伊藤知宏個展「ベジタブルズ・イン・アイソレーション」

日程 2020年10月30日(金)~2020年11月15日(日)
16:00-21:30 *定休:水曜日 *土・日曜日は15:00から
場所 納戸 / gallery DEN5(東京都杉並区和泉1-3-15 市場入口)

伊藤知宏さん(2003年度油絵学科卒業)の展覧会のお知らせ。

伊藤知宏個展「ベジタブルズ・イン・アイソレーション」

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ニューヨーク在住の作家による新作ドローイングです。

展覧会概要:
混沌とした感染症が世界的に蔓延する現代。
こんな書き出しも、決してSFの世界の中だけではなく、普通に使えてしまうこの世の中の変貌に僕自身も大変驚いている。
今、僕は世界でも最もコロナウィルスの被害が多い街の一つ、ニューヨーク(以下NY)にいる。

コロナウィルスの影響もあってか、最近ではスーパーマーケットにもあまり積極的に行くこともなくなったが、その代わりに農家から週に一度野菜を送ってもらっている。これらの野菜は、価格も近所のスーパーマーケットで購入するのとそんなに変わらず、いびつな形やいたんだものもあれば、畑の土がついたも野菜もあるが、味は素晴らしい。また、スーパーの野菜にはないその有機的な形は、僕の絵を描きたいという気持ちを高ぶらせている。本展覧会のタイトル「ベジタブルズ・イン・アイソレーション」(孤立の中の野菜)はコロナウィルスのためにあまり外に出ることのない僕の生活スタイルとこれらの野菜との関係から生まれた。

今アメリカでは、11月3日に行われる大統領選で湧いている。ブラック・ライズ・マターやアメリカでのコロナウィルスの遅れた対応の影響もあり、トランプ現大統領とバイデン元副大統領の支援者がはっきり分かれてしまっている。これは、今まで白人至上主義や富裕層に支えられてきた傾向が強いトランプ大統領の政策の結果といっても他ならないだろう。BBCの記事によると、今回の選挙の事前投票は現段階(10月17日)で、4年前の約4倍の投票率で、それだけ国民の高い関心があるのも今回の選挙の特徴だ。

ある日、友人と話していると、どちらの候補者に投票するかという話になった。結果的には「どちらかというとバイデンの方が良いので彼に投票する」という答えが多かったが。それに付け加え、「どちらも大きくは変わらないのではないだろうか。」という意見も多かった。どちらも目新しい政策が打ち出せずにいることが理由だが、そんな中僕が冗談で「じゃあ今描いている絵を旗にして、新しい国の旗にして振ったらどうか。」という案を言ったところ、「いいね、やろう!」ということになった。それが今回の大きな作品のタイトル「ニュー・フラッグ・フォ-・ニュー・カントリー」(新しい国ための新しい旗)だ。(ちなみにこの絵に描かれた、新鮮な野菜がモチーフの絵は健康やポジティブでラディカルなエネルギーの象徴として描いている。)僕たちは今、この政治からも感染症からも抑圧を受けている状況下で、なかなか生活の中に良いイメージを持つことができずにいる。この作品、「ニュー・フラッグ・フォ-・ニュー・カントリー」でそれらから一時的に脱し、明るい未来を想像することができ、まるで心が息のしづらいこの現状を少しでも改善し、心が呼吸ができるように、この作品を製作した。これによって、現実社会では難しい繋がることができないかという考えだ。
この旗は実際に10月にNYの街で、旗をふるパフォーマンスも行った。この時の写真は今回の展覧会で数点展示されている。

アメリカでは出会った人と仲が良くなると、政治的な内容の話をする事が少なくない。そんな話題でも楽しめるとは、政治的な話題がどことなくタブーとされている日本とは違い、良くも悪くも本当に自由だと思う。
この作品をアメリカだけに限らず、コロナウィルスや、自国の政府のあまり遅れたサポートにより、なかなか前向きになれない世界中の友人たちにこの作品を送る。愛を込めて。

2020年10月17日 伊藤知宏

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