日本アニメーション学会教育研究部会第1回研究会

日程 2011年10月25日(火)
17:00-20:00
場所 新宿サテライト教室ルームA+B(東京都新宿区西新宿1-25-1新宿センタービル9F)

●交通アクセス:JR新宿駅西口より徒歩5分

新宿サテライト教室地図



日本アニメション学会の研究・教育委員会に、このたび「アニメーションの教育」あるいは「アニメーションと教育」に関する様々な問題を調査・研究する場として、教育研究部会を新設することとなりました。
研究会の趣旨につきましては末尾をご覧ください。
つきましては第1回研究会を開催いたしますので、会員およびこの問題に関心をお持ちの方のご参加をどうぞよろしくお願いいたします。

教育研究部会主査 昼間行雄



●話題・議題

◎「アニメーション教育の現状と課題について」
話題提供者:昼間行雄(児童育成協会、日本大学芸術学部)
◎「アニメーション教育の歴史と理論について」
話題提供者:小出正志(東京造形大学)
◎「アニメーション教育関係映像資料」視聴・鑑賞
※国内外学生作品(授業課題を含む)、各種アニメーション専門教育映像教材など
◎第2回以降の研究会について



●「教育研究部会」設置の趣旨

我が国では、職業人としての映像制作従事者の育成は、映画制作が日本で開始された大正期から、制作現場での“実地訓練”であり、商業アニメーションの制作現場でも同様な形態が採られていました。戦後に会社組織で展開していった商業アニメーションの制作現場でも、アニメーションの制作技術は制作会社毎に独自の方法論で展開されて伝承され、伝統芸能のように実力のある作り手を選抜し、制作の修練を重ねることで、優れた職能を育てるという教育により、作り手が輩出されていきました。

一方、教育現場での映像の専門教育は戦前から一部の私学で行なわれていましたが、約20年程前まで、映像の理論と実習とをカリキュラム化した専門学科を擁する大学は数えるほどしか存在していませんでした。
ところが近年、大学教育の考え方が大きく変化し、大学という教育機関が幅広く機能を分化したことで、様々な分野で、専門的に分かれた学科やコースが新設され続けています。
「映像」も現在は約30校以上にものぼる大学で、その学科やコースが設けられています。芸術系だけでなく、一般大学の文科系、理科系学科に映像のコースや専攻が設けられる例も多く見受けられます。
上記の「映像」の実習科目には、「アニメーション」が設けられている事も珍しくありません。
さらに「アニメーション」の専門学科や専攻を設置している大学も存在します。アニメーションという科目名でなくとも、例えば「CG」、「ウェブ」、「モーションデザイン」といった科目名でアニメーションの授業が展開されている大学も多数存在します。

大学でのアニメーションの専門教育は、主に専門分野の基礎を身につけるだけでなく、隣接する美術、デザイン、広告などの表現を把握し、アニメーションとの関係を広く俯瞰するような基礎知識を得る学習から、制作現場の実態を把握した上での実践的な専門技術の習得を計画的に行なうカリキュラム化した実習が求められると思います。
ところが、制作現場での“実地訓練”による制作会社毎の独自の専門教育と同じように、大学それぞれの独自のアニメーションの専門教育が展開されているのが実態で、教員の志向が反影された独自のカリキュラムが学校の特色となっていることは確かです。
しかし、一定のレベルに従事者を訓練するための“技術”の教育システムがそもそも存在しない分野を専門教育としてカリキュラム化することは困難ではありますが、その専門分野の教育に従事する者にとっては、現在もっとも取組まなければならない研究なのではないかと思います。
現在の状況が続けば、同じアニメーションの専門教育をうたいながらも、学校によってその授業のレベルに大きな格差が生じてくることは否定できません。職業訓練としての役割も担う大学教育が、アニメーションの制作現場から歓迎されなくなることにもつながるのではないかと思います。
さらに大学としての専門教育では、制作だけでなく作品や作家、理論の研究を行なうことや、評論に取組むカリキュラムは必須です。しかし、アニメーションに関する専門の研究者が少数なために、専門教育での研究活動がなかなか活性化していないことも、今後は大学の専門教育として問題視されていくと思われます。

(昼間行雄)

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