第1章 総則

目的

第1条 この規則は、武蔵野美術大学(以下「本学」という。)における研究費等の使用に関して、適正に管理及び運営するために必要な事項を定めることを目的とする。

定義

第2条 この規則において取り扱う研究費等(以下「研究費等」という。)は、次の各号に定めるものとする。

  1. 各省各庁から配分される競争的研究費(各省各庁が所管する法人等から配分される競争的研究費を含む。)
  2. 地方公共団体等からの助成金及び補助金
  3. 研究に関する寄附金(助成団体等からの助成金を含む。)
  4. その他前各号に準ずる研究費(本学において支給する個人研究費を除く。)

責任体系

第3条 本学は、組織として研究費等を適正に管理及び運営する責任体制をとるものとし、次のとおり責任者を置き、その責任と権限及び役割を定める。

  1. 最高管理責任者は、学長とし、研究費等の管理及び運営について、本学全体を統括し、最終責任を負う。最高管理責任者は、不正防止対策の基本方針を策定、周知し、実施上必要な措置を講ずるとともに、統括管理責任者及びコンプライアンス推進責任者が責任を持つて競争的研究費等の運営及び管理が行えるよう、適切にリーダーシップを発揮する。
    また、不正防止対策の基本方針や具体的な不正防止対策の策定に当たっては、理事会等において審議を主導するとともに、その実施状況や効果等について役員等と議論を深めさらに、自ら部局等に足を運んで不正防止に向けた取組を促すなど、様々な啓発活動を定期的に行い、構成員の意識の向上と浸透を図る。
  2. 統括管理責任者は、大学企画を担当する学長補佐とし、最高管理責任者を補佐し、研究費等の管理及び運営について本学全体を統括する実質的な責任と権限を有する。統括管理責任者は、基本方針に基づき、不正防止計画をはじめとする本学全体の具体的な対策を策定、実施し、実施状況を確認のうえ、最高管理責任者に報告する。
  3. コンプライアンス推進責任者は、各学部長、各研究科委員長、美術館・図書館長、通信教育課程課程長、造形研究センター長、ソーシャルクリエイティブ研究所長、学校法人武蔵野美術大学学務事務組織規則第4条に規定するグループ長(以下「部局長」という。)とし、当該部局における研究費等の管理及び運営について実質的な責任と権限を有する。
    コンプライアンス推進責任者は、統括管理責任者の指示の下、当該部局等における不正防止対策を実施し、実施状況を確認、統括管理責任者に報告するとともに、当該部局等内の競争的研究費等の運営及び管理に関わる全ての構成員に対し、第5条の2に定めるコンプライアンス教育を実施し、受講状況を管理監督する。また、コンプライアンス推進責任者は、当該部局等内において、定期的に啓発活動を実施し、さらに当該部局において、構成員が、適切に競争的研究費等の管理及び執行を行つているかをモニタリングし、必要に応じて改善を指導する。
  4. 研究費等不正使用防止対策委員会は、第9条に定める者を持って構成し、不正使用の防止のための対策を行い、不正使用に関する審査及び対処方針を審議する責任と権限を有する。

監事の役割

第3条の2 監事は、不正防止に関する内部統制の整備・運用状況について本学全体の観点から確認し、理事会に意見を述べる。

2 監事は、特に、統括管理責任者又はコンプライアンス推進責任者が実施するモニタリングや内部監査によって明らかになった不正発生要因が不正防止計画に反映されているか、また、不正防止計画が適切に実施されているかを確認し、理事会に意見を述べる。

第2章 適正な運営・管理の基盤となる環境の整備

コンプライアンス教育・啓発活動の実施

第4条 本学は、教職員の意識向上を図るため、競争的研究費等の運営、管理に関わる全ての構成員を対象に、本学における不正対策の方針、ルール等に関するコンプライアンス教育を実施する。

2 コンプライアンス教育は、統括管理責任者が策定する実施計画に基づき、コンプライアンス推進責任者のもと実施する。

3 コンプライアンス教育の内容は、各構成員の職務内容や権限・責任に応じた効果的で実効性のあるものを設定し、定期的に見直しを行う。

4 実施に際しては、あらかじめ一定の期間を定めて定期的に受講させるとともに、対象者の受講状況及び理解度について把握する。

5 コンプライアンス推進責任者は、これらの内容を遵守する義務があることを理解させ、意識の浸透を図るために、競争的研究費等の運営・管理に関わる全ての構成員に対し、受講の機会等に誓約書等の提出を求める。

6 前項の誓約書の提出がない者については、競争的研究費等の運営、管理に関わることができないものとする。

7 コンプライアンス推進責任者は、統括管理責任者が策定する実施計画に基づき、競争的研究費等の運営・管理に関わるすべての構成員に対して、コンプライアンス教育にとどまらず、不正根絶に向けた断続的な啓発活動を実施する。

8 競争的研究費等の運営・管理に関わる全ての構成員に対する行動規範を策定する。

ルールの明確化等

第5条 本学は、研究費等に係る事務処理手続きについて、常に検証を行い、ルールの明確化、統一化を図るとともに、研究費等に関わる全ての本法人職員(以下、「教職員」という。)に対し、周知徹底を図る。

2 競争的研究費等により謝金、旅費等の支給を受ける学生等に対してもルールの周知を徹底する。

第3章 不正を発生させる要因の把握と不正防止計画の策定・実施

不正防止計画推進部署の設定

第6条 本学は、研究費等の不正使用を未然に防止するため、その要因を把握して分析し、不正防止計画の策定・実施を行う。

2 不正防止計画の推進は第7条に定める研究費等不正使用防止対策委員会において審議し、総務チーム及び教学企画チームを不正防止計画推進部署とする。

3 不正防止計画推進部署は、統括管理責任者とともに本学全体の具体的な対策を策定・実施し、実施状況を確認する。

4 不正防止計画推進部署は監事との連携を強化し、必要な情報提供等を行うとともに、不正防止計画の策定・実施・見直しの状況について意見交換を行う機会を設ける。

不正を発生させる要因の把握と不正防止計画の策定・実施

第6条の2 不正防止計画推進部署は、監査チームと連携し、不正を発生させる要因がどこにどのような形であるのか、本学全体の状況を体系的に整理し評価する。

2 最高管理責任者が策定する不正防止対策の基本方針に基づき、統括管理責任者及び不正防止計画推進部署は、本学全体の具体的な対策のうち最上位のものとして、不正計画を策定する。

3 不正防止計画の策定に当たっては、不正を発生させる要因に対応する対策を反映させ、実効性のある内容にするとともに、不正発生要因に応じて随時見直しを行い、効率化・適正化を図る。

4 部局等は、不正根絶のために、不正防止計画推進部署と協力しつつ、主体的に不正防止計画を実施する。

第4章 研究費等不正使用防止対策委員会

研究費等不正使用防止対策委員会

第7条 本学における研究費等の不正使用の防止のための対策を行い、不正使用に関する審査及び対処方針を審議するために、研究費等不正使用防止対策委員会(以下「対策委員会」という。)を置く。

審議事項

第8条 対策委員会は、次の事項について審議する。

  1. 研究費等の不正使用の防止に関する全学的な施策に関する事項
  2. 不正使用に関する審査及び懲戒等を含む対処方針に関する事項
  3. その他研究費等の不正使用に関する重要な事項

構成

第9条 対策委員会の委員は、武蔵野美術大学大学運営会議規則に定める構成員、教学企画チームリーダー及び総務チームリーダーを持って充てる。

委員長及び副委員長

第10条 対策委員会に、委員長及び副委員長を置く。

2 委員長は最高管理責任者たる学長とし、副委員長は統括管理責任者たる大学企画を担当する学長補佐とする。

3 委員長は、会務を総理する。

4 副委員長は、委員長を補佐し、委員長に事故があるときはその職務を代行する。

招集及び議決

第11条 対策委員会は、委員長が招集する。

2 対策委員会は、委員の過半数が出席しなければ、会議を開き議決することができない。

3 対策委員会の議事は、出席委員の過半数でこれを決し、可否同数のときは委員長の決するところによる。

4 対策委員会は、必要があると認めるときは、委員以外の教職員又は外部の有識者等を会議に出席させ、意見を求めることができる。

第5章 研究費の適正な運営・管理活動及びモニタリング

点検体制

第12条 コンプライアンス推進責任者は、当該部局に関わる研究費等の適正な使用のための点検に努め、当該部局における点検のための責任体制を確立しなければならない。また、研究費の執行に関する書類やデータ等は、一定期間保存し、後日の検証を受けられるようにしなければならない。

発注検収業務

第13条 研究費等による物品等の発注及び検収に当たっては、当該研究の当事者以外が点検にあたるものとする。

モニタリング

第14条 本学全体の視点から、各部局についての研究費などの適正な使用状況について、最高管理責任者の指示の下でモニタリングを行う。

2 モニタリングは、監査チームが所管し、学校法人武蔵野美術大学内部監査規則に基づいて行う。また、併せて競争的研究費等の管理体制の不備の検証を行う。

3 監査チームは、前項に加え、第6条第2項の不正防止計画推進部署と連携し、本学の実態に即したリスク要因を分析して重点的にサンプルを抽出し、リスクアプローチ監査を実施する。

4 内部監査の実施に当たつては、モニタリングを通じて把握された不正発生要因に応じて、監査計画を随時見直し、効率化・適正化を図るとともに、専門的な知識を有する者を活用して内部監査の質の向上を図る。

連携

第15条 監査チームは、効率的・効果的かつ多角的な内部監査を実施するために、監事及び会計監査人との連携を強化し、必要な情報提供等を行うとともに、本学における不正防止に関する内部統制の手法、競争的研究費等の運営・管理の在り方等について定期的に意見交換を行う。

報告・周知

第16条 点検及び発注検収業務において不正等と判断される事案がある場合はコンプライアンス推進責任者が、モニタリングについては監査チームリーダーが、速やかに最高管理責任者に報告しなければならない。

2 点検、発注検収業務及びモニタリングの概況は、監査チームで取りまとめて、最高管理責任者に定期的に報告するものとする。

3 内部監査結果等については、コンプライアンス教育及び啓発活動にも活用するなどして周知を図り、本学全体として同様のリスクが発生しないよう徹底する。

第6章 相談及び告発

相談窓口

第17条 研究費等を適正に管理及び運営するため、研究費等を所管する部局は当該研究費についての相談を教職員から受けるものとする。

2 前項の規定に関わらず、教職員又は全ての関係者からの不正使用等についての相談窓口は、総務チームとする。

不正使用の疑いの告発等

第18条 教職員に研究費等の不正使用が存在するとの疑いがあると判断する者は、何人も本学が設置する窓口に告発又は情報提供(以下「告発等」という。)を行うことができる。

告発等の窓口

第19条 学長は、研究費等の不正使用の疑いに係る告発等を受け付ける窓口を、総務チームとし、これを公表するものとする。

2 総務チームは、受け付けた研究費等の不正使用事案を最高管理責任者へ連絡しなければならない。

告発等の方法

第20条 前条に規定する窓口への告発等は、実名で行うものとする。

2 告発をする者(以下「告発者」という。)は、書類の提出により行うものとする。ただし、告発者は、その後の調査手続等において氏名の秘匿を希望することができる。

3 情報提供をする者(以下「情報提供者」という。)は、提供の方法、手段を問わず、匿名で行うことができる。

4 第2項の告発者及び第3項の情報提供者を「告発者等」という。

5 告発等は、原則として当該事実の発生した日から起算して、5年以内に行わなければならない。

第7章 調査

予備調査

第21条 最高管理責任者は、第20条に規定する告発等の事案があつた場合は、統括管理責任者又は総務チームに予備調査を実施させるものとする。

2 統括管理責任者又は総務チームは、第1項による告発等を受け付けた日から、原則として30日以内に、予備調査の結果を最高管理責任者に報告するものとする。

3 最高管理責任者は、告発等の受け付けから30日以内に、告発等の内容の合理性を確認し、第22条に定める調査の要否を判断するとともに、当該調査の要否を配分機関に報告するものとする。

4 当該調査に係る配分機関への報告等については、前項に定めるほか、別に定める。

5 最高管理責任者は、第2項の報告を受けたときは、次に掲げるいずれかの手続きを行うものとする。

  1. 予備調査の結果において、研究費等の不正使用が存在する可能性が高いと判定された場合は、速やかに対策委員会を開催するものとする。
  2. 予備調査の結果において、研究費等の不正使用が存在しないと判定された場合は、告発者等に対し、予備調査の結果を通知する。

6 最高管理責任者は、予備調査の結果において、研究費等の不正使用が存在しないと報告され、かつ、当該不正使用の告発等が告発者等の悪意に基づくものと判明した場合は、次に掲げるいずれかの手続きを行うものとする。

  1. 告発者等が本学の教職員又は学生である場合は、告発者等が所属する部局長又は主任教授に経緯等を通知する。
  2. 告発者等が前号に掲げる者(学外の事業者等を含む。)以外である場合は、関係する部局長に通知する。

本調査実施の決定

第22条 対策委員会委員長は、前条第3項第1号に基づき開催する対策委員会において、本調査の実施を決定し、当該事案に係る調査委員会(以下「調査委員会」という。)を設置する。

2 対策委員会委員長は、告発者等及び被告発者(内部監査等において研究費等の不正使用が判明した場合の調査の対象となる者を含む。以下同じ。)並びに被告発者の所属する部局長又は主任教授に対し、本調査実施の決定の事実を通知するものとする。

3 対策委員会委員長は、必要に応じて、被告発者等の調査対象となつている者に対し、調査対象制度の研究費の使用停止を命ずることができる。

調査委員会

第23条 調査委員会は、次に掲げる委員をもつて組織する。

  1. 対策委員会委員長が指名する委員 若干名
  2. 当該事案に関連する教職員 若干名
  3. 告発者及び被告発者と直接の利害関係を有しない弁護士、公認会計士等外部有識者 若干名

2 調査委員会委員の選考は、対策委員会が行う。

3 調査委員会に委員長を置き、第1項第1号に規定する者をもつて充てる。

4 調査委員会委員の任期は、当該事案について対策委員会の審査が終了するまでの期間とする。

本調査の実施

第24条 調査委員会は、次に掲げる調査を行う。

  1. 被告発者及びその関係者(以下「調査対象者」という。)からの聴取り調査
  2. 関係資料、会計伝票等の閲覧調査
  3. その他調査することが合理的と判断される事項

調査委員会の判定

第25条 調査委員会は、本調査の開始から、原則として60日以内に調査結果をまとめ、研究費等の不正使用の存在の有無、不正の内容、関与した者、その関与の程度、不正使用の相当額等について判定するものとする。

2 前項の判定において、研究費等の不正使用が存在すると判定したときは、研究費等の不正使用に関与した者とその関与の度合いについても判定するものとする。

3 第1項の判定において、研究費等の不正使用が存在しないと判定したときは、その告発等が悪意に基づくものであるか否かについても判定するものとする。

4 前項の告発等が悪意に基づくものであるとの判定をするためには、判定の前に告発者等に対して弁明の機会を与えなければならない。

5 調査委員会は、第1項から第3項までの判定を終了したときは、直ちに全ての調査結果に関係資料を添えて対策委員会に報告するものとする。

対策委員会の審査及び通知

第26条 対策委員会は、前条の報告に基づき審査し、研究費等の不正使用の存在の有無等について認定する。

2 対策委員会委員長は、前項の結果を、次に掲げる者に通知するものとする。

  1. 被告発者
  2. 被告発者以外で研究費等の不正使用に関与したと認定された者
  3. 前2号の者が所属する部局長及び主任教授
  4. 告発者等

不服申立て

第27条 研究費等の不正使用を行つたと認定された被告発者又は告発等が悪意に基づくものと認定された告発者等は、調査結果の通知を受理した日から起算して30日以内に、対策委員会に対して不服申立てをすることができる。

2 前項に関わらず、その期間内であつても、同一理由による不服申立てを繰り返すことはできないものとする。

3 不服申立ての審査は、調査委員会が行うものとする。ただし、不服申立ての趣旨が、調査委員会の構成等その公正性に関わるものである場合には、対策委員会の判断により、調査委員会に代えて、他のものに審査させることができる。

4 調査委員会又は前項ただし書きの調査委員会に代わるものは、不服申立ての趣旨、理由等を検討し、再調査を行うか否かを速やかに決定する。

5 対策委員会委員長は、前項の決定の報告を受けて関係者に通知するものとする。

審査結果の通知

第28条 学長は、前条による不服申立期間が終了した後又は不服申立てによる審査が終了して研究費等の不正使用が行われたとの認定があつた後、対象となる研究費等の不正使用が競争的研究費の執行に関わるものである場合は、当該競争的研究費配分機関に通知を行うものとする。

守秘義務

第29条 対策委員会及び調査委員会の委員並びに調査に関係する者(以下「調査関係者」という。)は、この規則に基づく調査及び審査により知り得た情報を他に漏らしてはならない。

関係者の保護等

第30条 学長は、告発者等及び調査関係者が研究費等の不正使用告発等を理由とする不利益を受けないよう十分な配慮を行うものとする。

名誉回復等

第31条 学長は、被告発者に研究費等の不正使用が存在しないとの認定があつた場合は、被告発者の教育研究活動の正常化及び名誉回復の措置を講じるものとする。

第8章 懲戒及び取引停止

懲戒

第32条 理事長は、対策委員会の審査に基づいて学校法人武蔵野美術大学服務規則に定める教職員の懲戒を行わなければならない。

本学教職員以外の者

第33条 不正に関わる者が本学教職員以外の者である場合、理事長は当該者に係る大学等の管理者に対して必要な報告を行うものとする。

取引停止等

第34条 不正に関わる者が本学と契約又は取引等を行う事業者である場合、理事長は当該者に係る契約の破棄又は取引の停止等を行うものとする。

第9章 雑則

事務

第35条 対策委員会及び調査委員会の事務は、総務チームの所管とする。

雑則

第36条 この規則に定めるものの他、研究費等の不正使用が生じた場合等に関し必要な事項は、対策委員会が別に定める。

規則の改廃

第37条 この規則の改廃は、各学部教授会の議を経て学長が定め、理事会が決定する。

附 則

この規則は、令和5年6月1日から施行する。