授業科目の一環として、国内外のそれぞれの領域で活躍する専門家を訪問教授として招き、講義や講評会という形式で、特別授業が開講されています。これまでにも著名なアーティストやデザイナーの講演や講評会、公開シンポジウムなどが多彩に行われています。また、テーマを設定したワークショップや、学科の枠を超えた合同制作・講評会などの、実験的な試みもなされています。

訪問教授の紹介

2015年度

Kari Johannes Piippo
フィンランド / グラフィックデザイナー、イラストレーター

受入期間
2015年5月11日(月)~5月16日(土)
受入研究室
視覚伝達デザイン学科研究室
担当教員
齋藤啓子教授
講義・指導内容
空間構成Ⅲ、ポスタークリニック形式のグループ指導、カリ・ピッポ氏の作品紹介、作品講評会参加
課外講座
フィンランドのグラフィックデザイン教育から見た世界のグラフィックデザイン

グラフィックデザイナーとして世界的に活躍され、また本学との提携校でもあるアールト大学で教鞭をとられていたピッポ氏を招き、1週間にわたり授業を行っていただきました。ピッポ氏はメキシコ国際ポスタービエンナーレ金賞、ワルシャワポスタービエンナーレ優秀賞、本国フィンランドでは、フィンランド獅子勲章など受賞多数。日本において熱心な支持者も多く、銀座gggギャラリーで個展をされた経験があります。 今回の訪問では対象を3年生とし、"MY CHILDHOOD"というテーマで子どもの頃を思い出してその体験と記憶を様々な角度から考え、ポスター制作を指導していただきました。課外講座には、約100人の学生、教員が参加し、フィンランドの風景や生き物の導入から始まり、フィンランドでのグラフィックデザインの着想から完成までのプロセスを丁寧に紹介してくださいました。

Nicholas Rhodes

Nicholas Rhodes
イギリス / ロンドン芸術大学セントラル・セント・マーチンズ・カレッジ・オブ・アート・アンド・デザイン プロダクトセラミック・アンド・インダストリアルデザイン プログラムディレクター

受入期間
2015年5月14日(木)〜5月19日(火)
受入研究室
デザイン情報学科研究室
担当教員
今泉洋教授
講義・指導内容
デザイン情報学統合演習、デザイン情報学演習、Interactive Innovation ほか
課外講座
New Luxury for Japan 2015年における日本のための新しいラグジュアリー

イギリス / ロンドン芸術大学セントラル・セント・マーチンズ ― プロダクトセラミック・アンド・インダストリアルデザイン プログラムディレクターであるNicholas Rhodes氏をお招きし、2015年における日本のための新しいラグジュアリーについての五日間のワークショップを行った。ブランディングデザインにおける基礎になる考え方を学んだ後に、さまざまな方法論と共に「ラグジュアリー」の意味を学生たちと再定義した。その後学生たちはテーマ別に「food and drink」「Travel」「Musical instruments」「Electric device」の4チームに分かれ、新しいサービスやプロダクトの提案を行いました。また5月15日には六本木デザインラウンジにて「Service Design: design without craft?/サービスデザイン:手業なきデザイン?」という課外講座を行っていただいた。

Albano Afonso

Albano Afonso
ブラジル / ビジュアルアーティスト、アトリエ・フィダルガ主宰

受入期間
2015年6月22日(月)~6月25日(木)
受入研究室
日本画学科研究室
担当教員
内田あぐり教授
講義・指導内容
絵画実習Ⅶ、日本画研究Ⅰ・Ⅲ
課外講座
ブラジル―現代の美術家たち(アトリエ・フィダルガの活動から)

ブラジル、サンパウロのアートシーンを代表する作家として活躍するアルバーノ・アフォンソ氏が来校され、大学院1年生、2年生18名に対してアトリエでの指導と作品講評、講義を行っていただいた。一人一人丁寧に作品コンセプトや表現方法についてコメントをしていただいた。また課外講座では、アルバーノ氏自身の作家活動、および彼が主催するサンパウロの芸術集団アトリエ・フィダルガの活動と所属作家の紹介を行っていただいた。

曲 豊国
中国 / アーティスト、上海戯劇学院創意学科教授

受入期間
2015年6月25日(木)~7月1日(水)
受入研究室
油絵学科研究室、共通デザイン研究室
担当教員
長沢秀之教授、小井土滿教授
講義・指導内容
絵画実習Ⅷ、絵画研究Ⅰ、絵画研究Ⅱ、特別講義、造形総合・デザインⅠ
課外講座
中国の現代の美術状況について

本学と協定校の上海戯劇学院の教授であり、上海のアートシーンを代表する作家の一人でもある曲 豊国氏をお招きし、1週間にわたり油絵学科の学生への指導と作品講評、講義を行っていただきました。油絵学科による課外講座では、中国の歴史の流れを踏まえた中国アートについて、さらには現在の中国現代アートにわたりお話いただきました。また、最終日に行われた共通デザイン研究室による特別講義では、中国アートシーンの第一線で活躍されている曲氏に、中国の現代アートの変遷について、アートとデザインにおける「線」の重要性について講義を行っていただきました。

Andrew Basile

Andrew Basile
アメリカ / Basile Creative Services代表、クリエイティブディレクター

受入期間
2015年7月6日(月)~7月11日(土)
受入研究室
空間演出デザイン学科研究室
担当教員
パトリック・ライアン教授
講義・指導内容
ファッションデザインC、ファッションデザインH
課外講座
INSIGHT-A PERSONAL VIEW OF FASHION

ニューヨークを拠点に活躍されているクリエイティブディレクターであるAndrew氏を招き、5日間にわたり学生と交流、指導を行っていただきました。課外講座では、Andrew氏が制作したニューヨークで活躍する最先端のアーティストやファッションに関するインタビュー動画を交えて、現在のニューヨークで起こっているファッションの動向についての講義を行っていただいた。講義や演習、課外講座を通じて、Andrew氏の常に何事にも興味を持ち、アートやデザインの世界を変容させ、新しいものを探求する精神や、Andrew氏のファッション、インテリアのマーケティングとセールスの実績からクリエーションをビジネスにつなげる実践的な知識を学生へ伝えていただき、今回の訪問は、本学の学生へ世界的な視野でファッションとビジネスを考える機会となった。

Edward Allington, Sophie Raikes

Edward Allington
イギリス / ロンドン大学スレード美術学校教授、大学院彫刻科主任

Sophie Raikes
イギリス / ヘンリー・ムーア・インスティテュート学芸員

受入期間
2015年7月13日(月)~7月18日(土)
受入研究室
彫刻学科研究室
担当教員
黒川弘毅教授
講義・指導内容
彫刻J、卒業制作、彫刻研究Ⅱ、修了制作
課外講座
「on drawing and sculpture and drawing systems」(Allington先生の体調不良により予定していた講座を中止し、シンポジウムでの発言時間を十分に確保して課外講座にかえた。)

ロンドン大学スレード校大学院教授Edward Allington先生はイギリスを代表する現代彫刻家であり、ヘンリームーア・インスティテュート学芸員Sophie Raikes氏とともに、長年にわたり近代日本彫刻について研究しており、今回の訪問は2015年にイギリスのヘンリームーア・インスティテュートで行われた近代日本彫刻展の帰国展である「近代日本彫刻展」とそれに併せて開催された国際シンポジウムへの参加も含まれていた。本学訪問中には、Allington先生より学生たちの作品へ講評を行っていただき、Raikes氏によってイギリスの美術館学芸員の立場から海外で学生たちの作品がどのようにみられるかなどお話いただいた。展覧会の国際シンポジウムでは多くのゲストも参加する中、本学黒川教授、Raikes氏によるギャラリートークや、Raikes氏による「高村光太郎作〈手〉と橋本平八作〈石に就て〉への所見」述べられ、最後のパネルディスカッションでは黒川教授、Allington先生、他登壇者により「彫刻の近代性」と「彫刻とは何か」を巡り意見が交換された。

Sophie Krier

Sophie Krier
ルクセンブルク公国 / デザイナー、サンドバーグ美術大学院大学教授

受入期間
2015年9月14日(月)~9月19日(土)
受入研究室
共通絵画研究室、建築学科研究室
担当教員
原一史教授、源愛日児教授
講義・指導内容
造形総合・絵画Ⅰ ほか
課外講座
ソフィー・クレールの仕事

サンドバーグ美術大学院大学教授であるソフィー・クレール氏は、展覧会、シンポジウム、編集的出版、ワークショップなど領域横断的なキュレーションのほか、地域住民、アーティスト、デザイナー、研究者たちが共同で語り、考究し、それをもとにそれぞれが制作するプラットフォームの提供など、様々な活動を展開している。本学における6日間のワークショップでは国分寺駅周辺の路上観察から始まり、そこで見つけた人々の活動や空間を分析し、フリーペーパー《KOKO KOKUBUNJI DESU》を制作。また、ワークショップでは学生が他者とともに「見る、共有する、考える」ことにオープンであること、材料を試みる能力・意欲、広汎な視野、主体性を発展させることを目標とした。さらに、共通絵画研究室においても、授業の見学と絵画制作の講評を行って頂き、描くこと、描く対象に向き合うことといった初歩的な制作態度についての話をして頂いた。

Michael Bielicky

Michael Bielicky
ドイツ / カールスルーエ造形大学(HfG)メディアアート学科主任教授

受入期間
2015年9月28日(月)〜10月3日(土)
受入研究室
映像学科研究室
担当教員
クリストフ・シャルル教授
講義・指導内容
映像表現実習、映像芸術論、メディアアート2、メディアアート演習、映像原論
課外講座
ネットワーク芸術の最前線・「GO PUBLIC」

ミヒャエル・ビエリスキ教授は1980年代後半以降、ネットワーク通信を使用した作品を発表し続けている。近年では、ZKMカールスルーエ、リンツ・アルスエレクトロニカ、ベルリン=バーベルスベルク・ハイテクセンターと共同で開発したコミュニケーション、ナビゲーション、ビデオおよびVR技術、公共空間でのWebベースの情報技術を用い、アートプロジェクトを開発している。本校での6日間の授業を通して、メディアアートの歴史、20世紀前衛芸術、映像作品についての講義や、メディアアートやアニメーションを専攻している学生への指導、また国際プロジェクト「MAU-HFG: GO PUBLIC」にて学生への指導及び講評を行っていただいた。

川俣正

川俣正
日本(フランス) / パリ国立高等美術学校教授

受入期間
2015年9月24日(木)~9月30日(水)
受入研究室
彫刻学科研究室
担当教員
戸谷成雄教授
講義・指導内容
彫刻学科、油絵学科、芸術文化学科の学生を対象とした講義、ワークショップ、ミニプロジェクト
課外講座
アートプロジェクトのつくり方

フランス国立高等美術学校教授川俣正氏は世界的に著名な美術作家であり、現在までに世界各地で多くのプロジェクトを展開してきた。本学訪問中6日間にて行われたワークショップでは、彫刻、油絵、芸術文化の3学科の学生に対し、「自分のポジション」をテーマに、自分の身近な場所から考えることをコンセプトに置き、指導と講評を通して様々なアプローチで学生たちに作品制作についてのスタンスへの再認識することを、自身の体験も踏まえながら分かりやすく生徒たちへ伝えていただいた。課外講座では、「川俣正 自作にそって」と題し、世界各地で行った様々なプロジェクトや展覧会について、アーティストとして世界で活動することについてお話いただいた。また、最終日に美術館ホールにて行われたシンポジウムでは、「境界」をテーマに自身の活動の中に見られる「境界性」について様々な角度から登壇者とともに討議し、これから海外での活動を考える学生にとって大変貴重となるお話をしていただいた。

Ian Woo

Ian Woo
シンガポール / 画家、ラサール・カレッジ・オブ・アート シニアレクチャラー、美術研究科プログラムリーダー

受入期間
2015年11月2日(月)~11月6日(金)
受入研究室
油絵学科研究室
担当教員
赤塚祐二教授
講義・指導内容
絵画実習Ⅳ、卒業制作、絵画研究Ⅱ、修了制作
課外講座
イアン・ウー氏の作品とその制作

イアン・ウー氏はシンガポールで最も活躍している画家の一人である。昨年本学と友好協力協定を結んだラサール・カレッジ・オブ・アートから訪問教授として来校した。6日間のワークショップでは「絵画と時間、重なり合う図像と停止する図像について」をテーマに、抽象絵画における新しい認識の仕方や、制作中における画面上の変化と進行中の出来事について着目し「描かれたものの意味」ではなく、そこに存在する絵具と紙の状態についてフォーカスした。また切り貼りやコラージュといった、普段学生たちがあまり使わない手法を推奨することで、新しいアプローチを学生たちに体験させた。

Laurence Madrelle

Laurence Madrelle
フランス / LM communiquer 代表

受入期間
2015年11月2日(月)〜11月7日(土)
受入研究室
基礎デザイン学科研究室
担当教員
原研哉教授
講義・指導内容
形態論Ⅱ
課外講座
The tale of the city|街の物語

建築家との協働によるインフォ・グラフィックスやサインシステムデザインを手掛けるLM communiquerファウンダーであり、病院や文化施設、都市再生プロジェクトに多数の実績を持つローレンス・マドリーヌ氏をお招きし、そのパブリックデザインやサインヴィジュアルデザインのロジックを分かりやすく指導いただいた。5日間のワークショップでは、「City of signs」をテーマに欧州のパブリック系デザインの洗練された考え方を、多くの事例と共に学生に体得させていただいた。ワークショップでは実際に学生たちと一緒に本校から鷹の台駅まで歩き、学生たちのグループはフィールドリサーチの方法論をマドリーヌ氏より教えていただきながら、通いなれた道で自分たちが再発見したことについてまとめ、発表した。

Enric Massip Bosch

Enric Massip Bosch
スペイン / 建築家、EMBA建築設計事務所代表、カタロニア工科大学准教授

受入期間
2015年11月9日(月)~11月13日(金)
受入研究室
建築学科研究室
担当教員
鈴木明教授
講義・指導内容
建築計画C
課外講座
EMBA’S BARCELONA バルセロナの都市史と公共空間をめぐる3つのプロジェクト

スペイン、フランスおよびロシアにおいて数々の都市計画、超高層ビル、学校や集合住宅、広場など公共性の高い建築およびスペースの設計を手掛け、国際的な評価を得るエンリック・マシップ・ボッシュ氏をお招きし、建築学科の短期課題として、ワークショップ「RURBAN:RURAL IS THE NEW URBAN」を5日間にわたり率いていただいた。学生たちは、本学が位置する小平市小川町の建築的インフラ、都市計画を調査するフィールドワークをもとにグループで建築計画を制作、発表した。建築学科生のみならず全学科を対象とした課外講座「バルセロナの都市史と公共空間をめぐる3つのプロジェクト」では、自身が主宰するEMBA建築設計事務所で設計を行ったバルセロナ中心部でのプロジェクトを紹介。発展・変容する都市における建築計画についての活発な議論が交わされた。

Roberto Feo,Rosario Hurtado

Roberto Feo
イギリス・スペイン(イギリス) / Head Genève大学スペース&コミュニケーション学科教授

Rosario Hurtado
イギリス・スペイン(イギリス) / ロンドン大学ゴールドスミス校講師

受入期間
2015年11月16日(月)~11月21日(土)
受入研究室
工芸工業デザイン学科研究室
担当教員
山中一宏准教授
講義・指導内容
インテリアデザインⅢ、インテリアデザインⅦ
課外講座
Experiments for New Abilities

ロベルト・フェオ、ロザリオ・フルタドの両氏をロンドンよりお招きした。両氏ともに英国ロイヤルカレッジオブアートの出身で、デザインスタジオEl Ultimo Gritoを運営されている。ロベルト先生は現在ロンドン大学ゴールドスミス校教授、ロザリオ先生はスイスのHead Genève大学にて教鞭をとられている。工芸工業デザイン学科の学部生を対象とした6日間のワークショップではデバイス(ラジオ機器)の進化がどのように「ラジオを聴く行為」に変化を与えたのかを考察し、ラジオ放送の新しい可能性を空間的な経験にまで拡張するためのプロジェクト「Expanded Radio」を行った。課外講座ではRematerialisation of systemというテーマにて、両氏の過去のプロジェクトから現在取り組んでいる最新作の紹介を通し、コンセプトメーキングから制作プロセスに至るまでの詳細の説明を行った。その中で、「私たちの身の回りのものは一脚の椅子から政治システムに至るまで、全てはデザインされているが、それは言い換えればデザインを試行する行為はそれらの素材を物理的に体験するだけではなく、それらを構築する素となっている何かを体験する事である」という両氏がデザイン制作活動の中から導き出した論にたどり着く。その後の質疑応答、レセプションパーティーでは活発な議論が展開された。

山田正好

山田正好
日本(フランス) / 彫刻家

受入期間
2015年12月7日(月)~12月12日(土)
受入研究室
共通彫塑研究室、言語文化研究室
担当教員
脇谷徹教授、藤田尊潮教授
講義・指導内容
彫刻I、彫刻G、彫刻d、上級フランス語、初級フランス語
課外講座
歩く。1973-2015

本学「パリ賞」受賞を契機に渡仏し、以来約40年間パリで制作活動を続け、国際的に高い評価を得る彫刻家・山田正好氏をお招きし、共通彫塑の実技授業およびフランス語授業を指導いただいた。課外講座は、スライドショー形式で作品約100点を上映しながら5件の制作例に焦点をあて、長年にわたるフランスでの制作活動や自身の作品を貫く人間像、およびその人間表現を発表。それは同時に、山田氏の一生活者としてのフランスにおける40年を追体験することであり、廃品蒐集をはじめとする氏の素材や手法へのユニークなアプローチを知ることでもあった。異国の地に根を張り、そのテーマを一層掘り下げながら現在まで旺盛な制作活動を続ける山田氏の訪問を通して、学生たちは大きな刺激と標を得た。