国立印刷局による特別講義・展示を開催しました

4月21日(金)、本学学生を対象に、国立印刷局の工芸官による特別講義「日本銀行券(お札)印刷とエングレーヴィング(凹版)彫刻技法について」が開催されました(主催:油絵学科グラフィックアーツ専攻)。また、この特別講義にあわせて、特別展示「国立印刷局 ビュラン彫刻画(セキュリティ印刷に関する資料)」も実施されました。
昨年9月に続き2回目の開催となったことで、専門的な内容の講義が行われると同時に、講義や展示を全学に公開することでより多くの学生が国立印刷局の長年培ってきた工芸官の高い技術を学ぶことができる機会となりました。

概要 2023年4月21日(金)
鷹の台キャンパス
特別講義:6号館 銅版工房/1号館 103(第1講義室)
特別展示:4号館 215
特別講義
  • 9:00-9:20|ビュラン作製の説明
  • 9:40-12:00|ビュラン作製
  • 13:20-14:20|スライドレクチャー
  • 14:30-15:00|エングレーヴィング実演
  • 15:00-17:00|エングレーヴィング実技指導
特別展示 9:00-17:00|国立印刷局 ビュラン彫刻画(セキュリティ印刷に関する資料)

内容
午前の部は、版画を学んでいる学生を対象に、「ビュラン」という銅版を彫る道具を作る(自分の手に合うように柄を削り出し、刃先を研いで調整してカスタマイズする)授業が行われました。ビュランは、国立印刷局が製造する日本銀行券(お札)などの原版作製でも用いられる金属の細密彫刻に適した専用の彫刻刀で、工芸官の方々より、刃先を研ぐ高度な技術もレクチャーしていただきました。

午後の部は、工芸官の方から、日本銀行券(お札)製作で用いられる印刷技術、特にエングレーヴィングと呼ばれる銅版画の技法(お札の肖像や文様、文字などを銅版にビュランを用いて彫刻する)を中心にセキュリティ印刷における工芸官の超絶技巧について、画像を交えながら紹介していただきました。全学生を対象に行われたこのスライドレクチャーでは、様々な学科から大勢の学生が参加し、熱心に聴講しました。
後半は版画工房へ移動し、工芸官の方によるエングレーヴィング実演が行われました。続いて、午前中にビュランを作製した学生が、指導を受けながらお札で肖像を彫るのと同じ方法(線の配置や彫り方など)で銅版に線を彫る実習を行いました。スライドレクチャーを聴講した学生も工芸官の超絶技巧を見学し、より理解を深めることができました。

特別展示では、工芸官が制作したビュラン彫刻画を中心とした資料や、令和6年度上期発行予定の新日本銀行券の技術を紹介するパネル資料が展示されました。展示会場には、国立印刷局の方による丁寧な解説とともに多くの見学者が来場しました。
なお、特別講義・展示の様子は、国立印刷局の大津俊哉理事長が視察され、樺山祐和学長をはじめ本学関係者と意見交換も行われました。

担当教員 高浜利也教授(油絵学科グラフィックアーツ専攻)のコメント
版画を学ぶ学生が、国立印刷局の工芸官の方々からご指導いただき、自分の手に合ったビュランをつくるという特別講義は美術大学としては、おそらく初めてのことだと思います。そのビュランを使って実際に銅版に線を彫る体験は、彼らにとって本当に幸せな夢のような出来事となったことでしょう。人間の手わざの極限に位置する国立印刷局のビュラン彫刻技術を間近に体感したことが今後、学生それぞれの制作、さらにはこの先の人生にどのように結びついていくのかとても楽しみです。おりしも“Chat GPT”の出現が話題となっている昨今、想像を絶するような時間と熟練を要する手仕事、手わざはデジタルに覆いつくされようとしている社会とのコントラストの中で、今までとは異なった意味を持つ存在になってくるに違いありません。次の時代の美術やデザイン、ものづくりを担う多くの人たちに今回、展示や講義を含めて参加、目撃してもらえたことは、とても意義深いことだと確信しています。

撮影:油絵学科グラフィックアーツ研究室、広報チーム

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