授業科目の一環として、国内外のそれぞれの領域で活躍する専門家を訪問教授として招き、講義や講評会という形式で、特別授業が開講されています。これまでにも著名なアーティストやデザイナーの講演や講評会、公開シンポジウムなどが多彩に行われています。また、テーマを設定したワークショップや、学科の枠を超えた合同制作・講評会などの、実験的な試みもなされています。
訪問教授の紹介
2012年度
James Auger
イギリス / Royal College of Art講師、デザイナー
- 受入期間
- 2012年5月14日(月)~5月19日(土)
- 受入研究室
- デザイン情報学科研究室
- 担当教員
- 長澤忠徳教授、江下就介准教授
- 講義・指導内容
- デザインインタラクション演習
- 課外講座
- Speculative Design and the Technological Future
「Living with Robots/ロボットと生きる」をテーマに、ワークショップを実施しました。学生たちは、チームごとにロボットが家庭空間に入ることの倫理的影響等、問題点を検討した上で、デザインコンセプトを提案するプレゼンテーションを行いました。
また、「Speculative Design and the Technological Future/思弁的デザインと科学技術の未来」と題した課外講座では、Auger氏が提唱する「思弁的デザイン」の方法論と目的を中心に語りました。このほか、武蔵野美術大学デザインラウンジで開催された「Design Informatics Forum
2012」にAuger氏がパネリストとして参加し、次世代のデザイン効用論への展望、クリエイティブリーダーシップの在り方、今後のデザイン教育、研究の方向性について、ディスカッションを行いました。
Timon Screech
イギリス / ロンドン大学アジア・アフリカ研究学院(SOAS)教授、日本美術史家
- 受入期間
- 2012年6月27日(水)~6月29日(金)
- 受入研究室
- 日本画学科研究室
- 担当教員
- 内田あぐり教授
- 講義・指導内容
- 日本・ヨーロッパ双方の視点から見た近世の日本文化論
- 課外講座
- デザインインタラクション演習
講義では、日本画コースおよび視覚伝達デザインコースの院生を対象に、江戸という都市の成り立ちと江戸時代の西洋絵画、肉体論について解説され、本学図書館の特別閲覧室を利用して「和漢百科図絵」や「解体新書」等の貴重書を用いた講義も行われました。
『吉原への道』と題した課外講座では、江戸から吉原への道中を描いた数々の浮世絵が紹介され、吉原通いと東洋思想との関連について論じられた後、聴講者との意見交換が行われました。
Segismundo Engelking
メキシコ / メキシコ首都自治大学教授
- 受入期間
- 2012年9月3日(月)~9月8日(土)
- 受入研究室
- 教養文化研究室
- 担当教員
- 望月昭教授
- 講義・指導内容
- 環境問題をテーマとした土地利用について
- 課外講座
- Xochimilco(ソチミルコ)地方のチナンパ農法と環境問題
「メキシコ・シティー ジャマイカ地区に於けるユダの祭」、「歴史的建造物の保全と修復~事例を参考にして~」、「建築の保全と修復」、「メキシコの建築」をテーマに、教養文化、建築学科、基礎デザイン学科、工芸工業デザイン学科において講義を行いました。
また、「Xochimilco(ソチミルコ)地方のチナンパ農法と環境問題」と題した課外講座では、土地開発や環境変化がメキシコの世界遺産に深刻な影響を与えている現状について、イラストや写真を交えて説明されました。
Christopher Toh
シンガポール / クリエイティブ・ディレクター
- 受入期間
- 2012年9月10日(月)~9月15日(土)
- 受入研究室
- 基礎デザイン学科研究室
- 担当教員
- 原研哉教授
- 講義・指導内容
- ミニマルな素材と要素のみで行う造形演習
- 課外講座
- 中国はデザインに何をもたらすのか
「卓上または壁に取り付けられるおもちゃ」を課題に、ワークショップを行いました。学生たちは木材や金属等、扱い慣れない素材の加工に苦戦しながらも制作を進め、完成作品の展示、講評を行いました。ワークショップ中は、Toh氏の熱意あふれる指導に学生たちも熱意で応え、展示の直前まで細やかな指導が加えられました。
また、講評の際、学生たちは思い思いの衣装に身を包み、作品に相応しい場を演出する等、終始なごやかな雰囲気に包まれていました。
J. Morgan Puett
アメリカ / デザイナー
- 受入期間
- 2012年9月24日(月)~9月29日(土)
- 受入研究室
- 空間演出デザイン学科研究室
- 担当教員
- パトリック・ライアン教授
- 講義・指導内容
- ファッションデザイン
- 課外講座
- Site Sensitive-アートと空間の関連性について-
裁縫箱の内側の空間からイメージを発展させる、というテーマでワークショップを実施しました。学生たちは、万国共通で生活に深く密接した行為であるステッチ(裁縫)を一つのコミュニケーション・ツールとして捉え、「裁縫箱」という自分の空間を表現する課題に取組みました。
また、「Site Sensitive-アートと空間の関連性について-」と題した課外講座では、Puett氏のアート活動から、作品と場所の関連性を探るとともに、インスタレーション・アートの意味付けについて語りました。
Paul Asenbaum
オーストリア / キュレーター、美術史家、アート・コンサルタント、Decorative Arts Consultant主宰
- 受入期間
- 2012年11月5日(月)~11月10日(土)
- 受入研究室
- 芸術文化学科研究室
- 担当教員
- 新見隆教授
- 講義・指導内容
- キュレーション、展覧会企画の方法論とマネジメント
- 課外講座
- 西洋美術における「手」の役割と表現ー洞窟壁画から、エゴン・シーレの表現主義まで
キュレーターとして数々の展覧会を企画し、オルセー美術館のウィーン世紀末工芸美術部門の収集アドバイザー等をつとめてきたPaul Asenbaum氏を招き、ワークショップと講義を行いました。展覧会企画のワークショップでは、アーツ・アンド・クラフツ運動を端緒とし、グループに分かれて西洋と東洋の美術作品について調査し、作品収集、発表を行いました。
また、講義では展覧会の企画・運営について、Asenbaum氏がこれまでに手掛けた展覧会の実例を交えて説明したほか、課外講座ではウィーンにおける啓蒙主義思想と美術の関係やその役割について解説され、18世紀から19世紀にかけてのオーストリア・ドイツ圏の美術について、知見を深めました。
Philip Samartzis
オーストリア / サウンドアーティスト、ロイヤルメルボルン工科大学(RMIT)准教授
- 受入期間
- 2012年11月5日(月)~11月10日(土)
- 受入研究室
- 映像学科研究室
- 担当教員
- クリストフ・シャルル教授
- 講義・指導内容
- 新見隆教授
- 課外講座
- サウンドアート教育、個人の国際的な活動、国際プロジェクトの成果
サウンドアーティストとして活動するPhilip Samartzis氏の授業では、サウンドアートおよびフィールドレコーディングの技術的な面について説明を受けた後、学生たちが実際に録音、編集、再生するワークショップを行いました。また、学生によるフィールドレコーディング作品の講評や、本学とRMITの国際交流プロジェクト展覧会で展示した作品の講評も行われました。
さらに、課外講座ではSamartzis氏がサウンドアートと自身の作品について説明し、自身が手掛けるアートプロジェクトやフィールドレコーディングプロジェクト、国際交流プロジェクトの内容と成果についてレクチャーしました。
Dudy Wiyancoko
インドネシア / バンドン工科大学 准教授
- 受入期間
- 2012年11月12日(月)~11月16日(金)
- 受入研究室
- 工芸工業デザイン学科研究室
- 担当教員
- 伊藤真一准教授
- 講義・指導内容
- インドネシアのデザイン事情
- 課外講座
- インドネシアの文化とデザイン
講義では、工芸工業デザイン学科および基礎デザイン学科の学生を対象に、本学教授との対談形式の講義も交えながら丁寧な指導が行われました。インドネシアの国の成り立ちや文化的背景、同国ならではの工業デザインのニーズについて解説したWiyancoko氏の講義は、ともすれば欧米への関心を抱きがちな学生たちにとって、アジアという近くて遠い存在を再認識する絶好の機会となりました。
また、課外講座ではインドネシアの文化とデザインの関係について解説し、これからのインドネシアにおける重要なデザインの焦点として、サステナビリティと生活者が真に豊かになるためのデザインが必要であると力説されていました。
曾 啓雄
台湾 / 雲林科学技術大学教授
- 受入期間
- 2013年3月11日(月)〜3月13日(水)
- 受入研究室
- 基礎デザイン学科研究室
- 担当教員
- 小林昭世教授
- 講義・指導内容
- 「色彩文化とその研究」をテーマに、アジア文化との関係から現代デザインを考察する
- 課外講座
- 文化とデザイン:中国の色彩文化
大学院基礎デザイン学コースの学生を対象にセミナーを行い、曾教授の講義のほか、学生の研究テーマ発表に対する講評が行われました。また、基礎デザイン学科学部生および大学院生とともに、原研哉教授のディレクションで開催された「HouseVision」の展覧会を見学し、展示作品についてのディスカッションを行いました。
「文化とデザイン:中国の色彩文化」と題された課外講座では、中国の中での日本的な文化要素、中国の色彩とデザイン文化の成立と発展について語られ、その後講義内容についてセミナー形式での討議が行われました。
Hinrich Sachs
ドイツ / スウェーデン国立芸術大学教授
Imogen Teresa Stidworthy
イギリス / メディア・アーティスト
- 受入期間
- 2013年3月11日(月)~3月16日(土)
- 受入研究室
- 映像学科研究室
- 担当教員
- 篠原規行教授、クリストフ・シャルル教授
- 講義・指導内容
- 映像表現実習
- 課外講座
- 「ものからことへ」美術、その領域と境界を再考する
スウェーデン国立芸術大学のHinrich Sachs教授、メディア・アーティストのImogenTeresa Stidworthyさんをお招きし、映像学科、基礎デザイン学科、空間演出デザイン学科、大学院映像コースの参加学生による作品プレゼンテーションをもとにディスカッションをとおした指導・制作が行われました。参加学生はこれらの授業を通じて、表現の世界に身を置くことの意義と、自身の作品を世界に発信するための英語力の必要性を実感し、積極的に学ぶ意識を芽生えさせる貴重な経験を得ることができました。
課外講座では、それぞれの先生の作品紹介をもとに、Sachs教授からは、ネット環境を手にした現在を見据えた上で、文化的行為とはなにかという視点からアートの分析が行われ、Stidworthyさんからは、自身の作品の解説を通じて『言語の境界』についての見解が述べられました。
Raman Schlemmer
ドイツ / Oscar Schlemmer Archive ディレクター
- 受入期間
- 2013年3月25日(月)~3月30日(土)
- 受入研究室
- 芸術文化学科研究室
- 担当教員
- 新見隆教授
- 講義・指導内容
-
- 1)作家の遺族コレクション・アーカイヴの運営・管理
- 2)展覧会、バレエ、音楽フェスティバル等の企画・運営
- 3)ヨーロッパを中心にした近代美術・現代美術と、現代の美術館、美術界の活動・関係
- 課外講座
- モダニズムの夢、総合芸術への歩み―オスカーシュレンマーの生涯と芸術
バウハウスを中心に活躍した、画家・彫刻家・舞台創造家のオスカー・シュレンマー氏の孫であるラマン・シュレンマー氏を招き、課外講座では、オスカー・シュレンマー氏の芸術性と特質、20世紀芸術に果たした役割を語っていただきました。
芸術文化学科の学生を対象とした授業では、アフリカの衣装やインドの映像作品を通じて世界各国の表現や、キュレーションに関する講義が行われたほか、「オスカー・シュレンマーの作品と日本美術」をテーマに、日本での展覧会企画するワークショップでは、学生たちによりグループごとのプレゼンテーションが行われました。
Andrea Batorfi
ハンガリー / 写真家、美術史家
- 受入期間
- 2013年3月25日(月)~3月30日(土)
- 受入研究室
- 芸術文化学科研究室
- 担当教員
- 新見隆教授
- 講義・指導内容
- 西洋と東洋の美術史をつなぐ視点およびハンガリーのミュゼオロジーの現状に関する講義、瞑想のワークショップ、写真の実技的ワークショップ等
- 課外講座
- マジャールの自然観と日本の自然観の出会い-美術史的比較と、自らの写真作品の制作を通して
ハンガリーと日本の自然観の共通性に着目し、写真家、美術史家、キュレーターとして幅広く活動するバトルフィさんに、西洋と東洋の美術史をつなぐ視点や、ハンガリーのミュゼオロジーにおける現状を講義していただきました。課外講座では、ご自身の作品のスライドと映像を使い、自然の現象とシンメトリーを映し出す技法についてお話しいただきました。
ワークショップでは、メディテーション制作について講義ののち、実際のメディテーションを通じて意識を集中させ、ドラムやクラシック音楽など異なる音楽から得たイメージや躍動感をもとに、写真とドローイングのコラージュ作品を制作しました。