キムミンヨンさんが日本タイポグラフィ年鑑2015 学生部門にて入選

キムミンヨン

キムミンヨンさん(大学院造形研究科修士課程デザイン専攻視覚伝達デザインコース1年)が日本タイポグラフィ年鑑2015 学生部門にて入選されました。

入選作品 混植書体見本帳(2014)
作品概要 ヨーロッパではグーテンベルクによる活字版印刷術が発明されて間もない頃から、複数の文字組版の段組み(コラム)で多国語対訳書籍(主に聖書)が作られてきた。同じ国でも地域によっては使用する言語が異なっている場合も多く、書物の複製・量産を目的に発明された活字版印刷術ができてからも、ラテン語とギリシャ語など複数の言語による文字組版の視覚的な問題は避けられない課題であった。
近・現代ではあらゆる面においてグローバル化が進んだことにより、異なる国家や民族の人とモノとが行き交うようになった。その影響が最も顕著に現れるのが言語である。アジア圏では、いまや世界の共通言語となった英語だけでなく、周辺諸国の言語を併用して記述しなければならない状況や環境が年々増加している。例えば、ポスターや掲示板などの告知物のほか、書籍やパンフレット、ウェブなどのメディア、とりわけ公共交通機関の表示(サインシステム)の整備は急務となっている。しかし、アジア圏では、多言語併記に対してあまりにもないがしろにされている傾向があるのではないだろうか。異文化交流がもはや自明となった現在、アジア圏における言語の二カ国語以上の表記についての研究は必須であると考える。
ラテン・アルファベットとアジア圏の文字は、その成立と発展の仕方が全く異なるため、統一された1種類の活字で組む事は難解である。可変する文字幅、固定された文字幅という異なる性質の文字を、違和感なく読む事ができるようにするためには、視認性・可読性・判別性、文体構造など、それぞれの言語と文字の歴史を理解する事が必要である。
和文の活字は全角で形成されている。ハングルは鉤括弧などがまれに全角で使われるが、基本的には欧文活字の約物を仮借して使っているため半角である。欧文約物は基本的に半角が基本だが、書体の種類によってその字幅はまちまちで、そこに和文活字の全角の使用をみることはできない。 先に和文活字は全角だと記したが、全角に収められる活字以前の日本の書記言語では、各文字種の幅は可変であった。とりわけ筆による筆記体は、文字同士が連なる連綿であるため、前後に来る文字や、書く速度によって字形も字幅も異なり、どれひとつとして同じ文字はない。このことから、3つの言語を併記する際の和文の約物を、仮に半角と設定して組み実験を行なうこととする。
形も意味も歴史も異なる3つの言語を、どのようにして一緒に組んでいくのか。相容れる部分とそうでない部分はどこなのか。これらの違いを調和させ、各言語の文を形成するには、何と何をつなげ、どこに意味を見いだして繋げていくのか。3つの言語を併記するとき、どのようなシナジーが生まれるのか。
完全に3ヶ国語(日本語・韓国語・英語)翻訳されたトライリンガル・ブックであり、文・編集・訳・デザインはすべて製作者(デザイナー)が担当。

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