ショウキンZhong Xin

作品写真:東京脈動
作品写真:東京脈動

東京脈動TOKYO PULSATION

映像|ディスプレイVideo|Display monitor4min

東京では鉄道が隅々までゆきわたっている。頭の中に潜む鉄道のイメージを引き出そうと試みた。東京には沢山の電車が走っているが、どのように走っているかは想像もつかない。この研究では、実際に動いている全ての車両を映像化することで、路線図を描き出した。小虫のような電車が時刻表に則って進行していく。それぞれの電車はシンボルカラーで表現し、躍動する路線図をなしている。動く鉄道の総体を一望できる画像である。

ショウキン

東京の電車の動きだけを、リアルに抽出してみるとどうなるか。丹念なデータのノーテーションによって、それが見事にヴィジュアライズされたのである。ショウキンは、平日の朝の 8時台と9時台、通勤で最も多くの鉄道車両が稼動している時間帯の時刻表から、動いている電車の数と動きを割り出し、それをモーショングラフィックスに表現した。中央線や山手線、地下鉄の銀座線など、東京の移動を支える強力なインフラとしての鉄道がまさに脈打つ様をそれは伝えている。ソウルにも、ロンドンにも、北京にも、ジャカルタにも、ニューヨークにもない、異常な複雑さと精密さを持つ東京の電車の運動。この運動こそ、まさに東京という都市の生命感である。一日に 70万人を超える新宿の乗降客数は世界一らしいが、これは新宿という街の規模のせいでも駅の規模のせいでもない。複雑に連繋する鉄道網全体の流動性が生み出す量でありダイナミズムである。画像は小さく繊細だが、巨大な都市のダイナミズムを正確に捉えている。

基礎デザイン学科教授 原研哉

鈴木萌乃Suzuki Moeno

作品写真:東京小紋
作品写真:東京小紋
作品写真:東京小紋
作品写真:東京小紋

東京小紋TOKYO COMON

布(ちりめん)、パネル、染色Cloth, panel, dyeingH500 × W300 × D300mm未満 × 5点 H1456 × W1030mm

江戸小紋の紋様を、現代の柄として新たにデザインした。小紋をとおした相対化の中で、江戸と東京のつながりや差異をリアルに感じ直してみることができる。また本制作では小紋柄を風呂敷に展開し、包むという行為もふまえて東京の粋を表現した。一枚の布が形を変え様々な用途を持ち合わせる風呂敷もまた、日本が受け継いでいくべき美しい文化のひとつである。東京の生活感を通して江戸の粋を感じ直してもらうことができたら嬉しい。

鈴木萌乃

江戸小紋は、テキスタイルに表現されたグラフィックパターンであるが、これは単なる幾何学的反復パターンではなく、日常の風物が抽象される眼の巧みさとでも言うか、パターンに見立てられ、昇華される手際の「粋」がポイントである。鈴木萌乃の「東京小紋」への着眼点もそこにある。つまり、現代の東京の文物をモチーフとしてグラフィカルにパターン化するのではなく、モチーフの選定や、それを柄として成就させる際の同時代的な「感性」を、江戸の「粋」と共振させながら、江戸から受け継ぐ文化の遺伝子あるいは、感覚の連繋を確認したかったのではないかと思うのである。
今日の東京の若者の感覚の中にある「伝統」は、電波アイコンや東京タワー、点字ブロックやフェンスの金網を紋様に見立てていく感覚の中にも息づいている。それ故に、風呂敷の上で美しい柄として成就することができるのである。

基礎デザイン学科教授 原研哉

羽生田菜緒Hanyuda Nao

作品写真:枝を削る
作品写真:枝を削る
作品写真:枝を削る
作品写真:枝を削る

枝を削るI planed branches

枝、竹ヒゴTwig, thin strips of bambooH3600 × W600 × D600mm H2700 × W1500 × D800mm H190 × W290 × D360mm H400mm × 85点

木の皮を削ると白くきれいな地肌が現れた。そのきれいさがいいと思った。いいなと思った枝を三種類削りました。土をはらい、葉を落とし、皮を削る。余計なものを取り除き純度を高めていくことで、枝の輪郭はますます際立ってきます。わざとらしくならないように、わざと削り跡を残しました。その枝にとってちょうどいい塩梅になるように、ふるいを小刻みに揺らすように削りました。私は枝をデザインしていたのだと思います。

羽生田菜緒

枝振りのよい木の皮を太い幹の部分から先端の細い部分まで小刀(ナイフ)で少しずつ削って行く作業は忍耐強く最後まで地道に続けられた。表面にはナイフの削り跡が鉛筆の先のように残っている。そのかすかな無数の削り跡がこの作品の価値を成している。この作品は作者の手によって削られた言わば人工物であるが、人の手というもう一つの自然物によって成し遂げられたことは、自然が自然に戻ったような不思議な感覚を覚える。

基礎デザイン学科教授 深澤直人

松原明香Matsubara Haruka

作品写真:東京迷彩
作品写真:東京迷彩
作品写真:東京迷彩
作品写真:東京迷彩

東京迷彩Tokyo Camouflage

布、インクジェットプリントCloth, ink jet printingH1456 × W1030mm × 4点

私は東京の迷彩服を作った。これは、東京という「都市」を迷彩柄のパーツとして再解釈する試みである。
迷彩が草原迷彩、砂漠迷彩、雪原迷彩と土地によって分けてつくられるように、東京のなかでも、機能の異なる街を選び、それぞれの町の迷彩柄を作っていった。
都市を批評する方法はさまざまあるだろうが、景観から衣服へ、そしてそれを人間が着て都市に溶け込んでみせることも、都市を新しく読み直していくひとつの方法ではないか。

松原明香

仕上がった迷彩服を着て撮影されたムービーや写真を見ると思わず笑ってしまう。よほど意識しないと、着衣した人の存在を認識できない。それほど街にとけ込んでいるということだ。戦闘における迷彩は恐ろしげな発想であるが、同じ発想を平和な「街」に振り向けるところに松原明香の研究のユニークさがある。新宿歌舞伎町なら溶け込みがいがありそうだが、世田谷の住宅街に溶け込もうとは普通考えない。アスファルトの舗装路や道路に描かれた文字、味気ない灰色のブロック塀やブルーの住所標識など、リアルな都市景観の要素を冷静に割り出し、衣服の上下にしたたかに配していく。その果てに、見事に世田谷に溶け込む迷彩服ができた。
浅草や丸の内など、選定された場所には納得できる景観的特徴があり、僕らは既に知っていた街の特徴に、不思議な角度から出会わされることになる。初めて一連の衣服や写真を見る人たちに対しても、笑いと理解を同時に誘発するはずで、対象の未知化と理解が同時に進んでいく。

基礎デザイン学科教授 原研哉