設計計画Ⅱ-2(木造の駅舎)2年次開講
『高尾の木造駅舎』
檜棒、スチレンボード、チップボール|H160 × W750 × D400mm
異なる空間を大きな屋根で囲い、高尾山に集う人々の交流を促す
設計計画が面白くもあり難しくもあるのは、単に意匠的な設計に取り組むわけではなく、地域の課題を見つけて解決策を提示することが求められるからです。高尾山の麓にあるケーブルカーの駅舎を木造軸組で設計する課題でも、トンネルやインターチェンジ開通による水涸れや生態系の変化、繁閑差の激しさなど多くの問題を抱える土地から、いかに自分なりの課題を見出すかが問われました。私は現在の駅舎が駅舎・広場・売店の3つの空間が分節されて人々の交流が希薄になっていると感じ、それぞれを1つの大きな屋根で囲うことで、そこに集う人々が互いに意識し合える駅舎を提案しました。高尾山でのアクティビティと連動する施設を複合させることも条件だったため、伝統芸能の公演や研究発表ができるステージを設け、観客席からステージ越しに高尾山を望める構造にしました。制限が多い木材という部材でどれだけ理想のかたちに近づけられるかも試される、やりがいのある課題でした。
(2年|飯島裕也さん)
設計計画Ⅱ-1(小規模集合住居)2年次開講
『間を結ぶ』
スチレンボード、スノーボード、紙|H220 × W430 × D450mm
人口密度が高く閉鎖的なエリアで、住民を“間”で結ぶ集合住居の提案
延床面積400㎡の小規模集合住居を設計する課題で「common」についての考えを表現することも条件でした。敷地に設定されたエリアは都心で人口密度が高く建物が密接しているため、プライバシーを守ろうと閉鎖的な住宅が多いことに着目し、敷地に“間”をつくることで人々の交流を深められるような集合住居を計画しました。最上階は会社員や学生向けの共用オフィスです。各分棟には階段を通らないと行き来できない構造にしたのは、通勤通学時やランチタイムなどにちょっとした会話が生まれてほしいと考えたからです。
隣接するアパートの影響で日差しが入りにくいため、できるだけ多く採光を取れるように屋根を多角形で構成しましたが、起伏の付け方や1階部分の採光については改良の余地があったと思います。2年生になり多くの人が利用する規模の大きな課題に取り組み始めたことで、地域が抱える課題をしっかりリサーチし、客観的な視点をもって計画を練ることの重要性を感じています。
(2年|山田侑奈さん)
設計計画Ⅲ-1(菊地スタジオ)3年次開講
『ストリートの擁壁』
石膏テープ、チップボール、スノーマット、スプレー塗料|H240 × W1100 × D600mm
時間の流れの違いを際立たせ訪れる人々の好奇心を刺激する
渋谷・神宮前でストリートカルチャーを扱う郷土資料館を設計する課題です。敷地は暗渠とされた穏田川の上につくられたキャットストリートの一番端。歴史・文化的文脈や自然発生的な土地割りを踏まえたうえで、アパレルショップや飲食店が密集し、まさにストリートカルチャーの聖地としてめまぐるしく変化し続ける街とは対照的な、内向的に閉じた空間で過去の遺物と一対一で向き合う唯一不動の存在としての郷土資料館を提案しました。モチーフにしたのは土木工事で用いる擁壁です。強い表現ではありますが、だからこそ街の急速な時間の流れとの対比を際立たせ、人々の好奇心や想像力を刺激できないかと考えました。
今、3年生の課題がひと段落し、自分なりのスタイルや制作手法を確立できつつあると感じます。美大の建築学科として共通彫塑などかたちをつくる魅力を再確認できる機会も豊富にあり、今後もさまざまな分野を横断しながら、新たな発見や気付きを制作につなげていきたいです。
(3年|阿部朔太さん)
設計計画Ⅲ-2(布施スタジオ)3年次開講
『抜け道さんかく』
紙、プラ板、バルサ、スチレンボード|H400 × W190 × D300mm
性格の異なる道路、空間をつなぎコミュニティの親密さを深める
都内に8000万円以下の土地を見つけてプラスαの機能を持つ住宅を設計する取り組みです。これは板橋区大山町で見つけた、ビルが立ち並ぶ川越街道と商店街に挟まれた三角形の土地に興味を持って制作したもの。地域のつながりが強い一方で放置自転車が多い街のニーズを汲み取り、回収した自転車を修理して街道沿いのサイクリングや商店街へのアクセスに活用するレンタルサイクル屋の機能を住宅に持たせました。
敷地面積が狭いため容積率を限界まで活用してみようと、1階の店舗から上の住宅部分はリビング、キッチンと各機能を1層ずつ振り分け、7層住宅のイレギュラーな構造にしました。螺旋状の動線を軸にボイドを多く設けることで性格の異なる2つの道路、空間をピクチャーウィンドウのようにつなぎ、暮らしが屋外までにじみ出すことでコミュニティの親密さが深まることも期待しています。制作期間が短く、図面や模型のつくり込みはもちろん、スケジュール管理も問われるチャレンジングな課題でした。
(3年|吉川布記さん)