大森誠Omori Makoto

CHA!

平面、立体、アニメーション|紙、PP板、ピアノ線、アクリル板、BB弾Two-dimensional, three-dimensional, animation|paper, pp board, piano wire, acrylic board, BB bullets2.0~60.0 × 2.0cm~40.0 × 2.0~20.0cm|本 × 14点、アニメーション × 6点、立体 × 40点、平面 × 3点

僕の卒業制作全体を一言で表すと「変形する構造体の博物学」です。
つまり「集める」「分類する」「記述する」この作業の繰り返しという事です。
その過程で構造とは「部分」の集合が「全体」を形成しているのだと考えました。 変形とは部分と部分の関係性の変化であり結果として全体も変化するのだと考える事が出来ます。
そして関係性の要素を「距離」・「角度」・「時間」の3つに分類し3×3の9種のダイアグラムで表現しました。

大森誠

大森君は、多面体の展開を博物学のように収集し、整理し、分析し、考察する。考察によって導かれた様々な素材の立体、距離や角度を変えて変化するカタチのモデル。全体と部分の関係や構造を解析する図解、時間での変化を検証するプログラミング、動きの変化を記述し提示するフリップブックなど、大森君のプレゼンテーションを聞くと、本人が遊びながら学び取っていったこの研究の軌跡に感動する。本人は(Change)の接頭部を取ったと言う「CHA!」というタイトルだが、私には、構造(Construction)を手づくり(Handmade)の立体で実際に動かして(Action)理解することだと読める。この先の新しい発見を予感させる優れた研究である。

視覚伝達デザイン学科教授 陣内利博

鈴木陽香Suzuki Haruka

自然色採集The collection of natural colors

本|布、刺繍糸、紙、ボール紙Book|cloth, embroidery thread, paper, cardboard18.9 × 13.7 × 1.0cm 他 × 100点

人が識別できる色数はおよそ一千万色と言われています。
日本には色を表す言葉が沢山ありますが、そのほとんどは平安時代に生まれたものです。
もっと起源を辿っていくと古代日本では染料と顔料による色名を使用していたということに辿りつきます。
そこで自然の色そのものを染色によって定着させ、現在使用されている色名を使用せず、色名をひとつひとつ命名しなおしました。
日本人の根幹にある色に対する豊かな感覚を感じて下さい。

鈴木陽香

鈴木さんは、顔料や染料ではなくて自然物そのものから抽出される色をテーマとした。同時に日本の伝統色の歴史的成り立ちを調べたが、それらの色名の根拠が一貫していないことも分かってきた。そこで彼女は自ら抽出した色にその元となった物の名前を命名した、これまでにない色見本帖の制作を試みた。その過程で得られた色データをマンセル色環に精緻に置き換えることで、結果として本来の自然色の全体像(分布状況)を見る事ができる仕組みとなっている。丁寧に編集された彼女の作品を通して私たちは「自然の色とは何か」について感じ、考えることができる。彼女の色彩採集がライフワークとして今後も続くことを期待したい。

視覚伝達デザイン学科教授 寺山祐策

住吉あゆみSumiyoshi Ayumi

Energy of vegetables ー野菜の変容ーEnergy of vegetables

本|紙Books|paper29.7 × 42.0cm

私たちにとってなじみ深い野菜、しかしそれらが今日のように日常の食卓に取り入れられるようになったのは20世紀になってからの出来事で、その歴史は意外にも浅い。
日本経済が大きく変動した100年は、野菜にどのような影響を及ぼしたのだろうか。私たちの食がどのように生まれ成り立っているのか、野菜とそれをとりまく環境の変化を調べて行くなかでの発見や、その変化によって切り離せないものとなったエネルギーと野菜の関係ダイアグラムを軸に視覚化した。

住吉あゆみ

住吉さんの作品は私たちが普段何気なく食べている野菜はいつどのように作られたかという一見シンプルな問いから始まっている。しかし彼女のダイアグラムと編集は、何気ない日常のなかに地球規模の人間の歴史と政治と自然と環境の問題が凝縮している事を語っている。データは単体では意味をなさない。「変換」された時に意味となる。きっかけは昨年の未曾有の厄災であった。そこでは幾多の表層的なデザインの意義が語られた。自らの出身地が被災した彼女のこの作品は「デザインが為すべきことは何か」という問いへの誠実なひとつの 答である

視覚伝達デザイン学科教授 寺山祐策

蛭子井里江Hirukoi Rie

あそびドロップス 子どもの遊び
ー変化・発見・連続ー
プレーリーダーひるの遊び場観察・体験日誌よりasobi drops child’s play-change・discovery・successionfrom hiru’s diary for playgrounds

本|紙Book|paper25.7 × 25.7cm × 9点

映像Movie5min

遊びの魅力を伝え、遊びの大切さを感じてもらうための本と映像をつくりました。実際に子どもと遊び、観察をする中で、「子どもは変化と発見と連続とその過程が楽しいから遊ぶのだ」と気づき、それらの瞬間を撮影した写真と、そのとき発せられたことばを並べました。大人は見過ごしがちだが、子どもにとっては重要な多種多様な気づきが自由な遊びの中には無限に存在します。私たち大人がそれらに目を向けることで、子どもがのびのびと遊べる環境が守られることを願って制作しました。

蛭子井里江

さいたま市内の別所沼プレーパークを拠点に地元小平から大地震の被災地まで、11か所の遊び場で、4月からそして現在も、蛭子井さんはプレーリーダーとして子どもたちと付き合っている。
子どもからは「ヒル」と呼ばれている。「ヒル、みて~!」「ヒル、きて~!」と、子どもたちはたくさんのメッセージを彼女に投げかける。そこには輝くような遊びの表現がある。この「かけがえのない子どもの時間と空間をなんとか守らなければ」と、彼女の目的には全くブレがない。子どもの遊びをねばり強く観察し、時間の経過、季節、天気、自然の素材、子どもの会話とふるまいなどを表にして分析し、見つけた3つのキーワード「変化」「発見」「連続」をタテ軸に、9つのふるまいの段階「みつける」「さわる」「みる・きく」「つくる」「なりきる」「つける」「おどろかせる」「さそう」「こわす」を横軸にする。遊びは、繰り返し味わってなめつくすドロップのようだ。彼女はそう気づいた。
子どもとの会話に誠実に、遊びの様態を冷静に表現する、その記述にフィクションはない。圧倒的なのは子どもと彼女の距離感の近さだ。子どもの遊びの環境を守りつくろうとする人たちにとって、この冊子と映像は力強い味方になると確信している。

視覚伝達デザイン学科教授 齋藤啓子

山村里美Yamamura Satomi

はたらくおじさん ーガス管工事ーHataraku Ojisan -Construction of gas pipe-

アニメーションAnimation7.5min

はたらくおじさんは人間を客観的に見せる。
一定の服装と動きで街を作る姿からは、人間が都市の部品である事を感じさせられる。
そんな彼らの行動を複数の画面で見渡せる様にし、人間らしさと部品らしさの両方を感じ取れる作品にした。

山村里美

山村さんは子どものように興味ある対象を見飽きる事なく洞察し、ドキュメンタリー作家のように対象にしつこいほど密着する。彼女は3.11の体験から、都市を維持管理する働く人々が貴重な存在である事に注目した。繰り返される作業を見つづけると、人々も都市の部分のように見えてくる。
今、日本中で耐震のために最新鋭の技術でガス管が交換されている。分割画面の応用はその工事現場の出来事を伝えるために考案した手法だ。伝えたい内容が表現を生む。この彼女の柔軟な姿勢を高く評価する。

視覚伝達デザイン学科教授 陣内利博

山本悦子Yamamoto Etsuko

都市のスケッチA sketch of urban life in Tokyo

アニメーションAnimation3min

「現代社会の精神」 現在の人間の生き方、「社会」という集団生活のありようそれ自体が、たくさんの細胞から成り立つ多細胞生物に思える。
とくに経済、科学技術などの発展により機械化、システム化された日本では、まるで人やものという赤血球が、道路や線路という血管によって日々運ばれ、循環していくさまを思い起こさせる。
そういうひとつひとつの細胞たちが、この狭い日本で毎日泣いたり笑ったり無表情に通り過ぎたりする中での、目に見えない情感の呼応、共感、無意識を、どうにかスケッチできないかという試みの作品です。

山本悦子

きっとあなたは、笑いを禁じえない...でしょう。で、その笑いの質にこそ、作品の新しい挑戦が表れている。人類の夢と欲望で形作られてきた都市、そこは不安と恐怖を同時に大量生産してしまう矛盾の現場。作者がおぎゃ~!と生まれたその日その時ここの今は、既に巨大不安と巨大恐怖の巨大都市。
生まれた時からの日常ともなれば、不安と恐怖も都市生活者の生命の一部だ。明るい恐怖と明るい不安が、鋭くしかし実に優しげに描かれる。

視覚伝達デザイン学科教授 三嶋典東

深津有紀Fukatsu Yuki

小平むすびめ食堂Kodaira Musubime Syokudo

ごはん、本、新聞|野菜、紙、木材Meals, books, newspapers|vegetables, paper, wood300.0 × 700.0 × 360.0cm

小平市は農地と住宅が混在しており、野菜をつくる人、売る人が、消費者の身近に感じられる町です。
私は小平の直売所や農家の方への取材をする中で、農業・食を通して人と人が繋がっていることを実感するようになりました。自分の食べているものを、誰が何処でどんな想いでつくっているのか知るだけで、毎日のごはんはもっとおいしく、たのしくなる。そんなごはんのあたたかさや、人と繋がれる喜びを伝え、ごはんを通して人と人をむすぶ場でありたい、という願いをこめて、この食堂をつくりました。

深津有紀

この食堂のデザインはインテリアデザインとかショップのデザインとかではない。食堂がコミュニケーションデザインの中心メディアとして意識され、位置づけられている。食堂をつくることと食堂をデザインすることの違いを、小平市の農家の人々との付き合いを通して私達に提示している。また「小平むすびめ食堂」のイメージ構築は素朴で柔らかく、ロゴからレシピ本までデザインが有るか無いかの微妙な感覚で表現されている。この表現は結構難しいがよく出来ている。イラストレーションを描くように農家の人々との出会いを記述し、写真を撮るように野菜を作り、文字を組むように旬の食材で料理を作る。そしてポスターをデザインするように食堂でご飯を食べてもらう。自らもメディアの一員として参加し、つくる人と食べる人を繋げている。

視覚伝達デザイン学科教授 新島実