令和4年度武蔵野美術大学卒業式典

日時 2023年3月17日(金)
10:00開式/13:00開式 *所属学科・コースにより開始時間が異なりますのでご注意ください
場所 武蔵野美術大学 鷹の台キャンパス 体育館アリーナ
詳細

式次第

  • 開式の辞
  • 校歌斉唱
  • 学位記(卒業・修了証書)授与
  • 卒業・修了制作(論文)優秀賞授与
  • 学長式辞 学長 長澤忠徳
  • 理事長祝辞 理事長 白賀洋平
  • 校友会会長祝辞 星啓子
  • 閉式の辞

会場風景

学長式辞

写真:長澤忠徳

武蔵野美術大学学長 長澤忠徳

2022年度、令和4年度の学位授与は、博士学位1名、大学院造形研究科・修士119名、造形構想研究科・修士54名、造形学部・学士836名、また、今回、記念すべき第一期生となる造形構想学部・学士138名、造形学部通信教育課程・学士143名、合わせて1,291名の学生諸君に学位記を授与できますことは、私たち武蔵野美術大学教職員一同の大きな喜びであります。
また、この中には、196名の留学生が含まれています。おめでとうございます。

今週から、マスクの着用などが各自の判断となり、新型コロナウイルス感染症の感染防止対策も緩和されてきてはいますが、今年度もまた、午前と午後の二部に分けた学位記授与式としました。この会場で、学位記を授与されました学生諸君に、心からの祝福を贈ります。おめでとうございます。

また、学生諸君の勉学を支え、見守ってこられた保護者の皆さま・ご家族の皆さまの喜びもひとしおかと存じます。おめでとうございます。
我が国の美術大学を代表する伝統あるこの武蔵野美術大学に、ご子弟を学ばせていただきましたご理解とご支援に感謝し、映像中継を通してとなりますが、本学を代表して、心よりお祝いと御礼を申し上げます。

さて、2019年に創設された造形構想学部には、造形学部から移設された映像学科と、新設されたクリエイティブイノベーション学科がありますが、開設から4年間を経てその完成年次を迎え、学部の第一期生が卒業します。また、造形構想研究科修士課程卒業生は第三期生となります。

2019年度、造形学部と造形構想学部の二学部制となった本学の新たな教育の挑戦は、コロナ禍を逞しく乗り越え、海外のメディアや教育機関からも注目を集め、とりわけ「創造的思考力を社会へ開く」造形構想学部クリエイティブ・イノベーション学科と大学院クリエイティブ・リーダーシップ・コースの徹底した「社会実装」のプログラムは、我が国のみならず、世界の創造性教育の先駆的モデルとして、すでに、社会的にも大きな影響を及ぼしています。

私は、創造的人材を育成する大学、つまり「武蔵野美術大学そのもの自体が、創造的でなければならない」と信じています。そして、皆さんの母校ムサビは、皆さんに負ける事なくチャレンジを続け、皆さんの活躍の追い風となり、応援し続ける存在であるべきだと思って、学長としての日々を過ごしてきました。

コロナ禍による不自由な日々が続く中、決してひるむ事なく本学での学びを全うし、今、門出を迎える皆さんに、今日は主にふたつの話をさせていただきます。

実は、私も、皆さんを送り出した後、今月末で、二期8年の学長としての任期を終えますが、私は学長就任以来、毎年の入学式で、「あの遥か彼方に見える水平線に立てるか?」と、創造的な生き方の根幹を支える「果てしないものへの挑戦」と「信じることの重要性」を、繰り返し、学生諸君に問いかけてきました。

創造すること、クリエイティブであること、創造という未知への挑戦は、理屈を超えて、矛盾をひと飲みに飲み込んで、「水平線の上に立つ」ことを信じる…ことに似ていると思っているからです。

水平線に向かって漕ぎ出したみなさんの航海は、全く予期せぬコロナ禍という大嵐に襲われ、これまで経験したことのない、不安で、不自由で、非常に困難な毎日が長く続きました。
その間、やむをえず、オンライン授業と対面授業のハイブリッド方式で対応して来ましたが、皆さんには、慣れない授業の仕方と、美大生としての日常に苦労してもらうことになりました。「ムサビ生の学びを止めない」ことを誓って、私たち教職員が心配したことは、教育の質を維持するにはどうすれば良いか…、学生諸君が、ちゃんと制作や研究が全うできるか…、ということでした。

私は、今年もまた、キャンパス全域に展示された卒業研究と作品を見ながら、あらためて、皆さんの「創造の持久力」の確かな存在を確認しました。

ものごとを「創造」するには、精神的にも、肉体的にも、長い期間の集中に耐える「持久力」が必要です。「造形すること」も「構想すること」もまた然りです。皆さんはコロナ禍という世界規模の困難の中、大変だっただろうと思います。しかし、それは自らの「創造の持久力」を高める鍛錬だったのではないかとも思います。

コロナ禍という苦境をパワーに変えて挑んだ皆さんの創造への取り組みは、皆さんを「人=人間」として強くしました。今、私は、皆さんの頑張りを大いに褒めたいと思います。この長期にわたる未曾有の困難に直面した中で皆さんが自ら鍛えた「創造の持久力」が、この先の人生で、大いに発揮されることを、私は信じています。

もうひとつは、「心の音を聞け!」と言う話です。
皆さんが、クリエイティブな態度で生きていくには、強い意志が欠かせません。「意志」という言葉の「意」という漢字は、「音」と「心」からできています。
自分にしか聞こえない「心の音」を聞き、自分の外に表出すること、あらゆる可能な方法で、自分の「心の音」を自分の内から外へ、表に現す「表現」への修練が、さまざまな体験を通した皆さんの、ここムサビでの学びであったはずです。

だから、自らの「心の音」に耳を傾けてください。それこそが「表現」の根幹をなすものだからです。その内なる「心の音」こそ、皆さんそれぞれの「個性」なのです。どうか、「創造の持久力」を高めることができた自分に自信を持って、しっかりと生き抜いてください。

今、私たちを取り巻く環境と文明は、世界的規模で、大きく変化しています。想像を絶する速さで進化する高度情報通信時代ですが、一方で、我が国の少子高齢化も深刻さを増してきています。さらには、地球の温暖化はもとより、未だ完全には終息しないコロナ禍に加え、ロシア軍のウクライナ侵攻によって、多くの犠牲者が増え続ける悲惨な状況が今もなお続き、「この地球上で生きること」自体の「安全・安心」が脅かされる地球規模での難題が山積し、増え続けています。

なによりも、生命の尊さを第一義に、私たちは、世界の平和と安全を希求し、傷ついてしまった世界を、これまで以上に努力して、望ましい姿に再生していかなければなりません。美術・デザイン、そして創造の分野に生きる私たちは、今こそしっかりと「心の音」を聞き、クリエイティブなパワーを発揮して、その再生に貢献すべきです。

「教養を有する美術家養成」「真に人間的自由に達するような美術教育」という本学の理念のもと、その修練の日常を通して、本学に学んだ卒業生の皆さんは、これから、クリエーターとして、また、イノベーターとして、社会の一翼を担い、鍛えた「創造の持久力」を存分に発揮し、さらに高めて、「平和な世界の新たなる構築に挑んでいただきたい」と、心から願い、期待しています。
ぜひ、ムサビでの日常でいっぱい浴びたであろうムサビらしさ、言い換えれば、「ムサビ菌」を世界に広め、大いに貢献して下さい。

大学生という人生の学びのひと区切りとして、今日、この武蔵野美術大学からさらなる「水平線への航海」に旅立つ皆さんの活躍を信じています。
今、万感の思いと期待を込めて、卒業生・修了生の皆さんに、お祝いのエールを贈ります。「おめでとう!」

理事長祝辞

写真:白賀洋平

学校法人武蔵野美術大学理事長 白賀洋平

造形学部卒業、造形構想学部卒業、大学院修了、造形学部通信教育課程卒業の皆さん、本日はおめでとうございます。そして、長きにわたり皆さんを支えてこられたご家族の方々、おめでとうございます。心よりお慶び申し上げます。特に、三年に及ぶコロナ禍を克服して、卒業・修了を果たされた皆さんの真摯なご努力に対し、深く敬意を表します。

本来ならご家族の方々にもご参加願い、皆さんの晴れ姿をご覧いただくべきところ、コロナ禍でご列席をご遠慮願っての挙行となったことは、まことに残念であり申し訳なく存じます。

本日、皆さんは、武蔵野美術大学の栄えある「学士」、「修士・博士」の学位を取得されました。
振り返って、皆さんはこのムサビで何を学び、何を習得したのでしょうか。
申すまでもなく、本学の建学の精神は「教養を有する美術家の養成」でありますが、皆さんは「高い技能、広い教養」を身に付けた上で、大きなアドバンテージを取得したと確信しています。

その所以を三つ申し上げたいと思います。

一つは「制作」を通して得たもの、すなわち、試行錯誤の苦闘の末に個性的で独創的な世界に到達し、その過程で身に付けた「感性や創造的思考力」「課題発見力や問題解決力」であります。ブーカと言われる今の時代にあって最も期待される能力の一つであります。

二つ目は「講評」を通して身に付けた「プレゼンテーション能力」、「コミュニケーション能力」であります。このソーシャルスキルは、分野は違っても不可欠な素養であり、皆さんの大きな強みであります。

三つ目は多くの人との交流を通して得た「多様性」であります。恩師からの感化、美意識や人生観の違う友人、異分野の人、課外活動等いろいろな出会いがあったことと思います。異なる価値観を受け入れて、共感性・寛容性を身に付けたことは、これからの「多様性社会」を生きていく上で大いに役立つことでしょう。

また。コロナ禍という未曽有の災厄から得た経験、たとえば自制心・ブレークスルー力も今後の人生に必ずや活きてくると思います。

本日を以って皆さんは巣立ち、就職する人、起業する人、作家活動に入る人、進学する人等、進む道は様々ですが、敢えて二つに絞って申し上げたいと思います。

一つ目はどの分野、どんな組織、どんな世界に入っても「第一人者たれ」ということであります。第一人者とはその道のオーソリティー、権威、泰斗であります。その為のキーワードは「極める」であります。選んだ道をとことん追求し、勉強し「余人をもって代えがたい存在」、「他の追随を許さない存在」を目指して頂きたいと思います。
「百尺竿頭に一歩を進む」の諺の通り、限界まで努力する過程で独創的な閃きや思いがけない道筋がふと見える瞬間があり、往々にしてそれが無二の業績や作品に結びつくのであります。科学の世界では発明・発見、実業界であれば画期的なビジネスモデルとか知的財産、創作活動では人々に大きな感動を与える独自・孤高の作風、後世に残る傑作につながるのであります。

二つ目は持続的な「自己変革」であります。
進化論で有名なダーウィンは、「最も強い者が生き残るのではない。最も賢い者が生き残るのでもない。唯一生き残ることができるのは変化できる者である」という言葉を残しています。
今の時代は、DX、メタバース、生成AI等、猛烈なスピードで動き、目まぐるしく変化しています。同じことを繰り返していたり、立ち止まっていることは、後退を意味します。時流を読み、常に自分が変化し、新たな自分を構築していかなければなりません。勇気をもって一歩前へ出てください。日々に新たに、新しい自分を模索する進化人であり続けてほしいと思います。

話は変わりますが、ここで敢えて造形構想学部卒業の皆さんにひと言申し上げます。
第一期生としてのこれからの歩みが即、造形構想学部の歴史になります。どうか後輩が後に続くよう道を切り拓いて行って頂きたいと思います。

以上縷々申し上げましたが、これから皆さんが「第一人者」として、各界で「輝き」を放ってくれることを楽しみにしています。と同時に、卒業後も「大学」は皆さんの心の拠りどころでありたいと願っています。時には大学に顔を出し、知識や技能のブラッシュアップや情報交換の場として活用してください。
また、現在7万人強を擁する校友会の活動にも積極的に加わって頂き、大学のバックアップ、後進の育成にもご協力頂きたいと思います。

以下は蛇足ですが、敢えて申し上げると、「人生100年時代」にあってそれを貫くものは「心の若さ」であります。青春真っ只中の皆さんには余計なことかもしれませんが、長い人生、常に「高い理想」「高い夢」を掲げ、いつまでも青年の如き心、すなわち「旺盛な好奇心、優れた創造力、燃える情熱、果敢な挑戦、求めてやまぬ探究心」を持って、それを追い求めてください。これがある限り、「若さ」や「創作力」「価値創造力」はいつまでも失われることはないでしょう。どうかいつまでも溌溂と素晴らしい人生を歩んでください。
以上で話をおわります。本日は改めておめでとうございます。

校友会会長祝辞

写真:星啓子

武蔵野美術大学校友会会長 星啓子

本日はご卒業おめでとうございます!
長い長いコロナ禍を乗り越え、学びを止めず、ご卒業を迎えられた皆さま、よく頑張りました。おめでとうございます。そして、温かく見守ってくださった保護者の皆さまにも心より感謝とお祝いを申し上げます。
又、学長ならびに諸先生方のご功労に対し、改めて敬意を表したいと存じます。

「武蔵野美術大学校友会」は今年で90周年を迎え、現在73,880名の会員で構成されています。校友会は、多くの卒業生により支えられており、卒業年度や学科を超えて、校友の親睦と情報交換、社会への貢献、会員への支援を主軸に活動しております。また、芸術祭への後援や校友会奨学金制度など、在学生への支援も行っております。

2023年は校友会90周年と市ヶ谷キャンパス完成の記念すべき年となりました。記念企画として「アート&デザイン」を8月に竣工直後の市ヶ谷キャンバスで開催いたします。
「大人の芸祭」をテーマに、校友会がホストになり、トークイベントや展示を行う予定です。
異分野で活躍されている先輩達のクロストークセッションは、見応えがあると思います。
また、地下2階では、活躍されている作家、デザイナー、会報誌「MSB! MAGAZINE」で紹介したアーティストの作品を展示いたします。
詳細は、校友会WEB及び皆さまが社会に出て疲れた~と思っている頃に届く 会報誌「MSB! MAGAZINE」をご覧になり、是非ともご友人やご家族を誘って市ヶ谷キャンパスへお越しください。卒業後も多くの人や作品との新たな出会いが待っています。

私は、10年前に通信油絵学科を卒業し、縁あって校友会の役員として活動をすることになりました。絵を描きながら、仕事をしながら、手抜き家事をしながらの活動です。
4年前に会長に任命されて間もなく、ご多分に漏れず、コロナ禍に見舞われました。校友会も「校友会の活動を止めない」一心で継続してきました。先ず、会議はオンラインで始めました。対面の時は、仕事が終わると、雨が降ろうが槍が降ろうが、会議に参加しました。ところがオンライン会議だと天気は関係ない。総会も、全国の支部長との懇親会もオンラインで行いました。10人くらいで準備するのですが、できてしまう有能な仲間にはいつも感服いたしております。ハプニングにも寛容で結果オーライの仲間との出会いは、何があっても、理屈なしに「ムサビは最高!」気分にさせてくれます。そして、やっぱり顔を見てコミュニケーションをとることも大切なんだとコロナ禍で学んだものです。校友会は温かいところです。疲れたら羽を休めに来てください。

本日ご卒業される皆さまを校友会にお迎えできること、心より歓迎いたします。
これからが人生の本番です。何事も、足を地につけて、何があっても諦めない、やり続ける、そしてポジティブにムサビパワーで乗り切りましょう。校友会はそんな皆さまを応援しております。皆で一緒に元気で頑張りましょう。
本日はご卒業おめでとうございました。