平成29年度武蔵野美術大学卒業式典

日時 2018年3月17日(土)10:00開場 11:00開式
場所 武蔵野美術大学 体育館アリーナ

式次第

  • 開式の辞
  • 校歌斉唱
  • 学位記(卒業・修了証書)授与
  • 卒業・修了制作(論文)優秀賞授与
  • 学長式辞 学長 長澤忠徳
  • 理事長祝辞 理事長 天坊昭彦
  • 教員祝辞 教授 戸谷成雄
  • 校友会会長祝辞 佐奈芳勇
  • 学生パフォーマンス
  • 閉式の辞

会場風景

式典スタッフ

監修 牧野良三(通信教育課程教授)
照明 杉本孝夫(通信教育課程講師)
音響 瀬谷正夫/秀島正一(株式会社エス・シー・アライアンス)
映像配信 渡辺真太郎(デザイン情報学科講師)
パフォーマンス(学生) Modern Jazz Society
ラテン音楽研究会
モノクロウィンドアンサンブル
彩−sai−
校歌斉唱(学生) MAUコーラス
装置制作(学生) 浅野明子/北村彩子/長塚信之/平戸淳正/三谷佐紀/安達真琴/田野倉由佳/長谷川葉平/武田薫子/田中光
司会 澤野誠人(学生支援グループキャリアチームリーダー)
協力 白石学(デザイン情報学科教授)
連絡・調整 大蔵沙也/秋山千穂(通信教育課程助手)
美術・デザイン 愛甲佳世(総合美術研究所)
リーフレットデザイン 平野昌太郎(基礎デザイン学科講師)

学長式辞

写真:長澤忠徳

武蔵野美術大学学長 長澤忠徳

本日、ここに、造形学部961名、大学院造形研究科修士課程119名、博士学位取得3名、造形学部通信教育課程137名、合わせて1,220名の卒業・修了の学生諸君に学位記を授与できますことを、私たち武蔵野美術大学教職員一同は、心から嬉しく思い、祝福いたします。この卒業・修了生の中には、海外から武蔵野美術大学に入学され学ばれた98名の留学生の皆さんが含まれています。造形学部卒業生、大学院修了生のみなさん、おめでとうございます。

また、学生諸君の勉学を支え、見守ってこられた保護者のみなさま、ご家族のみなさまの喜びもひとしおかと存じます。おめでとうございます。
我が国の美術大学を代表する伝統あるこの武蔵野美術大学に、ご子弟を学ばせていただきましたご理解とご支援に感謝し、本学を代表して心よりお礼を申し上げます。ありがとうございます。

「教養を有する美術家養成」、「真に人間的自由に達するような美術教育」という本学の教育理念は、帝国美術学校から続く本学造形教育の理念でありますが、その教育は、美術・造形・デザインという専門分野の教育にとどまらず、その修練の過程を通して、創造的人間としての「堅い意志」と、世界の多様性を受け止め理解する「寛容さ」、そして、柔軟な「わかるチカラ」を育むものであると、私は信じています。

振り返ってみれば、2012年度、本学は、グローバル人材育成を推進する我が国の美術大学として唯一選ばれ、帝国美術学校時代より受け継がれた、世界に開かれた可能性に満ちた人材育成にさらなる挑戦をして来ました。みなさんは、在学中、居ながらにして、世界トップ水準の教育を体験されてきたことと思います。

例えば、昨年はロシア革命100周年の年でもあり、同時に、創立260周年を迎えたロシアのサンクトペテルブルグ芸術アカデミーと本学は、日本とロシアの美術教育分野において初めてとなる国際協定を締結しました。現在、日本とロシアの若きアーティストによる展覧会がサンクトペテルブルグで開催されていますが、この展覧会には、本学からの出品学生と教員を派遣し、初めてとなる日露美術学生交流も実現いたしました。文化・芸術が国際的な人的交流によって貢献できる大きな可能性を知る良い機会となりました。

本学は、もはや日本の一私立美術大学であることを超えて、「世界のムサビ」へと歩みを進めています。そして、そのチャレンジに挑んだのは、他ならないみなさん自身なのです。

世界は、グローバル化が進んでいます。造形言語を扱う私たちの美術・デザインの分野は、もとよりグローバルなものでもありましたが、クリエイティブな表現という「地球人としてのみなさんの振る舞い」は、以前にもまして、世界に大きな影響を与えるものとなって来ています。
しかし、一方で、グローバル化一辺倒ではなく、違いがあるからこそ意味をなす、地域固有の文化のアイデンティティを大切にして尊重することの重要性を再認識し、本学は国内外にその活動を展開し続けています。

2020年には、東京オリンピック・パラリンピックが開催されますが、それはスポーツだけのイベントではありません。これから、私たちの文化・芸術、教育の分野も、その盛り上がりとともに進んで行きます。

時代のキーワードは「イノベーション」と言われます。時代は移り変わっていきますが、伝統文化と種々の革新を「調和」する姿として実現して来た我が国は、東京オリンピック・パラリンピックを契機に、さらなる様々なイノベーションに挑んでいます。みなさんは、クリエーターでありイノベーターとして、その一翼をしっかり担って飛躍のチャンスをつかんでいただきたいと思います。

学生諸君の人生の学びのひと区切りとして、今、この武蔵野美術大学を旅立つ、輝く諸君の眼差しには、嬉しさと喜びがあふれています。

これから「創造の世界」という大海原に漕ぎ出そうとしているみなさんに、私からの「願い」を伝えたいと思います。それは、「大海原の、あの遥か彼方に見える水平線の上に立つ」ことを信じ切る「意志」の存在を、もう一度、自覚して欲しいということです。

美術大学に進学することを決めた時も、きっとそうだったと思いますが、本学に入学された時から、すでに「あの遥か彼方に見える水平線の上に立つ」航海は始まっていたのです。そして今、みなさんの航海は、さらなる大海原に漕ぎ出す段階にあります。

創造すること、クリエイティブであること、「創造という未知への挑戦」は、矛盾をひと飲みに飲み込んで、理屈を超えて「水平線の上に立つ」ことを信じることに似ていると思います。そんな「意志」に支えられるものだと思うからです。

「意志」という言葉の「意」という漢字は、「音」と「心」からできています。自分にしか聞こえない「心の音」を自分の外に表出すること、あらゆる可能な方法で、自分の「心の音」を自分の中から外へ出すことの修練が、様々な体験を通したみなさんの本学での学びであっただろうと思います。

だから、自らの「心の音」に耳を傾け、しっかりとその音を聴いてください。それこそが「表現」の根幹を成すものだからです。その内なる「心の音」こそ、みなさんそれぞれの「個性」なのです。表現者であるみなさんは、自らの「心の音」を聴くことを、これからはもっともっと大切にしてください。

「生きる、をつくる。つくる、を生きる。」という素敵なフレーズがあります。私も大好きなこの言葉は、2009年、本学創立80周年の時に生まれたムサビの合言葉ですが、私は、今あらためて、この合言葉を、巣立って行く諸君に贈ります。「心の音」を表出しようともがいた本学でのすべての体験は学びであり、「生きる、をつくる。つくる、を生きる。」ことへの準備であっただろうと思うからです。

今日は晴れがましい門出の日です。ご卒業されるみなさん、今日の日の感動を忘れず、若いチカラと自信を持って、胸を張って「生きる、をつくる。つくる、を生きる。」それぞれの人生への一歩を踏み出してください。

最後に、万感の思いを込めて、もう一度、お祝いの言葉を贈ります。
おめでとう!

理事長祝辞

写真:天坊昭彦

学校法人武蔵野美術大学理事長 天坊昭彦

皆さん、おはようございます。理事長の天坊です。
卒業生の皆さん、卒業おめでとう。
卒業生のご両親はじめ本日ご列席の皆さん、おめでとうございます。
入学から卒業まで、いろんなご苦労やご心配もあったかもしれませんが、本日は少しほっと肩の荷が降りた気持ちでおられるのではないでしょうか。卒業生を支えてこられた皆様のご支援に心から敬意を表し、改めてお祝いを申し上げる次第です。

さて、近頃は人工知能(AI)に関していろいろ報道されているので、皆さんもご存知と思いますが、人間と同じように人が使う自然の言葉を理解したり、倫理的な推論を行ったり、更にはいろんな経験を積むことによって自ら学習したりする、人間と同じような知能を持った人工知能(AI)の開発が急速に進んでいます。
また、身の回りのあらゆる物がインターネットを通じてつながる仕組み(ネットワーク)を作ることによって、実現可能な新しいサービスモデルを開発するIoT(Internet of Things)と言われる技術も急速に進んでいます。
21世紀もすでに17年が過ぎ、20世紀の長く続いた右肩上がりの成長を前提に成り立っていた日本の経済モデルやいろんなビジネスモデル等、社会の仕組みも含めて、不具合が目立つようになってきました。これは簡単な手直しでは何ともならず、抜本的な再構築が必要となってきていると思います。これが日本経済の長く続く低成長や、何となく感じられる活力のない社会現象の大きな要因だと私は考えています。日本は世界の先進国の中でも最も早く人口減少が始まり、少子高齢化が進んでいる国です。アメリカを除き、多くの世界の先進国も日本と同じような傾向を示してきており、これは世界的な問題でもあると思います。
最初に申し上げたAIやIoTの技術を活用して、日本再生に必要な新しいモデルや社会の仕組みを再構築する抜本的な新しいデザインが求められているのではないでしょうか。ムサビでデザインやアートを学んだ皆さんにとっても、今まで皆さんが学んだ領域を超える世界初、未知の領域かもしれません。しかし、ここには新たにチャレンジする価値のある大きな問題が山積みしていることは間違いなく、社会はあなた方のような素質のある人材を求めているのだと思います。

最初に少し大きな話をしてしまいましたが、本日、武蔵野美術大学を卒業し、社会人として新たな門出を迎えるにあたり、これから皆さんの心構えとして覚えておいてもらいたいと思うことを、3点話したいと思います。

1点目、
行き詰った社会に改革のヒントを与える先進性は芸術にあると言われています。
改革(イノベーション)には、知恵と創造力が必要です。だからこそ、今のような時代には芸術を学び、美や文化を追求してみることが必要なのです。言い換えれば、世界のいろんな分野でデザインやアートを学んだ人材が必要とされているのだと思います。実際に、私の友人や企業の経営者の人たちと話をすると、既存の文系、理系の人達だけではなく、芸術系の人材も欲しいという話を最近よく聞くようになりました。
卒業生の皆さん、あなた方の出番が来ているのです。

毎年卒業式でお話しするのですが、企業や社会で求められている人材というのは「個性ある人材」です。「個性ある人材」というのは、変人、奇人の類の変わった人という意味ではありません。しっかりした自分の考えをもって、対話をしながら相手を説得できるコミュニケーション力の高い人材のことです。
あなた方は、ムサビで4年間絵画やデザインなど、モノづくりを通して美術を学んできたと思っているかもしれませんが、もう一度思い出してみて下さい。
4年間毎日のようにやってきた創作活動とそのプレゼンテーションは、美術に対する能力向上を狙っているのは確かです。しかし一方でこの教育の本質は、考える力、特にコミュニケーション能力を高める教育でもあったのです。私はムサビに来て初めてこのことに気がつきました。こんなにすごい教育を4年間も続けて受けられる大学は他にはあまりないでしょう。あなた方は、企業や社会が常に求めている人材なのです。ぜひ自信を持って下さい。
「教養ある美術家の養成」というのは本学の理念です。この大学で4年間学んだだけで教養ある美術家になれる訳ではありません。美術家を志す皆さんにとっては、教養ある美術家になるための基礎を身につけたところであり、これから一生かけて自分自身を磨き続ける努力が必要です。
美術家としてだけでなく、ビジネスの世界に進む皆さんにとっては、先ずは各々のビジネスに必要な知識を習得する必要があります。その上で他の人と違った自分らしい意見をまとめ、考える力を遺憾なく発揮してください。4年間で鍛えられた皆さんの考える力は、大きな武器になるはずです。
いずれの道に進もうとも、ムサビで学んだことを基礎に、これからあなた方が更に研鑽を積んで、社会で活躍される実績がこれからのムサビの伝統を作っていくことになるのです。ですからムサビの学んだことに誇りを持って、あなた方一人ひとりが、これからの良きムサビの伝統作りに貢献できるように努力してくれることを大いに期待しています。

2点目です。
今、「自信と誇りを持て」と言いましたが、あなた方はまだ実社会の経験が殆どない初心者です。だから今すぐに「自信と誇り」を表に出し過ぎると「傲慢な人」とか「自惚れている」と思われて、決して良いことはありません。「自信と誇り」は自分の中で持ち続けて下さい。
大学で勉強してきたと言っても、実際の世の中はもっと複雑で人間の感情やいろんな利害が絡み合っていることが多いです。だから先ずは謙虚になって、人の話を良く聞いて、その上で良く考えて行動し、又話を聞いて考え、再び行動するというくらいの謙虚さが必要です。そして経験を積むことが重要です。こういう経験を積み重ねていくうちに、人間の機微というものが解るようになってきます。そうなると学問も活きてきます。先ずは謙虚になることを忘れないで下さい。
私が長く勤めていた出光興産という会社の創業者、出光佐三は、皆さんに話したような内容の話を、会社の入社式で毎年大学を卒業したばかりの新入社員に対し「卒業証書を捨てよ!」という表現で訓示していました。これは実際に卒業証書を破って捨てる訳ではなく、比喩的な表現です。とてもインパクトがあり、分かり易い表現なので、皆さんに紹介しておきます。

3点目、
最後になりましたが、卒業生の皆さん、本日あなた方が無事卒業できるように、陰に日向に懸命に支えて続けて下さったご両親はじめお世話になった方々に改めて感謝の気持ちを胸に刻み、これからは折に触れて恩に報いる気持ちを尽くすことを忘れないようにして頂きたい、ということです。

「心の中で自信と誇りを持ち続けろ!」
「謙虚になれ!」
「感謝の気持ちを忘れるな!」
この3つの言葉を贈る言葉として、私のお祝いの挨拶を終わります。

教員祝辞

写真:戸谷成雄

武蔵野美術大学教授 戸谷成雄

皆さん御卒業おめでとうございます。ただ、本当におめでたいかと言うと、そうとも言いきれないところがあります。私は、彫刻家として生きて来ましたので、作家志望の人達のことを考えるのですが、卒業と同時に、ただの人になります。本当にただの人です。一方、子供の頃からずっと背負ってきた学生という肩書きからは、解放されることにもなります。就職される方は別ですが、作家志望の人は何もない宇宙空間に、ポツンと放りだされたような感覚に陥るかもしれません。それは、自由という開放感を得ることでもあり、かつ、孤独であり、不安でもあるという、入り混じった感覚ではないでしょうか。現代美術の世界に決まった道筋はありません。自分なりの道を作るしかありません。その道のりを想像すると、単純におめでとう、とは言えません。

私も定年退職で皆さんと一緒にこの大学を卒業します。ですから、多少この感覚を共有できるのではないかと思っています。ただ私の場合は、晩年と言う宇宙空間で、どこか彼方に消えて行けば良いのですが、皆さんの場合は、始まりの宇宙空間です。どこかに着地しなければなりません。しかし、着地場所はおそらく不安定で揺れています。揺らぎのない普遍的「世界美術」も「日本美術」もありません。特に、日本に着地する美術は、解体と構築を繰り返し、どこか実感を伴わない、仮設的なものにならざるを得ません。これは、揺れる国の運命です。ただ、この運命を積極的に受け止め、感覚を研ぎ澄まし、知恵を絞れば、この場所独特の想像力が生まれるはずです。 

私は何者なのか。私はどこからきたのか。どこへ行くのか。どんな場所に立っているのか。場所とは何か。自分にとって本当の場所はあるのか無いのか。仮の場所が本当の場所か。この場所から立ち現れるものは何か。場所と身体、肉体、脳、内臓、心。自然、言葉、言葉の起源。この宇宙のあらゆる現象、存在、関係が作品のテーマであり、それらの内、何かが個々の皆さんの体に降り立ち、皆さんの体を動かし、手を動かすでしょう。この個別的情動性が、世界美術になる可能性はあります。信じましょう、そして、疑いましょう。

最後に私が制作を続けてきた上で、力付けてくれた言葉を皆さんにも贈りたいと思います。それは、詩人であり思想家の吉本隆明さんが言われた「一日の中に25時を作る」ということです。もちろんこれは現実的な時間ではなく、観念の時間です。皆さんも卒業したら、何らかの仕事をして生活しなければ、制作も続けることができません。仕事が忙しく疲れ果て、制作のことなど考えられない、そんな時間が取れない、という時もあるでしょう。そんな時でも、必ず、毎日一日の中に25時という観念の時間を持ち続けることが表現者である。ということだと思います。昼間の時間の隙間でも、眠りにつく前でも、夢の中でも、毎日美術とともに過ごす25時を持ち続けること。私は、この言葉に励まされてきました。これさえ守れば、好きで始めたことです、何とかなるよ。

皆さんそれぞれの場所での活躍を願っています。終わります。

校友会会長祝辞

写真:佐奈芳勇

武蔵野美術大学校友会会長 佐奈芳勇

卒業生の皆様、ご父兄の皆様、本日は誠におめでとうございます。
武蔵野美術大学校友会を代表して一言お祝いを述べさせていただきます。

1200名余の皆さんはこれから校友会の新しい会員となります。ここで校友会について簡単にご紹介します。発足して85年、会員数はこの4月で6万9千人となります。
全国各道府県に支部があり、海外4支部、学科別6支部合わせて56支部が各地で支部展覧会、イベントなどを通じて会員同士が交流しています。
これからは皆さんの手元に年2回、校友会の会報誌が届きます。
全国の校友が様々な分野でユニークな仕事をし、新しい時代を切り開く大きな存在となっていることを取材し、紹介し続けています。

卒業するみなさんの多くは東北の大震災の直後に高校生活を始められました。その後、美大を目指し、大学で学びながら、社会の中でアートやデザインに何ができるかということを大なり小なり意識してこられたと思います。校友会も東北や熊本などで被災地支援を行う校友をサポートしています。被災直後にできることは限られますが、復興していく過程でアートは人々の心に寄り添い、明日を生きる力に貢献できるということを確信してきました。

皆さんは、会社に勤める人、さらに進学する人、自ら起業する人と様々ですが、新しい世界に出る期待と不安に心を震わせておられると思います。

皆さんがこれから生きていく世界では、情報革命やAIによって仕事に大きな変化が起きていくといわれています。誰も経験したことがないことが起こるかもしれません。便利でより良い世界が始まるかもしれません。今必要とされることも、数年後にはすでに不要になってしまう可能性があります。ある仕事はなくなり、新しい仕事が生まれます。より速く、より安く、無駄のない世界に向かって技術がどんどん進化していくでしょう。それに伴って、ものの考え方も変わっていかざるを得なくなると思います。経済合理性優先でAI進化の方向性を決められ、人間の価値にとって大事なものが無駄だと切り捨てられていく恐れがあります。そのような時こそ、皆さんの出番です。美大で学んだ皆さんのようにものを虚心に見つめ、固定観念を問い直し、自分の価値観を大事に育ててきた人たちこそ、社会が次の方向性を模索するときに必要とされてきます。

そのためには、まずは仕事を通じて社会の様々なスキルを身につけ、皆さんが生き延びていく力をつけてください。同時に好きなこと、得意なことをあきらめずに続けてください。人の心をおもんばかる力、人の心に訴える力、つまり想像力と表現力を皆さんは持っています。

同じ問題意識を持った先輩たちが各地にいます。ぜひ校友会を通じてつながりを持ち続けてください。校友会からのお祝いとお願いの言葉とさせていただきます。