太田いくえOta Ikue

照応correspondence

3寄の往還「定着まで」far from 3 but close to 3 “until fixing”

彫刻|グラファイト、木材、スチレンボードCarving|graphite, wood, styrene board320.0 × 90.0 × 6.0cm

3寄の往還「定着より」far from 3 but close to 3 “from fixing”

映像|本、プロジェクターMovie|book, projector6min

果てることなく漂えdrift without ending

文章Text

彫刻だけで成り立ち、映像だけでも成立する。文章は予め作られていた。
扱う次元の異なる表現を符合させることで、手法を越えた状態が生まれる。

彫刻・映像を合わせた作品であるためか、無機と有機の間を止め処なくたゆたう。
理性的な作品に感情的な文章が当てられることで、振り切れない存在が新たに揺らぐ。

太田いくえ

太田いくえの作品の特徴は、映像にとってのスクリーンを単に与えられたものとしてではなく、映像のために積極的に造形する対象として扱っていることである。この木製のスクリーンは深い溝や細い線が彫られた一種のレリーフのようであるが、一旦、映像がそこに投影されると、映像とその溝や線が反応したり、映像の黒と実体の影が干渉して、この固有のスクリーンが映像を密着させる<支持体>のように機能する。このスクリーンによる固定性と映像そのものの流動性がぶつかり合って、そこには、像とも・の・の中間の様態が立ち現れる。映像のも・の・化へ向かう優れた試みである。

映像学科教授 板屋緑

尾野慎太郎Ono Shintaro

うつくしい人beautiful person

映画|HDVMovie|HD video29min

カメラを通して(或いは、通すことで)人が揺れるのを見つめたかった。揺れていたのは゛僕゛かもしれない。その揺れに、2011年を生きる23歳の私が考えたいことを重ねてみたかった。いや、私の知らない所でそこに存在する音、人との距離感、自分の居場所...目には見えないけど感じるもの、なにかそういった曖昧だけど確信的なものを掴み、自分を確認したかっただけなのかもしれない。いいとこ取りで、まったく傲慢だ。

尾野慎太郎

作者自身の感性の確認から始まった今回の卒業制作は、作者が2年間通い親交を深めてきた徳島県神山町に帰省する女性の物語になりました。
創作における決定を感性にゆだねる危うさを意識しつつ出来上がった作品は、幾つかのシーンで個人を超えて共鳴する魅力を持ちつつ主人公の内面を描いた作品になっています。

荒削りながら、我々が共通に持つであろう記憶のDNAにふれ自分の物語を感じてしまう尾野君の作品に今後も期待したいと思います。

映像学科客員教授 石茂雄

橋本孝子Hashimoto Takako

tanbo

インスタレーション|プロジェクター、木材、ポスターカラーInstallation art|projector, wood, poster colors13min、60.0 × 96.0 × 3.5cm

風景をアニメーションする。
関東平野のだだっ広い平地に田んぼがずっと広がっているのが好きで、地元の風景を元にアニメーションを描いていきました。
一枚一枚描き起こすことで、風景やものが感覚的に近く見えてくるところがアニメーションの好きなところです。
光や空気や広さも4つの画面で再構成して田んぼの時間を作ること。
卒業制作ではそこを表現することを目指しました。

橋本孝子

四方の空を全て映し込む大きな鏡。
からだの後ろまで敷き詰められた緑の絨毯。
蒼い月明かりに静まった民家が透ける。

今、この幼き頃の風物はない。

人のいない空ショットを主とし、些細な現象と動きだけを配することで故郷の原風景を造形した。彼女は、失われた時の蘇生のためにアニメーションを駆使したのである。

映像学科教授 篠原規行

古屋桃与Furuya Momoyo

composition.g

インスタレーション、絵画、映像装置|プロジェクター、木材、段ボール、発泡スチレン、紙粘土、アクリル、ジェッソ 他ミクストメディアInstallation art, painting, imaging machine|projector, wood, cardboard, polystyrene foam, paper clay, acrylic board, gesso, mixed media12min、180.0 × 288.0 × 20.0cm

私は映像学科ですが、絵画が好きでドローイングを続けてきました。しかし、その中で自分の絵に物足りなさを感じ、また映像には絵画のもつ物質感や、色彩の豊かさ、筆跡のもつエネルギーがないことに物足りなさを感じていました。そして映像と絵画に向き合ってゆくなかで、お互いを補い合い自分が目指す表現の形になりました。今回は玉川上水をモティーフに、木や根の生命力、葉や土の美しさ、その圧倒的な存在感に惹かれ形にしました。

古屋桃与

投影した映像に反応しながら絵を描くようにスクリーンを造形し、そのスクリーンに映像を投影しながら映像を編集する。この作品はそんな作業の繰り返しから生まれた。編集された映像情報と描かれた映写幕の物質情報との干渉と強弱によって示されるイメージが虚と実の境界を行き来する。通い慣れた玉川上水の緑・土・光・影、そして時間。
4年間の想いをモチーフに、ドラマも音も無い映像の時間を成立させた。

映像学科教授 篠原規行

宮島三枝Miyajima Mitsue

背中あわせback to back

実写映画|HDVfilm|HD video60min

2人きりで東京に取り残された
20歳の姉と17歳の弟。
干渉も監視もされない環境に
置いてきぼりにされた時
姉は男とのお金の関係に溺れていく。

それは社会的にも
家族にも認められない20歳の反抗。

そんな姉の行動を弟だけが知っていた。
2人が共有する時間はいつも壁越し。
見えないことの方が多いから
お互いを見て見ぬふりして軽蔑しあっている。

そんな大人と子供の間で彷徨う2人の
正当化されない日々を描いた
小さな家族の映画。

宮島三枝

祖父の入院で帰郷中の母の不在、東京に残る姉弟の背中合わせの生活。人情が希薄でお金にうるさい母親の価値観に違和感を抱きつつも自らお金への執着に支配され複数の男たちと援助交際を結ぶ姉。高校生のタケシはそれを軽蔑するもおこぼれの小遣いでパシリに甘んじ、仲間におごって優越的スタンスを保つ。欠落を満たす依存にバランスを崩していく姉。都会の片隅に消え往く下町の風景、忽然とこの世を去る老人、ピュアな魂への追悼の儀式が、姉弟に不思議な連帯を生み出していく。

映像学科講師 小口詩子

横田雄一朗Yokota Yuichiro

面と向かってface to face

写真|インクジェットプリントPhoto|ink jet print250.0 × 200.0cm × 6点

ある一人の人物の顔を、縦横7×7枚のタイル状に撮影し、後に撮影したその49枚をPhotoshopの自動合成機能で1枚の画像としてつなぎ合わせる。
そこには、49の瞬間が存在し身体の微弱な動きにより自動合成の際、微妙なズレが発生する。それと同時に、本来の人間自身の顔は左右対称ではあるが、こちらも微妙に歪みがある。パソコン上の合成編集で生まれるズレとその人物が本来持つ顔の歪みが同一画面上に混在する。
鑑賞者には、その人物の顔がパソコン編集上でのズレなのかその人物本来がもつ歪みなのかを面と向かってじっくりと凝視してもらいたい。

(HORSEMAN LD によるタイリング撮影、Photomergeによる合成)

横田雄一朗

49枚の画像を繋ぎ合わせて制作したデジタル・タイリングによる高解像度の巨大なポートレート作品は、撮影時に生じる時間的なズレ、合成時に生じる空間的なズレを意識的に残すことによって、奇形的な生物としての人間に批評を与えている。それらは、電子の流れによって形成される次世代の写真を予感させ、写真の終焉と始まりを同時に見せてくれている。

映像学科教授 小林のりお