学生が主体的にカリキュラムをつくり独自の課題や表現の可能性を追求する。

1・2年次の基礎課程は、個々の表現に必要な基礎を主体的に学べるのが特徴です。基本的な内容からジャンルを超えた新たな表現まで、絵画のさまざまな内容が盛り込まれた課題の中から、自由に選択して授業を受ける「選択課題」を主に、他学科による授業を広く学ぶ「造形総合科目」も用意されています。

基礎課程では教員からの問いかけがあったのに対し、3・4年次の専門課程は自発的な制作が主体となり、Aコース、Bコースに分かれて専門的な表現活動に取り組みます。同じアトリエの仲間や教員の批評にもまれながら充実した作品制作を展開し、表現者としての自覚をより強いものにしていきます。

カリキュラム

全体

油絵学科油絵専攻では以下のような方針に基づいてカリキュラム(教育課程)を編成しています。

  • 油絵学科油絵専攻は美術作家をはじめとする広い意味での表現者の育成を目的としているため、基礎課程においても専門課程においても、まず学生自らが主体的に授業に参加できるようにカリキュラムが編成されている。
  • 1、2年次基礎課程においても画一的な基礎を学ぶのではなく、個々の表現に必要な基礎を主体的に学ぶことができるように、選択課題を中心に編成する。カリキュラム全体の流れのなかで設定された授業概要をもとに、美術作家でもある担当教員がそれぞれの特性を反映させた選択課題を設定し、それを学生自らが選び取るところから授業をスタートさせる。
  • 3、4年次専門課程では自由制作を中心としたカリキュラムとし、学生の主体的な興味がすべての始まりになるような自由な環境の中で、制作者としての自覚を養う。
  • 本専攻の大きな特徴でもある絵画組成の授業では、基礎課程・専門課程を通じて絵画を物質的にとらえた技法材料を学び、さらに西洋の古典技法などの絵画技法史を学ぶことで、学生それぞれの表現の充実をはかる。
  • 通常授業と平行して、フレスコ、テンペラ、モザイク、水彩、立体、映像などの特別授業を「複合表現演習」として設け、特化された技術的な側面から、多角的でより深いスキルを学ぶ。
  • 基礎課程における造形総合科目は、専門分野以外の科目を幅広く学び、柔軟に基礎を学ぶ機会を設ける。

1年次

「みること、描くこと、それらの問い直し」
1年次のカリキュラムでは、ものをみること、あるいは何かを描くことの問い直しとしての基礎に重点をおいた授業がおこなわれます。一口に基礎といっても学生それぞれで捉え方に大きな違いがあります。例えば静物や人体をじっくり観察し、それらを描くことからさまざまな絵画の基礎を学ぶというのは重要なことですし、浮かんでくるイメージをドローイングしてみることや、あるいは自分自身と自分の絵について、自分のことばでじっくり考えてみることも同様に重要な基礎のひとつです。いずれにしてもそこには「描くことって何だろう?」といった問い直しがあるはずで、画一的な基礎造形観のみではそれに対応することはできません。

2年次

「客観的な視野から」
2年次ではより視野を広げ、客観的に自分の作品や「絵画/美術」をとらえ直すことが求められます。もちろん作品を制作する上で、主観的な視点が最も重要であることはいうまでもありません。しかしこの時期にあえて客観的な視点を意識することは、単に視野を広げるだけでなく、「自分らしさというものについて改めて考えるきっかけにもなるでしょう。

3年次

3年次からは1、2年次のような課題がなくなり、学生の自発的な制作からすべてがスタートします。個々の作品は同じ教室の学生や教員の批評にもまれながら独自のものとなっていきます。また夏季休業あけに、油絵版画両専攻の3年生全員が作品を展示して、全教員がそれぞれ選出した作品に賞を与えるコンクールを行い、自身の制作と作品を発表することとの相互関係を問い直します。3年次からは、Aコース、Bコースの2コースに別れ、専門的な表現活動の準備段階に向かいます。

[Aコース]ものをよく見ることは自分自身を見つめるということでもあります。
そこから派生するイメージの変容・構造など、個人から生み出される絵画の課題や可能性を追求します。
[Bコース]絵画とは何だろう?その根本的な意味を考え、絵画・立体・インスタレーション・映像などさまざまなジャンルを柔軟にとらえ、美術に対する考えを深めていきます。

4年次

4年次は後半の卒業制作にすべてが集約されています。それは4年間の集大成といった意味だけでなく、学生から自立した美術作家/表現者としての重要な第一歩であるからにほかなりません。これまで養ってきた表現力を結実させて作品を制作・展示し、社会に対して開かれた状況のなか、ひとりの制作者としての自覚と責任が問われます。