今岡謙太郎(いまおか・けんたろう)
IMAOKA Kentaro
- 専門
- 日本古典芸能
Japanese Classical Drama - 所属
- 教養文化・学芸員課程
Humanities and Sciences / Museum Careers - 職位
- 教授
Professor - 略歴
- 2003年4月着任
1964年神奈川県生まれ
早稲田大学大学院 文学研究科芸術学(演劇)専攻
博士課程満期退学(修士) - 研究テーマ
- 近世後期から近代にかけての歌舞伎、落語、講談などの諸芸の交流。河竹黙阿弥作品の研究。
近年の主な論文:「〈網模様燈籠菊桐〉の独自性」『歌舞伎―研究と批評―』第29号 歌舞伎学会 '02年6月。「江戸東京系芝居噺の系譜と展開」『歌舞伎―研究と批評―』第30号 歌舞伎学会 '02年12月。「林家正蔵―怪談咄の創始者」『国文学 解釈と鑑賞』第68巻4号 至文堂 '03年4月。「お吉・空月の流れ―南北から黙阿弥へ」前進座「解脱衣楓累」公演プログラム'08年9月。「幕末期の義士伝物上演と舌耕芸」『国文学 解釈と鑑賞』至文堂 '09年3月。
著書:『芝居絵に見る江戸・明治の歌舞伎』小学館 '03年(共著)。『歌舞伎登場人物事典』白水社 '06年(共著)。『日本古典芸能史』武蔵野美術大学出版局 '08年など。
歌舞伎学会奨励賞受賞。歌舞伎学会総務委員(委員長)、楽劇学会理事。
『日本古典芸能史』
武蔵野美術大学出版局 2008年
序章 祭祀―儀式から芸能へ
第1章 伎楽と舞楽―国家行事と芸能
第2章 散楽から猿楽へ―「演技術」の進歩
第3章 田楽・猿楽の展開と「能」の形成
第4章 観阿弥・世阿弥の能の「大成」
第5章 歌舞伎の成立と定着
第6章 人形浄瑠璃の成立と発展
第7章 近世演劇の開花と近松門左衛門
第8章 竹豊両座と人形浄瑠璃の黄金時代
第9章 江戸中後期の歌舞伎
第10章 落語・講談の発展と諸芸の交流
第11章 鶴屋南北と河竹黙阿弥―近世から近代へ
自己紹介、のようなもの
学部時代は落語を始めとして寄席芸(含実演)、歌舞伎などにうき身をやつす。卒業に際して一旦は噺家になろうかと考えたものの、自ら才能のなさに(薄々は)気付いていたのか断念して大学院へ。せめて寄席芸の側で生きていきたいとの思いから近世の演劇芸能を専攻する。大学院では指導教員、研究仲間に恵まれ、今でもお世話になりっぱなしである。また一方で林家たい平、柳家喬太郎、入船亭扇辰などとほぼ同時期に学生落語を演じていたが、本職になって活躍している人々を見て「こりゃかなわない。噺家にならなくて正解だった」と密かに胸をなで下ろしている。
狭義の専門は近世後期から明治期にかけての諸芸の交流。元々は落語の研究のみで修士を終えて後は堅気になるつもりであった。しかし落語だけ見ていては落語も解らず、講談や漫才、また歌舞伎や浮世絵など、種々のジャンルを総合して考えなければ却って落語の性格も解らないらしいと気付いてしまう。その認識のしからしむところか、落語や講談と密接な関係にある河竹黙阿弥作品の研究にも踏み込む。
また一方、大学院在学中に「諸芸懇話会」なる研究親睦団体に関わるチャンスを得る。いわゆる大学等の研究機関に所属しない研究者の活動を間近に見ることが出来て、大きな財産を得たと実感。どうもここから研究の泥沼に嵌っていったらしい。修士論文では河竹黙阿弥の初期作品「夢結蝶鳥追」を中心に考察を進め、以後寄席芸関連では上演の実態、演目の変遷などを中心に論文を発表。黙阿弥作品では前期作品の特色とその変遷を中心に論文を書く。併行して近世末期の江戸歌舞伎興行の変化、歌舞伎十八番の制定に関する論考なども発表。
本文校訂・注釈では白水社「天衣紛上野初花」(『歌舞伎オン・ステージ』所収・共編著)、辞典類では『日本芸能人名辞典』『古典文学研究史大事典』などの項目執筆がある。
2006年刊行の『歌舞伎登場人物事典』(白水社)では項目選定、執筆などに参加。2008年には本学通信教育課程の教科書として『日本古典芸能史』を執筆刊行。通史執筆の難しさと、同時にその執筆がいかに勉強になるかを思い知る。
ついでながら、これまでに書いた論文の一部の題名を挙げると以下のようになる。
「〈依田捌五人男〉から〈旗本五人男〉へ」、『国語と文学』73巻5号
「江戸東京系芝居噺の系譜と展開」、『歌舞伎―研究と批評』30号
「幕末の歌舞伎 江戸」、『岩波講座 歌舞伎・文楽』第3巻
「落語・講談と歌舞伎」、『落語の世界I 落語の愉しみ』岩波書店
「〈三人吉三廓初買〉考」、『歌舞伎―研究と批評』33号
「忠臣蔵と舌耕文芸」、『仮名手本忠臣蔵を読む』吉川弘文館
また、2008年度は現役落語家某師と「落語現代史」の講座を月に一回行った。これにより、現在の動向と歴史的な研究とを併せ考える必要性を改めて痛感。できれば今後はそうした面にも踏み出せればと考えている。
『天衣紛上野初花』歌舞伎オン・ステージ 11
白水社 1997年(共編著)
『芝居絵に見る江戸・明治の歌舞伎』
小学館 2003年(共著)