大貫茜Onuki Akane

Ex-formation 空気 膨らみを着るEx-formation Air Wear the bulge

衣服|塩化ビニールClothing|vinyl chloride55.0 × 56.0 × 30.0cm 55.0 × 56.0 × 29.0cm 64.0 × 57.0 × 35.0cm 64.0 × 57.0 × 35.0cm

空気は普段、その存在をあまり意識しない。けれど、ビーチボールに空気が入っていき、パンパンに膨らんでハリとして見えた時、私は空気の存在を感じた。そのピンと張った力強い空気のハリに、身体の持つ膨らみやハリが想起され、この作品を制作した。
この膨らむ衣服は、乳首やおへその位置にある注入口から空気を入れていく。身体に沿って膨らんでいき、パンパンに膨らむと、身体の上にもう一つの身体が現れる。 この作品を通して空気のハリと身体のハリが拮抗することで見えてくる、空気の存在を感じてほしい。

大貫茜

この衣服は「膨らみを着る」という着想で制作されました。ビニール製の透明な膜の中に空気が詰め込まれます。衣服のかたちは人間の裸の身体が表現されていて、乳首やへその位置に、空気を出し入れする通気口が配されている点は面白い工夫です。空気を入れると、身体の膨らみのようなボリューム感のある衣服が出来ます。これを着用すると、衣服を着ているにもかかわらず、そこに裸の身体が表現されるというパラドキシカルな状況が生まれます。透明感のある空気の衣服ならではの仕組みが面白いファッション性を生み出しています。水着の上に着ても、普通の衣服の上に着ても、楽しめそうです。

基礎デザイン学科教授 原研哉

金澤悠夏Kanazawa Yuka

SOCKS

靴下|布|ミシン縫い、刺繍、プリントSocks|cloth|lock stitching, embroidery, pri48.5 × 10.0 × 18.0cm × 19点、29.5 × 8.0 × 17.5cm × 15点

パッケージ|紙Packaging|paper20.0 × 11.0 × 1.0cm × 20

例えば作品中のKOKUBAN SOCKSは、小学生用の靴下にすべり止めがついている事から黒板消しに見立てたものだ。もしこれを履く状況があったら、床を綺麗にしようと足を擦らせるかもしれない。この場合、黒板消しにまつわる記憶、感覚が現在の小学生から大人の年代まで通じる事だろう。そのため意外なものを靴下とリンクさせながらも、身近に感じられるはずだ。
このように、どんな人がどのような状況でそれを履くか、と状況を考えて靴下を制作した。

金澤悠夏

ソックスというテーマで卒業制作をやってみたいといわれたときには、既に面白そうなテーマであると感じていた。
最初に黒板消しをモチーフにした靴下を持って来て、本人は「床を拭く」と「黒板を拭く」ということを結びつけて考えていたようだが、そのラフモデルを見たときには、ただ単純な二つの似た行為の繋がりを具体化したものだけではない、何か不思議な魅力の要素を含んでいたことに作者も私も気付いてきた。そのえも言われぬ不思議な感覚は「ソックス」という具体が持つ要素だった。作者には、ただ単に何かのかたちや要素を靴下のかたちに置き換えるのでは面白くない、ということを繰り返し伝えた。そのうちに本人は靴下と日常の見逃してしまいそうな接点を見つけようとしはじめた。靴下の穴とか、階段の先を上がる人の足の裏や細部のようなことである。誰もがいわれてみれば納得できるような細かな気付きがこの「ソックス」のプロジェクトには詰まっている。気付いていることを自覚することは易しくない。考え込まず、まずは手を動かしてつくってみてから気付く、その繰り返しが靴下というメディアを理解する大きなきっかけになっている。考えるのではない、日頃感じとっていたことがなんだったかを反芻するのだ。
この制作はその努力の成果だと思う。つくってみることで自分を作品から離し客観視できるようになる。その体験がこの優秀な結果を生んだと言って間違いない。

基礎デザイン学科教授 深澤直人

久保田あゆみKubota Ayumi

見せたくないお金Money talks

賄賂

紙、水引Paper, decorative Japanese black and white strings19.0 × 11.0 × 1.0cm

白星代

紙、水引Paper, decorative Japanese black and white strings19.0 × 11.0 × 1.0cm

裏口入学金

風呂敷、糸Wrapping cloth, thread18.0 × 9.0 × 1.5cm

買収料

Paper9.0 × 5.5cm

天下り給料

レーシングペーパーTracing paper20.0 × 12.0

援助交際費

紙、カッティングシートPaper, cutting sheet20.0 × 9.0cm 19.5 × 9.0 × 3.0cm

手切れ金

ビニール袋Vinyl bag22.0 × 9.0 × 2.0cm

ヤク代

Paper8.0 × 12.0 × 1.5cm

臓器売買金

トレー、ラップ、ラベルTray, wrapping, labeling10.0 × 17.0 × 1.5cm

口止め料

Paper9.0 × 6.0 × 2.0cm 10.0 × 2.0 × 1.5cm 3.0 × 3.0 × 1.2cm

見せたくないお金

Paper16.0 × 7.6 × 0.5cm

日本にはお金を包む伝統的な作法がある。真っ白な紙を折り、水引を結び、袱紗に包む。しかし、世の中には「見せたくないお金」の包み方は存在しない。「見せたくないお金」とは、賄賂、八百長、裏口入学、手切れ、口止めなどに使われるお金である。私はあえてその曖昧でうやむやにされるお金の包み方を提示してみた。そうすることで、社会の背後に存在するお金の世界を感じてもらえたらと思う。

久保田あゆみ

久保田あゆみは、社会の裏側でやり取りされる見せたくないお金をかたちにしてみようと考えた。賄賂、八百長、裏口入学、買収、天下り、援助交際、口止めなどの怪しいお金。それらを包んだかたちは、ユーモアをもった美しいパッケージとして可視化された。丁寧に仕上げられたそれぞれの包み形を見ていると、日常生活では見えない金銭の授受や、社会の不正な報酬が想像できる。目に見えるお金の使い方を問いかけてくる作品である。

基礎デザイン学科講師 野口正治

中西洋子Nakanishi Yoko

料理の結晶The crystal of cooking

樹脂粘土、ウレタン樹脂、紙Polymer clay, urethane resin, paper3.0 × 2.8 × 3.0cm × 50点

料理の持つ色合いや使用されている食材の独特の模様や質感は魅力的です。しかし“おいしそう”などの食べものとしての捉え方が先行しがちです。
この研究は料理の形態を変化させることで、料理の物体としての魅力を再認識させるための試みです。馴染みある50品の料理を材料の分量ごとの比率で積み重ね四角錐台にまとめました。
この料理の結晶たちは、料理の立体的なダイアグラムであり、料理のアイコンであり、“見る”料理の新しいかたちでもあります。

中西洋子

この研究は、食材を見ること、例えば、薄く切った牛肉についての味覚や嗅覚をひとまず保留して、純粋に色と形を通して見ることから出発した。最終的には、「結晶」というアイコンで、50の料理の視覚をつくることに成功した。その結晶は、食材から構成される料理のダイアグラムにもなっていて美しい。また、ディスプレイ、新しい料理、お菓子など、多くの応用を想像することができる愉しいデザインである。

基礎デザイン学科教授 小林昭世