令和7年度武蔵野美術大学卒業式典
| 日時 | 2026年3月13日(金) 11:00開式(10:00開場) |
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| 場所 | 武蔵野美術大学 鷹の台キャンパス 体育館 2階アリーナ |
| 詳細 | 以下のリンク先をご確認くださいTOPICS 令和7年度卒業式 |
式次第
- 在学生ジャズパフォーマンス
- 開式の辞
- 校歌斉唱
- 教員紹介
- 学位記授与
- 卒業・修了制作(論文)優秀賞授与
- 学長式辞 樺山祐和
- 理事長祝辞 長澤忠徳
- 教員祝辞 小林昭世
- 校友会会長祝辞 萩原幸也
- 閉式の辞
- 在学生ジャズパフォーマンス
会場風景



学長式辞

武蔵野美術大学学長 樺山祐和
本日、ここに卒業生、修了生。
通学課程、造形学部842名。造形構想学部157名。
大学院造形研究科修士課程134名。同博士後期課程3名。
大学院造形構想研究科修士課程57名。同博士後期課程2名。
海外からの留学生207名。
通学課程総数1,195名、通信教育課程203名、総数1,398名の卒業生、修了生を送り出すことができましたことは、本学、教職員、スタッフ、並びに全ての関係者にとって喜びに耐えないことです。また、これまで学生たちを様々にお支えいただいた、ご家族、保護者の方々に、とりましても、お喜び、ひとしおであると、ご推察申し上げます。
皆様をここ武蔵野美術大学にお招きし、卒業式を挙行できますことを大変嬉しく思っております。美術を志す若者たちの背中を押しつづけ、励まし、理解してこられた、ご家族、保護者の方々のお気持ちに思いを馳せる時、心から、お祝いをお伝えしたく存じます。
本当に、おめでとうございます。
卒業生、修了生諸君。卒業、修了おめでとう。
皆さんは、武蔵野美術大学に入学し、今日、この日、卒業、修了の日を迎えました。これからそれぞれの新しい旅が始まります。ここにいる全ての卒業生修了生にそれぞれの旅があります。
一つ一つの旅はかけがえのない一度きりの特別な旅なのです。
今、世界で発生している戦争や紛争。そして主義主張がぶつかり合う国際社会の情勢は、分断を生み、世界は混沌として行き先の見えない状況です。様々な事象が錯綜し、複雑に絡み合い、合理と効率が優先される現代社会において、創る行為は、どんな意味を持つのでしょうか。
私たちは、明日への希望のために、一体どんなものが作れるのでしょうか。
しかし、これだけは言えます。
君たちがここで学んできたこと、作品を作ってきたこと。その「純粋さ」にこそ真実があるということを。その純粋さこそが、これからの人生の全ての基礎になってゆくということを。それこそが信じることのできる大切なものだと言えるものです。
君たち一人一人が心血を注いで作り上げたすべての卒業制作、修了制作は、この世界の創造性を押し上げ、この時代を照らし、人々を勇気づけ、良き方向へと導く力になっているのです。
評価を得た作品も、そうでない作品も、すべての作品が、今、ここにいる君たちすべてのエネルギーの連鎖によって、作られたものです。君たちが作りあげた作品は、決して、一人の力のみで作られたものではありません。
君たちを支えてきた家族、友人、スタッフ、教職員、その他、様々な出会いによって、そして、インスピレーションを与えられた物、事によって作られたものであるでしょう。
すべての作品が、この、武蔵野美術大学という場において繋がり、響き合い、輝いているのです。
私たちが作り続ける意味は、たとえ評価されることがなくとも、作品が世に出なくとも、私たち人間の作るという営み全体に、熱をもたせ、社会を変えてゆく力になってゆくのです。
この時代に生きる者の作るという行為全体が、この時代を表す作品に結びついています。
作るということを通して、この世界を少しでも良きもの、美しきものへと押し上げてゆくこと。
美術の力をこれから行く、新しい場所で、自分なりに周りの人々に伝えてゆくこと。なされるのです。人間的使命があるのだと思います。武蔵美で、学び作り、美を追い求めてきたことを、新しい場所に行っても、心に刻んで生きていってください。
創る行為は人間が人間らしくあるための営みです。正解を探すのではなく問いを深め持ち続けること。他者と対話すること。そして、世界を見続けること。創るとは世界と自分の関係を、問い続けることです。そして、それは人間の想像力の発露であり、その持続が、世界の閉塞感と人間の疎外感を打ち払い、未来を切り開いてゆく力となるのだと思います。美術は人々を幸せにする人間の営みです。日々の生活を豊かにし、人々を幸せにすること。心の奥で聖なる純粋なものに触れ幸せを感じること。ここにいるみんなが幸せの生産者なのです。
卒業のこの時、全ての卒業生、修了生に、贈る言葉があります。
幸せに、なってください。ここで言う幸せとは、「自由である」という事です。自由とは何か。
本学の建学の精神に「真に人間的自由に達するような美術教育」があります。
この言葉の前文を含めたものは「その枠を固定させず、しかし放縦に任せず、真に人間的自由に達するような美術教育への願い」というものです。それを言い換えれば、「既成概念に縛られず、世界と対話することを通して、表現することさえからも自由なるような美術教育への願い」と言うこともできるでしょう。みんなは、この教育理念のもとで学んできました。それは、徹底して基礎を学んできたということなのです。自由になるには、幸せになるには基礎が必要なのです。
武蔵美での学びとは、底流において、自由とは何か知る事であったとも言えるでしょう。
これからの新しいステージにおいて、新しい学びが始まります。今までの自由が通用しない、許容されない事も起こってくるでしょう。しかし、武蔵美で培った自由への意志の種は、みんなの中に既に蒔かれています。これから出会う様々な物事や人々との対話の中で、頑なにならず、柔軟に、そしてしたたかに、大学とは違う新しい自由を手に入れてください。
武蔵美で学び、武蔵美で過ごした時間が、今とは違う時間であることを、みんなは知ることになるでしょう。自由とは堰き止められた時に意識され、その意味に気付かされるものです。これから上手くゆかないことも起こるはずです。
しかし困難に直面した時こそ力が試されるのです。
みなさんは課題を発見し、それをどのように乗り越えて行くかを徹底的に学びました。その学びを社会で活かす時がやってくるのです。
この現代という時代は、私たちにとって、あるいは生命にとって必ずしも優しいものではないでしょう。これからは予測のつかない出来事や想像もできない事が生じてゆく可能性もあるでしょう。科学技術の発展によって様々に未来は予測されている一方で、人間は未だに争うことについて何一つ克服していません。そんな先端と原始が同時に現生している時を私たちは生きています。「わからない」時代を生きているのです。しかしわからないからこそ強い問いを発する事ができる。絵を描くことも、彫刻を作ることも、デザインをすることも、建築することも、芸術について考えることも、わからない未知の沃野があるからこそ、ワクワクドキドキする。わからない時代だからこそ美術、デザイン、芸術文化はその力を発揮できるはずです。
これからの君たちの「つくる」が、私たち人間のそして私たちのこの惑星の未来にかかっています。
みんな、がんばれ!
理事長祝辞

学校法人武蔵野美術大学理事長 長澤忠徳
2025年度・令和7年度の卒業式を迎えられた、造形学部と造形構想学部卒業生の皆さん、大学院修士課程修了生の皆さん、また、博士課程を終えて博士号を取得された皆さん、合わせて1,398名の皆さん、ご卒業おめでとうございます。この中には、207名の留学生の皆さんも含まれています。
今日、とっても晴れやかな笑顔で、本学での学びの一区切りを迎えられた皆さんに、学校法人武蔵野美術大学・理事長としてお祝いを申しあげます。
さらに、この中には、5名の博士号を取得された諸君がおられますが、美術・デザイン分野の卓越し突出した最高位の学位を授与できますこともまた、本学の大きな喜びであり、あらためてお祝いを申し上げたく思います。おめでとうございます。
また、学生諸君の勉学を支え、見守ってこられた保護者の皆さま・ご家族の皆さまの喜びもひとしおかと存じます。おめでとうございます。
我が国の美術大学を代表する伝統あるこの武蔵野美術大学に、ご子弟を学ばせていただきましたご理解とご支援に深く感謝し、学校法人武蔵野美術大学を代表して、心より御礼を申し上げます。ありがとうございました。
本学の教育理念である「真に人間的自由に達するような美術教育への願い」のもと、皆さんは、学びの過程における「創造の持久力」を遺憾なく発揮して、立派なムサビ生になられたことは、私たち教職員の大きな喜びであります。
今日は、理事長からのお祝いとして、今、門出を迎える皆さんに、いくつかの話をさせていただきたいと思います。
私は、学長時代も、そして理事長となった今もなお、創造的人材を育成する大学、つまり「武蔵野美術大学そのもの自体が、創造的でなければならない」と信じています。
「一歩踏み出せば、きっと何かが変わる」からと、2019年、当時の私は学長として、造形構想学部創設と市ヶ谷キャンパス開設に際して、「創造的思考力」を身につけるための「既存のルールのその先へ…」という意味で、「Beyond the rules!」を掲げました。
皆さんの母校、私立大学としてのムサビは、長い歴史の中で、怯むことなく、わが国の美術系大学において最初となるさまざまなことに、チャレンジしてきました。誰かが最初にやらなければ、新たなことは生まれません。最初に挑む立場は、いろんな批判の対象にもなり、決して容易な進み方ではありません。しかし、これまでも、そしてこれからも、皆さんの母校ムサビは、果敢にチャレンジを続けて「創造性」を体現し、皆さんの活躍の追い風となり、応援し続ける存在でありたいと願っています。
私は学長時代から、毎年の入学式で、「あの遥か彼方に見える水平線に立てるか?」と、創造的な生き方の根幹を支える「果てしないものへの挑戦」と「信じることの重要性」を、繰り返し、学生諸君に問いかけてきました。それは、ムサビに入学し、この「創造」の航海に漕ぎ出して以来、数多くの困難を経て、半世紀を超える私自身への問いかけでもありました。
創造すること、クリエイティブであること、創造という未知への挑戦は、理屈を超えて「水平線の上に立つ」ことを信じる…ことに似ていると、私は信じているからです。
水平線に向かって漕ぎ出し「水平線の上に立とうとする」みなさんの航海は、これからも続きます。むしろ、これからが大海に漕ぎ出す大切な人生の航海なのです。
ものごとを「創造」するには、精神的にも、肉体的にも、長い期間の集中に耐える「持久力」が必要です。「造形すること」も「構想すること」もまた然りです。「持久力は、折れずにしなって事を成し遂げる力」です。皆さんのムサビでの日々は、自らの「創造の持久力」を高める鍛錬でもあったのだろうと思います。
もうひとつは、「心の音を聞け!」と言う話です。
皆さんが、クリエイティブな態度で生きていくには、強い意志が欠かせません。想像してみてください「意志」という言葉の「意」という漢字は、「音」と「心」からできています。自分にしか聞こえない「心の音」を聞き、自分の外に表出すること、あらゆる可能な方法で、自分の「心の音」を自分の内から外へ、表に現す「表現」への修練が、さまざまな体験を通した皆さんの、ここムサビでの学びであったはずです。
だから、何か困難に遭遇したり、行き詰まった時には、自らの「心の音」に耳を傾けてください。それこそが「表現」の根幹をなすものだからです。その内なる「心の音」こそ、皆さんそれぞれの「個性」なのです。どうか、「創造の持久力」を高めることができた自分に自信を持って、「心の音」を聞き、しっかりと生き抜いてください。
今、私たちを取り巻く環境と文明は、世界的規模で、大きく、激しく、変化しています。想像を絶する速さで進化する「生成AI」の驚異的な進化は、まさに、時代を大きく変える勢いです。皆さんは、そんなさらに進化する高度情報通信文明の世界へ踏み出していきます。社会人としての皆さんは、決して、粗雑であってはなりません。正しい倫理観と礼儀を持って、逞しく生き抜いていかなければなりません。
一方で、我が国の少子高齢化も予測以上の速さで、深刻さを増してきています。このままでは、日本は人口的には縮んでいくことはさけられません。さらには、地球の温暖化・気候変動はもとより、長引くロシア軍のウクライナ侵攻はじめ、最近では、中東地域でも戦争状態となり、多くの犠牲者が増え続ける悲惨な状況となっています。
「この地球上で生きること」自体の「安全・安心」が脅かされる難題が山積し、増え続けています。
なによりも、生命の尊さを第一義に、私たちは、世界の平和と安全を希求し、傷ついた世界を、望ましい姿に再生していかなければなりません。美術・デザイン、そして創造の世界に生きる皆さんは、今こそしっかりと「心の音」を聞き、ムサビで培った「創造的思考力」を存分に発揮して、世界の再生に貢献していただきたいと期待しています。
「教養を有する美術家養成」「真に人間的自由に達するような美術教育」という理念のもと、その修練の日常を通して、本学に学んだ卒業生の皆さんは、これから、クリエーターとして、また、イノベーターとして、社会の一翼を担い、鍛えた「創造の持久力」を存分に発揮し、さらに高めて、「平和な世界の新たなる構築に挑んでいただきたい」と、心から願い、期待しています。
ムサビでの日常でいっぱい浴びたであろう「ムサビらしさ」、言い換えれば、善玉菌である「ムサビ菌」を世界に広め、大いに貢献して下さい。私たちが信じ続け、挑み続けてきた、人間性を育てる本学の美大教育に、ようやく時代が、世界が、追いついて来た気がします。皆さんの「創造的思考」に、世界の期待が集まってきています。
2029年に、ムサビは創立100周年を迎えます。ムサビ一世紀の節目は、「美はつづく。」をコンセプトに、その先の更なる一世紀へ夢をつなぐ「祝祭の年」にしたいと思っています。
ムサビを巣立っても、決して母校を忘れないで、いつでもムサビに来てください、折に触れて、「ムサビ菌」を活性化させるために、ムサビに来てください。
大学生という人生の学びのひと区切りとして、今日、この武蔵野美術大学から更なる「水平線への航海」に旅立つ皆さんの大活躍を信じています。
最後に、ここに集う卒業生・修了生の皆さんに、そして、皆さんを支え応援し続けてくださった保護者の皆様に、もう一度、感謝を込めたお祝いのエールを贈ります。「おめでとうございます!」
教員祝辞

武蔵野美術大学 基礎デザイン学科教授
小林昭世
ただいま紹介いただきました、基礎デザイン学科の小林です。
みなさん、ご卒業おめでとうございます。卒業生、ご両親、大学の教職員、関係するみなさんにお祝いを申し上げます。
今、気になっている言葉がいくつかあります。その中の一つに、変化、変わる、ということがあります。考えていることを聞いてください。
私は武蔵野美術大に学びました。もう50年近くも前のことです。
当時、知識とか情報について話しあった時、知識や情報の目的は行動の変容、行動を変えることという考えを知りました。私にはとても刺激的な考えでした。
ここでいう行動は、身体の行動だけでなく、判断とか、確信を持つ、感情ということも含みます。確かに行動を変えないのであれば、新たな知識は必要ありません。
知識と行動を繋げて考えると、知識や情報の目的は行動の変化ということになるのか、と納得したものです。
この考えは、アメリカのパースという哲学者による、150年近く前のものです。
そのはるか以前から、西洋でも東洋でも、すべてのことは「流転する」とか、「無常」と言われるように変化は自明のこととして語られてきました。
今日のように変化が当たり前の時代では、状況の変化は速く、それに合わせて人間の行動も変化します。だから、変化しない、変わらない人の方が変わって見える、ますます状況から離れていく変人だと思われます。これはある詩人の言葉です。
今から100年ほど前の第一次大戦と第二次大戦の二つの戦争にはさまれた時代のドイツは、今日以上に大きな変化にさらされた時代でした。
バウハウスという建築とデザインの学校ができた時代です。
戦争によって、ほとんど全てが失われました。物質だけでなく、それまでの常識とか、伝統とか歴史までが信頼できず、頼ることができないものになってしまいました。若者は過去を顧みることなく、将来だけを考え出した時、共同体、共同作業とか公共性という将来の課題に直面し、その時、共同作業とか公共性の歴史を発見し、向き合うことができました。
バウハウスと同じ頃、先ほど紹介した知識と行動を繋げて考えるという哲学者の中にジョン・デューイという人が現れて、芸術についても、知識と行動、感性を繋げて、つまり、いろいろな経験を繋げたり、調和したり、統合することで、豊かな、深い経験が生まれ、芸術に反映されると考えました。
豊かな、深い経験とは、先ほどのバウハウスの考えがスムースに生み出されたのではなく、否定していた過去から再発見されるような複雑な経験がその例です。
みなさんの中には、調子よく制作を発展させる人もいるでしょう。また自己批判や停滞、困難を経験しながら制作をする人もいると思います。
私は、みなさん一人一人の異なる経験の全体が反映した、みなさんのこれからの制作や仕事を見てみたいと思います。是非、見せてください。楽しみにしています。
本日はおめでとうございます。
校友会会長祝辞

武蔵野美術大学校友会会長 萩原幸也
武蔵野美術大学校友会、会長の萩原幸也です。
本日、ご卒業を迎えられた皆さま、そして、これまで支えてこられた保護者の皆さま、ご家族の皆さま、大学教職員、スタッフの皆さまに、心よりお祝い申し上げます。
先ほど、皆さんがこの舞台を登って降りていく晴れやかな姿をステージ脇から見ておりました。例年、この舞台は会場の逆側にありますので、こうした様子は本来見られないのですが、本日の主役である皆さんがステージに一度上がって入場するというムサビらしい演出に、感服しておりました。
武蔵野美術大学校友会は卒業生・修了生による同窓会として93周年を迎え、会員数は77,760名となり、芸術祭の後援、奨学金制度、市ヶ谷キャンパス「Co-Creation Space -Ma-」の運営などを通じて、卒業年度や学科を超えたつながりの場を創出しています。そして本日、皆さんを新たな校友として迎え入れられることを大変うれしく思います。
ここで少しだけ、私自身のお話をさせていただきます。
私はちょうど20年前にデザイン情報学科を卒業し、現在は事業会社でクリエイティブディレクターとして働きながら、武蔵野美術大学においても社会人向け創造性学習プログラムVCPスクールの立ち上げなど、いくつかのプロジェクトに携わっています。
学生時代の私は、芸術祭の執行部に3年間所属し、実行委員長も務めました。あまり芸祭に没頭していましたので、振り返ると「大学で身につけるべきことを取りこぼしたのではないか?」と思う時期もありました。
しかし、社会に出て、仕事で壁にぶつかるたびに学び直し、展示を見に行き、さまざまな人と仕事をする中で、当時の学びが思いがけない場面で効いてくることがあります。
一見ばらばらに見える経験が、ある日ふと“線”としてつながる瞬間がある。皆さんにも、いつか必ず訪れるはずです。大学で過ごした数年と、これから得ていく経験のつながりを、どうか大切にしてください。
武蔵野美術大学の教育理念には「真に人間的自由に達するような美術教育」という言葉があります。本学での学びは、卒業で完結するものではなく、人生を通して形になっていくのでしょう。
今、生成AIが急速に進化し、誰もがそれを使える時代になりました。私の向き合うビジネスの現場でも日々常識が塗り替わっています。しかし、ここで重要なのは変わっていくものだけではなく、変化しない価値にも目を向けることです。私は、これからの時代は、人間の「意思」の価値がより上がっていくのだと思っています。
ここで、一つ問いを投げたいと思います。
人類がロケットを飛ばし、宇宙へ行くことができたのは、なぜでしょうか?
もちろん技術の進歩はあります。しかし、もっと根っこにあるのは、人間が意思を持ち、その意思に情熱を燃やし続けたからです。技術はそれを現実にするために磨かれたのです。
AIも道具の一つです。そして、その仕組みは膨大な過去データの蓄積からの提案です。未来を選び、切り開くのは人間の意思と情熱なのです。
新たに何をつくるのか、何を表現し、誰に届け、どんな責任を引き受けるのか。そこには、創造の核があります。
今日、この場に卒業を迎えられた1,300人いますが、日本全体では年間約58万人が大学を卒業しています。その中で、美術・デザインを学び、創造の力を磨いてきた皆さんは、極めて貴重な存在です。
これから社会は、さらに変化し、テクノロジーも進化し続けるでしょう。だからこそ、皆さん自身が「何を望み、何を問い、どう生きるか」という意思と情熱を手放さずに、ご自身の創造性を信じ続けてください。
その先に、真に人間たる自由があり、そして真に人間たる社会が形作られていくはずです。
今後、皆さんは何度もステージに上がり、そして降りる時もあるかと思います。もし、悩んだり立ち止まることがあれば、校友を頼ってください。私たちも、いつでも皆さんを支えていきます。
改めまして、本日はご卒業、おめでとうございます。
