井口けんじ個展 About my self exhibition ’fá?ná:ts’

日程 2011年1月18日(火)~2011年1月23日(日)
場所 横浜 岩崎美術館

井口けんじさん(彫刻学科卒業)の個展のお知らせ。

【詳細】

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本展示会は、作家本人が16歳の頃、美術学校の門の前に立った時節から、19歳、美術学校の門をくぐり抜け、初めて人に専攻を尋ねられた時節までの情緒を、ものすごく抽象的な観念で表現したものである。

今回の主題’fá?ná:ts’は「ファイナーツ」と発音をうながすため、わざと発音記号表記をした。ある外国人に専攻を聞かれ、「Sculpture(彫塑)」と答えたが、その人は納得した表情で「Fine Arts(純粋美術)」と囁いたのを聞いた。作家本人には、少なくとも「ファイン・アート」ではなく「ファイナーツ」と聞こえたのである。確かに。

10代後半は、人生の中でそれ程大きな影響はないが、一般的に進路をきめる時期である。たかが2、3年ではあるが、作家本人には気の遠くなるような長い歳月であった。幼い頃から特別に美術教育を受けたわけでもなく、身内に美術家が居るわけでもない作家にとっては、比較的に楽観的でありながらも、見えない物に対する、想像と模索の毎日であった。しかし、ふたを開けると、個性の強い仲間たちは何処へやら、意外と普通の人が試験というフィルターを通過する。そして数年後、想像を絶する労力を用い作品と向かい合うのだが、最初のイメージ、想像した物は何処へ行ってしまうのか。

最近、長い海外生活を終え、帰国した作家本人は、毎日自分を取り戻し、呼び起こすために、自分の生まれ育った東京の地域を自転車で隅から隅まで飛び回り、写真を撮る。まるで小学校低学年の社会科の授業を30年ぶりに復習するような物だが、意外と新しい発見がある。地図や資料の写真でおぼろげに憶えていた物を、現実に目のあたりにして実感できるためだ。例えば、広島以外の地域の人間が、写真の原爆ドームしか知らなく、初めてそれを目のあたりにするとき、どのように感じるか。あるいは、東京スカイツリーの工事現場を真下から見上げてみた経験があるかないかでどう違うか。大して違いないと言う人もいるだろうが、作家本人は大きく違う事を悟ったのである。

ただ、そんな日常の中、10代後半、特殊な色眼鏡が必要だった時期、それが無くしては生きて行けなかった現実を作家は思い出す。
ふとした大都会の隅っこに発見した、ちょっとした風景を眺めていた時、すっと空から舞い降りてきたキーワード「ファイナーツ」、それが今回の展示会の主題である。

そして今回、コンピュータメディアアートを導入している。けして目新しいものではないが、手間隙をくわえて、立派な造形物に仕上げることを試みた。商品化されたソフトウェアやメディアの形式に飲み込まれぬよう、アートとして独立させた形である。観客に安心感と親近感を与えるためである。

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