北崎允子

北崎允子(きたざき・まさこ)
KITAZAKI Masako

専門
デザインリサーチ、インタラクションデザイン、ニューメディア
Design Research, Interaction Design, New Media
所属
視覚伝達デザイン学科
Visual Communication Design
職位
教授
Professor
略歴
2019年4月着任
1980年東京都生まれ
デルフト工科大学デザイン工学部 MSc. Design for Interaction修了(修士)
研究テーマ
Practice Oriented Design: 人々の慣習(プラクティス)の理解を基点にしたインタラクションデザインおよびそのデザインメソドロジーの研究。

'03年武蔵野美術大学視覚伝達デザイン学科卒業。'03-'19年富士ゼロックス株式会社ヒューマンインターフェイスデザイン部他所属、UIUXデザインおよびデザインリサーチに従事。'16年FXPALに研究員として参画(米国・パルアルト)。'16-'18年デルフト工科大学デザイン工学部所属(オランダ・デルフト)、Social Practice Theoryをベースとしたデザインアプローチを研究。'18年ルガーノ大学ユビキタスコンピューティングリサーチグループ所属(スイス・ルガーノ)。ACM(Association of Computer Machinery)学会員、日本デザイン学会員。
人々のサスティナブルな行動や価値あるコミュニケーションを生み出す人工物のデザインおよびデザインメソドロジーを、デザインと社会学・認知心理学を組み合わせて研究。主な成果はオフィスの紙のワークフローを可視化しレスペーパーを促すソフトウエア、ナイジェリアの高血圧患者が継続的に治療に取り組むためのデバイスおよびアプリケーション、高齢者が自らテクノロジーを使いこなし自立した毎日を送ることを支援するIoTデバイスとシステムなど。人と人工物とのインタラクションを観察可能にし、そのコンテクストの理解を促進させるResearch through Design、人々の習慣的な行動を、物質・スキル・意味の観点から分析するSocial Practice Theory、現象に関わる全てのステークホルダーを活動に巻き込む参加型デザインを主なアプローチとする。

Her research interest lies in designing future technologies for societal change from a practice-based, work-oriented perspective. Combining an ethnomethodological research approach to understanding people's tacit needs hidden behind routinized practices and design skills with physical and digital artefacts, she explores designing for interaction to nudge people to be better able to be aware, decide, and act in everyday life. She is actively involved in multidisciplinary collaborations with multicultural partners, such as the Ubiquitous computing research group at Università della Svizzera italiana in Switzerland, FXPAL in the USA, and local NPOs in Nigeria. Before joining MAU, Masako was engaged in design research and interaction design for creating new products and services at Fuji Xerox in Tokyo. She graduated with an M.Sc. in Design for Interaction from the Delft University of Technology in the Netherlands and a B.A. in Visual Communication Design from MAU.


Connected Resources: 高齢者のリソースフルネスのためのデザイン

Connected Resources: Empowering older people to age resourcefully from Masako Kitazaki on Vimeo.
高齢者が利用する新たなIoTサービスをコンテクスチュアライズしたデザインフィクションビデオ 2018年

超高齢化とIoTやAI等新たな技術の台頭に伴い、高齢者向けスマートデバイスが身近になってきたが、これらは作り手の「テクノロジー音痴の弱者」という高齢者ステレオタイプに基づき設計されているケースが多く、実際の高齢者の多様な利用状況との乖離が問題視されている。一方このプロジェクトは、高齢者に高い能力「リソースフルネス」-今ここで直面している課題を、自分の周りにある物や人など資源(リソース)を本来の目的を超えて活用し、即興的に乗り越える能力-に着眼し、高齢者自身が状況に応じて利用目的と利用方法を自ら決定できるIoTデバイス「Connected Resources」を構想した。高齢者のリソースフルネスを理解するため実際に高齢者をプロジェクトに招き、自宅でのエスノグラフィックスタディやプロトタイプを用いたワークショップを通して、テクノロジーがリソースとして認知されるための要素をデザインガイドラインとして抽出。普段の道具のアフォーダンスを持つシンプルな 4つのデバイスは、それぞれ異なるセンサーとアクチュエータでできており、個別で利用できるほか、組み合わせることで新たな機能を発揮する。オンラインプラットフォームはデバイスが収集したデータを機械学習で解析し、自分と他ユーザの利用方法を可視化してリソースフルネスを促進する。NGI(Next Generation Internet)Award 2019受賞、ACM SIGCHI 2019に論文発表。

左:リソースフルネスを理解するためのワーキングプロトタイプを用いた高齢の参加者とのワークショップ
右:4つのデバイスをそれぞれ組み合わせてできる16の機能

Hearty Project:ナイジェリアの人々の高血圧治療サービスのデザイン

ナイジェリアの中間所得者向けの安価で正確な計測が可能な血圧計と、リモートで医者からの定期検診と処方箋を受け、継続的で正しい自己治療に導くアプリケーション  2017年

ナイジェリアの高血圧による死亡率は世界の平均の 2倍、約半数の成人の死因が高血圧である。なぜナイジェリアの人々が高血圧を治療できないのか、そのバリアを理解し解決策を導くため、現地ラゴスのNPOと協業し、患者、病院、薬局、保険会社などステークホルダーへのフィールドリサーチを実施。グラフィカルなカードやコラージュを使ったインタビューや、日々の高血圧との関わりを当事者たちがインスタントカメラで撮影するCultural Probe手法を用い、実態とそのコンテクストを探った。その結果、患者の高血圧への知識不足、公共交通機関の不便さや病院の混雑、医者の多忙さゆえの短い面会時間と言葉の壁によるミスコミュニケーションが引き起こす薬の誤飲などが、継続的な治療のバリアになっていることがわかった。プロジェクトでは、リモートで患者と医者をつなぎ、患者が病院に行かなくても治療ができるサービスを考案。安価で誰もが正確な測定が可能な血圧計、正しい知識で治療の継続をエンパワーメントするスマホアプリケーション、およびアプリの処方箋で薬を処方する地元の調剤薬局システムのプロトタイプを制作しその有効性を検証した。現地NPOが実現に向けて活動を継続している。

左:リサーチによって明らかになったステークホルダー間の利害関係の可視化
右:患者への高血圧との関わりや感情、暮らしを理解するインタビュー

主な研究論文、講演、受賞歴

  • 北崎允子 他. (2021 September). 人とAIの適切な役割分担を検討するリサーチ方法論の提案, ヒューマンインターフェイスシンポジウム2021論文集 (pp.182-189).
  • 北崎允子. (2020 December). Research through Designがもたらす知, HCGシンポジウム2020チュートリアル招待講演
  • 北崎允子. (2020 July). 巨人の肩の上でもがく―デザインの実践と研究の相互補完関係, 第177回ヒューマンインタフェース学会研究会「サービスデザインの理論と実践 (3)」
  • 北崎允子 他. (2019 June). RTD アプローチによる高齢者のリソースフルネスのためのデザイン. 日本デザイン学会研究発表大会概要集, 日本デザイン学会第66回春季研究発表大会 (pp. 72-73). DOI:10.11247/jssd.66.0_72
  • Fedosov, A., & Kitazaki, M., et al. (2019, May). Sharing economy design cards. In Proceedings of the 2019 CHI conference on human factors in computing systems (pp. 1-14). DOI:10.1145/3290605.3300375
  • Kitazaki, M., et al. (2019, May). Connected Resources: Empowering Older People to Age Resourcefully. In Extended Abstracts of the 2019 CHI Conference on Human Factors in Computing Systems. DOI:10.1145/3290607.3311774
  • Kitazaki, M., et al. (2019, April). Connected Resources - A Research through Design approach to designing for older people's resourcefulness. In Conference of the RTD2019 Research Through Design, Delft, The Netherlands. DOI:10.6084/m9.figshare.7855868.v2
  • Next Generation Internet Award(NGI)2019, The “Brilliant PhD/Master student” award賞受賞.
  • Nicenboim, I., & Kitazaki, M., et al. (2018, April). Connected resources: a novel approach in designing technologies for older people. In Extended Abstracts of the 2018 CHI Conference on Human Factors in Computing Systems (pp. 1-4). DOI:10.1145/3170427.3186527
  • Dutch Design Week (2017). Mind the Step(共同展示), Resourceful Ageing.
  • 北崎允子 他. (2015 March). 紙と手作業による仕事の観察を通じた「ドキュメントの受け渡し」のデザイン. 富士ゼロックステクニカルレポート24号 (pp.81-87).
  • 北崎允子 他. (2014). 紙と手作業による仕事の観察を通じた「ドキュメントの受け渡し」のデザイン. 日本デザイン学会研究発表大会概要集, 日本デザイン学会第61回研究発表大会(pp. 56-57). DOI:10.11247/jssd.61.0_56
  • 平野靖洋 & 北崎允子 et al. (2007). ワーク観察とプロトタイピングを通じたドキュメントワーク環境のデザイン. 日本デザイン学会研究発表大会概要集,日本デザイン学会第54回研究発表大会. DOI: 10.11247/jssd.54.0.C05.0
  • Good Design Award (2006). Webベースのシンプルな操作による文書管理・活用ソフトウエア ArcWizShare
  • International Council of Graphic Design名古屋国際デザイン会議2003. Color Sounds: An Attempt for Bind People to Expand their Recognition of Colors by Sounds