藤田尊潮

藤田尊潮(ふじた・そんちょう)
FUJITA Soncho

専門
フランス文学、比較文学
French Literature, Comparative Literature
所属
言語文化
Language and Culture
職位
教授
Professor
略歴
1991年4月着任
1958年東京都生まれ
早稲田大学大学院博士課程単位取得退学
パリ第4大学(ソルボンヌ)博士課程DEA取得
研究テーマ
フランソワ・モーリアックおよびサン=テグジュペリ研究。

著書:『一冊で世界の名著100冊を読む』(共同執筆)友人社、1988年。『プチ・ロワイヤル和仏辞典』(初版執筆協力)旺文社、1993年。『パリのミュゼでフランス語!』白水社、2002年(共著)。『やさしくミュゼでパリめぐり』白水社、2005年(共著)。『「星の王子さま」を読む』八坂書房、2005年、『星の王子さまの教科書』武蔵野美術大学出版局、2007年、『コクリコ』白水社、2010年。『サン=テグジュペリ ―イメージの連鎖の中で』八坂書房、『モーリアック ―文学と信仰のはざまで』八坂書房 、2017年。
論文: "La Théologie de la grâce chez François Mauriac" 日本フランス語フランス文学会欧文学会誌、1993年ほか多数。
口頭発表:「フランソワ・モーリアックにおける神の恵みの神学」早稲田フランス文学会秋季大会、1988年11月26日。「F.モーリアックにおける神の恵みの神学 ―〈 conversion 〉に前後する一連の小説をめぐって」日本フランス語フランス文学会秋季大会、1991年10月27日。
訳書:『世界樹木神話』(共訳)、1995年、『小さな王子』2005年、『画家は語る』2006年、『ギュスターヴ・モロー』2007年、『オディロン・ルドン』2008年、『19世紀の画家たち』2009年、『呪われた画家たち』2010年、「彫刻とは何か」マルセル・ジモン著『マルセル・ジモン』2012年、『モンパルナスのエコール・ド・パリ』2013年、『トゥールーズ=ロートレック』2014年、『アンリ・ルソー』、『パリの画家、1924』2015年、『ベル・エポック』2016 年、『ジェームズ・アンソール』 2022年(共訳)、以上いずれも八坂書房。「はじめての哲学シリーズ」『愛すること』『生きる意味』2011年、『哲学してみる』(共訳)、『よいことわるいこと』、『神さまのこと』2012年、以上いずれも世界文化社。
編著:『マン・レイ 「インタビュー」』武蔵野美術大学出版局、2002年。

I study French literature, especially authors of the interwar period, with a focus on Francois Mauriac and Antoine de Saint-Exupery. Regarding Mauriac, I have employed the thematic method in writing about the natural imagery in his novels, particularly those written in the 1920s and 1930s. Regarding Saint-Exupery, I study the relationship between his life and work. My publications include a book titled Hoshi no ojisama wo yomu (Reading The Little Prince). As a French-language educator, I am constantly searching for the most appropriate textbooks for use at MAU. My other publications include Pari no myuze de furansugo! (Let’s Learn French in Paris Museums!), Yasashiku myuze de Pari meguri (An Easy Tour of Paris Museums), Hoshi no ojisama no kyokasho (The Little Prince Textbook), and, as editor, Man rei intabyu (Man Ray Interview).


フランソワ・モーリアック研究

フランス20世紀を代表する作家フランソワ・モーリアックの研究を専門分野のひとつに据えている。この分野でこれまであまり用いられてこなかった現代批評的アプローチ、特にテーマ批評の方法を用いて多角的な考察を行うことが研究の主な目的である。
主著『モーリアック ―文学と信仰のはざまで』八坂書房、2017 年。『テレーズ・デスケルウ』を始めとする代表作を論の中心に据え、作家の信仰の不安と「回心」を軸に、隠れた「告解のテーマ」の存在を明らかにし、自然のイメージを通して想像世界の本質に迫ろうとする試み。

サン=テグジュペリ研究

両大戦間を代表する作家であり、実際航空路線のパイロットでもあったサン=テグジュペリは、パイロットとしての経験をもとにヒューマニズムに裏付けられた数々の名作を世に出した。彼の時代、文学作品を発表するパイロットはほかにもいたが、サン=テグジュペリの文章は比類なく、美しくそして力強い。最後の作品『星の王子さま』と遺作『城砦』は彼の全作品の謎を解く鍵のようなものである。
主著『サン=テグジュペリ ―イメージの連鎖の中で』八坂書房、2017年。サン=テグジュペリは人と人とが互いに孤立し、「心の伝達不可能性」に囚われた現代社会に心を痛めていた。彼は「個別性」を超えて人を「結び合わせる」力強いイメージが必要だと考える。そして彼は人間関係を「絆」のイメージで描き出す。彼の自己実現のイメージは自己自身とその「絆」との「交換」であるということを本書は論じている。

『「星の王子さま」を読む』(八坂書房、2005年)では『星の王子さま』の成立過程とテーマについて、サン=テグジュペリの遺作『城砦』との関わりを中心に論じている。『小さな王子』はとかく難解な物語としてとらえられがちな『星の王子さま』を新しい視点で捉え、子供にも読めるようにやさしい日本語訳を試みた。

『世界樹木神話』

「人間を自然へと、俗を聖へと、日常を神性へと調和させていた宇宙を秩序づける鍵を再発見することは、現代の思想にとって時宜にかなったことだといえる。」「世界は一本の樹が支えていた。」ギリシャ・ローマから南アメリカまで世界各地の「宇宙樹」への崇拝を解明する、アカデミー・フランセーズ文学大賞受賞作家ジャック・ブロスの大著の翻訳。八坂書房、1995年(共訳)。

マルセル・ジモン研究

『マルセル・ジモン』八坂書房、2012年(共著)。20世紀フランス前半を代表する彫刻家の一人、マルセル・ジモンの共同研究を一冊の本にまとめている。マルセル・ジモンは生前高い評価を受けながらも、第2次大戦後の美術界の世界的な大変動の中で置き去りにされていった彫刻家で、本書はその再評価のきっかけとなるよう願いを込めて編纂された。藤田訳ジモンの彫刻論「彫刻とは何か」( Comment je comprends la sculpture ) の翻訳と論文「静寂主義の作家マルセル・ジモン」を収録している。

「自作を語る画文集」シリーズ

画家が語る彼自身のことばを通して絵画を読み解く画文集。藤田によるテクストの編・訳書。八坂書房の提案で始まった企画で、現在も継続中。

『ジェームズ・アンソール』2022年刊行(編・共訳)
19世紀後半〜20世紀前半、表現主義やシュルレアリスムの先駆ともされ、近代ベルギーを代表する画家のひとりであるアンソールは、グロテスクな仮面と骸骨の画家として知られる。画家が残した文章(講演原稿など)や膨大な書簡集の中から、印象的な文章を抜粋し、一度見たら忘れられない不気味な仮面と骸骨の謎に迫る。

『ジェームズ・アンソール』2022年刊行

『アンリ・ルソー』2015年刊行(編訳)
パリの入市税関で働く日曜画家であったため、通称「税関吏ルソー」。19世紀後半に41歳でデビューし、展覧会に出した絵は子供が描いたようだと嘲笑されたが、詩人アポリネールやピカソからの称賛を受け、後年には高い評価を得る。今日でも多くの謎に包まれたルソーの書簡やインタビューなどに見える本人のことばと、そこで言及される作品を集成し、画家自身にとっての真実を探るオリジナル画文集。

『トゥールーズ=ロートレック』2014年刊行(編訳)
19世紀末、パリの新興歓楽街モンマルトルの風俗とそこに生きる人びとの哀歓をシニカルな視点で描き出し、ポスター作家としても有名なロートレック。画家が遺した600通余りの書簡から、自作についてのコメントや創作にかかわる記述を選りすぐり、作品とともに集成した貴重な画文集。

『オディロン・ルドン』2008年刊行(編訳)
19世紀から20世紀初頭、「黒(ノワール)」と自在な色彩感覚でシュルレアリスムを先取りする華麗な幻想世界を創造したオディロン・ルドン。画家が遺した手記や手紙から自作についてのコメントや芸術観を綴った文章を選りすぐり、作品とともに集成した興趣尽きない画文集。

『ギュスターヴ・モロー』2007年刊行(編訳)
19世紀後半のパリ、印象派が台頭する衝撃の中にあって、神話や聖書に題材を取った独自の世界を創造し、世紀末の文学者らを熱狂させたギュスターヴ・モロー。彼が遺した生前未発表の手記をはじめてまとめて日本語で紹介した。自作解説や芸術観などを吐露した画家のことばとそこで言及される作品を中心に集成したはじめての画文集。

『画家は語る』2006年刊行(編訳)
1958〜64年のパリ。今日ではすでに美術史上の伝説となりつつある〈モダンアートの旗手たち〉が自らをさらけ出し、同時代を証言する。この時期にしかなり得なかったまさに奇跡ともいえる鮮やかなインタビュー集。

美術史関連翻訳書

エリック・プロッター編(翻訳)『19世紀の画家たち』、モーリス・セリュラス著(翻訳)『呪われた画家たち』、J.Pクレスペル著(翻訳)『モンパルナスのエコール・ド・パリ』、フロラン・フェルス著(翻訳)『パリの画家 1924』、フロラン・フェルス著(翻訳)『ベル・エポック』など、19世紀末から20世紀初頭のパリを主な舞台に繰り広げられる画家たちの営みを活写した興味深い書籍の翻訳。特に美術史家フロラン・フェルスの書物に注目し、翻訳刊行しており、今後も出版の可能性がある。

オスカー・ブルニフィエ作、ジャック・デプレ画の絵本「はじめての哲学」シリーズの翻訳書全5巻(世界文化社、2011年)

フランスで権威ある賞を多数受賞し、世界19か国で翻訳されている話題の哲学絵本の日本語訳バージョン。オスカー・ブルニフィエはフランスの著名な哲学者ですが、哲学者のことばから学ぶ哲学本とは異なり、自分で哲学することを助けてくれる、まったく新しい哲学本。なかでは哲学的な12の大テーマを「理性と情動」「肉体と精神」など対立するものの見方を通して考える。やさしい文章と、キュートで意味深なイラストは、わたしたちの理性と感性に同時に作用して、いろいろと考え始めずにはいられなくなってしまう。答えは出ても出なくてもいい。あれこれ考えることを楽しんでこそ哲学なのです。

フランス語教科書

武蔵野美術大学に合ったフランス語教科書が必要であるという観点から、やさしい文法・会話教科書『コクリコ』(白水社、2010 年)、「美術」をテーマに『パリの美術館』に取材した教科書『パリのミュゼでフランス語!』(白水社、2002 年共著)、『やさしくミュゼでパリめぐり』(白水社、2005年共著)を執筆している。また「中級フランス語」の教科書として『星の王子さま』に題材を採った『星の王子さまの教科書』(武蔵野美術大学出版局、2007 年)、写真家マン・レイのインタビューを編集、注解した「上級フランス語」購読用の教科書『マン・レイ「インタビュー」』(武蔵野美術大学出版局、2007 年)を執筆編纂している。

『コクリコ』

『パリのミュゼでフランス語!』

『やさしくミュゼでパリめぐり』

『星の王子さまの教科書』

『マン・レイ「インタビュー」』