田中彰Tanaka Sho

MALTAMIRA ―洞窟の夢―(立体)MALTAMIRA - Dreams of the Cave -

ヒマラヤ杉CedarH1400 × W4000 × D1200mm

MALTAMIRA ―洞窟の夢―(刷り)MALTAMIRA - Dreams of the Cave -

ロクタ紙、ダイヤモンドブラック、アクアウォッシュメディウムLokta paper, pigment (diamond black), Aqua Wash etching inkH2800 × W4300mm

MALTAMIRAのためのドローイングDrawing for MALTAMIRA

ロクタ紙、アクアウォッシュメディウム、油性インク、ブロンズパウダーLokta paper, aqua wash etching ink, oil- based ink, bronze powderH2000 × W1000mm

今から16年ほど前、当時8才だった僕は不思議な夢をみて、起きてすぐに紙に描きなぐった。その夢には当時の風景や体験が詰まっている。ふるさとの幻影であり、帰ることの出来ない幼少期の記憶である。存在しない夢の洞窟にもう一度出会うための空間を作りたいと思った。そしてその世界に自分以外の人も連れて行きたい。
最終的に閉じ込められた空間(夢のイメージ)を外の世界へ解放するため、薄い紙に摺りとり1枚の版画が生まれた。それは暗くて深い地面の中から白い鳥のようなものを掘り出し、瞬時に空へ飛び立たせていくような不思議な体験だった。

田中彰

子供の頃、夢の中で出会った風景。記憶の襞に染み込んだその原初的イメージを、ヒマラヤ杉の丸太の芯をくり貫くという気の遠くなるような作業を経て、木肌に刻み込んだ渾身の作。靴を脱いでくぐり抜け、“ 体験することが出来る” 立体作品は、実は木版の版木(はんぎ)としても機能している。対をなす、紙に刷り取られた図像こそが、いわゆる版画作品なのだ。こうしたレトリックさえも、作者が紡ぐ物語に巧みに取り込まれ、言葉にできないような繊細なノスタルジーを纏ったその世界観が、切ないほど心に響いてくる。

油絵学科教授 高浜利也

中田麻衣子Nakada Maiko

気づきkiduki

和紙、水性木版Washi, water-based woodblock printH1830 × W915mm H1212 × W915mm H915 × W1212mm H1830 × W1830mm H600 × W455mm

風によって輝いている木漏れ日に
私はよく目を奪われてしまう。
そのきれいな情景に感動し、
まるで時が止まったかのような錯覚に陥る。
感情は「今」ではない「どこか」に行き、
多くのことを見落としていることに気づく。
それは大きな生命体に包み込まれている心地よさと
自分の存在が消される一種の恐怖からもたらされる。
私はそれらの感情やそこに流れる空気を表現し、共有したい。

中田麻衣子

木漏れ日の光と陰が織りなす情景は、幾重にも版が摺られるたびに、彫りの痕跡と紙の物質感を増しながら、魅力的な表情をもつ画面となっていく。
中田は、そうして出来上がった木版画を白い壁に配置することにより、それぞれがパズルのピースのように呼応し、紙から壁に緊張感が波及してイメージを拡張するような、雄大な作品を生み出すことに成功した。
この作品の前に立つと、私は圧倒的自然を目にしたときに抱く畏怖の念にも似た聖性を感じる。

油絵学科教授 遠藤竜太