白石美雪

白石美雪(しらいし・みゆき)
SHIRAISHI Miyuki

専門
音楽学
Musicology
所属
教養文化・学芸員課程
Humanities and Sciences / Museum Careers
職位
教授
Professor
略歴
1997年4月着任
1958年東京都生まれ
東京藝術大学大学院 音楽研究科修了(修士)
研究テーマ
ジョン・ケージを中心とする20世紀音楽(日本を含む「現代音楽」)。
日本における音楽批評の成立と展開。

2004年以降の研究活動
著書:
『ジョン・ケージ 混沌ではなくアナーキー』武蔵野美術大学出版局 '09年(単著、第20回吉田秀和賞受賞)。
『日本の作曲2000-2009─サントリー音楽財団創設40周年記念』サントリー芸術財団 '11年、『キーワード150音楽通論』アルテスパブリッシング '09年、『増補改訂版 はじめての音楽史』音楽之友社 '09年、『21世紀の音楽入門5』教育芸術社 '05年ほか(共著)。

論文・評論:
「ドキュメント・日本のミュージサーカス 2012年8月26日の試み」『ユリイカ』第44巻12号 '12年、「演奏批評・楽評と称する批評の形成―1898(明治31)年の『読売新聞』の音楽批評」『音楽研究』国立音楽大学大学院研究年報第24輯 '12年、「明治初期の新聞における音楽評論の萌芽―『東京日日新聞』における福地源一郎の社説をめぐって」『武蔵野美術大学研究紀要』第41号 '11年、「ジョン・ケージのピアノ―「過程」の可視化」『ユリイカ』第42巻5号 '10年、「『音楽とジェンダー』研究ノート:現代音楽の『前衛性』をめぐって」『芸術と性差:武蔵野美術大学ジェンダーリサーチ共同研究論文集』武蔵野美術大学芸術文化学科研究室 '06年、「ブラック・マウンテン・カレッジにおける音楽活動ー開校からジョン・ケージ訪問まで」国立音楽大学大学院研究年報第17輯 '05年ほか。

批評(新聞のみ):
朝日新聞 音楽会批評レギュラー執筆 '00年4月から。信濃毎日新聞「旬の音 旬の演奏家」 '99年4月-'09年3月。

学会:
日本音楽学会関東支部・例会委員 '07年4月-'09年3月、日本音楽学会常任委員会・渉外担当 '09年4月-'11年3月、日本音楽学会関東支部・会計委員 '13年4月〜('15年3月)。

講演:
ジャスト・コンポーズト関連企画「はじめて聴く現代音楽」'05年3月5日、10月30日、'06年12月8日、'08年2月10日、'09年2月22日、'11年2月13日、'12年3月4日、12月1日、横浜みなとみらいホール(レセプションルーム、大ホール、リハーサル室)。「20年目のジョン・ケージ」'12年3月10日、静岡音楽館講堂ほか多数。

放送出演:
NHK-FMクラシック番組にレギュラー出演 '89年-'05年。NHK-FM番組「現代の音楽」ゲスト出演 ’07年6月、11月。NHK-FM番組「NHK交響楽団演奏会」ゲスト出演 '10年11月13日、'11年5月7日、'13年1月16日。BSプレミアム「クラシック倶楽部」の「ザ・ジョン・ケージ」企画協力および出演 '12年3月30日。Eテレ特別番組「吉田秀和さんをしのんで」スタジオゲスト '12年6月2日。

音楽会の企画:
東京オペラシティの現代音楽祭「コンポージアム」の企画協力 '97年から '04年まで。サントリー芸術財団(前・サントリー音楽財団)主催「サントリー・サマー・フェスティバル」の企画・監修 '03-’12年。横浜市文化財団主催「ジャスト・コンポーズド」シリーズの企画協力 '99年から毎年。

審査員:
サントリー音楽賞選考委員 '95年から、佐治敬三賞審査員 '01年から現在まで。
芸術文化振興財団基金運営委員会・専門委員 '00-'02、'05-'07、'08-'10、'11-'12年度。「東京都芸術文化発信事業助成」審査委員 '03-'09年度。芸術団体重点支援事業等協力者会議審査委員会委員 '04、'06-'10年度。「本物の舞台芸術体験事業」(学校公演)企画委員会委員 '04、'06-'08、'10年度。芸術拠点形成事業協力者会議委員 '06-'10年度。芸術選奨推薦委員 '06、'07年度。芸術選奨選考審査員 '08-'10、'12年度。文化審議会委員(文化功労者専攻分科会)'08年度。新進芸術家海外研修制度協力者会議委員 '09-'11年度。文化庁芸術祭執行委員会審査委員 '10-'12年度ほか。

I graduated from the Department of Musicology in the Faculty of Music of the Tokyo University of the Arts (Tokyo Geijutsu Daigaku), and also completed that university’s Graduate School of Music. I have broadly researched twentieth-century music starting with John Cage, and carefully considered the creation of contemporary music in my critical activities. In recent years I have also been researching the origins and development of music criticism in Japan during the Meiji period (1868–1912). I received the 20th Hidekazu Yoshida Award for John Cage: Konton dewa-naku Anarchy (John Cage: The Music of Anarcy, Musashino Art University Press). My essays include “The Beginnings of Music Criticism in Early Meiji-Period Newspapers: On Fukuchi Genichiro’s Editorial in the Tokyo-Nichinichi,” “The Formation of Japanese Music Criticism in the Mid-Meiji Era: An Analysis of the Gaku-hyo, Music Reviews of the Yomiuri Shimbun in 1898,” and “Document: Japanese Musicircus.”


『ジョン・ケージ 混沌ではなくアナーキー』
デザイン:寺井恵司
武蔵野美術大学出版局 2009年

美大生にとっての「音楽」

表現者である美大生にとって、他なるもの、すなわち「自己と異質な世界」との出会いを繰り返しながら、自己をより確かなものにしていくプロセスは必要不可欠である。単に自分のイメージを表出する技術の訓練をするだけでは、人に伝わるイメージにならない。自己満足に陥ることなく、何かを伝えるためには、自己の内部へ沈潜するばかりではなく、他者と出会いつつ、イメージを掘り下げていく必要がある。これまで知らなかった新しい音楽を理解するプロセスは、その点で大きな意味をもつ。

1:前衛音楽から学ぶ/現代音楽概論Ⅰ・Ⅱ

音楽の原理を追求したジョン・ケージをはじめとする20世紀の前衛作曲家は、モダニズムの思潮に突き動かされて、表現の本質をめぐる思考を重ねてきた。ジャンルは異なっていても、文学や美術の領域と数多くの問題を共有している。たとえば、主情主義から科学的客観性を求める美学への転換とか、オリジナルと複製、「作家の死」、ミニマリズム、コンピュータとの関わりなど、20世紀の音楽家がぶつかってきた問題は、同時に他のジャンルの芸術家にとっても重要な問題だった。20世紀音楽の文脈での問題とそこから生まれた新たな表現を知ることは、美術やデザインを考える学生にとって、身近な問題をさぐる手がかりとなるはずである。

2:音楽から人間を知る/音楽Ⅰ・Ⅲ、音楽研究Ⅰ・Ⅱ、音楽学演習Ⅰ・Ⅱ

文化教養科目に含まれている多種多様な学問は、学生の視野を広げ、豊かな教養を育むばかりでなく、より広範な社会におけるコミュニケーション能力を養う。専門性を社会のなかで生かしていけるかどうかは人間としての幅やコミュニケーション能力にかかっている。
「音楽」の講義や演習では、音楽について考えるプロセスを通じて、じつは音楽の向こうにある社会や人間への理解を求めている。楽器一つにしても、材質から形状、響きの質や演奏者の社会階層にいたるまで、その楽器を作って奏でてきた人々の生活や社会を生々しく反映している。音楽という営みは人間にとってきわめて本源的な行為なのである。
現代音楽であろうと、民族音楽であろうと、未知の音楽を学ぶことによって、私たちは異なる世界の人間と対話することができる。その喜びの瞬間を演出することが「音楽」の授業の役割でもあると考えている。

企画を手掛けた東京オペラシティの同時代音楽フェスティバル「コンポージアム」 1997-2004のための冊子

『武蔵野美術』No.114
「美をめぐる問い―武満徹の音楽を手がかりに」

武蔵野美術大学 1999年