブックは、それ自体が「ヒロシマ」を伝えることの困難さを問いかけている。とことん自身の問いに誠実であり続けたその制作態度が、本作のメッセージの強さを裏付けている。

視覚伝達デザイン学科准教授 中野豪雄

片桐麻実Katagiri Asami

作品写真:ちびくろ百科
作品写真:ちびくろ百科
作品写真:ちびくろ百科
作品写真:ちびくろ百科
作品写真:ちびくろ百科
作品写真:ちびくろ百科

ちびくろ百科Encyclopedia of CHIBIKURO

本|紙、布クロス、ボール紙|製本Book | Paper, cloth, cardboard | Bookbinding本|H290 × W240mm
パネル|H1800 × W1800mm

この本は、武蔵美に入学してから4年間ちびくろに関わってきた私片桐が、現在の「造形教育研究会アトリエちびくろ」の活動のノウハウ、場作りのプロセスやコミュニティについて、全てを記述し書物化しようと試みたものである。
膨大な体験の中で一貫していることは「人を思いやる」「やりたいことをやる」ということだ。「効率」や「損得」を抜きにした考え方は、私たちの生活あるいは社会でも共通して重要なことではないだろうか。

片桐麻実

本作は約50年にわたり形を変えながら蓄積されてきた「ちびくろ」のノウハウを、自身の体験に基づいて網羅的に記述しようと試みたものである。口伝によって継承されてきた多様な方法論を後輩たちの情報源として形にするために、情報収集、執筆、編集、イラスト、図解、造本すべてを一人でこなし、200ページの百科が完成した。この膨大な作業の支えとなったのは、作者のずば抜けた編集能力に加え、子供たちとの活動を成り立たせるすべての行為が、私たちの生活や他者と共創する社会の在り方に直結していることへの感動だった。一個人の強烈な原体験が普遍的なテーマへと結びついていったそのプロセスも高く評価したい。

視覚伝達デザイン学科准教授 中野豪雄

坂本千尋Sakamoto Chihiro

作品写真:「さかもと ちひろ」
作品写真:「さかもと ちひろ」
作品写真:「さかもと ちひろ」
作品写真:「さかもと ちひろ」
作品写真:「さかもと ちひろ」
作品写真:「さかもと ちひろ」
作品写真:「さかもと ちひろ」
作品写真:「さかもと ちひろ」
作品写真:「さかもと ちひろ」

「さかもと ちひろ」“Chihiro Sakamoto”

着物|正絹、西陣織、布|型染め、友禅染めKimono | Silk, Nishijin-ori, cloth | Stencil dyeing, Yuzen dyeingH1600 × W1800 × D700mm ×3点

着物にはメッセージとストーリーがあり、それゆえに物語を身に纏うものという特殊なメディアである。物語を綴る事は「織る」とも表現できる。これらの作品は、私の人生を織り綴ったもの達である。
幼少期から着物が身近な環境で育ってきた私は、着物を美しく特別なものとして認識してきた。それは凛々しくも儚く繊細な、しかし力強い美である。ひとつひとつの紋様に意味がありそれらによってメッセージやストーリーが産まれ、物語が語られてゆく。
これは、私が生涯感じてきた感情、体験、思い出等によって織り成され、自分自身のアイデンティティや存在意義となり得るものを着物を以って表現したものである。
たくさんの私の想いや物語が着物に描かれ、観た者達に訴え、語りかけているのだ。ここには私の人生が描かれている。

坂本千尋

坂本さんは病を得て卒業年次に2年間の休学を余儀なくされた。彼女はその間も3年次から続けていた織物の紋様の研究を地道に続け、また自ら紋様のデザインを行ってきた。彼女にとって幼い頃から身近な着物は詩(うた)のように語りかけ、読み取られるメッセージの装置であった。本作はその集大成として彼女自身の人生を振り返り、生まれた頃、病を得て苦しんだ時期、そして未来を見据える現在の三つの視点から制作された着物と帯である。彼女はこれらを長い時間をかけて自分で型を作り、染め、織り、縫い上げた。まさに生きることと作ることが一つになった美しい作品ができた。

視覚伝達デザイン学科教授 寺山祐策

田中なつみTanaka Natsumi

作品写真:RYOKAI MANDA-La MANUAL
作品写真:RYOKAI MANDA-La MANUAL
作品写真:RYOKAI MANDA-La MANUAL

RYOKAI MANDA-La MANUAL

本、インスタレーション|紙、布、木材Book, Installation art | Paper, cloth, wood本編|H290 × W290 × D43mm
解説書|H210 × W210mm
帙箱|H300 × W300 × D50mm
映像|43秒 ×2点

マンダラと聞くと難しいイメージを抱く人は少なくないだろう。
今回私はそんな人にマンダラ、特に日本密教で用いられる「両界曼荼羅」を紹介するための解説本を制作した。マンダラの特徴を本に生かし、マンダラをよく知らない人でも感覚的に知ることのできるような本にしている。また、動きなどの部分は動画を制作することでよりわかりやすくしている。
この作品でマンダラに興味を持つ人が1人でも増えたら嬉しく思う。

田中なつみ

『RYOKAI MANDA-La MANUAL』は、田中による「両界曼荼羅」の解説書である。ただし、巷に溢れる解説書とはわけが違う。田中は曼荼羅に関する書物を徹底して読み込み、分析し、その関係性を紐解くべく視覚言語化を進めた。曼荼羅の「図」は見て理解できるものとされるが、一般的には難解だ。なぜなら図の背後には膨大な数の記号と言葉とその意味が存在するからだ。その意味を「わかったかのように」でなく、あくまでも読者が理解できることを前提として編まれたのが本書である。大悲胎蔵生曼荼羅と金剛界曼荼羅の二項を両面から読み進むと中央で「両部不二(二つでありながら一体となる)」となる造本。そして現代的なタイポグラフィと精緻な図解構造。田中の4年間の結晶がここにある。

視覚伝達デザイン学科教授 白井敬尚

西島明日香Nishijima Asuka

作品写真:神話博物誌
作品写真:神話博物誌
作品写真:神話博物誌
作品写真:神話博物誌
作品写真:神話博物誌
作品写真:神話博物誌
作品写真:神話博物誌
作品写真:神話博物誌

神話博物誌Mythic Natural history

本|紙、革Book | Paper, leatherH370 × W260mm

私は、「世界を作ったプロセスを記述した創世神話」を「黄金期である18世紀から19世紀の博物誌」の形態を用いて、編集することを試みた。
神話と博物学は相反しているように思えるが、一方で近しいものでもあった。キリスト教が信仰される中で博物学は、神が創った世界を知る行為であり、神に近づく行為として、宗教的行為の一環であったのである。
メディアは違うが近しい性質を持った両者の結びつきを、本書によって感じてほしい。また、世界中の神話を博物的にまとめた本書は、人類の根源的な自然への考え、そして想像力とはどんなものなのかを知る助けとなるだろう。

西島明日香

西島さんは最初のテーマは「19世紀ぐらいのイギリスあたりの文筆家?」という曖昧なものだった。しかしそこから文献を読みまくった。毎週数冊ずつの書籍を読み、博物学、進化論、最後は神話まで世界が広がり、頭の中を充実させ具体化していった。しかし、そのようにしてできた作品のコンセプトを包含し、凌駕するほどの質感を見せたのはそこに添える各動物のイラストレーションである。1年かけていろいろな理論や手法を調査してコンセプトを熟成し、それを補完するとてもレベルが高いイラストレーション。これらの力が彼女によって結集され、最終的に非常に質の高い作品となった。

視覚伝達デザイン学科教授 古堅真彦

柳田真優Yanagida Mayu

作品写真:言葉はカメレオン ―言葉の印象が変化する理由―
作品写真:言葉はカメレオン ―言葉の印象が変化する理由―
作品写真:言葉はカメレオン ―言葉の印象が変化する理由―
作品写真:言葉はカメレオン ―言葉の印象が変化する理由―
作品写真:言葉はカメレオン ―言葉の印象が変化する理由―
作品写真:言葉はカメレオン ―言葉の印象が変化する理由―

言葉はカメレオン
―言葉の印象が変化する理由―Words Are Chameleons
-Reasons Why We Perceive Words Differently at Times-

本|紙Book | PaperH210 × W148mm ×10冊

カメレオンが周りの環境や自分の気分によって姿の印象を変えるのと同様に、私達人間の言葉がもつ印象も変幻自在である。同じ言葉でも、言語・非言語問わず様々な要因によってがらりとその意味やイメージは変化していく。私はそんな変化する面白さを意味する「言葉はカメレオン」をコアコンセプトに、言語のイメージが変わる理由を十の項目に分類し、日本語話者と英語話者のどちらもが楽しめる形式の絵本シリーズを製作した。

柳田真優

柳田さんは異なる言語間で翻訳を行う際に生じる微妙なニュアンスの違い、また同一の言語でもそれが発せられる状況によって解釈が多様に変化していくことの不思議さに着目し、それが本制作のきっかけである。彼女は先行する言語学の研究を調べ、自ら膨大な事例の収集を行った。それらを10のカテゴリー(場面・異文化・立場・態度・表情・攻撃性・演出・強調・慣用句・句読法)に分類する中で「言語はカメレオン」というコンセプトに至った。編集、テキスト、イラストレーション、造本デザインのどれもが大変高いレベルであり、彼女の持つ総合的な能力が遺憾無く発揮された優れた作品となった。

視覚伝達デザイン学科教授 寺山祐策