授業科目の一環として、国内外のそれぞれの領域で活躍する専門家を訪問教授として招き、講義や講評会という形式で、特別授業が開講されています。これまでにも著名なアーティストやデザイナーの講演や講評会、公開シンポジウムなどが多彩に行われています。また、テーマを設定したワークショップや、学科の枠を超えた合同制作・講評会などの、実験的な試みもなされています。
訪問教授の紹介
2016年度
Kate Burnett
イギリス / 舞台美術家、展示デザイナー、ノッティンガム・トレント大学 舞台美術研究者、舞台美術学部統括者、博士課程教授
- 受入期間
- 2016年4月18日(月)~4月22日(金)
- 受入研究室
- 空間演出デザイン学科研究室
- 担当教員
- 堀尾幸男教授
- 講義・指導内容
- イギリス演劇・舞台美術教育の新たなる潮流
- 課外講座
- 英国の美術大学の現状、ロンドンの演劇事情、大学事情を知る
地域から国、ツアー劇場まで、さまざまな規模、形式のシアター・デザインや、オーケストラ、オペラ、アートギャラリーのコミュニティ・パフォーマンス・プロジェクトを手掛けるとともに、本学の協定校イギリス、ノッティンガム・トレント大学のシアター・デザイン・コースで教鞭をとるケイト・バーネット氏を招き、「独人芝居」をテーマとするワークショップ、ノッティンガム・トレント大学での授業形態をもとにした講義およびディスカッションを行った。課外講座では、バーネット氏の仕事をとおして、イギリスの演劇シーンや大学における演劇教育に触れ、受け入れ学科の学生のみならず、イギリス文化や留学に興味のある学生など、より広範な層を対象とする講義を行った。
Tricia Austin
イギリス / ロンドン芸術大学セントラル・セント・マーチンズ・カレッジ 空間演習プログラム リサーチリーダー、博士課程スーパーバイザー、MA ナラティブ・エンバイロメンツ コースリーダー
- 受入期間
- 2016年5月16日(月)〜5月21日(土)
- 受入研究室
- デザイン情報学科研究室
- 担当教員
- 今泉洋教授
- 講義・指導内容
- 環境形成方法論「Narrative Environment(物語る環境)」をテーマとするワークショップ、レクチャー
- 課外講座
- 場づくりのための『ものがたり環境』をデザインする
本学協定校であるロンドン芸術大学セントラル・セント・マーチンズにおいて空間演習プログラムのリサーチリーダーおよび博士課程スーパーバイザー、大学院修士課程「Narrative Environment」のコースリーダーをつとめるトリシア・オースチン氏は、デザイン論、コミュニケーション論、文化論、空間論をはじめ、ミュゼオロジー、教育理論など幅広い領域の理論をふまえ、素材と構造、イメージ、テクスト、メディア、さらに観客を含む超領域指向型の環境形成論を専門としている。今回の招聘では、再開発中の国分寺駅周辺を舞台に、氏が英国内外の大学および政府機関と行ってきた共同プロジェクトやワークショップを通じて研究・展開してきた環境形成論「Narrative Environment(物語る環境)」をベースとするワークショップ「プレイスメイキング―都市における場の創造」を行った。また課外講座では、「場づくりのための『ものがたり環境』をデザインする」と題し、「Narrative Environment」の概念やワークショップの目的と意義、世界各地での事例や学生の作品を紹介した。
Chen Qiang
中国 / 上海市建峰学院芸術学部 副教授
- 受入期間
- 2016年6月27日(月)〜7月8日(金)のうち6日間
- 受入研究室
- 共通デザイン研究室
- 担当教員
- 小井土滿教授
- 講義・指導内容
- 点から面へ―墨による画面の構成
- 課外講座
- 点から面へー中国現代絵画の成立とその過程
上海建峰学院芸術学部で教鞭をとりながら、中国現代絵画の作家として活躍するChen Qiang氏は、絵画の基本構成要素「点」による表現を探求しており、それが世界的に高く評価されている。また、家具メーカーとのコラボレーションにより、この芸術上の要素を室内空間に展開する試みも見られる。今回の招聘では、美術系学生を対象とする「造形総合デザイン」において、芸術の本質をデザインの観点から経験することを目的に、墨と筆と和紙を用いた複数の課題を通じた制作指導とその表現に関する講義「点から面へ―墨による画面の構成」を行った。課外講座では「点から面へー中国現代絵画の成立とその過程」と題し、中国現代絵画の歴史的流れについての講義と、中国上海のアーティストたちの紹介、作品の解説を行った。
Scott Eaton
イギリス / Eaton Media Limited ディレクター
Rebecca Wade
イギリス / ヘンリー・ムーア・インスティテュート アシスタント・キュレーター
- 受入期間
- 2016年7月11日(月)~7月16日(土)
- 受入研究室
- 彫刻学科研究室
- 担当教員
- 伊藤誠教授
- 講義・指導内容
- Artistic Anatomy Workshop “Anatomy for Sculpture”(美術解剖学ワークショップ「彫刻のための解剖学」)
- 課外講座
- Anatomy and Antiquity in Nineteenth-Century British Art Education(19世紀のイギリス美術教育における解剖学と古代)
18世紀から19世紀にかけての西洋、および近代日本の美術教育において人体彫刻の基礎として重要視されてきたエコルシェ(美術解剖学)を、現代の文脈で再評価し、学生に新たな視点からの人体への取り組みとその歴史的意義の学習を促す試みとして、新たなテクノロジーである3Dデジタル・ツールによる作品制作のなかでエコルシェを実践的に活用している彫刻家スコット・イートン氏、美術教育におけるエコルシェの歴史についての研究者であるレベッカ・ウェイド氏を招き、人体彫刻の講義およびワークショップを行った。課外講座では、古代彫刻、人体解剖、美術教育の関係について、ヨーロッパの先例を参照しながら、19世紀におけるイギリスの美術教育がいかにして古代や解剖学と交差していたかについて考察が行われた。
Laurence Madrelle
フランス / LM communiquer 代表
- 受入期間
- 2016年9月12日(月)〜9月17日(土)
- 受入研究室
- 基礎デザイン学科研究室
- 担当教員
- 原研哉教授
- 講義・指導内容
- ワークショップ「Ultra Contextual」
- 課外講座
- Projects Are Not Written On A Blank Page
建築家との共働によるインフォ・グラフィックスやサインシステムのデザインに携わり、特に病院や文化施設、都市再生プロジェクト等に多数の実績を持つローレンス・マドリール氏を招き、公共空間のデザインを専門とする立場から、都市環境にアプローチする視点および方法について教示をうけることを目的に、フィールドワークをベースにしたワークショップとレクチャー「Ultra Contextual」を行った。学生たちは大学周辺地域を歩き、道や家屋が語る物語やサインを見直しながら新たな視点で街を見る実践のなかで、公共空間におけるサインシステム・デザインのロジックを学んだ。課外講座では、氏が近年手掛けた事例をもとに、「都市を読む」ことを起点に、そこに発見される物語の断片から「文脈」としての都市像を再構築する氏のデザイン・メソッド、ポリシーについての講義を行った。
Ingrid Ledent
ベルギー / アントワープ王立美術学校 教授、アーティスト
- 受入期間
- 2016年9月23日(金)〜9月29日(木)
- 受入研究室
- 油絵学科研究室
- 担当教員
- 遠藤竜太教授
- 講義・指導内容
- 版画とコンピューターグラフィックスの併用から新たな版表現を探る
- 課外講座
- プリントメディアの未来形
伝統的な版画技法と映像やコンピューターグラフィックスを併用した新しい版表現で国際的に活躍している作家であり、1984年以来アントワープ王立美術学院を基盤にベルギー内外で多くの作家を育成してきたイングリッド・レデント氏を招き、伝統的石版画技法のワークショップを行った。これにより学生たちは、日本ではまず目にすることができない技法を、氏のデモンストレーション・解説と個別指導をもとに実践することができた。氏の指導は技術に対してのみならず、特に講評においては、コンセプトに関する批評に重点が置かれていた。課外講座では、自身の作品を、制作年代を追って紹介し、コンセプトや技法の変遷を通してプリント・アートの在り方の変化を講義した後、アントワープ王立美術学院の学生たちの作品を紹介した。伝統を大切にしつつグローバルな視点で版画の在り方を示唆し、新しい時代のプリント・アートを各学生が模索するうえでの視野を広げる契機となった。
Scott Darlington
アメリカ / PRATT FINE ARTS CENTER スタジオマネージャー、ガラスアーティスト
- 受入期間
- 2016年10月11日(火)〜10月15日(土)
- 受入研究室
- 工芸工業デザイン学科研究室
- 担当教員
- 大村俊二教授
- 講義・指導内容
- “Devotion”をテーマとした造形
- 課外講座
- ガラスの彫刻的表現の可能性
スコット・ダーリントン氏はワシントン州シアトルにあるPratt Fine Arts Centerでスタジオマネージャーをつとめ、ガラス教育において種々にプログラムを主導している。展覧会・受賞歴をはじめ、アメリカ各地でのワークショップやデモンストレーションの実績を豊富に持ち、日本でも富山ガラス造形研究所にて、客員教授として4年間の指導経験がある。氏は、溶けたガラスを彫刻の素材として扱い、日常生活における様々な「もの」をガラスに置き換えることにより、その存在価値を再認識するとともにガラスであることの意味を考えさせられる、あるいは作品自体に語らせる作風を持つ。今回の招聘では「Devotion」をテーマとするワークショップを実施。学生たちは、氏の高い技術に支えられた発想・表現方法の体験を通してアートの領域におけるガラスの展開を学んだ。課外講座においては、自身の作品をスライド・ショー形式で紹介しながら、ガラスという素材の特性と結びついた自身の制作態度、考え、意図についての講義を行った。
Philip Samartzis
オーストラリア / RMIT大学 芸術学部准教授
- 受入期間
- 2016年11月28日(火)~12月3日(土)
- 受入研究室
- 映像学科研究室
- 担当教員
- クリストフ・シャルル教授
- 講義・指導内容
- ワークショップ「Global-Local」、サウンドアート入門
- 課外講座
- 南極のサウンドエコロジーの図形化
フィリップ・サマーティス氏は、電子音楽や従来の楽器を使用した作曲、サウンド・インスタレーション、サラウンドサウンドなど、ニューメディアによる現代音楽の専門家であり、本学の協定校・ロイヤルメルボルン工科大学(RMIT)の准教授でもある。世界各地で作品発表、リサーチ、レクチャーを行いながら、サウンドアートのフェスティバルやセンターを企画・創立、アーティスト・イン・レジデンスや出版など、多岐におよぶ活動を展開している。今回の招聘では、サウンドアートの講義に加え、本学から15名、RMITから4名の学生が参加した協定校プロジェクト「Global-Local: Body-Place-Object」の一環として、ライブイベントのセッティングから指導、講評、ディスカッションを行った。ここでの成果は2017年3月にオーストラリア・メルボルンで行われる交流プロジェクトに引き継がれる。課外講座では、氏が2015年から2016年まで取り組んでいたオーストラリア南極のデーヴィス・ステーションでの環境(天候)とサウンドとの関係についてのフィールド研究の成果を発表した。