相原優子

相原優子(あいはら・ゆうこ)
AIHARA Yuko

専門
現代アメリカ文学
Modern American Literature
所属
言語文化
Language and Culture
職位
教授
Professor
略歴
2005年4月着任
1969年大阪府生まれ
上智大学大学院 文学研究科英米文学専攻 博士後期課程満期退学(修士)
研究テーマ
現代アメリカ文学。主にソール・ベローを中心としたユダヤ系作家の作品研究。

著書:『ネイティヴ・アメリカンの文学:先住民文化の変容』ミネルヴァ書房 '02年(共著)。『アメリカン・ロマンスの系譜形成―ホーソーンからオジックまで』金星堂 '12年(共著)
論文:"A Tree is Nothing :An Ecocritical Reading of Cynthia Ozick's ‘The Pagan Rabbi’"
邦題「シンシア・オジック〈異教徒ラビ〉を環境文学として読む」『文学と環境』第7号 '04年。「無償の贈与の可能性:ソール・ベローのSeize the Day 再読」『武蔵野美術大学研究紀要』No.37 '06年。“Not Natural but Supernatural: A Study on Forgiveness in Saul Bellow’s Humboldt’s Gift”, Studies in English Literature, English Number 53 '12年。
翻訳:スチュアート・シム編『ポストモダン事典』松柏社 '01年(共著)
ブルース・アレン著「石牟礼道子『天湖』にみる多次元的世界」『越境するトポス:環境文学論序説』野田研一・結城正美編著、彩流社 '04年(共訳)

I teach a variety of English classes at Musashino Art University. I teach conversation classes for both basic and intermediate level students, writing classes for basic level students, and reading classes for advanced level students. As a researcher, I focus on contemporary American literature; mainly on works written by Jewish American writers, such as Saul Bellow and Cynthia Ozick. My most recent publications include: "Jewish Imagination in America: Cynthia Ozick 's The Shawl and American Romance," in American Romance no Keifu Keisei, Kinseido (2012) and "Not Natural but Supernatural: A Study on Forgiveness in Saul Bellow's Humboldt's Gift," in Studies in English Literature, English Number 53 (2012).


「極限で見る夢:リザベーションからの視線
――シャーマン・アレクシー『リザベーション・ブルース』を読む」

西村頼男・喜納育江編著
『ネイティヴ・アメリカンの文学:先住民文化の変容』所収、MINERVA英米文学ライブラリー11、ミネルヴァ書房、2002年

現代ネイティヴ・アメリカン作家の代表的存在であるシャーマン・アレクシーの処女長編小説『リザベーション・ブルース』を、彼の短編小説も視野に入れながら分析する。アレクシーはこの作品の中で、従来のアメリカ文学作品では、都合良く歪められて描かれることの多かったネイティヴ・アメリカン像を批判的な立場から採用しつつ、ネイティヴ・アメリカンの視点から、アメリカの歴史を語り直し、アメリカ社会の不正を告発する。アレクシーは、この作品に於いて、様々な文学的手法を駆使し、ステレオタイプに押し込められてきた隷属的なネイティヴ・アメリカン像を破壊し、現代の主体的で生気溢れるネイティヴ・アメリカン像の再生を試みる。

「ジューイッシュ・イマジネーション・イン・アメリカ―シンシア・オジック『ショールの女』とアメリカン・ロマンス」

サウンディングズ英語英米文学会編、飯野友幸監修『アメリカン・ロマンスの系譜形成』所収、金星堂、2012年
ユダヤ系作家シンシア・オジックの代表作『ショールの女』をアメリカン・ロマンスの系譜の中で捉え直す試みである。ホロコーストという極めてユダヤ的主題を扱っている作品故に従来の研究ではユダヤ的側面ばかりが強調されてきたが、アメリカン・ロマンスの系譜に位置づけることで、今まで見過ごされてきた「アメリカ人」作家としてのオジックに改めて光をあてる。

"A Tree is Nothing :
An Ecocritical Reading of Cynthia Ozick's ‘The Pagan Rabbi’"

ASLE-Japan/文学・環境学会『文学と環境』第7号、2004年
自然嫌いの作家と見なされる傾向にあったアメリカの代表的ユダヤ系作家Cynthia Ozickの短編小説 "The Pagan Rabbi"「異教徒ラビ」を環境文学として分析する。
H. D.ソローやレイチェル・カーソンの著作のような環境文学の正統的なキャノンからは疎外されてきたユダヤ系作家の作品の中でも、特にこの作品は、その「ユダヤ的自然批判精神」故にやり玉に挙がることが多い。この作品を通して、Ozickの極めてユダヤ的な自然観が環境文学に与える新たな視点と示唆の意味を考察する。

「無償の贈与の可能性:ソール・ベローの Seize the Day 再読」
『武蔵野美術大学研究紀要』No.37、2006年

本論はソール・ベロー(Saul Bellow 1915-2005)の中編小説Seize the Day (1956)に見出すことのできる「贈与」のモチーフに着目し、それを糸口としてこの作品の再読を試みる。ベローは、この小説における「貨幣」の流れを追いながら、資本主義社会から排除された主人公Tommy Wilhelmが、現実には起こり得ない「贈与」を象徴的に体験し、真の人間関係を結ぶまでの過程を丹念に描くことで、「贈与」という行為のもたらす人間の真の連帯の可能性を示唆している。

“Not Natural but Supernatural: A Study on Forgiveness in Saul Bellow’s Humboldt’s Gift” Studies in English Literature
English Number 53、2012年

本論はソール・ベローの長編小説Humboldt’s Gift (1975)で展開される「赦し」の主題を彼の作品群の隠れたモチーフである「贈与」とその不可能性という概念から探る。

スチュアート・シム編『ポストモダン事典』

杉野健太郎・下楠昌哉監訳、松柏社、2001年
ポストモダン思想に関連する項目を網羅的に解説している事典の翻訳(共訳)。

ブルース・アレン著「石牟礼道子『天湖』にみる多次元的世界」
野田研一・結城正美編著『越境するトポス:環境文学論序説』彩流社、2004年

環境破壊に苦しむ人々の現状を、冷徹な客観性とイメージ豊かな文学性を融合させた独特の文学世界の中で描出する作家石牟礼道子の長編小説『天湖』の考察。社会的影響のみに焦点が当てられがちであった従来の読みに加え、彼女の作品に見られる芸術性を、その文学的手法の観点から考察した論文の翻訳(共訳)。


担当授業

初級英語(会話)
自分の考えを自由に英語で発信できる能力を伸ばすことを目標とする。スピーキングを中心とした授業になるが、その上達に不可欠な基礎学力の養成のために、リーディング、ライティング、リスニングなどの学習活動を適宜採用していく。身近な内容に関する表現の学習から始め、色々な教材を採用し、状況に応じて徐々に発展させていく。ペア・ワーク、プレゼンテーション、スピーチなどの作業を通して、英語で話すことに慣れて貰いたいと思う。総合的な学習を通し、英語に親しみ、自分で考える能力を高め、知的作業の一環としてのコミュニケーション活動に、積極的に参加出来る能力の向上を目指す。

初級英語(英作文)
長い英語のエッセイを書く前の準備段階として、正確な英語短文を書く能力の養成を目標とする。英語で文章を書く際に必要な文法事項を確認し、英語表記の基本的ルールを学習する。身近な事柄をテーマとして、それぞれのテーマに相応しい語彙と文体にも目を配りながら、正確で簡潔な英文を書く練習を行う。基礎的な英文を正確に書く練習を繰り返すことによって、総合的な英語表現の基礎を身につけることを目指す。

中級英語(会話)
自分の意志を自由に表現する発信者としての能力に加え、相手の伝達したいメッセージを的確に聞き取り対応できる受信者としての能力を伸ばすことを目指す。スピーキングを中心とした授業になるが、同時にその能力を支えるリーディング、ライティング、リスニングなどを視野に入れた学習活動を行う。テキストや副教材の演習を発展させ、ペア・ワーク、プレゼンテーション、ディスカッション、ディベートなどを採用していきたいと思う。この授業を通し、言語と人間や文化との深い関わり合いを認識し、それに基づいた知的で豊かなコミュニケーション活動の実現を可能にする言語能力を身につけて貰いたいと思う。

中級英語(中級講読:文学)
主に英米を代表する現代作家による短編小説を、必要に応じて語彙や文法事項を確認しつつ読み進めていく。一編の短編小説は、極度に凝縮された一つの作品世界であるため、単に字面を追うだけでは充分な理解には到達できない。従って、今まで習得した英語の知識を駆使し、辞書と格闘し、想像力を働かせながら、一言一句に込められた意味と、作品のテーマを探っていきたい。作品の精読を通して、読解能力の向上を目指すと共に、原文で外国文学に触れる愉しみと醍醐味を共有できればと思う。

上級英語(上級講読:文学)
この授業は、テキストの英語から離れて一般読者に向けられて書かれた英語の文学作品、エッセイなどを読む。様々なスタイルの英語で書かれた英語を読み、英語の更なる読解力の向上を目指す。また作品の中で扱われたテーマについて、自分の意見を組み立て、課題を通して意見を発表し、または教室内で意見交換を英語で行う練習も行う。様々なテーマを扱うが、特に前期は「環境」というキーワードに焦点をあて、人間とその他の生物、人間と環境との関係性について考えたい。英語を正確に読み取り、新しい英語の表現、思想に出合い、想像力を駆使して自由に文学作品と向き合って貰いたいと考えている。

英語Ⅲ (面接授業)(通信教育課程 造形文化科目)
通信教育課程科目英語Ⅰ、英語Ⅱ、英語Ⅲ(Part One)で学習した英語表現を、三日間の面接授業に於いて、実際の会話の中で応用する。テキスト『A New Approach to English Communication』(武蔵野美術大学外国語研究室編)のPart Twoで扱われている様々なシチュエーションを題材にして、ペア・ワーク、プレゼンテーションなどの作業を通して、日常会話に必要な基本的な表現から始めて、徐々に自分自身の考えなどを明確に表現するレベルを目指す。三日間という短い期間ではあるが、集中的に英語を学習することにより英語に親しみ、豊かなコミュニケーション活動に積極的に参加できる能力を養成する。