志田陽子教授の論文「裁判官と「表現の自由」」が『現代思想』8月号に掲載

志田陽子教授(教養文化・学芸員課程)の論文「裁判官と「表現の自由」」が『現代思想』8月号(2023年7月27日刊行)に掲載されました。

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(志田教授より)
裁判官の世界は、美術を志す学生さんには遠い世界に思われるかもしれません。しかし、美術・芸術・デザイン・文芸が裁判で問題となる例はたくさんあり、それらの裁判では、裁判官がこの領域に十分な理解を持っているかどうかが決め手になる場合もあります。そして、法律を専門とする人々の中には、美術を手掛けることはできないけれども、美術への理解を、美術と法との良い関係づくりに生かそうと努力している人がたくさんいます。私もその一人です。

その中で、裁判官自身の「表現の自由」はどうなっているのでしょうか。

じつは、かなり厳しい制約があります。法律上の制約もありますが、法律以上に厳しい事実上の制約もかなりあるようです。それは憲法に照らしてみたとき、本当に必要な制約なのだろうか。国民にとっては、裁判官の神聖なイメージを守ることよりも、知る権利の観点から、裁判官にもっと語ってもらうことのほうが大切なのではないか。そんな疑問を、論文にまとめてみました。

ムサビの授業では、なるべく、美術・デザインに関わる法学問題を取り上げるようにしていますが、学外に発表する論文では、このような論文も書いています。一見、美術・デザインとは関係のないテーマではありますが、美術・デザインに理解のある自由な心を持った裁判官が活躍できる社会になれば、めぐりめぐって美術・デザインの世界と《法》の関係も、もっと豊かなものになっていくのではないか、と思っています。

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