教育研究上の目的

油絵学科は多様な価値判断のもと、作品制作をとおして社会との共生やつながりをつくり、また絵画を重層的にとらえ、あらゆる可能性を追求し、創作活動を通じて社会性を獲得しうる人材の育成を教育目標とする。

学科理念・教育目標

今の時代ほど芸術が必要とされている時代は、かつてなかったと言ってもよいでしょう。たしかに現代はいろいろな面で豊かになり、便利になっています。情報やものが溢れ、その欲望はとどまるところを知りません。その一方で、不安はふくらみ、社会の矛盾と混乱は今まで以上に増大しています。このようななかにあって、芸術はどのような役割をもつのでしょうか?

芸術はそうした問題の直接的な解決手段になるわけではありません。芸術は、むしろそれらの問題 からもっと根源的なところまでさかのぼり、もうひとつの違ったやり方、もうひとつの違ったリアルさをさし示すのではないでしょうか。

絵もそのひとつです。それは、虚構で、夢や空想に近いものかも知れませんが、現代という時代を反映しています。「欲望」や「不安」や「希望」を反映しています。それらに共感することで私たちは今“ここに生きている” ことを実感するのです。その意味で、絵は、私たちのありのままのすがたを映し出す “鏡” にほかなりません。いつの時代にも、かたちを変えながら存在し続け、問題が山積する現代でこそ、その意味を発揮するのだと思います。

絵を描くことは、単に造形の領域にとどまるものでもありません。絵を描くことで、そのなかにもうひとつの世界を見つけることが可能です。そのようにして私たちは想像の世界と現実の世界を行き来し、この世界にいる自分を発見するのです。油絵学科に入って絵を描くことには、そのような意味が含まれます。

では油絵学科は具体的にどんな学科なのでしょう。私たちの科は、絵画を中心とし、そこから派生するさまざまな分野にも、表現の可能性として目を向けていく科です。ですから、絵を描く人はもちろんのこと、インスタレーション、パフォーマンス、映像などさまざまな制作をする人が集まっています。

その特徴は、一言でいえば、「多様性」です。美術の価値判断はけっしてひとつではありません。さまざまな考えをもった学生がいて、それぞれが自分の方向性を見つけようとしています。私たちはそのことを最も大切にしていきたいと考えています。

普段の対話や講評会を通じてちがった考えを知り、自分の位置や方向を見いだすことが重要です。作品を通してのそうした話し合いこそが、美術を狭い枠に閉じ込めないで、社会との「共生」や「つながり」をつくる第一歩になるのではないでしょうか。それは同時に、美術が本来もっている豊かさや、人と世界をつなぐ力を認識する第一歩にもなります。

まず絵を描く。そこから画家になる、美術家になる、版画家になる、美術教師になる、映像やアニメをやる、音楽をやる、農業をやる、料理家になる、ふつうの人になる、その他数えきれないほどの「社会とのつながり」が生まれてくるでしょう。そこに出ていくための、最も基本的(根源的)なもの、 そのひとつが絵を描くことにほかならないのです。

このように、絵画を重層的にとらえ、あらゆる可能性を追求していこうというのが油絵学科の今の姿です。創作活動をつうじてそれぞれの学生が社会性を獲得し、広い意味での「表現者」となることを望んでいます。

3つのポリシー

造形学部のカリキュラム・ポリシー(教育課程編成・実施の方針)、アドミッション・ポリシー(入学者受け入れの方針)、ディプロマ・ポリシー(学位授与の方針)は、以下のページをご覧ください。