令和3年度武蔵野美術大学卒業式典

日時 2022年3月18日(金)
10:00開式/13:00開式 *所属学科・コースにより開始時間が異なりますのでご注意ください
場所 武蔵野美術大学 体育館アリーナ
詳細

式次第

  • 開式の辞
  • 校歌斉唱
  • 学位記(卒業・修了証書)授与
  • 卒業・修了制作(論文)優秀賞授与
  • 学長式辞 学長 長澤忠徳
  • 理事長祝辞 理事長 白賀洋平
  • 校友会会長祝辞 星啓子
  • 閉式の辞

会場風景

学長式辞

写真:長澤忠徳

武蔵野美術大学学長 長澤忠徳

2021年度、令和3年度、学位授与は、博士学位3名、大学院造形研究科修士106名、造形構想研究科修士49名、造形学部学士1,012名、造形学部通信教育課程学士151名、合わせて1,321名の学生諸君に学位記を授与できますことは、私たち武蔵野美術大学教職員一同の大きな喜びです。

いまだに続く新型コロナウイルス感染症の感染防止対策のため、午前と午後の二部に分けた学位記授与式としましたが、学位記を授与できました学生諸君に、心からの祝福を贈ります。おめでとうございます。
また、学生諸君の勉学を支え、見守ってこられた保護者の皆さま・ご家族の皆さまの喜びもひとしおかと存じます。おめでとうございます。
我が国の美術大学を代表する伝統あるこの武蔵野美術大学に、ご子弟を学ばせていただきましたご理解とご支援に感謝し、映像中継を通してとなりますが、本学を代表して心よりお祝いと御礼を申し上げます。

卒業式にあたり、今日はふたつの話をさせていただきます。

私は学長就任以来、毎年の入学式で、「あの遥か彼方に見える水平線に立てるか?」と、創造的な生き方の根幹を支える「信じることの重要性」を、学生諸君に問いかけてきました。
創造すること、クリエイティブであること、創造という未知への挑戦は、理屈を超えて、矛盾をひと飲みに飲み込んで、「水平線の上に立つ」ことを信じる…ことに似ていると思うからです。
ところが、水平線に向かって漕ぎ出した私たちの航海は、全く予期せぬコロナ禍という大嵐に襲われ、これまで経験したことのない、不安で、不自由で、非常に困難な毎日となり、今なお続いています。

やむをえず、オンライン授業と対面授業のハイブリッド方式で対応しましたが、皆さんには、慣れない授業の仕方と、美大生としての日常に苦労してもらうことになりました。
「ムサビ生の学びを止めない」ことを誓って、私たち教職員が心配したことは、教育の質を維持するにはどうすれば良いか…、学生諸君が、ちゃんと制作や研究が全うできるか…、ということでした。

私は、今年もキャンパス全域に展示された卒業研究と作品を見ながら、あらためて、皆さんの「創造の持久力」の確かな存在を確認しました。
ものごとを「創造」するには、精神的にも、肉体的にも、長い期間の集中に耐える「持久力」が必要です。「造形」もまた然りです。皆さんはコロナ禍という困難の中、大変だっただろうと思います。しかし、それは自らの「創造の持久力」を高める鍛錬だったのではないかとも思います。コロナ禍という苦境をパワーに変えて挑んだ皆さんの創造への取り組みは、皆さんを「人=人間」として強くしました。
今、私は、皆さんの頑張りを褒めたいと思います。この長期にわたる未曾有の困難に直面した中で、皆さんの持久力が鍛えられ、大いに発揮されたことを、とても誇らしく思っています。

もうひとつは、「心の音を聞け!」と言う話です。
「意志」という言葉の「意」という漢字は、「音」と「心」からできています。
自分にしか聞こえない「心の音」を聞き、自分の外に表出すること、あらゆる可能な方法で、自分の「心の音」を自分の内から外へ現す「表現」への修練が、さまざまな体験を通した皆さんの学びであっただろうと思います。
だから、自らの「心の音」に耳を傾けてください。それこそが「表現」の根幹をなすものだからです。その内なる「心の音」こそ、皆さんそれぞれの「個性」なのです。どうか、「創造の持久力」を高めることができた自分に自信を持って、しっかりと生き抜いてください。

今、私たちを取り巻く環境は、世界的規模で、大きく変化しています。地球の温暖化はもとより、未だ終息しないコロナ禍に加え、喫緊では、ロシア軍のウクライナ侵攻によって、多くの犠牲者が増え続ける悲惨な状況となり、生きることへの安全・安心が脅かされる地球規模での難題が山積しています。
生命の尊さを第一義に、私たちは、世界の平和と安全を希求し、傷ついてしまった世界を、望ましい姿に再生していかなければなりません。美術・デザインの分野の私たちも、これから、その再生に貢献できるよう尽力すべきだと思っています。

「教養を有する美術家養成」「真に人間的自由に達するような美術教育」という本学の理念のもと、その修練のプロセスを通して、本学に学んだ卒業生の皆さんは、これから、クリエーターとして、また、イノベーターとして、社会の一翼を担い、鍛えた「創造の持久力」を存分に発揮し、さらに高めて、平和な世界の新たなる構築に挑んでいただきたいと、心から願い、期待しています。
大学生という人生の学びのひと区切りとして、今日、この武蔵野美術大学から旅立つ皆さんの活躍を信じています。
今、万感の思いと期待を込めて、卒業生・修了生の皆さんに、お祝いのエールを贈ります。「おめでとう!」

理事長祝辞

写真:白賀洋平

学校法人武蔵野美術大学理事長 白賀洋平

造形学部卒業、大学院修了の皆さん、本日はおめでとうございます。
そしてこれまで、長い間、ご子弟を支援して来られましたご親族の皆様、おめでとうございます。心よりお喜び申し上げます。特に、三年に及ぶコロナ禍を乗り越え、卒業を果たされた皆さんの真摯なご努力に対し、深く敬意を表します。
本来、一堂に会して盛大に祝うべきところ、コロナ禍で、ご親族のご出席もご遠慮願っての実施を余儀なくされたことは、残念であり誠に申し訳なく存じます。
本日、皆さんは、武蔵野美術大学の「学士」として、「修士・博士」として、栄えあるディプロマを取得されました。
振り返って、皆さんはこのムサビで何を学び、何を取得したのでしょうか。
申すまでもなく、本学の建学の精神は「教養を有する美術家の養成」でありますが、皆さんは、レベルを超えた技能の取得、広範な教養を身に付けた上で、大きなアドバンテージを取得したのであります。
その所以を三つ申し上げたいと思います。
一つ目は心血を注いだ「制作」を通して得たもの、即ち、試行錯誤の苦闘の末に、個性的で独創的な世界に辿り着き、その過程で身に付けた課題発見力さらには問題解決力、【感性や創造的思考力】であります。

二つ目は「講評」を通して身に付けたプレゼンテーション能力、コミュニケーション能力であります。
自分の考え・意図を伝える力、わかりやすく説明する力、相手を理解する力、人間関係を築く力等であります。
このソーシャルスキルは、分野は違っても、社会生活に不可欠な素養であり、皆さんの大きな強みであります。

三つ目は多くの人との交流を通して得た「多様性」であります。
先生からの大きな感化、美意識や人生観の違う人、性に合う人・合わない人、異分野の人、課外活動等いろいろな出会いがあった事と思います。自分の信念は守りつつ、異なる価値観を受け入れて自らを高め、共感性、寛容性を身に付けた事はこれからの「多様性社会」を生きていく上で大いに役立つことでしょう。
人材の宝庫と言われるムサビで鍛え抜かれた「人間力」に、大いに自信をもって頂きたいと思います。

本日を以て皆さんは、新しい世界に進まれるわけですが、その活躍の場について、敢えてキーワードを三つに絞って申し上げたいと思います。

一つ目は「イノベーションによる価値創造」であります。先の見えないヴーカの時代と言われる中、各界が必死に取り組んでおり、その人材を求めています。
皆さんは、どんな仕事であれ勇気をもって常識や既成概念に挑戦し、ムサビで培った創造性、独創性を発揮して頂きたいと思います。

二つ目は「DX」(デジタルトランスフォーメーション)であります。
コロナ禍は遅れていたわが国のデジタル化を一挙に推し進めました。
デジタル化は社会の高度化、生産性の向上や価値創出、組織成長等を加速しようとするものです。
アートの世界にもデジタルアートが生まれ、いま話題の将棋界ではAIを活用して新しい手を生み出し、19歳の若さで5冠になった藤井棋士のような人もいます。
皆さんもAI、IOT、3D等デジタルツールやデータを理解し使いこなす術を身に付けて、活躍の場を広げて頂きたいと思います。

三つ目は「サスティナビリティ」であります。今のウクライナ危機は論外で、サスティナビリティとは、環境・社会・経済の三つの観点から、全地球、全人類を未来にわたって持続可能にしていくという考え方です。その最たるものが「SDGs」で、17の目標を掲げ全世界で取り組まれています。企業活動でも「E(環境)S(社会)G(企業統治)」の実行が問われ、個人にも「サスティナブルな衣食住」が求められています。
これからは、発想・行動の起点として、こうした時勢、世の中の動きにも従来以上に関心をもって頂きたいと思います。

以上縷々申し上げましたが、これから、皆さんが、大きく羽ばたき、未来社会でどんな「輝き」を放ってくれるか楽しみにしています。
大学も100周年のその先を見据えて、学生と共に・社会と共に、持続的成長を遂げていく所存であります。そして卒業後も「大学」は皆さんの心の拠り所でありたいと願っています。
時には大学に顔を出し、知識や技能のブラッシュアップや情報交換の場として活用してください。
また、現在7万人を有する校友会の活動にも積極的に加わって頂き、大学のバックアップ、後進の育成にもご協力頂きたいと思います。

以上で話を終わりますが、どうかご健康にご留意の上、大いなるご活躍を祈念します。
あらためて、本日はおめでとうございます。

校友会会長祝辞

写真:星啓子

武蔵野美術大学校友会会長 星啓子

本日はご卒業おめでとうございます!
学びを止めず、ご卒業を迎えられた皆さま、温かく見守っていただいた保護者の皆さまには心よりお祝い申し上げます。
又、学長ならびに諸先生方のご功労に対し、改めて敬意を表したいと存じます。

皆さまは校友会をご存じでしょうか?
実は芸祭や卒業制作の為の奨学金で関わっております。
「武蔵野美術大学校友会」は、本日ご卒業された皆さまと今までムサビを卒業された全員が会員となり、運営から会報誌のデザイン、取材、撮影、そしてイベントまで卒業生が行っています。
今まで88年の歴史を歩み、現在約7万名の会員で構成されています。
卒業生は世界中で活躍されておりますので、今後、思いがけない出会いやお仕事の機会に繋がることもあるかと思います。そんな時、「ムサビ」と言ってみてください。
すぐにコミュニケーションが始まるはずです。

私は、絵を描き始めて30年が経とうとしています。作品に触れる機会も多いのですが、通信の油絵学科で学んだ前後では環境が大きく変わりました。「ムサビ」というキーワードから色々な方との交流が生まれ、今では互いに切磋琢磨しアートの魅力にはまっています。
アートは自分の経験、感情などを基に思索を巡らせある形に表現します。表現することで思索を続け、世の中の「場」を得て作品となって、世界へ投げかけ、たくさんの眼差しの交差の中で作品は成長をしていきます。
物を見せていく、見ながら伝えていく、伝えられた人が、また何かを伝え返してくる。
来たるアフターコロナ時代には、できることならば校友会がその「場」の役割を担い、より多くの方にアートに触れていただきたい気持ちでいっぱいでおります。
皆さまの作品を世界へ投げかける橋渡しができ出来たら最高です。

これから、社会へ出て、ふと、ムサビを思い出した時、ムサビの話をしたくなった時は、校友会のSNSやwebサイト、会報誌を覗いてみてください。
ユニークな活動や多様なアプローチをしている卒業生のインタビューを掲載しています。
いずれ、皆さまにも取材をさせていただきたいと思っています。
校友会はwebサイトを通じた卒業生との最適なコミュニケーションを構築し、皆さまを末永く応援してまいります。卒業生の皆さま、校友会へようこそ!未来に向かって羽ばたきましょう。
本日はご卒業おめでとうございました。