旅するムサビプロジェクト(通称:旅ムサ)は、「生徒に本物の美術作品を見せたい」という本学OBの美術教諭の願いから2008年に始まりました。
旅するムサビは学生の自主的な活動です。旅先ごとに希望者がチームを組んで、全国各地の学校や美術館などを訪れ、学生が子ども達と対話をしながら持参した作品を鑑賞する「対話型鑑賞」、空き教室で取り組む「公開制作」、子どもと一緒に制作する「ワークショップ」、黒板に絵を描き朝登校した子どもたちを驚かせる「黒板ジャック」、また、夏休みの2日間、学校を美術館に変えてしまう「School Art Project “ムサビる!”」など様々な活動を行っています。
企画は教職課程の履修学生が中心となり、他大学の学生や教職員、学芸員や地域住民など、様々な人たちを巻き込み展開しています。旅するムサビは美術の楽しさ、面白さ、広がりを感じながら、美術を通したコミュニケーションを共に創り出していく活動です。

旅ムサで主に行われている「対話型鑑賞」「公開制作」「ワークショップ」などの活動について詳しく紹介します。

2009年から始まった「School Art Project ムサビる!」は毎年様々な企画を行っています。各年の活動の様子を紹介します。

これまで行われてきた黒板ジャックの作品たちを学校ごとに紹介します。学生たちの力作をご覧ください。

参加学生より

アートで繋がる
小堺勝(工芸工業デザイン学科クラフトデザインコース金工専攻3年)

今までで一番印象的だったできごとは私が作者として、見に来てくれた子に自分のクロッキー帳を広げて作品のデザイン案をいろいろ見せた時のことです。その子がもっとこんな感じだったらいい、僕だったらこうする!などの話で盛り上がり、その勢いは私が追いつけなくなるほどでした。 小学生と共通の話題でここまで会話をしたのはこの時が初めてで、それは作品があったから話せたのだと思います。「美術を通して社会と繋がることができる」。それを実感した瞬間でした。

小堺勝

生きた授業を作る
木村真光(大学院造形研究科修士課程美術専攻日本画コース1年)

私は教員になるために、学校現場に行くことができる旅ムサに魅力を感じています。子どもたちをしっかりと観察することで新しい発見があり、彼らの変化に気付くことができます。
そして、私たちが子どもたちのことを思い考え、育てようという気持ちが強いほど、子どもたちと一緒になって生きた授業を作りあげることができると感じました。そして普段自分の制作に取り組むように、‘‘授業”という制作に取り組めば、美術の楽しさ、面白さをもっと生きた形で伝えることができるのではないかと感じています。

木村真光

旅するムサビを通して気付いたこと
坂元渓花(油絵学科油絵専攻3年)

これまで参加した中で印象に残っているのは、高校で鑑賞授業を行った際、そこの高校生2人組が「美術の面白さとはなにか」「どの美術館に行けばいいか」「今回の鑑賞授業を受けて興味が沸いた」と話しかけてくれたことです。あまり年の離れていない「大学生と高校生」という立場だからより親密に話ができるだろうし、なにより私たちの鑑賞授業や生の作品から美術に興味を持ってくれたことがとても嬉しかったです。またこうやって生徒さんたちと話したり、実際に企画を立てたりする中で、各学校における美術の授業の「今」を肌で感じられたこともいい経験だったと思います。

坂元渓花

刊行物の紹介

2010年に旅ムサ最初の記録集『美術という生き物に出会った』を刊行後、2012年に『もっとつくりたい』やムサビる!記録集、特定の活動を単体でまとめた別冊などを刊行しています。別冊の3冊以外は学生たちが企画編集のすべてを行っています。

美術って必要なの?

美術って必要なの?(2016年発行)

旅するムサビ in 台湾

旅するムサビ in 台湾(2016年発行)

小諸発!ドリーム列車 “絆” プロジェクト

小諸発!ドリーム列車 “絆” プロジェクト(2015年発行)

旅するムサビin上海報告集

旅するムサビ in 上海報告集(2013年発行)

ムサビる!2009-2012真夏の学校を、美術館にースクールアートプロジェクトー

ムサビる!2009-2012 真夏の学校を、美術館に ースクールアートプロジェクトー(2013年発行)

もっと、つくりたい

もっと、つくりたい(2012年発行)

別冊旅するムサビ記録集

別冊旅するムサビ記録集(2011年発行)

美術という生き物に出会った

美術という生き物に出会った(2010年発行)

旅するムサビ実施先関係者より

半田道夫(東大和市立第五中学校 前校長)

“旅ムサ”では、多くの学生の皆さんに大変お世話になりました。当初、学校の中心テーマであった「言語能力向上」の一環として「対話型鑑賞教室」を企画しました。ファシリテーターの次第に深まる問いかけに導かれて、単に「きれい」とか好き嫌いを超え理解が深まってゆく流れは、生徒にとって新鮮な「体験」であり、同時に同じものを見ても異なる「他者」の発見と、互いを認め合う良き機会でもあったと思います。また、毎年夏の「ムサビる!」では、参加した生徒の生き生きした表情とともに、沢山の地域・保護者の方々に来校いただき、「学校でこんなこともできるんだ、毎年やってほしい」という感想も寄せられました。私は、作品やワークショップもさることながら、駐車場や、校舎内で来校された人々への学生の皆さんの対応の素晴らしさに感動を覚えたものです。また、すでにテレビ等で話題の「黒板ジャック」は、前日深夜まで制作され、本当に見事な「作品」に正直ビックリです。朝の教室は、異空間と化し、一日のスタートを感動からスタートできました。・・今、いじめなどに象徴される様々な学校問題も、学校が地域社会に開かれ、より多くの人々と共に、感動を分かち合うことのできる価値の創造にこそ、改善の突破口があると信じています。これからもさらに期待しています。 

諏訪地域における「旅するムサビ」と「対話による作品鑑賞」について
前田忠史(茅野市美術館 主任学芸員)

長野県・諏訪地域における「旅するムサビ」は、茅野市美術館や、諏訪市美術館、市立岡谷美術考古館をはじめとする近隣美術館、茅野市美術館サポーター、信州大学教員・学生などと連携し2012年度(平成24年度)より行なわれています。諏訪地域の小中学校における「対話による作品鑑賞」の授業を公開し、希望者が講座として受講できるようにしています。この講座では授業の見学に加え、授業の前後に三澤先生(*注)による「対話による作品鑑賞」の解説をしていただきました。美術館サポーターに興味のある方々をはじめ、市民、保護者、教員、学芸員など、多くの方々が受講しました。児童・生徒にとって貴重な体験であり、さらに市民や関係者に「対話による作品鑑賞」の有用性の認識が広がったと思います。今後は「旅するムサビ」のご協力をいただきながら、学校、市民、美術館の連携に加え、地元作家との連携も模索し、「対話による作品鑑賞」がより広がっていくように取り組みたいと思っています。
*注:本学教職課程研究室教授