本学教員の研究活動を一層推進させることを目的として、教員が特定の研究課題について自主的にプロジェクト・チームを編成し共同で行っている研究や、教育方法の工夫改善を中心とした教育改革の取組に対し、大学は審査を行った上で研究費を助成しています。

共同研究一覧

2026年度

研究代表者 研究課題 概要
古堅真彦 美術・デザインにおける生成AIを活用した教育方法や手法に関する研究 「生成AI」は、その目的が何かを「生成する」というものであり、新しいものを作ることを旨とする美術やデザイン分野とは親和性が高く、数年前にchatGPTをはじめとするインターネットを利用した生成AI のアプリケーションが一般に公開されたことで、社会的認知度が大きく高まり、その機能や効果が大きく議論されることとなった。本学でも「生成系人工知能(生成AI)についての学長からのメッセージ」において生成AIでの大学での利用についての見解を記述したり、FD委員会にて「生成AI」をテーマにしたものが2回行われたりなど、生成AI をどのように教育に活かすべきかの機運が高まっている。しかし、各学科や情報教育センターでの授業でそれぞれの教員が独自に生成AI を授業に活用する方法を探ったり、学生も自身の作品や制作過程にどのように生成AI を活用するかを模索しているが、大学としての全体把握、理解はあまりできていないというのが現状である。そのような中で、武蔵野美術大学としての、美術・デザイン教育での生成AI のあり方の研究ができないかということで、以下の3つを主な柱として本研究の申請を考えた。
A)大学内独自の生成AIマシンの構築
B)大学内および一般社会での生成AI活用実態の把握
C)生成AI APIの新規活用方法の開発
山崎連基 本学独自の映像領域「イメージフェノメナン」において開発された技法の研究と造形資料としてのアーカイブ化 「イメージフェノメナン」とは、人間の視覚、聴覚に匹敵する情報量を伝達でき、かつ人間の感覚器官とは異なるカメラによる自動的で均質なイメージを記録できるといった映像の情報性、あるいは断片的な映像を時間軸上に構成することで、時間的な流れで展開される出来事を描くことができるという映像の物語性における芸術ではなく、色やかたち、線、材質などが時間的に変化することで生まれる映像上の運動、空間といった映像の造形性を主題とし、造形的要素を抽出・操作・強調するための技法開発を通じて作品(造形性)の成立を目指す映像表現である。
「イメージフェノメナン」は篠原規行教授と板屋緑名誉教授によって2004年に領域化され、授業展開と作品および研究発表が本学を中心におこなわれてきた。本研究では、20年をこえる活動から生まれた作品を技法開発プロセスから分析し、体系化することで本領域の表現性を明らかにする。また、本領域ひいては映像メディア全体の持続的な制作研究に寄与することを目的として、開発された映像技法(さまざまな類型も含む)を網羅的に視聴できる制作研究者のためのデジタルアーカイブを構築する。
加藤幸治 ヴァナキュラー造形文化に関する公共人文学の実践的研究 本研究では、従来の民俗学や考古学等のフィールドリサーチと、研究者と表現者、企業、一般市民、学生や生徒など多様なアクターの共創による作品表現やワークショップを組み合わせることで、ミクロな生活文化やローカルな歴史を解釈し(interpret)、省察する(reflection)ための新たな実践の意義を検証する。解釈と省察は、近年ICOM(世界博物館連盟)による博物館の定義に新たに加わった言葉であり、自然や文化の研究過程により実践的な協働が求められている。
理論的には、生活の営みから生じる造形文化=「ヴァナキュラー造形文化」、文化遺産や伝統、歴史の現代社会において多様なアクターの参加によって研究し、再活性化させる「公共人文学」、人間と物質や自然との関係性を見直す視点で文化を表象する「エイジェンシー概念」を基盤に据え、3つのプロジェクトベースの活動をケーススタディとして行う。

2025年度

研究代表者 研究課題 概要
荒川歩 (「悪い」けれども「今を生きる」のに必要な)レジャーの心理と倫理 人は、日常生活におけるストレスを発散するために、スポーツを楽しんだり、友人とアルコールを飲み交わしたり、趣味の活動に没頭したりといった行為を行う。それらの多くは、自己の身体に対しても、環境に対しても、日常生活とは別種の負荷をかけるものであることが多いが、それでも、そのようなレジャーは人生にとって不可欠である。本学クリエイティブイノベーション学科においても、人々の生を理解し、よりエシカルに、より良い生のためにサービスやプロダクトの提案を行うために、これら人の生を理解することが必要である。そこで、本研究では、レジャー研究の研究者やクリエイティブリーダーシップコース院生有志とともに、この分野の先端的な研究書の翻訳出版を目指す中で、当該領域の理解を深め、得た知見を授業で学生に、学会発表や著書で社会に還元する。
井口博美 神社とアートによる地域デザインの可能性について 日本全体として少子高齢化と過疎化が同時進行する深刻な地域問題に対して、アートやデザインの力で持続可能な未来ビジョンをどう描けるかをアウター(東京)とインナー(地域)の連携によって調査研究することが主目的である。具体的には福岡県太宰府市に立地する“学問・文化芸術の神様”菅原道真公を祀る太宰府天満宮を先進事例として取り上げ、2006年から多彩なアーティストを起用し独自企画・運営してきた「アートプロジェクト」を中核として地域づくりに幅広く貢献する太宰府天満宮文化研究所にフォーカスしながら、持続可能なかたちでの“神社とアートによる地域デザイン”のあり方(将来系)についてアートとデザインの両視点から調査研究する。
新保韻香 音を視る――音を可視化する杉浦康平の造形思考とデザイン手法 杉浦グラフィズムは、リズムを内包している――。杉浦康平氏は「音を可視化するデザイン」を追求したグラフィックデザイナーである。幼少期より和洋の音楽に親しんだ杉浦氏の造形思考に通底する核たるものは「音」である。杉浦氏の造形思考のプロセスを跡付けるためには、音(音楽やノイズを含めた音像)の切り口から杉浦グラフィズムを捉えなおす必要がある。音を主題とする杉浦氏への聞き取り取材を主軸として、また本学美術館・図書館の「杉浦康平デザインアーカイブ」の一次資料を活用し、独自手法による杉浦グラフィズムの傑作の数々が戦後文化や同時代芸術運動との関わりの中でいかに生みだされてきたのかをデザイン領域のみならず多角的に検証することで、杉浦氏の造形思考プロセスを解明することを研究目的とする。研究の成果として、音を軸とする杉浦氏の造形思考と文化的背景の関係性を「思考年譜」として編集してダイアグラムを形成し可視化する。同時に音楽にまつわるデザイン作品をデジタル複製し、解題を付したデータベース化を図る。デジタルアーカイブとして学内外に公開することで、デザイン教育の現場での活用のみならず、幅広い領域にひらいたアートアーカイブの実践へと昇華させる。

2024年度

研究代表者 研究課題 概要
冨井大裕 展示と冊子制作による制作者と執筆者の育成計画Ⅶ
(キャリア形成としての、作家と批評家の長期的視野に基づく対話)
本学大学院修士課程彫刻コースと芸術文化政策コースの連携で2004年から継続的に行われてきた、公開展示と冊子制作のプロジェクトから始まった、本学独自の学科を横断するカリキュラム。自立した作品制作研究を目指す学生と、批評活動等の文筆者を目指す学生を育成する目的で行う。2021年度からは、東京藝術大学美術学部美学研究室との連携、日暮里の展示スペース「HIGURE17-15cas」の協力のもと、大学間交流企画として再スタートした。作品展示と批評、さらにはそのアーカイブとしての冊子の実践を通じた芸術鑑賞体験への新たな視点を提案、考察することを目的とした社会連携型企画。
大田暁雄 オットー・ノイラートの図像言語「アイソタイプ」のデザイン学的・記号論的研究 オットー・ノイラートが確立した視覚教育のための図像言語体系「アイソタイプ」を、デザイン学的・記号論的観点から再検討する。さらに、ノイラートのデザイン理論を、今日におけるダイアグラム・デザインのための規範として再構築し、デザインの初学者に向けた手引書として普及させる。
白石学 デジタルペインティングにおける技法と表現性の研究、およびその授業展開 デジタルペインティングは画像処理技術の発展に伴い、利便性だけでなく表現性も拡がっている。しかし、美術大学におけるデジタルペインティングの授業活用は限定的であり、作品数も既存のペインティングより少ない。その要因は、デジタルペインティングが絵画技法として確立しておらず定着していないためだと考えている。そこで、本研究は、デジタルペインティングと従来の絵画技法との表現性や制作過程の比較検証を行い、その相違点や共通点を明らかし、美術教育の現場でデジタル技術を活用していくための一つの指針となるよう実践的研究として展開していきたいと考えている。
三澤一実 中学校における美術教育支援ツールの開発と配信 本研究は、文科省が平成29年の学習指導要領改訂において掲げる、“新しい時代に必要となる資質・能力の育成”に対し、中学校教育における新しい「美術教育」の在り方を示すことを目的とする。改訂の3つの柱の1つである「知識・技能」の知識には2種類あり、形式的な知識とは別の、特に美術に関わることで醸成され、体験を通して身に付く身体的で感情を伴う知識は、人間の創造性と感性に結びつくと考えられる。一方で中学校の美術教育の現状は、授業時間数、人材ともに不足しており、十分な教育体制が整っているとはいえない。本研究は、美術教育を専門に行う本学の知見とリソース(人的・物的資源)を活用した、中学校の美術教育における題材開発をサポートする動画を制作することで、授業で活用できるアーカイブを本学ウェブサイト上に設置し、全国の学校教育の発展に寄与する。

2023年度

研究代表者 研究課題 概要
冨井大裕 展示と冊子制作による制作者と執筆者の育成計画Ⅵ
-キャリア形成としての、作家と批評家の長期的視野に基づく対話-
本学大学院修士課程彫刻コースと芸術文化政策コースの連携で2004年から継続的に行われてきた、公開展示と冊子制作のプロジェクトから始まった、本学独自の学科を横断するカリキュラム。2021年度からは、東京藝術大学美術学部美学研究室との連携、日暮里の展示スペース「HIGURE17-15cas」の協力のもと、大学間交流企画として再スタートした。作品展示と批評、さらにはそのアーカイブとしての冊子の実践を通じた藝術鑑賞体験への新たな視点を提案、考察することを目的とした社会連携型企画。
三代純平 サハリン残留永住帰国者とその家族のライフストーリー研究 本研究は、サハリン残留日本人永住帰国者とその家族のライフストーリー研究である。サハリン残留日本人とは、戦後、サハリン(旧樺太)から何らかの理由で帰国できず、残留を余儀なくされた日本人を指す。ソビエト連邦崩壊以降、日本サハリン協会(旧日本サハリン同胞交流協会)らの尽力によって1991年から残留日本人とその家族の永住帰国は続いている。しかし、サハリン残留日本人の存在とその経験は、多くの日本人にとって不可視化されてきた。そこで、本研究では、ライフストーリー・インタビューによって彼らの経験を歴史的資料として、また、トランスナショナルな空間における複言語・複文化的な生活のモデルとして、記録し、その経験の意味を明らかにする。

2022年度

研究代表者 研究課題 概要
山本一弥 現代における彫刻概念の再検討と共有 本研究では、彫刻を制作する者と学術的に扱う者が、異なる立場から多角的に素材や技法、社会との関係、思想を改めて考察する。更に、彫刻と比較して語られることも多い他の表現領域との類似点や相違点を浮き彫りにすることで、現代における彫刻概念について再検討する。

2021年度

研究代表者 研究課題 概要
高浜利也 絵画とアートブック ―その成り立ちと展開の検証、および教育現場における授業実践― アートブックについて、『絵画⇔アートブック』という媒体間でのイメージ往還を起点に、成り立ちや展開を検証。その成果をもとにアートブックをテーマとした新たな絵画系授業の構築など、本学美術館・図書館収蔵品の教育資源としての活用を図る。
黒川弘毅 清水多嘉示の美術教育と作品制作 本研究は、清水多嘉示の作品展開を系統的に解明するとともに、教育や西欧・東アジアとの文化交流を含む美術の周辺領域における社会活動の再評価を行う。研究成果として『清水多嘉示 資料/論集Ⅲ』を刊行し、「清水資料デジタル・アーカイブ」の公開を目指す。
冨井大裕 展示と冊子制作による制作者と執筆者の育成計画V(2021) 2004年から継続的に行われてきた、公開展示と冊子制作による領域横断型の大学院カリキュラム(今年度で18回目)。個々の作品と批評の発表の場としてだけでなく、表現とそれが行われる場所=制度についての批評、考察の機会として展覧会と冊子を積極的に活用する。今年度は東京藝術大学美学研究室 林卓行准教授の協力のもと、同研究室学生の参加を予定している。「表現をするということ。その公共性から見える世界をどの様に記述(制作/批評/行為)するか」この問いへのアプローチを通じて、自立した作品制作研究を目指す学生と批評活動等の文筆者を目指す学生を育成する。