造形基礎・選択「素材と表現」 1年次開講
『剥がれたペルソナのむこう、そこは私の楽園』
油彩、キャンバス、布、糸|H2500 × W2700 × D1600mm
黙々と作業する中で絵を描く理由や伝えたいことを明確にできた
―どんな授業・課題でしたか?
絵画ともう1つメディアを選んで、それぞれの関係性や語り方を考える課題です。今までは完成した絵画作品を壁に飾るだけでしたが、自分が伝えたいことをわかりやすく伝えるための展示方法を学んでみようという授業でした。
―制作した作品について教えてください。
大学に入ってからいろいろな描き方をしている人を見て、改めて自分自身を見つめ直したことから、良くも悪くも絵との距離が近く客観的な視点が少ない自分の強みを描いてみようと思いました。等身大の立体作品をつくったのは、平面とは違ったモノとして自画像が空間に現れてくることで、自分の世界を俯瞰して見たいと思ったから。私を投影する鏡のような存在にしたくて、すべて手縫いで制作したので時間はかかりましたが、黙々と作業する中でどんどん気持ちが整理され、改めて絵と向き合えたし、私が絵を描く理由や伝えたいことを明確にできました。
(1年|飯田優花さん)
絵画基礎Ⅵ 2年次開講
『無題』
油彩、綿布、パネル|H1000 × W803 × D45mm
複製技術の発展に伴って形成された美意識を表現する
―制作した作品について教えてください。
架空の画家を想像する課題で制作した作品です。古典絵画を学びたくて絵画組成室に入り浸って模写の勉強をしているうちに、古典絵画が機械的複製によって現代社会に氾濫している状況を面白く感じ、複製技術の発展に伴って形成された美意識を1枚の絵で表現できないかと考えていました。この作品では、世界的な贋作画家の大学の後輩という人物を設定し、ルネサンス期のミヒャエル・パッハーが描いた悪魔を引用しながら、複製行為とその所有をメタ的に画面に落とし込むことを意図しました。
―今後の目標は?
今回、架空の画家が生きた20世紀中頃の美術雑誌や新聞記事も実験的に制作したことで、絵画以外のメディアでもアウラや複製に関する問題にアプローチできるという気付きがありました。デジタル化社会で唯一性と空間性が凋落した絵画のイマージュに対し、どのように応答し具現化できるかを探っていきたいと考えています。
(2年|久木田大地さん)
絵画実習Ⅱ(技法研究Ⅰ) 3年次開講
古典技法を用いた『Christ and John the Baptist as Children』の油彩模写
パネルに白亜地、油彩|H390 × W580 × D34mm
教わるだけでなく主体的に学ぶからわかることがある
―どんな授業・課題でしたか?
技法研究は絵画組成の授業の1つで、古典技法の研究もそうですが、「組成」という名前の通り、絵画の成り立ちを構造的に理解していきます。先生から教わるだけでなく、作家や時代背景について主体的にリサーチし、発表する時間もあります。さまざまな時代を扱い、今回は北方ルネサンスがテーマ。私はヨース・ファン・クレーフェの一作を選びました。
―どんな学びがありましたか?
いざ模写に取りかかると文献に書かれていることとの違いに気付くなど、描いてみて初めてわかることがあります。今、受講している技法研究Ⅱでは、カラヴァッジョが生きたバロック時代を研究しています。ルネサンス期とは画材も技法も異なりますが、古い時代を学んだからこそ理解も深まるし、時代の流れが見えやすくなり、その先に自分たちがいるのだと実感できました。色幅の出し方や筆運びなど、自分の作品にも生かせるものが多くあります。
(3年|丸山瑞季さん)
絵画実習Ⅳ3年次開講
『ユニコーンソフトクリーム コーンだけに』
発泡スチロール、布、他|H4000 × W3000 × D3000mm
観た人が楽しんで笑ってくれる作品を制作したい
―制作した作品について教えてください。
芸人のコントの舞台に登場する小道具に魅力を感じて、コントやギャグマンガをヒントにした立体作品をつくっています。この作品はユニコーンの“コーン”とソフトクリームの“コーン”を掛け合わせてみようと思ったのが制作の発端。コントの小道具はヒーローやサラリーマンのような男性的なモチーフが多いけれど、小さい女の子が好むような生地やセーラー服を使ったり、ポップなモチーフとの対比で渋い木彫を構成要素に取り入れたりと、素材選びも楽しみながら行えました。
―今後の目標は?
立体作品をつくり始めた頃は、チープな素材でつくり込みも雑でしたが、最近は完成度を意識できるようになりました。ただ、作品が大きくなるとうまくコントロールできない部分が出てきたり、重量がかさんで学外の展示に出展することも大変になってきているので、軽量化を目指しながら、観た人が楽しんでくれる作品を制作したいです。
(3年|籠田沙希さん)