武蔵野美術大学卒業式典

日時 2014年03月19日(火) 10:20開場 11:00開式
場所 武蔵野美術大学 体育館アリーナ

式次第

  • 開式の辞
  • 校歌斉唱
  • 学位記(卒業・修了証書)授与
  • 卒業・修了制作(論文)優秀賞授与
  • 学長式辞 学長 甲田洋二
  • 理事長祝辞 理事長 天坊昭彦
  • 教員祝辞 教授 柏木博
  • 校友会会長祝辞 井上搖子
  • 閉式の辞

会場風景

式典スタッフ

総合演出 堀尾幸男(空間演出デザイン学科教授)
舞台監督 北條孝 / 本田和男(有限会社ニケステージワークス)
照明 原田保 / 田中剛志(株式会社クリエイティブ・アート・スィンク)
音響 市来邦比古(株式会社ステージオフィス) / 吉田豊(有限会社サイバーテック)
特効 南義明 / 酒井智大(株式会社ギミック)
舞台施工 延島泰彦 / 古川俊一(東宝舞台株式会社)
リーフレットデザイン 角田真祐子 / 長谷川哲士(株式会社ミンナ)
オープニング音楽制作 クリストフ・シャルル(映像学科教授)
オープニング映像制作 山崎連基(映像学科助手)
司会 村岡弘章(教務課教務担当課長)
制作進行 大野洋平 / 開田ひかり(空間演出デザイン学科助手)
協力 楫義明(芸術文化学科教授) / 篠原規行(映像学科教授) / 空間演出デザイン学科学生有志
特別出演 堀尾ゼミ / 空間演出デザイン学科学生有志

学長式辞

武蔵野美術大学学長 甲田洋二

本日ここに卒業、修了を迎えたみなさんおめでとう!

造形学部、大学院修士課程、博士後期課程、通信教育課程、そして各国からの留学生を含め1,464名の卒業、修了生を送り出すことが出来るのは、本学全教職員の大きな慶びであります。

心よりお祝いを申し上げます。
そして、御臨席のご父兄の方々に於いては、本日まで様々な思いをお持ちだったかと存じます。それだけに本日のお喜びもひとしおかと拝察いたします。誠におめでとう御座います。

本日本学を巣立ってゆく皆さんはそれぞれの領域で充実した日々を過ごしたことでありましょう。造形への研鑽は皆さんが明日から目指すそれぞれの場所に必ず光を与えてくれましょう。自信を持って進んで行って欲しいと、切に思います。

皆さんの大学生活はどのような年月であったのでしょうか。振り返ってみれば長く続いた経済不況も僅かではありますが上向き始め、実感はともかく、空気が動きはじめたと言われております。東京オリンピック開催決定も各方面にかなりなインパクトを与えるものと思われます。社会に巣立つ皆さんの背中を昨年より少しは強く押すことが出来ましょう。しかし3年前の東日本大震災と福島原発事故の復興、復旧への道は依然として、もどかしさが募る厳しいものと思われます。手抜きせずの、対応を見定めてゆく他ありません。

皆さんの学内生活については、まず、新図書館がフル活動を開始し、加えて本学初の美術館が開館し、スタッフによる充実した企画を提供出来たことは、嬉しいことの一つであります。又、皆さんは一年間しか関われませんでしたが、本学国際センターの努力により、美術系大学唯一となる「グローバル人材育成推進事業」として文科省より五年間に亘り活動費を獲得し、学生の海外生活を更に展開させるべく英語能力向上に向けて海外短期留学やその単位化を含めた活動を開始しています。更に、都道小平3・3・3の開通計画の関係から、それを機会に北側の校地の開発を軸に、デザイン系の改革を大胆に進めて、ムサ美の更なる充実に努めてゆく決心を強くしております。

又、グローバルの活動と共に海外の美術系大学の学生や教員の交流も大幅に展開しております。この交流も、近年軸足を欧米のみではなく、それぞれ特色のあるアジア諸国に置き、連係を深めております。卒業してゆく皆さんへの報告であります。時々母校に顏を見せて下さい。その折に、率直なご提案、ご意見を伺いたく思います。

最後に今日戦後日本の在り方を問い、今後の方向づけを見出そうと努力している風景が私には見えてきています。一つの転換期が来るかもしれません。やや急すぎる感も致しますが、このような時期に美術系の領域で努力を積み上げてきた皆さんを、社会は期待しているのです。

何故ならば、皆さんの造形への日々の研鑽は、簡単に正解は勝ち取れません。自分を裸にし、謙虚さと大胆さという表裏を同居させて挑戦するのです。当然モタモタもし、手間も掛かりましょう。つまり真のオリジナリティーを身に付けるには、このような裏付けが必要となります。それを「美の力」と私は常々言っております。実学を主体とした人々が築き上げた既存社会にいま「美の力」の参加が必要なのです。美の力のエッセンスが既存社会に浸透してゆくことが大切なのです。

頑張りましょう。

ご清聴有難うございました。

理事長祝辞

武蔵野美術大学理事長 天坊昭彦

卒業生の皆さん、そしてご家族の皆さん 本日はおめでとうございます。心からお祝いを申し上げます。

理事長の天坊でございます。
今日は2つの話をさせて頂きます。

1つ目の話です。
私は大学を卒業して、出光興産という会社に入りました。皆さんの中には昨年本屋大賞を受賞した「海賊とよばれた男」という小説を読まれた方もおられると思います。この小説では、国岡商店という名前になっておりますが、これは、出光興産の前身の出光商会がモデルです。その会社の創業者 国岡鉄三が主人公です。出光の創業者は出光佐三と言います。小説は史実に基づいており、とてもおもしろい本だと思いますので、時間があれば読んでみて下さい。

今、私が言おうとしていることは、50年前出光の入社式で出光佐三から聞いた言葉です。それは「卒業証書を捨てろ!」ということです。これが大学を出て入社した社員に向かって最初に発せられた言葉でした。しかし、私も後に社長になって新入社員に同じ話をしました。とても大事なことだと思うので、今日は卒業式ですが皆さんにも話そうと思いました。その意味するところは、実際に卒業証書を捨ててしまえということではありません。これは比喩的な表現です。大学で勉強して来たかもしれないが、それは学校の机の上で考え議論して来ただけではないか? 実際の世の中は、もっと複雑で人間の感情やいろんな人の利害が絡みあっていることが多い。従って、先ずは謙虚になって人の話を良く聞け、その上で行動し、又、考えて人の話を聞きなさい。そして、再び行動するというくらいの謙虚さが必要だ。卒業証書をいくら振りかざしても仕事はできない。仕事をするのは人。人が中心の世界だ。人には感情もあり、また利害もある。だから先ず、謙虚に人の話を聞いて、経験を積むことが必要であり、重要だという話です。

2つ目の話ですが、これは、今の話と矛盾するような話ですが、皆さんは伝統ある武蔵野美術大学を卒業された訳で、是非、自分の心の中で誇りを持ち続けてもらいたいということです。

私は一昨年の12月に理事長に就任し、1年4ヶ月経ちました。昨年の卒業式の時迄には気がつかなかったのですが、武蔵美では、今、企業や社会が求めている人材に必要な最も重要な能力を高める教育を一貫して行っているということです。今、企業や社会が求めている人材とは個性豊かな人材です。それは、変わった人とか異質の人ということではありません。しっかりした自分の考えをもって、相手や周囲の人にきちんと説明し対話をしながら説得をする能力です。皆さんが毎日のように4年間やって来た創作活動とそのプレゼンテーションは、まさにこういう能力を高める教育だと思うからです。この教育は美術に関する技術的な能力の向上を狙ってますが、一方でこの教育の本質は、考える力を鍛えていることだと思います。こんなすごい教育を真剣に4年も続けている大学生は他にはあまりないと思います。君たちの考える力は必ず企業や社会の役に立つ筈です。自信を持って下さい。卒業生の皆さんの中には、これからも学校に残って、更に勉強を続ける人もいるでしょうが、社会人として仕事に就かれる人も多いと思います。

「教養ある美術家の養成」というのは、本学の理念の一つです。この大学で4年間学んだだけで教養ある美術家になれる訳ではありません。美術家を志す皆さんにとっては教養ある美術家になる為の基礎を身につけた所であり、これから一生かけて、自分自身を磨き続ける努力が必要です。

美術家でない仕事に進む皆さんにとっては、先ずは各々の仕事に係る専門的な知識を修得する必要があります。その上で他の人と違った自分らしい意見をまとめる為に考える力を如何なく発揮することです。4年間鍛えられた考える力は大きな力になる筈です。

いづれの道に進もうとも武蔵美で学んだことを基礎に、これから皆さんが更に研鑽を積んで、社会で活躍される実績が、これからの武蔵美の伝統を作って行くことになるのです。ですから、武蔵美で学んだことに誇りを持って、これからのより良き武蔵美の伝統作りに貢献できるように努力してくれることを大いに期待しています。

矛盾したような話をしましたが、現実の世の中には矛盾したことが多いということも含めて、
「謙虚になれ!」
「誇りを持ち続けろ!」
「世の中には矛盾していることが多い」
この3つを皆さんに贈る言葉として私のお祝いの挨拶とします。

教員祝辞

武蔵野美術大学教授 柏木博

みなさんおめでとうございます。
卒業することのうれしさとともに、これからの日々への期待、そして同時に不安も感じていると思います。
小学校以来、中学・高校そして大学。これまで自分をずっと守ってくれた学校という場から外へ出て行かなければならないのですから。これからは、みなさんは専門家、プロフェショナルとみなされます。
この武蔵野美術大学で学びそして習得した知識や技術によって、ともかく歩いていかなければなりません。そして、歩きながら、さらに知識と技術を身につけていくことになります。

ところで、ある知識や技術を理解するということは、それらのスタイルを理解するということにほかなりません。たとえば、美術家のアンディ・ウオホールの表現を理解するということは、その表現のスタイルを理解するということです。

みなさんは、これからさまざまなスタイルを理解し、身につけながら、やがて、自分の考え方や生き方のスタイルをつくりあげていかなければなりません。生き方に自分のスタイルを持つということは、とても大切なことです。

けれども、生き方にスタイルを持つといっても、いっぽうでは、かたくなになることは、好ましくありません。

美術史家のエルンスト・ゴンブリッチは、大学卒業後、1935年、25歳のときに、『若い読者のための世界史』という大著を書いています。ドイツが異常な状態になっていった1936年、ゴンブリッチは生まれ故郷のウイーンからロンドンに渡ります。この本は、50年後に新しい後書きを加えて、再び刊行されました。この後書きの中で、ゴンブリチは、子どもたちは、「もし彼らの教師がクラスの中で奇妙に見える流行遅れの服を着ていたら、ただそれだけで彼を笑いものにします」と書いています。それはクラスの仲間についても同様です。「もし彼が肌の色あるいは髪の毛の色、あるいは話し方、食べ方でも他のものたちと違っていたら、その仲間は容易に犠牲者となり、死ぬほどいじめられます」と述べています。そのことはおとなの世界でも変わりません、と指摘しています。そして、大切なことは「寛容であること」だと述べています。

ここで問題です。「不寛容な相手」がいたとしたら、その相手にも「寛容」になれるでしょうか。その答えは、みなさんがそれぞれ考えてください。

この「寛容」であることと関連しますが、「弱い」ということは、恥ずべきことではありません。このところ日本は「強い国」になることを強調しています。

ゴンブリッチは次のようなことも述べています。「わたしは世界でもっとも賢い、もっとも強い、もっとも勇気のある、もっとも才能のある人間である」と誰かがいうと、人々は不愉快になります。でも、「わたしは」というところを「わたしたちは」に変えると、人々は彼を愛国者と呼びます。しかし、1930年代のドイツがそうであったように、こうした発言が思いもよらない方向に人々をむかわせるのだと指摘しています。

近代以前の日本の文化は、いわば「手弱女」つまり、弱いことを恥じない文化でした。しかし、明治期に強い「益荒男」文化をつくろうとしました。

その後、1920年代、一瞬、弱いものへのまなざしをもった表現が広がります。小川未明や宮沢賢治あるいは北原白秋といった人たちの表現にそれを見ることができます。たとえば、白秋は山田耕筰作曲の「からたちの花」の作詞を手がけています。「からたちの花が咲いたよ」という有名な曲です。5番は「からたちのそばで泣いたよ。みんなみんなやさしかったよ」となっています。こうした弱くやさしい文化は、やがて戦争へとむかう1930年代の強いことをよしとする社会の流れの中で消えていきました。

いま再び、強さが語られている中で、弱さややさしさを大切にしたいと思います。

生き方のスタイルを持つこと。寛容であること。そして弱さややさしさを大切にすること。ともすると、ぼく自身もそれを忘れがちですが、そのように歩いていきたいと思っています。それをみなさんが共有してくれることを願って。祝辞にかえたいと思います。

校友会会長祝辞

武蔵野美術大学校友会会長 井上搖子

校友会よりお祝いの言葉を述べます。

本日は、ご卒業まことにおめでとうございます。

皆さんの晴れやかな表情を拝見していると、こちらも身の引き締まる思い...と言おうと思っておりましたが、学位記授与式は愉快でした。皆さんの演出、大変おもしろかったです。

そして、いよいよ武蔵野美術大学校友会の正会員として皆さんをお向かいできますことを心より嬉しく噛みしめております。

これからの人生において本日の卒業と同じような大事な節目に、これから幾度も出会うことと思いますが、校友会には卒業はございません。一生のお付き合いになります。ですから焦らずにお付き合いいただけたらと思っています。

では校友会は何をしているのかについてお話しします。

卒業生のことを校友と言いますが、校友の社会的な活動の支援をするのが校友会の勤めです。現在6万3000人の校友がいて、本日皆さんが加わり6万4000人を超えることになります。

その校友によって構成される、日本全国の都道府県ばかりでなく、海外、例えばアメリカのニューヨーク、台湾や韓国などに支部がございます。東京には学科卒業生で構成している支部が3つ4つあります。各支部ではそれぞれ、校友が作品を発表する場や皆で集まってのセミナーを定期的に開催しています。

そして7月には全ての支部幹部が集合する総会があります。総会は本来は校友なら誰でも出席していただける会です。それからもうひとつ、大学と共催でアート&デザインというイベントをこれも一年に一度、行ってきました。東北大震災の復興支援をきっかけに2年前から総会とアート&デザインを同時に行うことになりました。2年前は、仙台でアートやデザインに何ができるかをテーマに、昨年は東京で、校友会の80周年を記念して、校友の展覧会と共に、アートやデザインの行方をテーマに語り合いました。そして今年は広島で行います。近くに住まわれる方、その頃広島にいらっしゃる方はぜひいらしてください。

校友会の情報は、年に2回、会報が送られます。イベントについては皆さんへメールが送られます。ホームページではいつも情報が更新されています。これからの忙しい日々の中、校友会のことを忘れてしまうかもしれませんが、思い出したらホームページを見てください。地方に行かれる方は支部展に出掛けてみてください。校友会はいつでもお待ちしています。

校友会の簡単なご案内をお祝いの言葉に代えさせていただきます。本日は本当におめでとうございました。