白井敬尚(しらい・よしひさ)
SHIRAI Yoshihisa
- 専門
- タイポグラフィ、エディトリアルデザイン、ブックデザイン、グラフィックデザイン
Typography, Book Design, Graphic Design - 所属
- 視覚伝達デザイン学科
Visual Communication Design - 職位
- 教授
Professor - 略歴
- 2012年4月着任
1961年愛知県生まれ - 研究テーマ
- タイポグラフィ及びブックデザイン。
株式会社グレイス(宮崎利一チーム 1981-87年)、株式会社正方形(清原悦志主宰、1987-98年)を経て、1998年、白井敬尚形成事務所設立。
ブックデザイン、エディトリアルデザイン、展覧会周知物など、タイポグラフィを軸としたデザインに従事している。
- 河野三男著『タイポグラフィの領域』朗文堂、1996年
- ヤン・チヒョルト著『書物と活字』日本語版翻訳:菅井暢子、朗文堂、1998年
- 『ヴァチカン教皇庁図書館展 書物の誕生:写本から印刷へ』図録、凸版印刷 印刷博物館、2002年
- 『ヴァチカン教皇庁図書館展II 書物がひらくルネサンス』凸版印刷 印刷博物館、2015年
- 『欧文書体百花事典』組版工学研究会編、企画・編集:白井敬尚、朗文堂、2003年
- 「アイデア」第309号-第368号、アートディレクション・デザイン〈企画・編集〉、誠文堂新光社、2005-14年
- 『EXHIBITIONS Graphic Messages from ginza graphic gallery & ddd gallery 1986-2006』大日本印刷ICC本部、企画:ギンザ・グラフィック・ギャラリー、2007年
- 『Tokyo TDC Vol. 20 The Best in International Typography & Design』東京タイプディレクターズクラブ編、DNPアートコミュニケーションズ、2009年
- 三嶋典東『LINE STYLE』ブルース・インターアクションズ、2009年
- 『横尾忠則全装幀集』パイインターナショナル、2013年
- 『ヤン・チヒョルト展』DNP文化振興財団、2013年
- 今江祥智著『子どもの本の海で泳いで』画:宇野亞喜良、BL出版、2013年
- フレット・スメイヤーズ著『カウンターパンチ 16世紀の活字制作と現代の書体デザイン』翻訳:大曲都市、武蔵野美術大学出版局、2014年
- 内田祥哉著『内田祥哉 窓と建築ゼミナール』門脇耕三、藤原徹平、戸田譲、YKK AP窓研究所編、鹿島出版会、2017年
- 松村正恒著『老建築稼の歩んだ道 松村正恒著作集』花田佳明編、鹿島出版会、2018年
- 佐藤康宏著『絵は語り始めるだろうか 日本美術史を創る』羽鳥書店、2018年
- ヨゼフ・ミューラー゠ブロックマン著『グリッドシステム グラフィックデザインのために』翻訳:古賀稔章、監修:白井敬尚、ボーンデジタル、2019年
- 坂本泰宏、田中純著『イメージ学の現在 ヴァールブルクから神経系イメージ学へ』(装幀)、東京大学出版会、2019年
- ロビン・キンロス著『モダン・タイポグラフィ 批判的タイポグラフィ史試論』翻訳:山本太郎、グラフィック社、2020年
- 『高見順賞 五十年の記録 一九七一-二〇二〇』公益財団法人高見順文学振興会編、港の人、2020年
- 横尾忠則著『GENKYO 横尾忠則 I A Visual Story 原郷から幻境へ、そして現況は?』国書刊行会、2021年
- 内田祥哉著『内田祥哉は語る』鹿島出版会、2022年
- 山本貴光著『世界を変えた書物』橋本麻里編、小学館、2022年
- 「モリサワタイプデザインコンペティション2024」ポスター、リーフレット、モリサワ、2024年
- 橋本麻里・山本貴光著『図書館を建てる、図書館で暮らす 本のための家づくり』新潮社、2024年
- 『ポーランドの巨匠 ヤン・レニツァ ポスター、アニメーション、イラストレーション、舞台』DNP文化振興財団、2026年
- 『名著誕生展 ヴァチカン教皇庁図書館Ⅲ+』TOPPANホールディングス株式会社 印刷博物館、2026年
執筆:
- 「日本の活字版印刷を支えたアメリカの活字版印刷」『日本の近代活字 本木昌造とその周辺』掲載、近代印刷活字文化保存会、2003年
- 「プリンターズ・フラワーをめぐって」「アイデア」第325号「花形装飾の博物誌」掲載、誠文堂新光社、2007年
- 「タイポグラフィ 言語造形の規格化と定数化の軌跡」『言語社会』第2号「特集 人文無双」掲載、一橋大学大学院言語社会研究科、2008年
- 「活字とグリッド・システム ブック・フォーマットの形成」『文字講座』掲載、誠文堂新光社、2009年
作品集・著作:
- 『TYPOGRAPHIC SUITE 白井敬尚形成事務所タイボグラフィック選集』白井敬尚形成事務所、2011年
- 『gggBooks 世界のグラフィックシリーズ 124 白井敬尚』DNP文化振興財団、2017年
- 『排版造型 白井敬尚 国際様式から古典様式へ、そしてアイデアへ』編集・デザイン:張弥迪、翻訳:劉慶、湖南美術出版社、2021年
- 『組版造形 タイポグラフィ名作精選』グラフィック社、2024年
主な展示:
- 2001年、2011年「Typojanchi: Seoul International Typography Biennale」展参加(韓国・ソウル)
- 2011年、第673回デザインギャラリー 1953企画展「本の知と美の領域 VOL. 1 白井敬尚の仕事」展 企画・構成:平野敬子、日本デザインコミッティー主催
- 2017年、ギンザ・グラフィック・ギャラリー第362回企画展「組版造形 白井敬尚」
- 2019年、京都dddギャラリー第219回企画展「組版造形 白井敬尚」
- 2019年、敬人紙語(中国・北京)にて敬人ブックデザイン研究班(呂敬人主宰)招聘により展示、講義、ワークショップ開催
- 2021年、中国美術学院、中国国際デザイン博物館(中国・杭州)にて「排版造型 白井敬尚 国際様式から古典様式へ、そしてアイデアへ」展開催
教育活動:
- 2003-2018年 タイポグラフィスクール新宿私塾(主催:朗文堂、片塩二朗)講師:企画・カリキュラム
- 2011年- ミームデザイン学校(主催:中垣デザイン事務所、中垣信夫)講師
- 京都芸術大学、東洋美術学校、滋賀県立大学、金沢美術工芸大学、愛知県立芸術大学にて非常勤講師
- 2003年- 武蔵野美術大学 造形学部 視覚伝達デザイン学科 非常勤講師
- 2012年- 同学科教授
- 2024年、上海視覚芸術学院にてワークショップ
- 2025年、中国美術学院にてワークショプ
その他:
- 2008年、2010年、2021年、東京タイプディレクターズクラブ『東京TDC賞』ゲスト審査員
- 2024年、ニューヨークタイプディレクターズクラブ『TDC70』コミュニケーションデザイン部門 審査員
- 2026年、中国文字体デザイン研究センター、北京方正電子有限公司『方正賞デザインコンテスト2026』審査員
- 2026年、日本タイポグラフィ協会顕彰 第25回佐藤敬之輔賞受賞

「アイデア」第309号-第368号
AD、D、誠文堂新光社、2005-14年

『ヤン・チヒョルト展』
AD、D、DNP文化振興財団、2013年

『名著誕生展 ヴァチカン教皇庁図書館Ⅲ+』
AD、D、TOPPANホールディングス株式会社 印刷博物館、2026年

『組版造形 白井敬尚』展
AD、D、DNP文化振興財団、2017年

『ポーランドの巨匠 ヤン・レニツァ ポスター、アニメーション、イラストレーション、舞台』展
AD、D、DNP文化振興財団、2026年



『グリッドシステム グラフィックデザインのために』
監修、AD、D、ヨゼフ・ミューラー゠ブロックマン著、ボーンデジタル、2019年

『排版造型 白井敬尚 国際様式から古典様式へ、そしてアイデアへ』
編集・デザイン:張弥迪、翻訳:劉慶、湖南美術出版社、2021年

『組版造形 タイポグラフィ名作精選』
執筆、AD、D、グラフィック社、2024年
「活字は美しいですね。人が花を美しいと思うように、僕は活字が美しいと感じるんです」と言ったのは、師、清原悦志である。
活字は今も昔も美しい、そしてこれからも。活字が美しいのは、言葉を、文字を、形ある共有物「活字」として人々が育み育て続けてきたからだ。組版も同様。活字は組まれることで言葉が形としてあらわれ意味を成す。
ウィリアム・モリス、エドワード・ジョンストン、ヤン・チヒョルト、ヨゼフ・ミューラー゠ブロックマン。彼らの組版が美しいのは、その構造設計に「共有」という思想があるからだ。そしてブルース・ロジャース、スタンリー・モリスン、ジョヴァンニ・マーダーシュタイク、エミール・ルーダー、ヘルムート・シュミット、オトル・アイヒャー、ロビン・キンロス……。寿岳文章、恩地孝四郎、今井直一、佐藤敬之輔、小池光三、矢作勝美、小野二郎、河野三男……敬愛する彼らタイポグラファが書き記した思想、哲学、方法論もまた「共有」という信念が厳然と存在する。
書体の造形に内包された、民族の記憶、時代の記録、文化の潮流、道具と技術、歴史の縦軸と横軸、そして理性と身体。
古代ローマの石碑文を図学として紐解き、ふたたび石に刻んだフェリス・フェリチアーノ。徹底した数値管理で書体を生成したフィリップ・グランジャン。 ポイントシステムを確立し活字製造と組版を制御したピエール・シモン・フールニエ。地に足をつけ、五体を駆使して言葉の痕跡を石に彫り刻んだエリック・ギル。鑿や鎚さながらに筆を用いて、紙という大地に文字を打ち込み刻んだ歴代中国の書家たち。それらに対し曼殊院に残された「かな」は、まるで中空に浮かぶ一筋の雲のようであり、やがてかなたに消えゆくことが自明であるかのような線描であった。
記述し、伝え、残すことは「書物」の使命であり宿命であろう。漢字が伝来したのが紀元1世紀、使い始めたのが4、5世紀。以来、我々日本人は、漢字をごく自然に受け入れ、アレンジしてきた。だが実のところそこにどのような意味や価値を見出してきたのであろうか。
和辻哲郎の風土論を引くまでもなく、日本という島国は、北に南に東に西に、海、山、川、野があり、四季折々の食物をさほど苦労せずとも手にいれることができた。その反面、地震、津波、台風、洪水、火山噴火という自然の脅威に常に晒され、時には、なにもかも無に帰することすらもあった。だが、温暖湿潤の風土にあっては草木の再生は早く、暮らしの立て直しも容易である。そうした環境にあって、言語を記述し伝え残すこととは……。古来、我々日本人は記述言語を持たなかった。そのことが今という時代にとっていかなる意味を持つのか。そして後世にどのような影響をもたらすのであろうか。
記述言語伝達の本質において、紙に活字をしるし束ねるという行為とその要素のほとんどは、無駄なものなのかもしれない。活字の形、サイズ、行間、組幅、組体裁、マージン設定、インキ、紙、そして印刷、製本……。そのどれもが言語伝達の本質ではない。だがその無駄のなかには、歴史にきざまれた記憶と身体という非言語が存在している。感情、感覚、感性、空気感しかり、である。タイポグラフィは眼に見えるものと見えないものの非言語の集積によって支えられている。
15世紀中葉、ドイツのマインツでヨハン・グーテンベルクが活字版印刷術を創始して以来、550年以上にわたって先人のタイポグラファたちは、この行為を営々と繰り返してきた。幕末から明治初期にかけて日本に活字版印刷術をもたらした本木昌造もその一人だ。たとえその行為が言語伝達の本質でなくとも、またいかなる時代にどのような機材や資材、技術、メディアを用いようとも、活字を組むこととは、すべて等しく非言語の集積の延長上にある。
「美」もまた、記述言語伝達の本質にとって無駄なものなのかもしれない。けれども私は、あいも変わらず活字を見つめ、組み、迷いながらも、この「無駄」に限りない魅力を感じ続けている。
(第25回 佐藤敬之輔賞 受賞コメントより 2025年 白井敬尚)
